トリコロールバッドエンド 公演情報 劇団MAHOROBA+α「トリコロールバッドエンド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    日本的
     幽けきもの・ことの息吹を感じたが、そのことが、どれほどの意味を持ち得るかについては、社会性をもっと持たせて描いて欲しい。Bキャストを拝見。

    ネタバレBOX

     赤 レスラーの墓と名付けられた作品だが、赤は無論、血の赤で、真っ暗な中、一戦を終えた後の男と女の痴話噺から始まる。真っ暗な中で、二戦目に挑もうとする男、一度着替えてシャワーを浴びたい女。でもその前に下着をつけたいのだが、真っ暗な中で中々見付からない。男は灯りを点けて探せばいい、と言うが、女は恥ずかしい、と暗い中で探しているが、男は女を求める。そうこうしているうちに、女は、痛いと言いだす。自分の腹に刃物を突き立てたのだ。真っ赤な血が流れ、シーツも床も血で覆われてゆく。女が自殺する原因として考えられるのは、男が、この女以外にも、過去関係を持っていた、ことを男の言葉の端に見付けたからだが、今時、その程度のことで死に急ぐ女など居る訳が無い。ましてや、其処迄他人を信じ、惚れる女も居まい。
     男はその後、改めて自分は殺人を犯していないと言う。但し、遺体遺棄は認めている。真っ赤なキャリーバックに遺体を詰め、ダムに捨てた、と言うのである。地獄からの審問官か、警察は、彼の罪或いは証言を立証しようとするが。
     いつの間にか、彼は、血の池地獄に落ちる。そこには、女が居て、男は女の遺体以外に男の死体も発見されたと告げられるが、その話が脈絡を持って完結するわけではない。総てがこのように曖昧模糊とした状態で、脈絡なく繋がれてゆく。これも闇のせいだとでも言うかのように。まあ、その後、邯鄲の話に通じる蜘蛛の糸の話に似せた話が出てきて、女は、男に自分の指を選ばせるが、それは、誘導されていて、結局は小指と決まっているのだ。例の赤い糸である。男が小指を掴むと、それは捥げて、女は小指を追い掛けて血の池の底深く潜ってゆき、いつの間にか二人は胎児になっている。それも双子で、どうやら良い所の子という設定である。双子のうち1人は死ななければならない、ということになっている。意識のよりはっきりした方が、先に世に出ることを選ぶが、逆にこの子が殺されることになる。
     白 見知らぬ、花が第2話だ。蜘蛛と病人のダイアローグだが、病人は蜘蛛を花に見立てて、美しいとおだて恋愛感情の如きものを芽生えさせた上で花弁占いを始める。八枚の花弁を好きから始めれば、最後は嫌いになるのは理の当然。然も実際に抜かれるのは、花弁ではなく、蜘蛛の足である。が、蜘蛛は、おだてられ、恋愛感情に似たものまで背負わされてすっかり病人の虜である。そうしておいて、蜘蛛の感情がマックスに達した所で、病人は、保養所を去るが、捨て台詞を残してゆく。曰く、蜘蛛は嫌い、と。厭らしいサディズムだ。
    青 クドリャフカ 第3話は宇宙飛行に出掛ける実験動物の話だ。様々なシチュウエイションが設えられている。火災発生、酸素途絶、Gの変動による不可測の事態等々、また無重力状態で食事を摂る実験なども。ヒトが実際に宇宙へ出て行く前に多くの動物たちの命で試されてきたのである。人々はこの事実について考えたことがあっただろうか? このようにとれば無論、レクイエムと読めないことはない。然し、作家の傾向から言えば、サディスム、マゾヒズムの傾向と見た方がより実像に近いかも知れない。だが、こんなことを書いたらサドに失礼だろうか? 少なくともマルキ・ド・サドには、アンチクリストとして自らを措定し、悪を以て神と対峙しようとした一種の爽快感さえ漂うが、今作に現れるサディスティックな傾向は、苛めの陰湿さと矮小さだけではある。その点が、如何にも日本的と言えようが。

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    2013/12/09 03:13

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