「怯えと忠実」を養う暗闇の力
三本の短編集…。暗闇と照明を効果的に使い、コンクリート剥き出しのギャラリーを、高級ホテルさえ対抗できない「幻想空間」に造り替えた。また、その「空間性」を主張する台詞、演出、展開だから、狙った感じが全面に(違和感とともに)出ている。つまり、残念ながら、彼らには 担うべき力量がなかった、ということである。
三話目は、1957年スプートニク2号の人口衛星発射実験で、「世界初 宇宙遊泳 犬」を果たしたライカ犬•クドリャフカの物語。「怯えと忠実」を、女の子の感性から描く。これは、クドリャフカが雌犬であることを把握した上の演出だろう。
童話アニメーションの少年少女(二話目、三話目)だ。純粋な眼差しを失っていない。このテーマと、時間や空間が途切れ途切れ繰り返されるSFが、おそらく本舞台である。
しかし、「力量不足」のため、「幻想空間」を語る資格は持っていない。関係性も一方向に留まり、短編とはいえ、暗闇の良さも映せていない。大川興業暗闇舞台『Show the Black』を観劇した観客からすれば、「サスペンスに利用しただけで、暗闇に膨らむ想像力を生かしきれてない」となる。高級ホテルのジャクジーを訪れ、幻想的ライトが照らす大人の雰囲気を楽しめても、その浴槽へ注ぐ「水」がなければ、元も子もないではないか。