マライア・マーティンの物語 公演情報 マライア・マーティンの物語」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
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  • 実演鑑賞

    1827年イギリスで実際に起きた事件は、幸せそうだから、という理由で電車で突然刺されてしまうかもしれない現代と確実に繋がっている。凄惨な人生の淵に立ち、彼女は、彼女たちはまさしく今、私達に問うている。「あなたはこれがみたかったんでしょ?」と。「こうなるのを待っていたんでしょう?」と。

    以下ネタバレBOXへ

    ネタバレBOX

    不幸をたしかに描きながら、しかしその人生の最後だけがまるで全てであるかのような描き方はせず、抵抗と連帯示す女性たちの姿が描かれていた。
    彼女たちは赤い炎を宿した鋭い眼光で世界を睨んでいた。終わらないフェミサイドを、そして女性が死してなお不幸な物語として消費されることを。泣きながら見たけど、私のその涙の成分もやっぱり怒りや悔しさだった。いつからだろう。女性がただ不幸になっていくだけの、その人生が悲劇に回収されてくだけの物語を受け付けなくなったのは。でもこの作品は全く違った。戯曲も演出も俳優も凄まじかった。

    ※”満足”してはならない気がするので、満足度の記入は控えます。しかし、できる限り多くの人には観てほしい。ただただ凄まじい演劇だった。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/05/21 (水) 14:00

    1日の間を空けて2度目の鑑賞。この回も好評につき最前列にミニ椅子を増席とのことで、やや腰痛に不安を抱きつつも最前列へ。

    On7というのは5つの老舗劇団(青年座・文学座・俳優座・演劇集団円・テアトル・エコー)に所属する7人の同年代の中堅女優により「自分たちがいま演りたい芝居をやろう」と2013年に結成されたユニットで、私はその第0回公演(プレ旗揚げ公演)「Butterflies in my stomach」からずっと観続けている。受け身ではなく能動的に、情熱的に、胸が高鳴るような舞台を創造するというコンセプトだけに、シリアスなものからコメディ、屋外パフォーマンスとさまざまな形で密度の濃い上演を続けている。たださすがに結成12年ともなると自劇団への出演や家庭の事情等で全員が揃うことが難しくなったこともあり、今回は7人中5人に客演2人を迎えて(しかも1人は初の男優)の公演となっている。
    が、今公演は正直に言って、役者陣は紛れもなく熱演であるものの、(「観たい」に書いている危惧が現実のものとなっており)寺十吾の演出のまずさから、第1回公演「痒み」に次いで残念な作品となっていた。

    (以下、ネタバレBOXにて…)

    ネタバレBOX

    舞台中央に2段となったステージが組まれ、その後ろの壁には赤い屋根の納屋が描かれた幕が下がっている。

    開演すると暗い中で、その幕とステージの間から一人の女(マライア・マーティン)が立ちあがり、ステージにのぼって「私が死んでからもう1年になりますが、まだ誰も私を見つけていません」と語りだす。そして舞台は彼女が10歳の時にこの村の4人の少女たちの「チャレンジ・クラブ」の加わるよう誘われるところに遡り、彼女の人生と友人たちとの関わりが描かれ、やがて3人目の恋人に騙されてピストルで撃たれ、チャレンジ・クラブの友達からもらったハンカチで首を絞められ、最後にはスコップで頭を叩き割られる。

    さて、演出のまずさといったのは、まず5人の女優たちにほとんどのべつまくなしに大声で叫ばせているためにストーリーのメリハリに欠ける。例えばさくらんぼ祭りの楽しい思い出などは日常の生活の苦しさと好対照に描けるはずなのに、不十分でその対照の中から醸し出される厳しさが迫ってこない。

    レディ・クックなどの上流階級の様子なども、底辺の庶民の暮らしの厳しさとの対照を狙ったのかもしれないが、カリカチュアされすぎて、作り物めいた偽物臭さしか感じさせない。同じく上流階級の生活を戯画的に描いたスタンリー・キューブリック監督の「バリー・リンドン」を観てみるがいい(因みにこの映画はスタンリー・キューブリックが自作の中で唯一撮り直す必要性を感じないと言った作品だ)。

    もうひとつ例をあげれば、キリスト教の教義におびえるテリーザ以外の女性は性的にある程度の奔放さを感じさせるが、その対比もうまくいっていない。

    これらのことは脚本が悪いのではなく、演出次第でくっきりさせれるものだ。女性たちの心の奥にある懊悩や苦悩といったものが(女優たちの熱演にも関わらず)胸に迫ってこないのだ。女性が書いた戯曲でもあり、むしろ女性に演出を依頼した方がよかったのではないか。実名をあげて申し訳ないが、劇団チョコレートケーキのメンバーから「吉水姉さん」と呼ばれる吉水恭子(風雷紡)や元・れんこんきすたの奥村千里あたりだともっと女性の心情に分け入り、心の襞を含めてこの悲劇を描き出せたのではないか。

    余談ながら(「観たい」にも書いているが)つい最近も英国の博物館で人間の皮で装丁された本が見つかったとBBCが報じている。この博物館には同じ人間の皮で全面的に装丁された人皮装丁本があったが、今回はその余った皮を背表紙などに用いたものが見つかったのだという。これらの本の装丁に使用されているのが「赤い納屋殺人事件」の犯人ウィリアム・コーダーから採取された皮膚だという。今作品に描かれているように、ウィリアムは恋人だったマリア(マライア)・マーティンを殺害し、遺体を赤い屋根の納屋の下に埋めて、マリアと駆け落ちしたと見せかけて逃亡したという。翌年逮捕されたウィリアムに下された判決は死刑とその後の解剖だった。当時の犯罪者にとって解剖は死刑より恐ろしいことだったという。200年間も身の毛もよだつ恐ろしい話として語り継がれるようになった事件の顛末をまとめた本の装丁にその皮膚を使った訳だ。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/05/19 (月) 19:00

    待ちに待ったOn7の公演だけに(指定席にも関わらず)開演の1時間も前に劇場に到着。最前列で鑑賞。
    詳細な感想は2回目の観劇後に…。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    観られて良かった。女性の集団であるOn7が「ある女」の物語を演る、という時点でイメージの幅が狭まるのだが、「客演を招いてでも」やりたい演目かと普段以上の期待もあって急遽席を確保して出かけた。
    つい先日「マグダレンの祈り」(2002)なる映画をたまたま観て、女性が「性」関係において不当に貶められてきた歴史の断面を見せつけられたのだったが、逞しく生きる女性らの姿を通してこれが描かれる。とは言え敗北と紙一重である。植民地の歴史を持つ日本での在日の境遇も、アメリカにおける黒人、また先住民、日本にもあるそれら被虐の者たちの「声にならない叫び」に共鳴する感性は、多分映画に育てられたのだろう。
    本作もその系譜と言える作品だが、冒頭から見入らせる。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/05/22 (木) 14:00

    オンナナの第2回公演を見ている。「その頬、熱線に焼かれ」という原爆少女の物語で、静かに進む舞台なのだが内側からわき出るような熱量があった。今作はその熱量が激しく舞台に放射されている。このメンバーだからこそこれだけの熱量をもって完遂できた舞台であったのではないか。オンナナにこの戯曲を勧めた小田島則子の慧眼に感服する。

    冒頭、薄暗い舞台で主演女優の表情もみづらい場面から始まる。自分は1年前に男に惨殺されたが、まだ遺体は見つかっていない、という趣旨のモノローグだ。舞台は一貫して暗いモノトーンを基調とした演出で進む。舞台転換のタイムラグを感じさせず、息をつくまもなく続いていく演出はさすがに寺十吾。見事だった。
    物語は、英国の田舎の村の幼なじみたちの生活から、時間を追って冒頭のシーンにつながっていく。貧しい家の女性たちがどのような苦難を味わっているか、あるいはその苦難に付け入るようにしてどう自分を売っていくかという恐ろしさすら感じる日常が展開され、見ていて少し苦しくなる。しかし女たちは明るく、歌い、踊る。この落差も、客席の苦しさを深めている。

    物語の結末も苦しいものだが、次の日に向かっての希望のようなものも感じた。演じきった者たちへの熱い拍手は、戯曲の難しさを自分の力に変えて全力で、全身で客席に放射した「やり切った感」への拍手だったと思う。それぞれの出身劇団では見られないような、「演劇をやっていてうれしい」という素直な胸の内への拍手でもある。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    On7らしい、小声で言えばえげつない公演だが、最近珍しくなった熱演・力演・の女優大競演の奮闘公演である。
    19世紀初頭のイングランドの田舎の下層農民社会の女たちの物語である。先年も「ウエルキン」という面白い作品を見たが、こちらは純農村社会だから暗黒度も半端でない。大きくは男女差別、社会層差別だか、全く救いがない。そこに絞って、納屋で殺され、埋められて何ヶ月も発見されなかった若い農婦(吉田久美)の生涯の一部始終が死者の語りで語られる。
    On7のメンバーに客演の有川まことが一人男優。すべて女優の役をメンバー代わり合って演じる。
    いいところ。まず、演出の寺十吾。この人の作品はアイルランドの芝居を幾つか見たが、お得意の暗黒ものである。原題がマライア・マーティンのバラードとなっているように、マライアを巡る被虐・加虐の短いシーンを集めて一本にしている、もう少し明かりが欲しいと思う暗い照明の舞台でギリギリ展開する。幼なじみという五人の女どもの友情や、相互援助や妊娠心得、男どもへの愛情や信頼などはたちまち吹き飛ばされる。テンポはこういう暗い話を粘ることも笑いでごまかすこともなく、ものすごく早い。民藝だったら3時間は越えようかという物語を二時間に納める。押さえるところは上手く押さえていて、陰惨な一本調子の時代物の農村実話を持たせてしまう。それが、この話、今のジェンダー騒ぎや就労問題に繋がっていることも思い出させる。考えてある
    次ぎ、俳優陣は競い合って熱演だが、これをオン7でやるというだけで意図は出てしまう。ちょっと作品選択がミエミエだったのが残念。
    背景音楽は電子音楽を選曲で使っていて、それはそれで似合っているのだが、せっかくなら作曲して貰ったら?あるいは使えなかったのかも知れないが、見る方は安易さを感じた。
    昨晩は満席だったが、後は空席多いとのこと。これが50席の劇場で見られるならお得。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/05/19 (月) 19:00

    On7ならではの、戯曲選びからスタッフ等好きな方々が好きなお芝居を作っている感がすごく、だから伝わってくるものも半端なく良い。
    とてもつらい内容なんだけど、マライアの物語を知ることによって「ひとりじゃない」ことを知り、怯えているだけでは変わらない!からのラストがまた良い!!

    ネタバレBOX

    後ろに座っていた男性の「ふっ」的な笑いが、あぁそこで笑っちゃうんだ。女はそんなところで笑うことはないよ。
    なんて思ってしまったり。…
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/05/19 (月) 14:00

    200年前のイギリスで実際に起こったセンセーショナルな殺人事件を舞台化した作品。
    虐げられた女たちの、泥にまみれたエネルギーに圧倒されまくった120分。
    理不尽な社会に対するささやかな復讐が、この理不尽な手段で何が悪い?!
    社会や戦争、そして男どもを羽交い絞めにするような作品を紡ぎ出すOn7に相応しい
    愛と怒りに満ちた舞台だった。

    ネタバレBOX

    冒頭から、血にまみれたマライアが客席に向かって訴える。
    「私が死んでからもう1年になりますが、まだ誰も私を見つけていません」
    そして自分を騙した男が拳銃で自分を撃ち、まだ息のあった自分をさらにスコップで
    殴ってとどめを刺したのだと語る。
    そんな衝撃的な最期を遂げたマライアにも、貧しいながら明るい少女時代があった・・・。

    領主と、その土地を借りている農場主、彼らの権力の下で食うや食わずの暮らしを
    している村が舞台。
    仲良し5人娘は夢を見ながらも現実に流され受け容れて、食べるために売春まがいのこと
    をして不本意な妊娠を繰り返したりしている。
    その中でマライアは農場主の息子トマスと恋に落ち、妊娠するも赤ん坊は死んでしまい、
    トマスも不慮の事故で死んでしまう。
    次の恋の相手はその死んだトマスの弟ウィリアム。
    結局このウィリアムが、自分の子どもを産んだマライアを騙して納屋に呼び出し、
    殺してしまうのだ。

    貧困から抜け出すには金持ちとの結婚しかないという選択肢の無さ、その結婚を
    周囲の誰も認めないという行き止まりの中で、信じた男に裏切られたマライア。

    彼女の人生の中で救いとなったのは父親の再婚相手アンだ。
    ふたりが初めて顔を合わせるシーンは、よくある継母と娘の凡庸なぶつかり合いでは
    なく、緊張しつつも互いを尊重して素直に認め合う、この作品の中で一番温かく安心
    できるシーンだった。
    この継母アンが「夢にマライアが出てきてここにいると言った」と赤い納屋を訪れる。
    何度も同じ夢をみて、ついにアンは変り果てたマライアを発見する。

    そして残された仲良し4人と継母アンは、意を決して復讐を果たす。
    客席のすぐ近くで、ゆらゆらと明々と彼女らの顔を照らし出す炎。
    自分たちの正義を信じ「こんなのおかしい!」と行動を起こした5人の表情が清々しい。
    有頂天でも、絶望しても、彼女たちのエネルギーの凄まじさは、令和のひ弱な人間を
    圧倒する。
    あれは豊かな暮らしの中では決して生まれないエネルギーだ。

    極秘出産したのち、次第に理性を失っていくマライアがリアルで怖いほど。
    復讐するのだ、と皆を説得するセアラには、舞台全体を揺さぶる強さがあった。
    アンは、たとえ憎まれ口をきいているときでも、その表情は慈愛に満ちている。

    200年経って、私たちの時代はマライアの生きた頃から変わっただろうか。
    厳然と残る階級や因習や誰が作ったのかわからない”常識”に縛られる社会は、
    進化どころかますます縛りがきつくなっているように感じる。
    友達だって、極秘出産を助けに来てくれたり、復讐してくれたりはしないだろう。
    そしてもちろん、私の死体を見つけてくれる人もいない。
    それだけは、マライア良かったね、と思う。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    遊び心無しのガチ作品。全体的に照明を落として繰り広げられるこの作品は自分好みかな。個人の好き嫌いはあるにせよ、いままで観てきた作品と類似するものが無い為、一度は観てみないと。

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