花と魚 公演情報 十七戦地「花と魚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    この1本で、もの凄く好きな劇団になった
    とにかく面白かった。
    もうワクワクしながら観た。
    伝奇的であり、SF的要素に「今」の空気を送り込んでおり、若いながら、熱演の役者たちがいいのだ。

    ネタバレBOX

    宮崎の漁村では野生動物の被害が出ていた。その被害は、家の外に置いていた貯蔵食物を食べ荒らされるなどだ。
    その対応として、野生動物の調査会社から研究員がやって来た。彼は、野生動物から村人の暮らしを守るために、被害状況はどの段階なのか判定する役割を持っていた。
    野生動物が人間のテリトリーに入らないようにするのか、あるいは駆除するのかということを判定するのだ。

    村では、自然保護の観点からその動物と共存したいと考えている派と、グリーン・ツーリズム等の導入による村おこしをしたいので、本格的な被害が出る前に、駆除したいと考えている派の2つに分かれ、研究員の判定を待っている。

    研究員は、村に被害を与えている動物は何なのかが、どうしてもわからない。それを知っているはずの村人たちの口は重くなかなか真相を話そうとしない。

    それと並行して村祭の準備も進められていた。代々続く舞を舞い、灯籠の用意をする。ご神体は、村を襲う動物たちに破壊されていた。

    ついに、人が襲われるという実害が出たという情報が届き、駆除することが決まる。捕まえて殺処分することになる。研究員はかつて口蹄疫騒動のときに、毎日毎日牛を殺処分していた場所から逃げ出したという過去を持っていた。しかし、それでも自分の役目であると言い、その未知の動物を殺処分していく。
    しかし、処分しても処分しても動物は現れてくる。さらにこの村以外の地域にもそれは現れてくるのだった……。

    設定は物語に引き込むだけのインパクトがあり、その展開は興味を引きつつ飽きさせないものがあった。

    神話や言い伝え、蛭子伝説など伝奇的でSFチックな物語の展開は、どこか諸星大二郎的な印象もあるが、イメージの膨らませ方もいい。
    そこに今を象徴するような、賛成派と反対派の対立、デマの誕生と流布、風評被害、行政(政府)の対応、そして、地方の支援や村おこしなどもベースにしつつ、とてもいいところを盛り込んだ脚本だと思う。
    もちろん、少々盛り込みすぎな点もあるのだが、それでも110分という長丁場を見事に見せきった。
    細かいことを言えばいろいろあるのだが、物語を楽しむという意味でも、エンターテイメントとしても面白いと思う。

    台詞により、村内の様子や未知の生物、そして波間に咲く花などのイメージが、観客に中に見事に開花していくのだ。
    その表現が素晴らしい。

    ラストの展開も、村内だけの閉ざされた設定だったのが、一気に地球規模までも広がるような、演劇的なイメージの与え方が、本当に素晴らしいと思った。
    観客に見事に壮大なイメージを投げかけていた。そして、客席で思わず「これは凄い」と唸ってしまった。

    役者は、どの人も熱演だった。
    中でも、おばさん的な切羽詰まった感がよく出ていた、那美江役の杉村こずえさん、口蹄疫のときのトラウマを抱えながら冷静さを装う北川義彦さん(殺処分以降の表情とか)、ふるさと会の副会長を演じた佐藤幾優さんの抑えた感じ、当初は周囲から軽く見られていることで、投げやりだったが、後半にいくに従い本来の姿を現して来る会長役の向原徹さんたちが、印象に残った。
    そして、実際を知らないので、ネイティブな方言とは比較できないが、ほぼ全員の役者が宮崎の方言を見事に使っていることにも感激した。

    村に伝わる「舞」が出てくるのだが、コンテンポラリー的すぎるので、もっとお神楽のような「舞」にしたほうが良かったのではないだろうか。
    また、言葉でしか出てこない「未知の生物」は、ご神体という設定で登場するのだが、それは直接的すぎるような気がした。
    例えば、先に書いた「舞」として登場させるのはどうだっただろうか。練習では衣装等を付けずに、終盤で、ロウソクの炎の中で、魚のような頭(かしら)を付けた舞を舞ってみせたのならば、その姿がシルエットに見えたりして、もっと印象的だったのではないかと思うのだ。

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    2011/08/17 04:22

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