実演鑑賞
満足度★★★
2022年に新型コロナウイルスの影響で中止となったためリベンジ公演となった本作は、風雷紡「よど号」ハイジャック事件を題材にしたスリリングな密室劇である。複数の勢力の利害及び影響関係が、それぞれの視点から取り上げられて見事なドラマへと編み上げられていた。
実演鑑賞
満足度★★★★
実際の事件をもとにしているため展開は想像がつくものの、人物の描き方によって、正義とはなにかや、後進を育てる立場のあり方など、ある程度の年齢や立場となった大人の迷いや覚悟が浮き彫りになっていきます。ハイジャックという特異なシチュエーションだからこそ、おそらくだれしもがいつか社会のなかでぶちあたる、育てられるものから、育てるものへの移行の困難が感じられたようでした。
実演鑑賞
満足度★★★
家族を母体として劇団活動を続けている風雷紡。2007年の結成以降、津山事件、帝銀事件、あさま山荘事件などの昭和の事件をモチーフに作品作りを行ってきました。本作『天の秤』のモチーフとなっているのは、1970年3月31日に発生した日本赤軍による「よど号」ハイジャック事件。奇しくも私が観劇した千秋楽は事件が起きた当日でした。
妙な偶然の中で見る、「正義」とはなんたるかを問う物語。細かな取材や資料の参照にあたりながら、事件の真相と深層をともに描き出した作品でした。
(以下ネタバレBOXへ)
実演鑑賞
満足度★★★★★
未投稿分を遅ればせながら
楽園という空間を徹底的にいかしきり、場内アナウンスから始まり衣装、照明などのスタッフワーク全てを含めて没入させる作りだった
再現ドラマなども時々あるなかで、生で事が起こる演劇の強みを、大きく実感した
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/03/31 (日) 17:00
昨年の初演時に千穐楽での観劇を予定していたのだが、コロナ禍で楽前日と楽日だけが中止となり、観ることができなかった作品。
劇団としても出演者やスタッフにしても無事着陸できなかった無念が残っていたのだろう。幸いに7ケ月半を置いて再演となったが、私も懲りずに(笑)今回も千穐楽を予約。
大阪万博が開幕して2週間後の1970年3月31日、JA8315号機(愛称「よど号」)は羽田から板付(現在の福岡空港)へ向けて、普段どおり運航されていたが、赤軍派を名乗るグループによってハイジャックされた。これが日本初のハイジャック事件、いわゆるよど号事件である。
実は赤軍派が使用した日本刀・拳銃・爆弾などは、すべておもちゃや模造品であったことが後に判明しているし、まだ飛行機での旅行が珍しかった時代であり、当初の予定日の搭乗時刻にメンバーが遅刻して延期されたことなど、今から考えるとお粗末な事件ともいえるが、当時高校1年生だった私には緊迫したTVニュースの画面に釘付けだった記憶がある。犯人グループの「われわれは明日のジョーである」という声明も話題になった。
(以下、ネタバレBOXにて…)
実演鑑賞
満足度★★
「客席をハイジャックする歴史劇」
1970年3月31日に発生した日本赤軍によるよど号ハイジャック事件に取材した作品である。2022年に新型コロナウイルスのため上演中止になった公演のリベンジとなった。
客入れでかかるサイモン&ガーファンクルの曲が往時を思わせ、機内アナウンスを模した上演前の案内が客席を劇世界へといざなう。楽園の二面舞台最奥を操縦席に見立て、そこから対角線上を飛行機内と見立てることで、客席がハイジャック犯に占拠されたかのような気持ちにさせる空間設計がまずうまい。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/03/30 (土)
面白い。
この一言に尽きます。
劇場楽園の2面客席と入口の3方向と柱を使った臨場感ある舞台の使い方。
凝らされた音響。
観客が芝居の場にいるかのような演出に、次第に観客としてではなく、まさに目の前で起きている状況のように、その時代でその意味を考えている自分に気付く。
日本で初めて起きたハイジャック。
それぞれの人物が、それぞれの正義と何かを秤にかけ、次々に決断をし実行してゆく。
その1個人の秤だったものが、個人の価値観を変えさせてしまうだけではなく、国と国の関係性を変えてしまうとてつもなく大きな秤となってしまう。
その秤の均衡を保つ為に乗せるもの、役者が怖れながら震えながら腹を決めて置くような芝居。
人生は選択の連続と言いますが、選択の前に秤がある。
重いのが良いのか、軽いのが良いのか、均衡を保つのが良いのか…。何も置く事が出来ないのか…。
堪能させて頂きました。
とてもとても面白かったです!
実演鑑賞
満足度★★★★★
前回公演中止前に幸いにも観れてまして大筋の流れは分かっていたので
台詞と演技を噛み締めて味わいつくしました。
ニヤニヤポイントが多いで有名な運輸大臣橋本登美三郎ですが、
前回の霧島ロックさんがヤンチャしたポイントをどうするのか、さいけさんに注目して作品を楽しませていただきました。
実演鑑賞
満足度★★★★★
史実に基づく舞台 演劇作品で
ハイジャック事件の流れを
忠実に再現しながら 人間ドラマが
見事に描かれ
それぞれの立場だけでなく
素性や内面も 会話や振る舞いで
描かれていたので
それぞれの気持ちに寄り添ったり
後ろから頭をバシッとしたくなるような
苛立ちを感じたり
地上から奮戦する空港関係者に
エールを送って、と
再観劇でストーリーはわかっているけど
その場面場面に集中して
共に闘う気持ちで
最前列で観た時は 役者さんと
擦り合うくらいの距離感で
でも ふれあう事のない
こちらは当然ながら安全な場所いる事が
自分が飛行機本体で
機内や地上で起きている事を
見守っている そんな思いも感じました
観劇 ではなく
搭乗 という言葉で
機内アナウンスのような前説も
気持ちを高めてくれて
飛行機が飛び立つ爆音で 本当に
Gがかかったような感覚がありゾクゾクしました!
事件の実話ですし
乗り越えたから幸せになる
という話ではないですが
すごく面白くて 観れて良かったです!
実演鑑賞
満足度★★★★
テレビの再現で取り上げているので分かっているが、映像では伝えられない生の緊迫感を観ることができました。そして、正面のない楽園の使い方が見事でした。
実演鑑賞
満足度★★★
少ない人数でよど号ハイジャック事件(1970年3月31日)をよく描いた。脚本の工夫には感心。自分は山村新治郎が次女に刺殺された事件(1992年)や田宮高麿の怪死(1995年)など後追いで事件に興味を持った口。当時『噂の真相』や『創』なんかを毎月買っていた。
未だによく判らないのが共産主義の魅力。戦前の太宰治的キリスト教文脈の解釈としての憧れならば理解出来るのだが。ただ“革命”に参加したくて、それを肯定する理由付けの為だっただけなんじゃないかと。大義名分による暴力衝動の正当化。
テーマは「剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力」。
ギリシャ神話に登場する女神テミス(=ローマ神話のユースティティア)像。目隠しをして左手に秤、右手に剣を持つ。秤は善悪を量る「正義」を象徴し、剣は裁く「力」を象徴、目隠しは「法の下の平等」を。1872年、ドイツの法学者ルドルフ・フォン・イェーリングの『権利のための闘争』から。その元となったのはフランスの哲学者ブレーズ・パスカルの死後、1670年に発刊された遺稿集『パンセ』の一節、「力のない正義は無力であり、正義のない力は圧制的である」。
機長役、祥野獣一氏が物語の重心となる。
山村新治郎役、山村鉄平氏が事件を追想する額縁。
ハイジャック犯、田宮高麿役は高橋亮二氏。乗客達に「(退屈しのぎの為、)希望者には自分達が持ち込んだ本を貸し出す」と告げて書名を読み上げる。このシーンが一番観客が沸いた。
乗客の生命、安全を最優先にすることが日本航空乗務員の“正義”。
“革命”の為にどんな障害があろうとも計画を遂行することがハイジャック犯の“正義”。
今、最優先すべきものは何なのか?その判断の根幹、“核”になるものとは果たして何なのか?
実演鑑賞
満足度★★★★★
様々な点で考え抜かれ作り込まれた舞台だと感じた。
開演前のBGM、劇中での言葉遣いや会話の内容、客室乗務員の制服は「時代」を感じさせる。コックピットを模した舞台装置、冒頭の機内アナウンス、音響や照明、そして「楽園」という劇場が持つ濃密感そのものが飛行機内という「場」を感じさせる。
必定、観客は「よど号」の乗客と化している。臨場感や緊迫感が半端ない訳だ。
物語は歴史的事実を正確に追いながら、登場人物の心の機微にも触れていく。速いテンポのセリフの応酬はますます緊迫感を高める。演者さんたち、見事だったな。犯人役の杉浦さんは口角泡を飛ばしていたし、客室乗務員役の吉水さんは終始、目が潤んでいるように見えた。運輸大臣役の斎藤さんの狡猾さも見ものだったし、指導教官役の下平さんのらしさも光っていた。
そして何より吉水さんの脚本がなければこの作品はこの世に生まれてこなかった訳です。脚本の力を改めて感じました。
観終わった時には何時間も経過していたように感じた(大げさでなく)のだが、劇場を出て時計を見たら2時間経っていなかった。これぞ舞台のマジックだ。映像では決して味わうことのできない感覚。これは演劇初心者の人に観てもらいたい作品だなあ。
実演鑑賞
満足度★★★★
久々の風雷紡観劇。再演だったとの事。好評ゆえとすれば納得である。冒頭でよど号ハイジャック事件が題材と分かる。透明プラスティックの椅子二台を動かすだけの転換で、場面を淡々と構成。「楽園」の狭い舞台で感情が爆発するとダイレクトに波動を受ける。ハイジャック犯一人の他は、機長、副操縦士、CAのキャップと部下二名、行政官(大臣と政務次官)、キャップの先輩も行政サイドに居る、という人物構成で、事件解決に向かう人物たちの群像だ。乗客がゼロ、ハイジャック犯が一人(ここはやや気になったが)でも、この歴史的事件をうまく現代に浮かび上がらせ、観客に強い関心を持って事件を見据える事を促している。各場面が事態の進行と共に人間模様の簡潔な描写を兼ねて面白い。後半の展開のテンポも良い(程よく間を省いている)。
実演鑑賞
満足度★★★★
事実を基にした上質な作品で最後まで飽きる事なく楽しめた。
事件発生当時は物心つく前で記憶知識はほぼ無いので、フィクションとノンフィクションの境目が分からないが、敢えて言うなら登場人物の内面をもっと深く描いて欲しかったかな。
ラストだけがどうにも消化しきれず。
実演鑑賞
満足度★★★★★
実際の事件を基にした再現劇です
(たぶんこうだったんじゃなかろうか劇)
コロナで中途上演が中止となり今回無事に再演という
なんとも根性のある作品=二時間弱ですわ
全席自由・・・やはり柱寄りが見易いかなぁとかは
思った
タイトルは正義の女神の持つ秤
「剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力」
正義と力が法の両輪であることに掛けたものですわね
そしてこの事件は日本初のハイジャックであり
ハイジャック防止法が制定されることにもなる
ターニングポイントな事件でもあります
小劇場でもあり
シンプルなセットな分
いろいろと照明や音響にも拘りをみせた
作品でありました
で なぜか妙に妙齢の有閑マダムっぽい方々が
客席に多かったのか珍しく感じました~満席でした~
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
前回公演は 千穐楽に観劇予定であったが、止む無く中止になってガッカリしていた。今回再演を観ることが出来て本当に良かった。前評判 そして期待通り、いや それ以上の満足感を得ることが出来た。全回完売、開場前から劇場である楽園の前は 長蛇の列で驚いた。
風雷紡は社会的事件の概要を描きながら、その中に人間ドラマを息衝かせる。今回も「よど号ハイジャック事件(昭和45年3月31日~)」を取り上げ、その事件の過程における人物の心情を丁寧に掬い上げ紡ぐ。当時は、いや今でも大事件である 日本初のハイジャック事件。劇場地下に降りる階段の壁に、当時の新聞や週刊誌の記事コピーが掲示されていた。
シンプルな舞台美術であるが、この劇場の特徴(ほぼ中央にある柱)を巧く生かし、旅客機内(コックピットと客室)と地上を描き分ける。同時に肉声とマイクを通した音声の違い、さらに映像で時刻を表示し、刻々と迫る状況を表す。怒声に対し平静に対処する、その緩急とも言える表現が得も言われぬ緊張感を漂わす。
事件は報道等で(後日でも)概要を知ることが出来るが、その場にいた人々の心情は解らない。風雷紡公演の面白さは、舞台という虚構性の中に 人の心情を想像させ、さもそうであったかのような臨場感を味わわせてくれるところ。今回は、人それぞれの<正義>とは を問い、さらに人間的な成長譚をも描いている。見応え十分。
(上演時間1時間50分 途中休憩なし)
実演鑑賞
満足度★★★★★
芝居屋風雷紡『天の秤』
開演前の「機内アナウンス」で、劇場は飛行機となり、観客は自分が搭乗していることを知る。上演中は、ハイジャックされた機内にいる臨場感を味わうことになる。ハラハラドキドキの120分。
搭乗客でありながら、目の前の人物の背景、キャラクターが描かれる中で、登場人物に感情移入していく。客観から主観へ、主観から客観へ。登場人物それぞれの中に自分を観てはハッとする。それぞれの立場の「正義」がある。言い分、言い訳、大義、理由、信念、生きる意味、背景・・・。人は、それぞれが自分の持っているものを秤に懸けながら、選択、決定して生きている。上司は部下に比べて重い決断を数多く下さなくてはならないし、親も子供に比べて多くを判断する。そして、今回の舞台では、人命を秤に懸けながら、国家を背景に選択、決断しなくてはならない極限の状況が設定されている。中身のない人間ほどよく吠え、威嚇するのに対して、深く考え、自分の信念を持っているものほど、落ち着いたトーンで話す。舞台という空間だからこそ、客席にはその差が一層目立って見えてくる。120分、惹き込まれ、時を忘れると共に、様々なことを考えさせてくれる作品だった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/03/30 (土) 14:00
価格3,800円
開演前のアナウンスから非常に凝った没入型観劇ができる作品だと思いました。
それぞれの信念が熱く感じられる素晴らしい作品でした。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/03/29 (金) 19:00
一昨年上演された作品の再演。見事、としか言いようがない舞台。(山手線遅延対応で5分押し)106分。
1970年に起こった「よど号ハイジャック事件」を舞台化。現実の出来事に沿いつつ、フィクションとして創造する。ハイジャック犯は1人しか登場せず、2人の操縦士、3人の「スチュワーデス」(当時はCAという呼び方はなかった)、2人の地上職員、2人の政治家で構成される。私が16歳の時の事件で、記憶も一部あるが、こんな出来事が起こっていたのかも、と思うと興味深い。後にストックホルム症候群と呼ばれる現象があったかも、という場面は特にいい。役者陣全員が熱演だが、機長役の祥野とチーフパーサー役の秋月が印象に残る。
2022年の8月に上演された作品だが、私がコロナに感染したこともあって観られなかった。評判が良い作品だったけど、今回観られたのが本当にヨカッタ。