億万長者婦人故郷ニ帰ル。 公演情報 JAM SESSION「億万長者婦人故郷ニ帰ル。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    情熱を持ってストイックに演劇に立ち向かう姿勢
     ほぼ何もない八百屋舞台で、小道具、大道具も最小限。役者さんの身体を使って劇的なうねりを生み出して行きます。走って、叫んで、スピード感に満ちたエネルギッシュな舞台でした。情熱を持って、ストイックに演劇に立ち向かう姿勢を感じました。

     ただ、初日だったのもあって、役者さんは全体的に段取りを守ることで精一杯のように見えました。どうしても許容できないミスがあり、ラストの盛り上がりを信じづらくなったのが残念。あと、選曲も少々奇抜すぎる気がしました。

     1990年代に入ってから、価値観がひっくり返るような事件が沢山起こっています。何を頼りに生きていけばいいのかを、誰もがはっきりとは答えられない世界になっている気がします。そんな中、資本主義社会において不可欠な「お金」に、興味や欲求が集中するのは自然なことだと思います。でも「お金」を中心にした(全てを金に換算していく)生活って、人間には合っていないと思うんですよね。お金と違って命は割り切れないことだらけですから。

     約50年前にスイス人が書いた『億万長者・・・』は、どちらかというと今の日本人にとっては縁遠い作品だと思います。でも、お金で正義が買えるのか、お金と命はどちらが大事なのかという命題をテーマにした今作は、今の日本で上演することに大いに意義があると思いました。

    ネタバレBOX

     クレーレから大金をもらえると見込んで、ツケで高価な物を買い始める市民たち。ボロだった衣裳に金の装飾が増えていきます。何も変わらないような素振りをしながら、羽振りが良くなっていく友人・家族に囲まれ、イルはどんどん追い込まれていきます。

     金に目がくらんだ市民たちは結束してイルを撲殺し、クレーレは自分を裏切った恋人への復讐を遂げます。動かなくなったイルの遺体へと手を伸ばす彼女は、「やっと彼を手に入れた喜び」と「永遠に彼を失った悲しみ」が入り混じった表情をしていました。

     「お金(通貨)」は世界中である程度のコミュニケーションを可能にしてくれますが、人間の心を幸せで満たしてくれる万能薬ではないということを、美しいラストシーンで声高に示してくれました。こうやって文章にしてしまうと陳腐なのですが、舞台では説得力のある密度の高い空間になっていました。

     市民たちはラスト近くで、とり憑かれたような表情を浮かべながら大量の紙幣を振りかざします。初日はそのシーンの前に誰かが札束を落としてしまい、ステージ上にお札が散らばってしまいました。その場ですぐに拾い集めてくれればよかったのですが、お札をどんどこ踏んで演技を続けてしまったのです。ミスだとわかってはいたものの、拝金主義をテーマにした作品においては致命的だったと思います。

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    2008/06/03 23:48

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  • まつきよさん
    わざわざコメントをありがとうございます。
    次回はレッドシアターですよね、楽しみにしております。

    2008/06/16 12:20

    ☆しのぶさん
    お忙しいところ、ご来場いただきありがとうございました。
    そして「観てきた!」のクチコミもありがとうございます!!!
    色々と落ち着かない点、アクシデント等をお見せしてしまいました(汗)
    せっかくご覧いただいたのに、やきもきさせてしまって申し訳ありません。
    JAMSESSIONの公演では、その「作品」を今上演する意味について、
    いつも深く深く考えさせられます。古今東西の作品を取り上げますが、
    万年を通じて人は変わらないものなのだなと、毎回痛感しております。
    これからも作品の本質を伝えていける上演を続けられたらと思っています。
    是非次回もご覧いただきたいと思っておりますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします!

    2008/06/15 11:28

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