トリコロールバッドエンド 公演情報 トリコロールバッドエンド」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.3
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  • 「怯えと忠実」を養う暗闇の力


    三本の短編集…。暗闇と照明を効果的に使い、コンクリート剥き出しのギャラリーを、高級ホテルさえ対抗できない「幻想空間」に造り替えた。また、その「空間性」を主張する台詞、演出、展開だから、狙った感じが全面に(違和感とともに)出ている。つまり、残念ながら、彼らには 担うべき力量がなかった、ということである。


    三話目は、1957年スプートニク2号の人口衛星発射実験で、「世界初 宇宙遊泳 犬」を果たしたライカ犬•クドリャフカの物語。「怯えと忠実」を、女の子の感性から描く。これは、クドリャフカが雌犬であることを把握した上の演出だろう。

    童話アニメーションの少年少女(二話目、三話目)だ。純粋な眼差しを失っていない。このテーマと、時間や空間が途切れ途切れ繰り返されるSFが、おそらく本舞台である。
    しかし、「力量不足」のため、「幻想空間」を語る資格は持っていない。関係性も一方向に留まり、短編とはいえ、暗闇の良さも映せていない。大川興業暗闇舞台『Show the Black』を観劇した観客からすれば、「サスペンスに利用しただけで、暗闇に膨らむ想像力を生かしきれてない」となる。高級ホテルのジャクジーを訪れ、幻想的ライトが照らす大人の雰囲気を楽しめても、その浴槽へ注ぐ「水」がなければ、元も子もないではないか。


  • 満足度★★★

    日本的
     幽けきもの・ことの息吹を感じたが、そのことが、どれほどの意味を持ち得るかについては、社会性をもっと持たせて描いて欲しい。Bキャストを拝見。

    ネタバレBOX

     赤 レスラーの墓と名付けられた作品だが、赤は無論、血の赤で、真っ暗な中、一戦を終えた後の男と女の痴話噺から始まる。真っ暗な中で、二戦目に挑もうとする男、一度着替えてシャワーを浴びたい女。でもその前に下着をつけたいのだが、真っ暗な中で中々見付からない。男は灯りを点けて探せばいい、と言うが、女は恥ずかしい、と暗い中で探しているが、男は女を求める。そうこうしているうちに、女は、痛いと言いだす。自分の腹に刃物を突き立てたのだ。真っ赤な血が流れ、シーツも床も血で覆われてゆく。女が自殺する原因として考えられるのは、男が、この女以外にも、過去関係を持っていた、ことを男の言葉の端に見付けたからだが、今時、その程度のことで死に急ぐ女など居る訳が無い。ましてや、其処迄他人を信じ、惚れる女も居まい。
     男はその後、改めて自分は殺人を犯していないと言う。但し、遺体遺棄は認めている。真っ赤なキャリーバックに遺体を詰め、ダムに捨てた、と言うのである。地獄からの審問官か、警察は、彼の罪或いは証言を立証しようとするが。
     いつの間にか、彼は、血の池地獄に落ちる。そこには、女が居て、男は女の遺体以外に男の死体も発見されたと告げられるが、その話が脈絡を持って完結するわけではない。総てがこのように曖昧模糊とした状態で、脈絡なく繋がれてゆく。これも闇のせいだとでも言うかのように。まあ、その後、邯鄲の話に通じる蜘蛛の糸の話に似せた話が出てきて、女は、男に自分の指を選ばせるが、それは、誘導されていて、結局は小指と決まっているのだ。例の赤い糸である。男が小指を掴むと、それは捥げて、女は小指を追い掛けて血の池の底深く潜ってゆき、いつの間にか二人は胎児になっている。それも双子で、どうやら良い所の子という設定である。双子のうち1人は死ななければならない、ということになっている。意識のよりはっきりした方が、先に世に出ることを選ぶが、逆にこの子が殺されることになる。
     白 見知らぬ、花が第2話だ。蜘蛛と病人のダイアローグだが、病人は蜘蛛を花に見立てて、美しいとおだて恋愛感情の如きものを芽生えさせた上で花弁占いを始める。八枚の花弁を好きから始めれば、最後は嫌いになるのは理の当然。然も実際に抜かれるのは、花弁ではなく、蜘蛛の足である。が、蜘蛛は、おだてられ、恋愛感情に似たものまで背負わされてすっかり病人の虜である。そうしておいて、蜘蛛の感情がマックスに達した所で、病人は、保養所を去るが、捨て台詞を残してゆく。曰く、蜘蛛は嫌い、と。厭らしいサディズムだ。
    青 クドリャフカ 第3話は宇宙飛行に出掛ける実験動物の話だ。様々なシチュウエイションが設えられている。火災発生、酸素途絶、Gの変動による不可測の事態等々、また無重力状態で食事を摂る実験なども。ヒトが実際に宇宙へ出て行く前に多くの動物たちの命で試されてきたのである。人々はこの事実について考えたことがあっただろうか? このようにとれば無論、レクイエムと読めないことはない。然し、作家の傾向から言えば、サディスム、マゾヒズムの傾向と見た方がより実像に近いかも知れない。だが、こんなことを書いたらサドに失礼だろうか? 少なくともマルキ・ド・サドには、アンチクリストとして自らを措定し、悪を以て神と対峙しようとした一種の爽快感さえ漂うが、今作に現れるサディスティックな傾向は、苛めの陰湿さと矮小さだけではある。その点が、如何にも日本的と言えようが。
  • 満足度★★★

    想像力という究極のスパイス
    90%ぐらい、完全暗転の中進む三部作。
    声とその声の奥行きしか感じ取れず、あとは観客の耳と想像にゆだねられた舞台。むしろ、その最後のスパイスが最大のスパイスになる舞台。
    ラジオドラマのようで、それ以上で、妄想力をフル回転させられてゾクゾクしました。

    ただ、内容はわりとアート寄りだったので、もう少し現実味があるほうが好みではありましが。暗闇→妄想させる演出、は好きでした。

  • 満足度★★★★

    【Aキャスト】観劇
    雰囲気を楽しみました。

    ネタバレBOX

    三編のエピソードはどれも良かったです。

    -赤- レスラーの墓  最近知り合った女性とホテルにいるときに勝手に自殺され、取り繕った男の悲劇。

    恥ずかしいから明かりをつけては嫌と、如何にも暗闇を使った意味のある出だしでしたが、実際は初めからドレスを着ていて、それはいいのですが、せめて衣擦れの音くらいはさせて気配を感じさせてくれても良かったのではないかと思いました。

    -白- 見知らぬ、花  怖い話。彼女との恋の行方を花占いならぬ蜘蛛占いをする話。蜘蛛がこの男に恋しているのが哀れで、かつ、この場合蜘蛛の足は八本という初めから花占いの結果が出ているのも痛ましい限りです。

    白と黒の衣裳をつけた女性が二人くっついて蜘蛛を表現したところが素晴らしかったです。昆虫なら内側の腕を隠せばいいなとアイデアをもらいました。

    -青- クドリャフカ  人間に可愛がられ、訓練され、何も知らずにロケットに乗せられ、初期の宇宙開発のために殉じた犬たちの話。行きっ放しのため安楽死させられたり、酸欠で死んだり、行きか帰りに熱で死んだり、そもそも無重力状態で生命が維持できるか試されたりと、今があるのは無邪気な犬たちのお陰です。

    しばらくして犬と気付きました。ワンワンは不要かなと思いました。

    暗闇の中だとつい目を閉じて耳だけで楽しもうとしがちですが、すると薄明かりになっていて様子が窺えることもあり、こりゃいかんと目を開けたりしました。

    暗闇、薄明かりの効果については、-赤-は最初だけ暗闇が有効、-白-は全編の薄明かりは有効でした。-青-は、暗闇と薄明かりのメリハリを付けることで地上と見えない宇宙が表現できていました。

    幕間に、気分の悪い人はいませんかと声を掛けて頂く配慮はありがたいのですが、そのまま静かに余韻に浸っていたいという気持ちもあります。大川興業のように、係員の方で暗闇でも見えるグラスを用意しておき、気分の悪くなった人はいつでも手を挙げて合図するというのが良いのではと思いました。
  • その終末に、光はあるかー。
    Aキャストを観劇。
    開演直前の前説で、開演を遅らせることを理由説明とともに謝罪なさったのは大変好印象。
    ただ、スタッフさんがダメです。役者が舞台上で前説してる最中に「お手洗いご案内お願いします!」とか大声で言ってたらいけません。スタッフは役者の邪魔しちゃダメ。支えないと。
    予約席なら、入口から入って見える方向に「予約席」と張っておかないと。どれだけの人が座ろうとしたことか。

    さて、本編。
    ほとんどが暗闇の中で進む、三本立て短編集。
    「-白-見知らぬ、花」は明るい場面が多いが、その他の作品は灯りがほとんどない。あったとしても、ぼんやり見える程度。
    暗所恐怖症の方は観劇できません。

    脚本や試みは大変興味深い。
    しかし、役者陣も脚本も演出も、改善の余地あり、といった印象。
    ほとんど見えないので、観客は想像力をもって見ることになる。そしてそれを促すかのように、劇中、様々なことが断定されることはない。

    三編それぞれが、バッドエンドであり、ハッピーエンド。
    それは作品をどのキャラクター視点で見るかによって変わる。観客がどう捉えるか、それも観客に委ねられる。
    私は全体的にバッドエンドと捉えた。

    こういった分野の観劇は初めてだ。
    見終わった後も、不思議な感覚に包まれたままだ。
    喜怒哀楽とか、そんな単純な感情ではない。
    好きな人は、すごく好きな作風なのではないだろうか。

    私の結論としては、
             赤→光なし
             白→光あり
             青→光あり かな。

    ネタバレBOX

    『-赤-レスラーの墓』
    一言で表すと「世にも奇妙な物語」風(と私は捉えた)。
    これ、何か無限ループしそう。
    男の「選ぶときは小指を選ぶんだよ、生まれる時は後から生まれるんだよ。」が印象的。
    いきなりナニが終わった後、というのは驚いたが、暗闇というのが自然に受け入れられる。
    そして、それが続くことで「暗闇」で進む物語ということが理解できる。
    「いたい」と「したい」の言葉遊びには笑うしかない。

    『-白-見知らぬ、花』
    彼女は蜘蛛なのか、花なのか。途中、「あれ、蜘蛛だったよな?」ってなる。
    青年とその想い人にとってはハッピーエンド、蜘蛛から見たらバッドエンド。ものすごーくバッドエンド。
    青年が「蜘蛛は嫌いじゃないよ、大嫌い。」と去っていったラストは「えぇ!?」ってなった。

    『-青-クドリャフカ』
    これは光ある結末。それは人間に都合の良い解釈かもしれませんが…。
    犬の言葉を幼い無垢な子どもの言葉にすることで、より残酷さを増す。
    私は三編の中ではこれが一番好きだ。
    「お前は優秀じゃない、褒められたくて頑張ってただけだよな」の言葉は涙を誘う。
    優秀であるが故に、人類の進歩の礎となった犬。人類にとっては大きな一歩だが、クドリャフカに待つのは確実な死。
    殺されるために訓練する、この矛盾は何だ。
    クドリャフカの冥福を祈る。

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