一九一四大非常 公演情報 劇団桟敷童子「一九一四大非常」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/11/30 (日) 13:00

    座席1階

    壮絶、苛烈な演劇だ。桟敷童子による九州の炭鉱を舞台にした傑作は多いが、その迫力や鬼気迫る俳優陣の演技、そして苦しさをまとった人間関係など、たぶん最高傑作と言えるのではないか。

    「非常」というのは炭鉱事故のことで、大非常だから大事故という意味。舞台は福岡県方城町の方城炭鉱。運営会社の三菱炭鉱が発表した死者数は667人だが、当時炭鉱労働者は鉱山周辺にある多数の派遣企業から出されたり、身元がはっきりしない人たちも多く集まっていて、犠牲者数は1000人を超えるともされる。会社側が閉山を恐れて発表した死者数を絞ったと舞台では描かれている。多くの遺体は今も地下に埋もれたまま。冒頭、骨をはむという情景が描かれるのは、死者の尊厳や存在への強烈なレクイエムとして象徴的なシーンだ。
    顔も腕も足も石炭で真っ黒に汚れている。役者たちの姿は、冒頭からかなりの迫力がある。多くの人間ドラマが約2時間の舞台に詰め込まれているが、やはり出色はもりちえ演じる坑内奥深くから脱出できたたった一人の女性炭鉱労働者だ。桟敷童子の看板である彼女の存在はゆるぎないものがあるが、今作ではその重み強烈に発揮されている。

    桟敷童子の看板である舞台美術は今回、派手さはないもののお約束の出来栄えだ。特徴的な演出が各所に見られ、感動する。
    この演目は見ないと損する。価値ある一作だ。

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    2025/11/30 17:57

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