マライア・マーティンの物語 公演情報 On7「マライア・マーティンの物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/05/22 (木) 14:00

    オンナナの第2回公演を見ている。「その頬、熱線に焼かれ」という原爆少女の物語で、静かに進む舞台なのだが内側からわき出るような熱量があった。今作はその熱量が激しく舞台に放射されている。このメンバーだからこそこれだけの熱量をもって完遂できた舞台であったのではないか。オンナナにこの戯曲を勧めた小田島則子の慧眼に感服する。

    冒頭、薄暗い舞台で主演女優の表情もみづらい場面から始まる。自分は1年前に男に惨殺されたが、まだ遺体は見つかっていない、という趣旨のモノローグだ。舞台は一貫して暗いモノトーンを基調とした演出で進む。舞台転換のタイムラグを感じさせず、息をつくまもなく続いていく演出はさすがに寺十吾。見事だった。
    物語は、英国の田舎の村の幼なじみたちの生活から、時間を追って冒頭のシーンにつながっていく。貧しい家の女性たちがどのような苦難を味わっているか、あるいはその苦難に付け入るようにしてどう自分を売っていくかという恐ろしさすら感じる日常が展開され、見ていて少し苦しくなる。しかし女たちは明るく、歌い、踊る。この落差も、客席の苦しさを深めている。

    物語の結末も苦しいものだが、次の日に向かっての希望のようなものも感じた。演じきった者たちへの熱い拍手は、戯曲の難しさを自分の力に変えて全力で、全身で客席に放射した「やり切った感」への拍手だったと思う。それぞれの出身劇団では見られないような、「演劇をやっていてうれしい」という素直な胸の内への拍手でもある。

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    2025/05/22 19:44

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