天の秤 公演情報 風雷紡「天の秤」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    2022年に新型コロナウイルスの影響で中止となったためリベンジ公演となった本作は、風雷紡「よど号」ハイジャック事件を題材にしたスリリングな密室劇である。複数の勢力の利害及び影響関係が、それぞれの視点から取り上げられて見事なドラマへと編み上げられていた。

    ネタバレBOX

    会場となった小劇場楽園の密閉感は、ハイジャックされた「よど号」の密室感を観客に伝えており、加えて描かれる状況の閉塞感、どうにもならない息苦しさをも感じさせていた。そのような狭い空間で演じられる熱量の高い演技は、緊張感を一層高めていたと評価できる。
    実際に起きた出来事を非常に綿密に調査し、一つの群像劇へとまとめた劇作能力には驚かされた。これだけの人数の人物の思想や感情だけでも大変なのに、その人物間の変化まで緻密に描かれていた。そのため観客は本作品を通じて、また劇場を出た後も、「正義」について問い続けることができた。
    そのような構造の複雑さに比して、「正義」とそれを脅かす存在の掘り下げ方がやや安直だったことが気になった。国家や法の「正しさ」を問うのであれば、ハイジャックを行った赤軍派が信じる「正しさ」も問う必要がある。だが、彼らの思想や行動については(ストックホルム症候群的に同調してしまうアテンダントが描かれている割には)あまり言及されていなかったように思う。少なくとも、私は彼らが盲信者であり問い直す必要もなく「悪」であるように受け取られた。
    また、これは恐らく風雷紡の演技スタイルなのだと思うが、狭い空間に比して演技と声量がやや大きすぎるように感じられた。ひょっとしたらより大きな劇場だったら適切だったかもしれない(しかしその場合は閉塞感を手放さなければならず、悩ましい)。

    0

    2024/06/29 02:27

    1

    2

このページのQRコードです。

拡大