満足度★★★
そう取り込みましたかぁ
シューマンの特集を組むことになった雑誌の新人女性記者・夏樹、シューマンをテーマにした小説のアイデアが出ずに筆が進まない女流作家(=記者と偶然知り合う)、かつてコンクールで優勝し「シューマンの第一人者」と呼ばれたピアニスト・芦屋(=記者の取材相手)の三者を中心に描きながら、そこからシューマンの人生(後半だけなので「半生」か?)が浮き上がってくるシカケ。
で、芦屋は事故で指が動かなくなりピアノを断念し精神を患っているとか、自分をシューマンの生まれ変わりと思い込むとか、そのあたりで予習が利いてくるワケさ、「そう取り込みましたかぁ」みたいに。
また、芦屋の様子が劇中事実なのか、それとも夏樹から聞いた話にヒントを得た作家(当日パンフの役名も「作家」のまま)が著している小説の中のフィクションなのか、と疑問を抱かせておいて終盤で「あることないこと書き連ねて…」と響子(芦屋の妻)に言わせて少なくとも全てが事実ではないことを明かすのが上手いし、「(芦屋の)クララになりたくてなれなかった」響子が芦屋から「クララ…」と呼びかけられるラストも切なく美しい。
暗めの照明の中で流れる台詞がエラく文学っぽくて(笑)「作風が変わった?」と思ったらシューマンからクララへの手紙だったというプロローグもその後の展開を示唆して巧みで、後から振り返ってモロモロ納得。
そんな中、編集部のシーンはコミカルでメイン部分のどちらかと言えば悲劇気味なトーンをうまく緩和していたな、と。
対象となる人物を直接描くのではなく、メインとなる別のストーリーを進行させる中にその生涯を練りこむ手法は今年1月のユニークポイントの『シンクロナイズド・ガロア』と通ずるものアリ。
満足度★★★★
作品、楽しませて頂きました。
勝手な想像ですが、四次元に挑まれた作品なのかなぁと思いました。
これは私のイメージですが、四次元とは走っている列車に似ておりまして、
車輌の中が三次元、列車の外も含めますと四次元になります。
今回の作品は、例えるならばカメラが、
大自然の中を疾走する列車の遠景を捉え、
車輌の中で繰り広げられる乗客たちの様子を収め、
車窓から流れる風景を映している、といった感じです。
私は、過ぎ去った場所やこれから向かう先に思いを馳せながら景色を楽しんでいるような、そんな体験をさせて頂きました。
満足度★★★
シューマンに関することに関すること
「君は机たたきについて何も知らない。机はなぁんでも知っているんだよぉ」
東京イボンヌ『シューマンに関すること』より
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人間何にキレるって、楽しみにしてた芝居観に行ったら、隣の席の人間が音憚らずに始終盛大に鼻水すすってるのにキレますよ。
花粉症の時期だから仕方ないのかもしれないけど、1時間30分、知らない女の洟すする音を間近で聴き続けるのが気持ちいいかと言ったら、他は知らないけど私はお世辞にもイヤですよ。
「ここで私がブチ切れて暴れだしたら、たぶん役者さん達もどうしていいかわからなくて困るだろうな」
とか思いながら90分、なるべく隣の人から顔を離すように、腰を曲げて拝見いたしました。
みなさまも鼻水女(男にも)にはお気をつけて。
ライブハウスとかだったら離れちゃえばいいんだけど、芝居はそうはいかない。
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以下は東京イボンヌ様が公演した、『シューマンに関すること』のレビューです。
東京イボンヌは、「前の席で観たほうが面白い舞台を作る劇団」です。
普段、私は舞台を観に行くと、舞台から近すぎず遠すぎずの席に座ることにしています。
あまり遠すぎると観客の頭ばかりが見えて舞台の世界に入り込むことができないし、
かといってあまり近すぎると、役者さんの舞台用の発声や表情が自然体でなく、
胡散臭いのが諸見えで、それはそれで集中できないからなのです。
が、イボンヌさんの舞台はできる限り前に座って拝見します。
なんでか。
東京イボンヌの演技はなんか自然体っぽくて近くで観ても平気だからなんでしょうね。
誰一人としていわゆる舞台らしい演技、をしていないのが、この劇団の特徴だと思います。
『シューマンに関すること』
作曲者ロベルト・シューマンに憧れ続け、ついには自身をシューマンの生まれ変わりだと思い込んだ日本の音楽家の物語。と、ありていに言ってしまえばそういう話。
舞台を見終わってから、シューマンの生涯に興味を持ちました。舞台で知ったシューマンに関することがあまりにも面白かったので。
で、作曲家ロベルト・シューマンのことをネットで調べれば調べるほど、舞台の中で話されなかった興味深い濃いエピソードが数多く残されている事に気付きました。
それこそ、一つ一つのエピソードがそのまま独立して、各々1つずつ舞台で作れそうなほどに。
そんな中で必要なシューマンのエピソードをピック・アップし、かつ(誤解を恐れずに言えば)不必要なエピソードをあえて削除し、厳選されたシューマンネタで勝負するイボンヌさんに脱帽。もっと組み込みたい部分もあったのではないかと思うのですが、あんまりシューマンのエピソードを詰め込みすぎて、ただの逸話の集大成みたいな舞台になったらそれは、東京イボンヌの演劇ではなくなってしまう。
満足度★★★★
クラシック
遅くなりましたが、感想を書いておきます。
ここは、クラシック音楽が舞台で使われるので、すごく和むことが出来ます。
日頃、クラシック音楽にあまり接しないので、
芝居という非日常な空間では、イイなぁと思います。
役者さん達がいいですねぇ。
特に、今回すごく気になったのが、太田亜希さんでした。明るい雰囲気と健気な可愛らしさが出ていたと思います。
今回のラストシーン、私は好きです。
満足度★★★
今更感想ですが
芦屋夫妻、作家、夏樹のどれに焦点を合わせていいかわからず、ピンボケしてしまったような印象。
どれも惹きつけられるキャラクターだっただけに、惜しい。
個人的には夏樹がよかったのだけど、最後は物語から置いてかれて放置されてしまったしなぁ。
満足度★★★★
作り手の愛を感じる
東京イボンヌ第四回公演は、ついに有名な作曲家シューマンと向かい合うということで興味津々でした。
シューマンの人生は楽曲同様、多彩で劇的であるので、ネタは豊富だけれどそれだけに一捻り何かがなければ、その他大勢の中に埋もれてしまう危険があります。
ただ、東京イボンヌが見せてきた劇――練りに練った、しかし決してマニアックに偏らないストーリーと、クラシック音楽が劇を包み込むという独特なスタイル――には、目を見張るべきものがあるので、今回も何かやってくれるはず、という期待がありました。
私もそこそこクラシック音楽は聴いてはいますが、劇の要所要所で音楽が鳴り出すと、その使われ方に改めて心地良さを感じるのです。
もちろん知らない曲もありますが、観劇後それらの曲を追いかけるのも楽しみの一つとなるのです。
今回の「シューマンに関すること」
一つに絞らせて頂くとすれば、最後、シューマンに忠実なまでに自分の人生をなぞった芦屋小太郎の頭に交響曲第三番「ライン」が流れたところ。
「ライン」はシューマンが不遇だった一時を経て幸せを感じた頃に作られた曲で、精神病院に入院した芦屋のタクトがこの曲を奏でた時は、一瞬鳥肌が立ちました。
ここに作り手の思いを特に感じました。
あの重厚で壮大な第一楽章が鳴り響く中、幕を閉じるのです。
心地良い余韻を感じました。
ついに狂って精神病院入院で幕、と聞くと悲劇的に感じるものですが、音楽の力というか効果というか、劇中でも触れているように、シューマンの晩年は哀しいものだったということへのアンチテーゼにもなっていると受け取れました。
東京イボンヌの作る劇には、題材への温かな思いが感じられます。それが今回はシューマンへ存分に向けられていたのです。
しかし単なる持ち上げではなく、取材した中での結果であることは、シューマンを語る台詞でも実感出来ること。
シューマンという題材を現代風にアレンジし、よりドラマチックに生かしたことは、劇作の醍醐味ともいえ、作り手の技を感じさせました。
多少、マニアックなネタもありましたが、そこは飛ばしても、緻密でありながらスッキリする仕上がりだったと思います。
そして、役者は簡素なセットに耐えうる力を持った人ばかり。
道具は最小限に、あくまで、人間の表現力で劇を語る。
第二回公演からこれが顕著になってきている感がありますが、今回はセットは最後の場面以外はそのままで、舞台の前後を別空間と見做しての展開。
違和感なく観ることが出来たのは、やはり舞台に立つ役者の上手さですね。
これも東京イボンヌの魅力の一つです。
満足度★★★
高尚な構想
シューマンに傾倒する元天才ピアニストという着想が面白い。役者も秀逸で、落ち着いた大人の雰囲気。
話の作り方、というか人物の設定が、「設定」から「人間性」へと練りこまずに、話の筋のための「都合」が優先したかのような行動や台詞が、それがまた一つの芸術に対するオマージュのようでもあり、狙ってやったのなら面白い試みだと思う。
満足度★★★
あれこれ予習して行きましたので
観劇された方からの情報もインプットしていたので、戸惑うことなく観ることができました。
意外とベテランさんの集まった作品でしたね。
満足度★★★★★
虚構と現実の交差の中で
劇団2度目。
悲しいお話。
しかし観劇後の余韻がとても良い。
一遍の詩のような作品。
シューマンは詩人だったらしいが、作品自体も詩のようだった。
最後の交響曲で作品が昇華していくのを感じた。
満足度★★★
チラシを見て
綺麗な作品かと思い観に行きました。知識はないですがクラシックは割と好きなのでシューマンの音楽にも浸りたいと思い観劇。シューマンの人生について描く作品かと思ってましたがちと違いましたね。少し残念。
満足度★★★
構造的には面白くなりそうだったのだが
雰囲気はよかった。
演技もなかなかだった。
しかし、結局伝えたかったこと(見せたかったこと)は何だったのだろう。
見終えてそれを考えてしまった。
満足度★★★★
劇構造がシューマンの交響曲のようだ。
シューマンの物語かと思いきや、シューマンの生まれ変わりと思っている男の物語。そしてそれを小説にしようと思っている作家がいたりして、物語は二重三重の構造を持つ。
そしてその生まれ代わりと思う男とその男を愛する妻の物語がある。この妻がとてもかわいそうだったが最後に少し救われた。
役者では作家役の奈良崎まどかと夏樹役の太田亜希が魅力的だった。また個性的社長役の秋定里穂がとてもチャーミングだった。
満足度★★
設定に頼りすぎの感
フライヤーから膨らんだ期待やイメージとは大きくそれた作品だった。クララとシューマンをめぐる愛の物語はある程度知られた話だが、本作の作者による独自の物語としての感動が薄かった。登場人物が多いが、エピソードが作者の頭の中で組み合わせられた感じで作品の中で呼吸していない気がする。もう少し話の筋を音楽家夫妻に集約して描いたほうがよかったのでは。ほかのエピソードを入れて逃げているような印象が残った。具体的にはネタバレで。
満足度★★★
タイトル通りでした
シューマンに関して、よくわかりました。
文章を媒体とした情報よりも、人の語る話に被せて音楽が流れ、
作曲時の人間関係、背景などが大変よく理解できました。
見事にオマージュしてました。