満足度★★★★
演劇玄人さんたちを味方に!
明転した瞬間から引きこまれた久々の作品!テーマは重苦しいのに、「欲望」「理性」「正義」のせめぎ合いという頭脳戦が楽しくて、終始ニヤニヤしながら見てしまった。まるで明確なテーマが先にあって物語で肉付けされたかのような面白さだ(そういう作風の作家なのかもしれないが)。1956年に書かれた原作だというが、西沢さんにはこういった作品をどんどん掘り起こし、現代によみがえらせてほしいと思った。物語の展開によって(視点が変わることによって)、どういう結末を迎えてほしいかという私自身の正義がコロコロ変わるのも怖かったが、この、永遠に答えの出ない感じは何だろう?と思えば、遺族感情や世論に重きを置いた今の日本の死刑制度に似ているのだ、と思い至った。クレーレは、「復讐」をキーワードに容疑者に対して声高に死刑を叫ぶ遺族のようにも見える。もちろんこの作品にはそれに「金」の要素が加わっているので、そのままとは言えないが、来年以降、同じような選択を迫られる裁判員たちが確実に生まれるのだなあ、と思うと、後味の良さ、悪さは問題ではない、これは一筋縄ではいかないぞ、と何故か覚悟を決めたり…。ずっと後まで影響を与える作品だった。そんな知的な作業をしているだけに、もう少し宣伝ビジュアルを洗練させて、演劇玄人たちを味方につけてほしいと思った。
満足度★★★
戯曲の核を素朴に見せる
ほとんど素舞台で、凝った装置も使うことなく、古典と真正面からぶつかり合う、今どき珍しいタイプの芝居でした。古典の再演というと、「現代的なアレンジを加えて」とか言ってはいろいろ趣向を凝らした挙句に、演出家が戯曲をどう捉えて今上演するのかがさっぱり見えないことが多い中で、素朴な演出にこだわることで、かえって戯曲の核が見えてきたように思いました。「金か倫理か」、なかなか現代では問い詰められることがない選択のように思いますが、判断を迫られた時にはもう悲劇が目の前にある……そう考えるとゾっとしますね。それはともあれ、こういう芝居づくりは続ければ続けるほど、鍛えられ、磨かれる要素も多いと思うので、ぜひこだわり続けてほしいと思います。
満足度★★
最初の電車のシーンはグッと引き付けられました。
最初の電車が街を通過していくシーンは、表現方法にグッと引き付けられました。役者さんの演技も上手だったと思います。ただ、外国のものということもあるのでしょうかストーリーに共感できなかったのが残念でした。もう少し共感できる点が欲しかったです。
満足度★★★
情熱を持ってストイックに演劇に立ち向かう姿勢
ほぼ何もない八百屋舞台で、小道具、大道具も最小限。役者さんの身体を使って劇的なうねりを生み出して行きます。走って、叫んで、スピード感に満ちたエネルギッシュな舞台でした。情熱を持って、ストイックに演劇に立ち向かう姿勢を感じました。
ただ、初日だったのもあって、役者さんは全体的に段取りを守ることで精一杯のように見えました。どうしても許容できないミスがあり、ラストの盛り上がりを信じづらくなったのが残念。あと、選曲も少々奇抜すぎる気がしました。
1990年代に入ってから、価値観がひっくり返るような事件が沢山起こっています。何を頼りに生きていけばいいのかを、誰もがはっきりとは答えられない世界になっている気がします。そんな中、資本主義社会において不可欠な「お金」に、興味や欲求が集中するのは自然なことだと思います。でも「お金」を中心にした(全てを金に換算していく)生活って、人間には合っていないと思うんですよね。お金と違って命は割り切れないことだらけですから。
約50年前にスイス人が書いた『億万長者・・・』は、どちらかというと今の日本人にとっては縁遠い作品だと思います。でも、お金で正義が買えるのか、お金と命はどちらが大事なのかという命題をテーマにした今作は、今の日本で上演することに大いに意義があると思いました。
満足度★★
初JAM SESSION
翻訳物を劇的にひっぱっていくパワーは感じられましたが、ギュレンの景色や人々の空気がもう少し見たかったなというのが本音です。駅や、森や、店など、一つ一つの場面もそうですが、なによりお金の単位がいまいちピンと来ないため、ギュレンという街そのものがぼんやりとしてしまい残念でした。
コミカルな演出はわかりやすくはありますが、人々が豊かになっていくコワさを、じわじわと魅せることも「劇」小劇場の空間であればできた気がします。
家族を通して描かれていることもあり、そのコワさと悲しさを、そのまま感じ取ることができるドライブのシーンが印象的でした。
面白かったです
舞台装置は簡素だったけど音響効果は凄かった。主役の亀田くんがまるでロシア人みたいで存在感がありました。昔の舞台と比べると信じられないくらいの役者ぶりでした。楽しい時間をすごせました。ありがとう。
満足度★★★★★
大変面白かった
演出家の指導が良かったのか俳優が良かったのか、いつもよりいっそう演技がよく、生き生きしていた。今後のご活躍をお祈りしています。
満足度★★★★
よかったです
こういった形の復讐に最初は疑問を持ちましたが、クレーレは自分が45年前にされた仕打ちをイルに体験させていたんですね。それを受け入れたイルとイルが絶命した時、彼女は45年前に死んでいた愛情を取り戻したのでしょうか。クレーレ役の方の演技がよかったです。
満足度★★★★★
思い出しても涙
ジャムセッション の芝居は3回目だけど、スピード感と動きのある演出で、
難しくて暗い作品を、一気に駆け抜けました。
人間の怖さの部分より、何より心を打ったのは、主人公の女性の人生の切なさ。
演じた斉藤さんが素晴らしく、気魄で舞台空間を支配していて、最後は本当に涙
してしまいました。
満足度★★★★
圧巻!
人間の欲が理性を凌駕してしまうという重い題材でありながら
テンポのいい演出で最後まで楽しく見られました。
とにかくクレーレ役の方の演技の迫力に圧倒されました。
かつての恋人の裏切りに対する執念を
コミカル、かつ情熱的、かつ不気味に表現していて見事でした。
恋人のイルがささやかながらも幸せに人生を送ってきた普通の男として
描かれていたので、
クレーレの裕福でありながら心の安らかさのない波乱な人生に振り回された姿が対極的で印象に残りました。
満足度★★★★★
現代的問題提起
この原作(1956年)を知らなかったが、西沢演出によりさまざまな現代的問題提起を感じた。地方の経済破綻、資本主義と拝金、(サブプライムローンなど)バブル経済、正義の暴力、ポピュリズムなどなど・・・ 普通は「不正義は金でも買えません」となるはずの市民の良心が正義のもとにイルを撲殺するという、難解な市民の感情を丁寧に表現して説得力があった。しかしイル(亀田真二郎)が市民や、家族に対してまでも疑心暗鬼になり、やがてさとりの境地になって覚悟を決め、彼の正義を守るという感情の変化がうまく表現できていたのに対し、市民の感情がシンプルな表現に留まっていたため、集会での市民の良心の呵責という迷いが充分表現できていなかったのが惜しまれた。
満足度★★★★
台本の威力。
パンフレットを読む時間がなくて、そのまま観劇に入りました。
内容が本当に面白くて、書いた人は凄いなあ…と思ってましたが、
原作はスイス人作家さんだったんですね。
どこか日本人が求めるものと違うはずです(笑)
大団円で終わるよりも、ああゆう人間の本質をむき出しにしたものの方が、
どなたかが書かれてましたが、印象には残りますよね。
面白かったです。
満足度★★★★★
後味
西沢作品は3つしか見ていないが、選んでいる原作がどれも後味が悪い。
でも印象が強く、しばらく余韻が残っている。単なるハッピーエンドはすぐに内容を忘れてしまうのに。
次の日もふと考えている。私がクレーレだったら、イルだったら、市民だったら。ああはしない・・はず。でもやっぱりその立場になったらそうせざるを得ないのだろうか。ヒューマニズムって何?一人が死んで皆が生きられるなら、それもヒューマニズムなのでは?ぐるぐる ・・・色々考えさせられます。
満足度★★★★★
架空と現実
西沢演出の舞台は、いつも新鮮な驚きを与えてくださる。今回もなんと役者の動かし方の巧いこと!装置は全くといってないのにもかかわらず、ギュレンと言う寂れた町を、観る者に描かせ、架空と現実を見事にマッチさせながら、
人々の苦悩、悲しみ、人間の弱さをあらわし、問題を投げかける。
斉藤範子さんの迫力と不気味さは、見事。亀田君も頑張っている。また、田中しげ美さんがいくつかの役で巧く雰囲気を出している。
満足度★★★★★
圧倒されました。
切なくて醜い人々の姿がいとおしく、静かに圧倒されました。思わず泣いてしまったのは感情が高ぶったとかではなく、ただただクレーレへの涙でした。もうクレーレの虜です。それと、いかにも翻訳物なのにそのハードルを全く感じさせない演技のうまさもすばらしいと思います。リピート決定。