一九一四大非常 公演情報 一九一四大非常」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.9
1-7件 / 7件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    凄まじかったの一言
    超お薦め

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    何本か前、やはり炭鉱を題材にした「史実」を再現した舞台があったが、今作もドキュメント寄りの舞台。もっともいつもの桟敷童子色は(いつも以上に?)炸裂。客演を合せた陣営も素晴らしい。

    ネタバレBOX

    事実(史実)の重さ、とは言葉ではよく言われるが、そこには事象に対する解釈がある。人の命の「重さ」に無感覚である人は、人死にのある物語に「ドラマティック」を感じはしないかも知れない。体験を重ね想像力を鍛え、痛みを経た人間が(基本的に痛みを描く)ドラマを感覚し、価値を見出すのかも知れぬ。が・・・未体験の世界へ誘い「感じる」事を余儀なくさせる演劇の力を信じたくもある。血反吐を吐く人生から「何か」を見出した人物の残像が、いつかその人を救うかも知れない。
    ラストに繋がるシーン、自らが生きようともがいた二人が(結果的に)一つの小さな命のために生きた事となる。その苦闘を知る由も無い「後の者」が、その小さな命を育んで行く。大きな摂理。
    かと思えば、広大無辺の宙から見れば人類はいずれ消え去る小さく無意味なもの・・との世界観も人間は手にしている。虚無の地平から「何か」を見出そうとする人間のドラマもドラマたり得るのであり、死を相対化しても尚人間に残された「価値」を見出そうとする営為も、ある。無い頭で考え過ぎた。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/11/30 (日) 13:00

    座席1階

    壮絶、苛烈な演劇だ。桟敷童子による九州の炭鉱を舞台にした傑作は多いが、その迫力や鬼気迫る俳優陣の演技、そして苦しさをまとった人間関係など、たぶん最高傑作と言えるのではないか。

    「非常」というのは炭鉱事故のことで、大非常だから大事故という意味。舞台は福岡県方城町の方城炭鉱。運営会社の三菱炭鉱が発表した死者数は667人だが、当時炭鉱労働者は鉱山周辺にある多数の派遣企業から出されたり、身元がはっきりしない人たちも多く集まっていて、犠牲者数は1000人を超えるともされる。会社側が閉山を恐れて発表した死者数を絞ったと舞台では描かれている。多くの遺体は今も地下に埋もれたまま。冒頭、骨をはむという情景が描かれるのは、死者の尊厳や存在への強烈なレクイエムとして象徴的なシーンだ。
    顔も腕も足も石炭で真っ黒に汚れている。役者たちの姿は、冒頭からかなりの迫力がある。多くの人間ドラマが約2時間の舞台に詰め込まれているが、やはり出色はもりちえ演じる坑内奥深くから脱出できたたった一人の女性炭鉱労働者だ。桟敷童子の看板である彼女の存在はゆるぎないものがあるが、今作ではその重み強烈に発揮されている。

    桟敷童子の看板である舞台美術は今回、派手さはないもののお約束の出来栄えだ。特徴的な演出が各所に見られ、感動する。
    この演目は見ないと損する。価値ある一作だ。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    流れるのはベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章。どうしようもない宿命のレールの上、粛々とそれを受け入れるしかない人間の群れ。もう変えようのない過去の人々。今それを振り返っている自分も先の世界から見れば同じ存在。逃れようのないレールの上をただ黙々と歩んでいく恐怖。どんどんどろろ、どんどろろ。

    1950年代に中東やアフリカで巨大油田が発見、石油の低価格での提供が可能となり、1962年に日本でも石炭から石油へとエネルギー政策が転換。(第三次エネルギー革命)。「黒いダイヤモンド」と称された石炭の時代は終焉。用が失くなれば邪魔なゴミ。それが時代の宿命。

    福岡県田川郡にある三菱方城炭鉱は三菱鉱業の主力鉱として栄えた。昇降機で地下270mまで縦坑を降り、そこから横に延びた坑道を掘り進めていく。270mは50階建て高層ビルの高さ。その深さの地底に推定1249人が働いていたと言われる。1914年(大正3年)12月15日午前9時40分、方城大非常(三菱方城炭坑ガス大爆発)。抗内用のトーマス式安全灯に気密不充分の物があり、侵入した石炭粉が引火したものとされる。生存者は僅か18名。

    炭鉱夫は身体中を黒く汚す為、何役も兼ねる人は脚にあらかじめ汚してあるシアータイツを着用。顔を汚したり洗ったり大変な現場だ。

    小学校の教師役板垣桃子さん。梁瀬農園の娘!チャーミングな眼鏡にのんのような髪型、学校の人気者の可愛らしい先生。

    余所者の稲葉能敬氏と妊婦の長嶺安奈さん夫婦。
    長嶺さんの妹の大手忍さんと許婚の藤澤壮嗣氏。
    瀬戸純哉氏ともりちえさん(実際の夫婦!)は籍は入れていない。二人共腕が立つ。
    柴田林太郎氏と川原洋子さん夫婦と姪の井上莉沙さん。

    鈴木めぐみさんも流石。夏蜜柑を掻き集める。

    炭鉱会社の救助隊中野英樹氏は佐藤允とRINGSの成瀬昌由を足したような苦味。三人の息子が炭鉱に降りている山本あさみさん。半狂乱の母親を収める為、「自分が必ず息子さん達を救出します。」と約束してしまう。気持ちには気持ちで応えるしかない。一酸化炭素の充満する地獄に夏蜜柑の皮を咥えて降りて行く。最早理屈じゃ何も出来ない。神頼みだ。

    MVPは中野英樹氏、山本あさみさん、もりちえさん。無論、集団芸術として皆で成立させているのは承知。
    中野英樹氏の抱え込んだ無数の痛みと山本あさみさんの無理を承知の足掻き、骨噛み、もりちえさんのいぶし銀の生きる術。

    この劇団は皆にどうにか観て貰いたいが、表現しようとするものが文学の地平の為、人によっては消化し辛いだろう。熊井啓映画の貫禄。伝えようと試むものがデカ過ぎる。今こんな劇団があってこんな役者達がこんなことを訴え続けている事実。これは黒澤映画と同じできちんと評価し後世に残さないといけない。こんなもん再現不可能。今、観るしかない。後の世にこんな劇団があったなんて聞かされてもしょうがない。
    「ご安全に。」

    ネタバレBOX

    初めて坑道に降りた井上莉沙さんが地獄でおかしくなる。真っ暗闇の坑内で「星が見える!」と繰り返す。皆、ガスを吸って頭がおかしくなったといなす。だがその死の瞬間、坑内は星空でまみれる。余りにも美しい光がそこらここらで発光。この為だけの舞台美術が尊い。富野由悠季ISM。無数の星空に囲まれて死んでいく。

    自分がこの作家の作品にのめり込むのは白土三平の血が流れているからだと思った。人間は皆平等、生命に貴賤などはない。生きることはそもそもが素晴らしい。現実には色々な物事に阻害されてその素晴らしさを見失ってしまう。汚れで覆われてしまう。だが生命の本質は何一つ変わりはしない。生きていることを素晴らしいと感じ取れる毎日こそが幸福。どうにか創意工夫してその毎日を獲得して欲しい。その生命への真っ直ぐな姿勢こそが正しさ。塗りたくられた泥を剥がし、洗い落とし、輝かせないと。

    ※『カムイ伝』にて百姓の正助と非人のナナは恋人同士だった。百姓と非人の分断を謀る支配層の企みによってナナは百姓により輪姦され自殺しようとする。裸になってナナを説得する正助。正助は村人の前で人間は皆平等であることを宣言する。身分なんて本当は何処にも存在しない。そして非人のナナを愛していることを。
    これを当時「ガロ」の連載で読んだ宮崎駿は東映動画の社内にこのページを貼り出す程感動した。自分達がやるべき仕事とはこれである、と。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    やはり、凄いです。劇団桟敷童子、そして東憲司さん。
    劇場に入ったとたん、舞台装置に気持ちが高鳴り、約2時間の上演時間の最後まで目は釘付け、心が揺さぶられました。
    シリーズものと銘打ってないけれど、1年前の『荒野に咲け』、半年前の『蝉追い』、今作がつながり、プラスアルファの余韻を味わいました。
    役者陣はパワー全開で、劇団員の方も客演4人の方も、スキなし。人間の強さ、切なさ、そして少しの希望を感じさせていただきました。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    よく毎度毎度これほど高水準のドラマ構想と舞台化、そして演技のパフォーマンスができるものだと感嘆する。それにしても、大混乱でてんてこ舞い状態の現場に下手に偉いさんが行ってはいけないな。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    初日観劇。超面白い!お薦め。
    タイトルは、ちょっと調べれば分かる大惨事。前作との関りもあるが、別に観ていなくても十分解る。事実(記録)を準えた展開であるが、その奥に隠された事(記憶)を虚実綯交ぜにして描いた骨太作。「一九一四大非常」は、111年後の「ニ〇二五大傑作」だ と思う。

    物語の展開は、或る有名な洋画を連想する。いや ラストシーンを考えたら…感動で心魂震える。少しネタバレするが、今まで観てきた桟敷童子公演に比べると ラストの舞台装置によるインパクト(ダイナミックさ)は小さい。その代わり、劇中で鏤められる印象そして余韻ある演出は、瞬時にその情景を表象する。

    場内が現場を表し、役者陣の迫真ある演技が緊張感と緊迫感を漂わす。勿論 衣裳やメイクが当時の凄惨さを物語る。また状況や情況が刻々と伝わるよう、日にちや時間を繰り返し言う。現代と地続き、そこで何を伝えるのかという社会性は、国家(戦略)に翻弄される虐げられた人々の思いではなかろうか。
    (上演時間2時間 休憩なし) 追記予定

このページのQRコードです。

拡大