実演鑑賞
満足度★★★★★
芝居屋風雷紡『天の秤』
開演前の「機内アナウンス」で、劇場は飛行機となり、観客は自分が搭乗していることを知る。上演中は、ハイジャックされた機内にいる臨場感を味わうことになる。ハラハラドキドキの120分。
搭乗客でありながら、目の前の人物の背景、キャラクターが描かれる中で、登場人物に感情移入していく。客観から主観へ、主観から客観へ。登場人物それぞれの中に自分を観てはハッとする。それぞれの立場の「正義」がある。言い分、言い訳、大義、理由、信念、生きる意味、背景・・・。人は、それぞれが自分の持っているものを秤に懸けながら、選択、決定して生きている。上司は部下に比べて重い決断を数多く下さなくてはならないし、親も子供に比べて多くを判断する。そして、今回の舞台では、人命を秤に懸けながら、国家を背景に選択、決断しなくてはならない極限の状況が設定されている。中身のない人間ほどよく吠え、威嚇するのに対して、深く考え、自分の信念を持っているものほど、落ち着いたトーンで話す。舞台という空間だからこそ、客席にはその差が一層目立って見えてくる。120分、惹き込まれ、時を忘れると共に、様々なことを考えさせてくれる作品だった。