実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
前回公演は 千穐楽に観劇予定であったが、止む無く中止になってガッカリしていた。今回再演を観ることが出来て本当に良かった。前評判 そして期待通り、いや それ以上の満足感を得ることが出来た。全回完売、開場前から劇場である楽園の前は 長蛇の列で驚いた。
風雷紡は社会的事件の概要を描きながら、その中に人間ドラマを息衝かせる。今回も「よど号ハイジャック事件(昭和45年3月31日~)」を取り上げ、その事件の過程における人物の心情を丁寧に掬い上げ紡ぐ。当時は、いや今でも大事件である 日本初のハイジャック事件。劇場地下に降りる階段の壁に、当時の新聞や週刊誌の記事コピーが掲示されていた。
シンプルな舞台美術であるが、この劇場の特徴(ほぼ中央にある柱)を巧く生かし、旅客機内(コックピットと客室)と地上を描き分ける。同時に肉声とマイクを通した音声の違い、さらに映像で時刻を表示し、刻々と迫る状況を表す。怒声に対し平静に対処する、その緩急とも言える表現が得も言われぬ緊張感を漂わす。
事件は報道等で(後日でも)概要を知ることが出来るが、その場にいた人々の心情は解らない。風雷紡公演の面白さは、舞台という虚構性の中に 人の心情を想像させ、さもそうであったかのような臨場感を味わわせてくれるところ。今回は、人それぞれの<正義>とは を問い、さらに人間的な成長譚をも描いている。見応え十分。
(上演時間1時間50分 途中休憩なし)