花と魚 公演情報 花と魚」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.4
1-15件 / 15件中
  • 満足度★★★★

    21世紀版『魚が出てきた日』的?
    新生物が出没するようになった村落に広がる波紋に地方の閉鎖性や中央に対する想いなどを練り込んで◎。
    脚の生えた魚をナニカの象徴として読み解くこともできそうだが、そんな深読みをせず表面だけとらえても十分面白い。

  • 満足度★★★★★

    この1本で、もの凄く好きな劇団になった
    とにかく面白かった。
    もうワクワクしながら観た。
    伝奇的であり、SF的要素に「今」の空気を送り込んでおり、若いながら、熱演の役者たちがいいのだ。

    ネタバレBOX

    宮崎の漁村では野生動物の被害が出ていた。その被害は、家の外に置いていた貯蔵食物を食べ荒らされるなどだ。
    その対応として、野生動物の調査会社から研究員がやって来た。彼は、野生動物から村人の暮らしを守るために、被害状況はどの段階なのか判定する役割を持っていた。
    野生動物が人間のテリトリーに入らないようにするのか、あるいは駆除するのかということを判定するのだ。

    村では、自然保護の観点からその動物と共存したいと考えている派と、グリーン・ツーリズム等の導入による村おこしをしたいので、本格的な被害が出る前に、駆除したいと考えている派の2つに分かれ、研究員の判定を待っている。

    研究員は、村に被害を与えている動物は何なのかが、どうしてもわからない。それを知っているはずの村人たちの口は重くなかなか真相を話そうとしない。

    それと並行して村祭の準備も進められていた。代々続く舞を舞い、灯籠の用意をする。ご神体は、村を襲う動物たちに破壊されていた。

    ついに、人が襲われるという実害が出たという情報が届き、駆除することが決まる。捕まえて殺処分することになる。研究員はかつて口蹄疫騒動のときに、毎日毎日牛を殺処分していた場所から逃げ出したという過去を持っていた。しかし、それでも自分の役目であると言い、その未知の動物を殺処分していく。
    しかし、処分しても処分しても動物は現れてくる。さらにこの村以外の地域にもそれは現れてくるのだった……。

    設定は物語に引き込むだけのインパクトがあり、その展開は興味を引きつつ飽きさせないものがあった。

    神話や言い伝え、蛭子伝説など伝奇的でSFチックな物語の展開は、どこか諸星大二郎的な印象もあるが、イメージの膨らませ方もいい。
    そこに今を象徴するような、賛成派と反対派の対立、デマの誕生と流布、風評被害、行政(政府)の対応、そして、地方の支援や村おこしなどもベースにしつつ、とてもいいところを盛り込んだ脚本だと思う。
    もちろん、少々盛り込みすぎな点もあるのだが、それでも110分という長丁場を見事に見せきった。
    細かいことを言えばいろいろあるのだが、物語を楽しむという意味でも、エンターテイメントとしても面白いと思う。

    台詞により、村内の様子や未知の生物、そして波間に咲く花などのイメージが、観客に中に見事に開花していくのだ。
    その表現が素晴らしい。

    ラストの展開も、村内だけの閉ざされた設定だったのが、一気に地球規模までも広がるような、演劇的なイメージの与え方が、本当に素晴らしいと思った。
    観客に見事に壮大なイメージを投げかけていた。そして、客席で思わず「これは凄い」と唸ってしまった。

    役者は、どの人も熱演だった。
    中でも、おばさん的な切羽詰まった感がよく出ていた、那美江役の杉村こずえさん、口蹄疫のときのトラウマを抱えながら冷静さを装う北川義彦さん(殺処分以降の表情とか)、ふるさと会の副会長を演じた佐藤幾優さんの抑えた感じ、当初は周囲から軽く見られていることで、投げやりだったが、後半にいくに従い本来の姿を現して来る会長役の向原徹さんたちが、印象に残った。
    そして、実際を知らないので、ネイティブな方言とは比較できないが、ほぼ全員の役者が宮崎の方言を見事に使っていることにも感激した。

    村に伝わる「舞」が出てくるのだが、コンテンポラリー的すぎるので、もっとお神楽のような「舞」にしたほうが良かったのではないだろうか。
    また、言葉でしか出てこない「未知の生物」は、ご神体という設定で登場するのだが、それは直接的すぎるような気がした。
    例えば、先に書いた「舞」として登場させるのはどうだっただろうか。練習では衣装等を付けずに、終盤で、ロウソクの炎の中で、魚のような頭(かしら)を付けた舞を舞ってみせたのならば、その姿がシルエットに見えたりして、もっと印象的だったのではないかと思うのだ。
  • 満足度★★★★★

    参りました
    出身地が舞台なので気になっていましたが、幕が開くとセリフは懐かしの方言。期待が高まります。話はカルト的な怪獣映画を彷彿とさせるもので、排他的、因習的な漁村の人間模様も丹念に描かれていて、徐々にのめり込んでしまいました。最後は人類の破滅や再生みたいな壮大な所にまでいってしまうのですが、全くの絵空事のようには感じませんでした。いやー凄い。参りました。

  • 満足度★★★★★

    ”自然・未知の存在”への驚異と畏怖。
    人間というちっぽけな存在では決して抗うことの出来ない自然の摂理。それでも人間はその現実の中にあって、必死に立ち向かい、そこから再び立ち上がろうと努力する。

    大震災、そして放射能汚染の脅威。今、自分たちが直面している現実。そこから必死に立ち上がろうとしている、正に”今ここにある現実”を描いた作品だったと思う。

    脚本・演出・役者陣すべてが素晴らしかった。

  • 満足度★★★

    テーマは良いと思いましたが・・・
    初日に観ました。
    すでにレビューでは、他の日もことも書かれてますが、
    良くなってきたみたいですね・・・。

    ネタバレBOX

    会場は、練習場のような室内の床に白線で囲っただけの部分が舞台であり、
    この舞台の奥側以外の3方を客席が取り囲んでいるという配置である。
    大道具はもちろん、目立った小道具も使われない。

    女性役者数人が開演前から登場していて、床に足を崩して座り込んでいる。
    そして、神楽に向けての、村の女性達の準備のシーンから始まる。

    そのシーンが終わると、今度は男性ばかりのシーンとなる。
    何やら打合せの様子。

    というように、初めは女性だけのシーン、男性だけのシーンと繰り返され、
    話も比較的穏やかに進んでいくのだが、しかし次第に話はシリアスになってくる。

    どうやら、足のある魚が村内に出没しているようで、
    男性陣の会議はそれについての話し合いであった。
    安全を考え、駆除を主張するもの、一方、
    動物愛護の観点から人との共生・保護を主張するものとで、意見が分かれる。

    そしてついに、当初は保護の方向で動いていた会議や行政が、
    駆除に方針転換する。

    結局、保護派の指導的立場であった調査員が、獣医の資格を持つ故に、
    泣く泣く処分(屠殺)をすることになる。

    ところが、この「魚」の被害は、すべて屠殺派の人間のでっちあげだった
    ことが分かってしまう。

    また、昔の使い込み事件についても、冤罪で、実は、
    立派な人物と思われていた故人の有力者の仕業であることまで
    発覚してしまう・・・。

    保護か屠殺かの意見の対立をきっかけにして、これらの人々の間に、
    様々な感情が噴き出してくるのだが、芝居の進行とともに、
    人間の醜い側面が露わになってくる。

    すなわち、人の良い田舎の人達のもう1つの側面である、
    余所者や、親族が問題を起こした人間を軽侮し排除する発想、
    また自分の考えを通すためや欲得のためなら、
    嘘をつき、デマでも何でも流してしまい、
    冷静で筋の通った話を押し流してしまう風潮等々…。
    もちろんこれらは、別に田舎の人間のみならず、
    人間ならある意味誰でも持っている醜い側面であるのだが、
    それらが浮き彫りになってしまうのである。

    さて、以上のように題材は大変興味深いものであるが、
    私としては、ちょっといろいろの要素を盛り込み過ぎたのではないか?
    …そんな気がした。
    つまり、「神楽・神話・信仰」「(自然科学的観点からの)自然保護と
    住民の利益の対立と調和の問題」「(SF的な)足のある魚の登場」
    「人間の嫌らしさと素晴らしさ」という、ある意味、
    どれも大きなテーマとなりうるものが盛り込まれすぎてしまい、
    限られた時間では焦点が絞り切れなくなってしまった印象を持った。

    それから、ある意味この芝居のキーマンの1人である調査員役の役者が、
    私の観た日は、なぜか何度も台詞を噛んでいたのが、
    やはり正直気になった。
    1度か2度くらいなら、まだ良いのですがね。
  • 満足度★★★★★

    手が届くほどの未来にある真理
    今年観た舞台の中で一番面白い作品でした。
    小さな小さな村で起こった奇怪な出来事で、
    今現在起こっている世の中の理不尽さや人のエゴなど
    上手く違う形で反映させて表現されていたと思います。

    一歩間違えると、壮大な話しすぎて纏まらないどころか、
    見れたものじゃない作品になるくらい危ういストーリーですが、
    それを上手く纏め上げ、物語としてとても幻想的ですばらしい作品に
    仕上げられていたと思いました。

    ネタバレBOX

    方言での台詞は、より物語の雰囲気を高め、よい演出になっていましたが、
    耳慣れない言葉ゆえ、なんて言ったのか聞き取れない部分があったのが
    少し残念でした。

    人間の浅はかさ、愚かさ、愛おしさ、全てをその地に刻んで消えてゆく
    人の力では抗うことの出来ない変えられない絶対的な未来。
    その結果が良いか悪いかなんて事は、
    ほんの些細なことだとさえ感じさせるラストでした。
  • 満足度★★★★★

    仮想未来、そして回帰
    開演前、丹念に当日パンフレットを熟読する。これを怠るとほとんどのお芝居の重要部分が見え難くなるからだ。しかし観客の中で当日パンフを見ようともしない観客のいかに多いことか。更には観劇後、椅子の上に置いて行ってしまうのだから、なんとも情けない。

    さて、今回の舞台は序盤から引きづり込まれワクワクドキドキの連続だった。苦笑するような場面もあり、キャストらの演技力でも魅せられ、全体的な構成力、照明で更にサスペンス度が強まって終わってみれば桟敷童子のような、いやそれ以上の世界観だったと感じた。だから勿論、ワタクシの好みのど真ん中だったのだ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    舞台は宮崎県の小さな漁村。干物や野菜が正体不明の怪物に喰い荒らされ、集落支援センター職員の妻・那美江がその怪物に手を噛まれた、と騒ぎ出す場面から始まる。こういった物語に引き込ませる手段が上手い。

    これらの被害を止めるべく、漁師たちは怪物退治を主張する一方で、町役場の出先機関・集落支援センターは県のたてた野生動物保全方針に従い、怪物の調査・保護を主張する。対立する両者の打開策として民間の野生動物調査員・酒田が招かれ、どんな結論になろうとも酒田の決断に対して両者とも従うように、と釘を刺されるのだが・・。

    酒田は怪物の調査・保護を結論付けるも、これに同調できない那美江と村人、漁師たちはまるで怪物たちが村民を喰ったかのような噂を流してしまう。この風評被害に揺れる村。しかし怪物たちはただただ、卵を産む鮭のようにこの村の生まれた川に戻ってきているだけだったのだ。

    足の生えた古代魚を思わせる像、汐留教授のウイルスと遺伝子研究の結果、海を守る一族の子孫、「お神楽」と言われる蛭子神の神話を絡ませながら、村の罪と人の業を描いた作品だった。

    終盤に、村民が魚に回帰して泳いで行ってしまうシーンと、怪物の正体が像として祀られているシーンは大自然を操る地球の意志のようにも思えた。そうして、終わりの時、地球の浄化が始まり、いつしか、丘には人間の像が現れ「丘には人間と言う変わった生き物がおった」と括られる描写はあまりにも素晴らしい。

    宇宙の創生を感じさせる壮大にして静謐な物語で、日々の人間の営みを神が天から見下ろしてるような感覚にもなった。神話にはこういった描写が多いのだが、地球の再生はこうして始まった!みたいな幻の創世記だ。
  • あらがう力
    お行儀よく世界を憂いでないところに好感がもてる。
    ナイーヴだけど「俺についてこい」な感じが柳井作品にはあった。
    今後が楽しみ!

  • 満足度★★★

    脚本が
    よかった。

  • 満足度★★★★★

    無題68
    四角い舞台の三方を座席が囲みます。会話は宮崎地方の言葉(であってますか?)で行われますので、少しわかりにくいところがありました。怪物が漁村を襲う、と聞くとどうしても「ゴジラ」を思い出してしまいます。当然、捕獲かどうかという議論になるので、本作品もここらについて、またこの話か・・・みたいな見方をしてしまいました。ところが姿かたち、正体などが徐々に明らかになるにつれ、どんどん引き込まれてしまうのでした。

    ネタバレBOX

    集団で村を襲う(移動する)描写・・・これは「トリフィド」に似すぎの感もありますが、海と陸との生存の逆転になるとは思いもしませんでした。元の形に組み上げられたご神体の姿(いつもSFの話ですみませんが)、「幼年期の終わり」のカレルレンをみるようです。

    突然、魚になる、履物だけを残して...シーンとしては綺麗で印象的でよかったと思いつつ、SF小説だったら生まれてくる子供が...「光る眼」みたいになるんでしょう。
  • 満足度★★★★

    よく練られた構成
    近未来の劇。1時間50分、休憩なしというのは、私にとってかなりきつい部類に入ります。(すぐに眠くなるから)
    ミステリーとして徐々に真相が明らかになる展開と、一地方の漁村?のゆったりとした風土とがうまく調和して、脚本自体がしっかりとした構成のもとに演じられていることに、まず好感が持てました。
    ユーモアを一切排除して貫徹させている点も、昨今の安直な劇と比べて『品位』を感じさせます。
    ああ真面目な劇団だなと、私には安心感を持って観ることができました。
    集落の歴史と住人の複雑な関係、新生物の発現などの因果関係については、やや私の認識能力を越えたものがありましたがf^_^;、骨太の劇として印象に強く残りました。
    まだ若い人が多い劇団。あと十年くらいすれば、年齢構成もバランスがとれたものになりそうで、これからも見守っていこうと強く思いました。

  • 201107311300
    201107311300@シアターバビロンの流れのほとりにて

  • 満足度★★★★

    話が非常に良く出来ていた
    なんといっても話が良かった!
    きちんと「今やる内容」になっていました。

    怪物が示唆しているものが
    こちらの想像を何度も覆して、面白かったです。

    ネタバレBOX

    方言が聞き取れないことがある。
    聞き取れないのは言い回しの場合もあり、滑舌の場合もあります。
    いくつか重要な台詞が聞き取れなかったので、前後の流れで理解する。
    それでも内容は大体わかったので、役者もきちんと仕事をしているのだと思う。
    個人的にはもっと役者自身のエネルギッシュな衝動が見たかったが
    バランスとしてはちょうど良かったのかもしれません。

    原発、津波、政府の対応など現実で起きたことが、
    この小さな集落の物語とリンクしており、その手法がとても上手かった。
    シチュエーションと台詞に組み込まれた言葉の断片が
    散々ニュースなどで繰り返された単語とダブって聞こえて
    特に、総理を皮肉っていると思われる所長の発言や行動が興味深かった。

    世界観がはっきりしていてバランスがよく、脚本は本当によくできていて
    今年見た話の中では一番よくできていたと思います。


  • 満足度★★★★★

    全てが無に帰すような
    95%のSFと5%のファンタジーロマン。

    ネタバレBOX

    小さな村で起こった事件についてはSF、全国規模に広がってからはファンタジーロマンといった感じでしょうか。

    口蹄疫問題における国の対応への不満、海から押し寄せる大津波や原発事故以来の目に見えない放射能汚染への恐怖が基になっているようで、数値を少なくみせるなどの隠蔽体質などは現実と同じです。情報の混乱、国の出先機関の意義、野生動物への対処方針なども具体的で現実味が増していました。

    楳図かずおの漫画にも足の付いた魚がありました。ばさばさ歩いているわよで、魚の下側に人間の足がついているように想像してしまいましたが、実際はシーラカンスの前ビレがもう少し足状に発達したような生物でした。

    海に花が咲くあたりから様子が一変しました。小惑星の衝突によって恐竜が滅びその後哺乳類が繁栄したという定説などとは異なり、遺伝子に組み込まれた必然から種の交代が起こるという説で、魚は陸上の新しい支配者に進化していくために上陸し、人類は魚に戻っていくというファンタジーロマンになりました。

    尊敬されていた人が間違いを犯していたり、事件を通じてだらしないと思われていた人がしっかりしてきたりと様々な人間模様が描かれていましたが、それはいったい何だったんだと言いたくなるくらい全てが無に帰すというか魚に帰しました。

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