満足度★★★★★
まな板の音がトントンと
答えは見つかったか?ごらんの通り、見つからなかった。
三好十郎の『「廃墟」について』にこう記されていました。
「敗戦後一年ぐらいたってから書いたもの」ということは帰りの電車の中、ネットで知りました。2時間半の間、集中力を途切らせることなく、それぞれの役を、それもこれだけのボリュームのセリフがありながら、ひとりひとりのしぐさが登場人物の心情をストレートに現している。舞台上に配置されているものは、本を除けば今でも普通に使えるものであっても観ている間には気になりませんでした。それどころか、まな板を使う場面で聞こえてくるトントン..トントンという音。なぜかこの音に、ずっと昔の自分の家庭を思い起こしました。レンジの「チン」ではない音。日本の台所から聞こえてくる音。
戦後、渦巻いたであろう、各人の立場やどのように戦争を経験したかによって
異なる心情や希望。昭和、平成と成長し続けてきて今がある。三好は、前述の一文に『日本人と言うもの全体が持っている、ほとんど「偉大」と言ってもさしつかえのない、すぐれた本質』を感じたと書いている。それは今の日本にもきっと生きている。