花と魚 公演情報 十七戦地「花と魚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    仮想未来、そして回帰
    開演前、丹念に当日パンフレットを熟読する。これを怠るとほとんどのお芝居の重要部分が見え難くなるからだ。しかし観客の中で当日パンフを見ようともしない観客のいかに多いことか。更には観劇後、椅子の上に置いて行ってしまうのだから、なんとも情けない。

    さて、今回の舞台は序盤から引きづり込まれワクワクドキドキの連続だった。苦笑するような場面もあり、キャストらの演技力でも魅せられ、全体的な構成力、照明で更にサスペンス度が強まって終わってみれば桟敷童子のような、いやそれ以上の世界観だったと感じた。だから勿論、ワタクシの好みのど真ん中だったのだ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    舞台は宮崎県の小さな漁村。干物や野菜が正体不明の怪物に喰い荒らされ、集落支援センター職員の妻・那美江がその怪物に手を噛まれた、と騒ぎ出す場面から始まる。こういった物語に引き込ませる手段が上手い。

    これらの被害を止めるべく、漁師たちは怪物退治を主張する一方で、町役場の出先機関・集落支援センターは県のたてた野生動物保全方針に従い、怪物の調査・保護を主張する。対立する両者の打開策として民間の野生動物調査員・酒田が招かれ、どんな結論になろうとも酒田の決断に対して両者とも従うように、と釘を刺されるのだが・・。

    酒田は怪物の調査・保護を結論付けるも、これに同調できない那美江と村人、漁師たちはまるで怪物たちが村民を喰ったかのような噂を流してしまう。この風評被害に揺れる村。しかし怪物たちはただただ、卵を産む鮭のようにこの村の生まれた川に戻ってきているだけだったのだ。

    足の生えた古代魚を思わせる像、汐留教授のウイルスと遺伝子研究の結果、海を守る一族の子孫、「お神楽」と言われる蛭子神の神話を絡ませながら、村の罪と人の業を描いた作品だった。

    終盤に、村民が魚に回帰して泳いで行ってしまうシーンと、怪物の正体が像として祀られているシーンは大自然を操る地球の意志のようにも思えた。そうして、終わりの時、地球の浄化が始まり、いつしか、丘には人間の像が現れ「丘には人間と言う変わった生き物がおった」と括られる描写はあまりにも素晴らしい。

    宇宙の創生を感じさせる壮大にして静謐な物語で、日々の人間の営みを神が天から見下ろしてるような感覚にもなった。神話にはこういった描写が多いのだが、地球の再生はこうして始まった!みたいな幻の創世記だ。

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    2011/08/01 15:40

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