廃墟 公演情報 廃墟」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.1
1-20件 / 32件中
  • 満足度★★★★★

    まな板の音がトントンと
    答えは見つかったか?ごらんの通り、見つからなかった。

    三好十郎の『「廃墟」について』にこう記されていました。
    「敗戦後一年ぐらいたってから書いたもの」ということは帰りの電車の中、ネットで知りました。2時間半の間、集中力を途切らせることなく、それぞれの役を、それもこれだけのボリュームのセリフがありながら、ひとりひとりのしぐさが登場人物の心情をストレートに現している。舞台上に配置されているものは、本を除けば今でも普通に使えるものであっても観ている間には気になりませんでした。それどころか、まな板を使う場面で聞こえてくるトントン..トントンという音。なぜかこの音に、ずっと昔の自分の家庭を思い起こしました。レンジの「チン」ではない音。日本の台所から聞こえてくる音。

    戦後、渦巻いたであろう、各人の立場やどのように戦争を経験したかによって
    異なる心情や希望。昭和、平成と成長し続けてきて今がある。三好は、前述の一文に『日本人と言うもの全体が持っている、ほとんど「偉大」と言ってもさしつかえのない、すぐれた本質』を感じたと書いている。それは今の日本にもきっと生きている。

  • 満足度★★★★★

    三好十郎作品は、とても骨太で力強い
    そして、その骨太で力強い作品を、黒澤世莉さんは同じように力ずくで押さえ込むのではなく、無理をせずに自分の側にたぐり寄せ、等身大の感覚で、細やかにセンス良く演出していた。
    2時間30分の上演時間はまったく長く感じず、見入ってしまった。

    ネタバレBOX

    終戦からあまり時間を置かずに書かれた作品だという。以前に観た『その人を知らず』もそのすぐ後に書かれたらしい。
    それを考えると、三好十郎はいかに凄い作家なのかがわかる(『浮標』も素晴らしかったし)。
    とにかく、骨太で力強い。
    ただ、この強さは、今だからこそ受け入れられるのかもしれないとも思う。
    物語が成立しなくなった今だから、こうした力強い作品に魅力を感じるのかもしれない。

    この力強い作品を、黒澤世莉さんは、作品と同じように力ずくで押さえ込むのではなく、無理をせず自分の等身大の感覚で、細やかにセンス良く演出していた。台詞の細かい重ね方や立ち位置、移動などがとてもいいのだ。そして、最初のほうのシーンにある「生活音」の生音が、とてもいいアクセントで舞台に響いていた。
    台所の位置がよく、視線には気にならない程度の場所にある。
    シンプルだけど、家の配置や玄関、畑の位置設定もいい。奥行きが増すのだ。
    時間の変化を美しく見せる照明もよかった。

    元教授のエピソードは(たぶん)当時も話題になったであろう、判事が配給のみで餓死した事件にヒントを得ているのではないだろうか。
    その元教授の死を賭した主張には、迫力がある。つまり、「国民の1人として、1人分だけの責任がある」ということ。それは重い。誰に言われたわけでもなく、自分だけが負わせることのできる責任であり、罪なのだから。
    武田泰淳の『ひかりごけ』を持ち出さないまでも、あの時代を生きてきた方たちは、それなりのことをくぐり抜けてきたはずである。それもまた重いし、別の意味での、責任に負い方ではないだろうか。
    しかし、元教授は自らを枷にはめていく。家族がどんなに反対してもである。この姿は、『その人を知らず』の主人公にも重なって見えてきた。

    ところが、元教授とその息子・誠(共産党員)の議論が激化してくると、様相が変わって見えてくる。高潔であった元教授の頑なな姿は、議論が何のための議論かわからなくなってくる。議論のための議論、議論を楽しんでいるように見えてくるのだ。
    少々面倒な現実は、お手伝いとして暮らす女性に任せっきりにしてしまう(防空壕に逃れたりして)。つまり、現実から逃げていることが見えてくるのだ。
    息子にしても戦争を反対していたが「自分たちの力が弱かったから止められなかった」というのは、次にもし同じことがあれば、そう言って逃げてしまうことを意味している。

    さらに、息子が「今度の戦いは、再び戦わないための戦いだ」と言うのだが、それは「正義(大義ある)戦い」ということの理論であり、かつて、そしてこれからも起こっている戦争と本質的にまったく同じだということも露呈する。

    つまりのところ、元教授(父)と息子は、この戦争から何も学んでいなかったということなのだ。また、いつでも戦争を起こし、そしてそれを積極的にではないにせよ、支持する側に回ってしまう可能性を秘めているということだ。

    女性たちはそうではない。皆、地に足をつけて生きることをのみすべてとする。
    元教授の妹・双葉は、父と兄の議論に「立派な考えを持った人たちが、国民から浮き上がってしまったことで戦争が起きた」と、鋭く指摘するのだが、彼らの耳には届いていない。自らの思想や主義にがんじがらめだからだ。

    そして、ラストの刃傷騒動は、議論では結論がでなければ、実力行使も厭わないという、彼らの根底にある、まさに戦争そのものが出現したのにほかならない。
    作者をして、終戦を迎えほっとしている中で、すでに次の戦争のきな臭さを感じとっていたのだろう。
    それは、おそらく、戦後間もない頃に作家自身の嗅覚と肌感覚によって感じ取られていたことで、議論を尽くすことが戦争をなくすことにはならないという危惧かもしれないし、戦争はなくならないという諦念かもしれない。

    元教授一家と一緒に暮らす人々、つまり、戦争に荷担したかもしれない国民と反対していたと主張する国民、戦争に積極的に参加して目的を見失った特攻兵、家族を失い身体を張って生きる女、戦争で傷ついた学生などなど、は、終戦直後の人々の縮図であろう。それを「家族」というキーワードにして、家族間のぶつかり合いと関係性という見方もできるかもしれないのだが、それよりは、もっとそれぞれの立場を代表するような、人物を表しているように感じた。初演の頃の観客にとっては、イヤになるほど身近な存在が舞台にいたのではないだろうか。

    双葉を演じた高島玲さんが、優しくて芯の強い女性を好演していた。欣二の酒巻誉洋さんの若くて無謀さを装っている感じもよかった。浮浪者役の小川あつしさんは、大変だったのではないかと思う。てっきりラストに重要な台詞もしくは演技を担うのかと思っていたらそうではなかった。
  • 満足度★★★★★

    凄い迫力!
    後半の議論に圧倒されました!

    ネタバレBOX

    基本的には平板で抑揚を抑える演技でした。小津映画のようで、大工の娘などわざとなのか下手なのかどちらなんだろうと思って観ていました。

    闇市に手を出さない元先生と共産主義者である長男による後半の議論は長時間に亘り、その迫力には圧倒されました。

    議論の内容は、侵略戦争に関して国民に責任があるかどうかということでした。権力側から何も聞かされていなかったから責任は無いとする考え方と、やはりそういう権力の存在を認め、その前提に立って利用していた面もあるから責任があるとする考え方の対立でした。

    私は侵略戦争を原発に置き換えて聞いていました。すると、過去の話が急に身近なものとなりました。

    数メートルの津波しか想定せず、原発を推進してきた東電と政府。原発は安全だと聞かされてきて、大量の電力を使ってきた国民。

    日本は地震に遭い、国民は放射能汚染の被害者だと思っていましたが、海洋汚染に至ると今や加害者になってしまいました。

    戦争推進者が東京裁判で裁かれたように、耐用年数が過ぎ、少なくとも技術の進歩とともに旧式となった原発を稼働し続けた東電は刑事事件で裁かれるべきです。

    もちろん刑事事件としては無罪になるかもしれませんが、民事事件の責任について、都合良く見過ごしていた国民にもその一端があるように思えてなりません。そんな気持ちでずーっと聞いていました。

    二人の議論は白熱しますが、孤高の人には換金できる本があとわずか、共産主義者も家に100円しか入れてなく、結局偉そうなことを言っても食料調達などは娘(長男にとっては妹)たちのおかげであり、頭は悪そうだが泥棒をしてでも飯を食っている浮浪者の方が丸々と肥え太っているというオチでした!
  • 満足度★★★★★

    重厚な物語でした
    休憩無しの2時間30分を思わせない吸引力のある、作品でした。敗戦後間もない頃の作品とのことですが、昨今事情と重ねて見てる自分もいて、今だからこその意味も価値も、強く感じた作品でした。

    ネタバレBOX

    後半の議論では、過去や理想に拘っていたり、未来のために繋がる信念であったり。間違いとか正しいとか答えの出しきれない、矛盾した自分が自問自答しながら、涙でした。
    信念だけでは満たす事の出来ない、今の空腹を、どうするのかという現実問題。
    一家の大事なパンを盗んだ浮浪者は、なんの理想もなく、頭も足りない様なのに、体だけは、しっかり肥えていたり。
    娘・双葉の『人を信用できる幸せ』を願う、想い。
    なのに、議論で答えを出しきれないとなると、刃物をだしてしまう・・・生きる事だけで、戦いなのだと、改めて思ってしまった。
    戦争をテーマでありながら、どんな問題とも重なる想いや現実が見え、今を見つめ直す作品で、又いつの日か再演して欲しいと思いました。

    欣一郎(猿田モンキーさん)、誠(菅野貴夫さん)、欣二(酒巻誉洋さん)、二葉(髙島玲さん)浮浪者(小川あつしさん)が特に、良かったです。
    議論が白熱すればするほど、同室にいながら外野の冷めた感じと日常感を醸し出す、演出も良かったです。
  • 満足度★★★★★

    観ました
    初日に見て、上演時間の長さなどものともせず
    楽日前にもう一度劇場に足を運びました。

    舞台全体に血がかよい
    時代があえぎながらその刹那を歩んでいる感触があって。

    非常に印象に強い作品でありました。

  • 満足度★★★★★

    重厚にして、圧巻。
    今までに観てきた時間堂は「限りなく優しくて癒される時間」という印象でしたが、今回は既存の脚本を用いての、緊張感に満ちた圧倒的な重厚感。それは去年夏の黒澤さん演出「ON THE WAY HOME」と同様で、正直、いつもの時間堂よりもこちらの方が私の好みだったりします。

    思想が実感に即した演技で魅せる役者さん達、特に菅野貴夫さんと酒巻誉洋さんのぶつかり合いは圧巻。2時間半という長尺ながら、音楽もなく引き込まれる濃密な時間を堪能。舞台は戦後であるけれど、震災後の今と重なり深く深く考えさせられました。

    正統派の演劇として、今沢山の人におすすめしたい舞台です。ロングランですので是非。

  • 満足度★★★★★

    楽日、間に合った!
    「廃墟の下は素人作りの防空壕、いつ底が抜けてもおかしくない」
    唯一、おとっあんだけが、せっせと埋戻ししてますが、その内崩れ去ったら、住む所までも無くし、ルンペンさんと犬小屋に寝る事になりますぞ・・・。

    <「担う時代」~「時代を担う」>
    生き抜く為の日常を支えているのは、闇取引と女達のヤリクリ、真っ当な仕事がない、男達は、存在感を消した昼間と違い夜になって酒の力も借りながら、
    空論(理想論)を振りかざす、挙句に・・・。
    時代を超えても、いつの時代も変わっていないこの国の明日は・・・。
    (だいじょうぶ「十把一絡げ」→「十人十色」→「一人十色」→「○・・○」この難解な時代を生き抜く、更に進化した期待の若者がいるでは、ないか!)
    闇買いを拒否し餓死を選んだ、山口判事と旧制東京高校亀尾教授に合掌。

    <時間>
    演目が急遽変更し、約1ヶ月で本当に良くぞここまで・・・。[猿田さん逃げ出さずに/酒巻さんと百花さん要チェック]
    楽日で一番美味しいところを戴き、得した気分になりました。
    スタッフさんを含め芝居への取組の謙虚さに脱帽。次回、吉田さん新作伺います。その前に、KAATへ行こ!

  • 満足度★★★★★

    すごく面白かったです。
    戦後まもない設定が、この度起きた震災直後の今とだぶってしまいますが・・・ 女性たちの台詞が重いです。とにかく2時間半集中できたのは、演じる皆さんの上手さもありますね。表情もですが、皆さんすごくきれいな日本語を声にしてくださるので、心に響きました。
    三好十郎さんって・・面白くて可愛げのある方だったのですね(多分)
    時間堂さんの作品を初めて観ましたが、ファンになりました。

  • 満足度★★★★

    長さを感じず
    長い芝居の苦手な私が2時間半全く集中を切らさずに観ることが出来ました。畳み掛けるような討論のシーンが秀逸。どうしても戦争によるダメージと原発事故とを重ねて考えてしまいましたが、それはそれで良かったと思います。PPTゲストが吉田小夏さんで、その中でも膝ポン!の発見がありました。

  • 満足度★★★★

    うん
    これは面白い!
    登場人物の情けなさに共感!
    またみたいです。

  • 満足度★★★★

    役者スゲー
    凄い濃密な舞台となっておりました。
    一番や役者陣で、あの台詞量をこなし、またラストに向けてリアルな口論と感じられ、いやーもう役者が凄い凄いの舞台でした。
    長さは全く持って気になりませんでした。

  • 満足度★★★★

    勝負してるなぁ・・・
    三好十郎なんて、また渋い選択です。
    がっつり腹を据えて勝負しているのが、ひしひしと伝わりました。
    渡し合う台詞の緊張感。空気。上質でした。
    最近は、こうしたストレートな舞台が
    少なくなって寂しい思いをしていたところなので、
    良い時間を過ごさせて頂きました。

  • 満足度★★★★

    観てきた
    終戦後の三好十郎さんのこの作品を約60年後の今にガッツリ観られたことを、震災云々は別にして、本当に嬉しく思う。

  • 満足度★★★★

    すげー
    「すごい」ではなく「すげー」と思いました。頭悪そうですみません。


    この作品を音響なしで飽きずに見せられる役者さんの力量、演出に脱帽です。終盤の口論はこちらまでちゃんと疲れてしまいました。


    戦後まもなくの話なので少し理解に苦しむところもありましたが、現代にも通じるようなシーンが多くあり、いろいろ考えさせられてしまいました。

  • 満足度★★★★

    濃厚な会話劇
    50年以上前に書かれた戯曲で、所々に出てくる単語に時代を感じさせましたが、みずみずしい演出・演技を通じて現代にもそのまま通用する内容となっていたと思います。休憩なしで2時間半という役者も観客も負担のかかる結構なボリュームに必然性が感じられ、だれることがなく、特に後半は求心力があり時間を感じさせませんでした。

    第二次大戦直後の東京が舞台で、1つの部屋に身を寄せる家族とその周辺の人たちを描いた作品で、様々な立場での戦争の反省と未来の展望についての議論が平行線を辿ってばかりな様子が描かれていて、考えさせられる話でした。

    音楽は全く使われず、いくつかの家具と照明だけのシンプルなしつらえが演技を引き立てていました。
    会話のトーンのバランスが絶妙で、大声で叫ぶ台詞もはっきり聞き取れたのが良かったです。白熱した議論の最中に議論の輪に入っていない人がする日常的な行動が度々挟まれていて(戯曲に書いてあるのでしょうか?)、単純に熱く盛り上がるのを避けていたのが面白い効果をあげていたと思います。

  • 満足度★★★★

    すごいですね!
    この長時間のお芝居で長回しの台詞。すごい!
    しかも熱い!濃い、重い。リアル。
    戦後の日本、復興。
    正統派のお芝居です。

  • 満足度★★★★

    ザワザワですわ
    時間堂さん初見でした。なのに、三好十郎作品って!心がザワザワとなって、何に対してザワザワなのか混乱しています。セリフのリアリティが生活音のリアリティが胸にささってザワザワです。

  • 満足度★★★★

    圧巻!
    お腹を満たせられる事に感謝と幸せを感じる。

    役者に魅入り、台詞に聞き入る。こんな時だから余計考えさせられる。

    ネタバレBOX

    浮浪者が不思議な存在なんだけど、案外主役かも。あの部屋の状況下の中、我関せず見てみぬ振りをする人の象徴かも知れない。
  • 満足度★★★★

    アフタートーク
    カタルシスがテーマ。お父さんがよかった。アフタートークがあったのがよかった。

  • 満足度★★★

    女は賢明ではあるが
    世代的なものか、2人の議論に引き込まれた、当時目線なのか、その後目線何緒かとか考えながえら

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