シューマンに関すること 公演情報 劇団東京イボンヌ「シューマンに関すること」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    構造的には面白くなりそうだったのだが
    雰囲気はよかった。
    演技もなかなかだった。

    しかし、結局伝えたかったこと(見せたかったこと)は何だったのだろう。
    見終えてそれを考えてしまった。

    ネタバレBOX

    自らのピアニスト生命が消えてしまったことから、精神に変調を来し、シューマンの生まれ変わりだという男(芦屋)と、それを支える妻の物語かと思っていたら、彼らからシューマンについて取材する編集者の女性の話が浮かんでくるのだが、その2つの線がどのように交わるのかと言えば、単に小説がかけなくなった女性がアイデアとして使うためだけの設定となってしまったようにしか見えなかった。

    これはどういうことなのだろうか。

    狂ってしまった男からわかるのは、シューマンの半生と同時代に生きた作曲家には誰がいたのかぐらいで、それ以上の、彼ら夫婦の深みはあまり感じられない。

    出演者の一覧には、作家である女性の名前が一番最初にあるということは、彼女がこの物語の主人公であるということなのか。
    とてもそうには見えない。

    不倫体験をリアルに描いたことで脚光を浴びた作家で、今は書けないということだけで、次の作品のテーマが、なぜシューマンなのかがイマイチわからない。

    てっきり、この作家と編集者の女性が狂言回しとなり、シューマンの生まれ変わりだと主張する芦屋とその妻の葛藤が、シューマンの本当の物語とともに、クローズアップされていくのかと思っていたが、単に歴史的事実を台詞でなぞり、いかに自分がシューマンの生まれ変わりなのかと主張するのみ。

    一番疑問だったのは、出版社の人々だ。
    狂った男や書けない作家、病気の夫を抱える編集者という、陰々滅々としたストーリーにひと味加えるための、コメディ的要素なのだろうが、彼らは物語全体にまったく活きてこない。

    せっかく加えたのならば、主たる物語を補強するような何かが必要だったのではないだろうか。
    特に、社長は出るたびに、彼女だけはなぜか衣装替えまでしているのだ(チャイナドレスなのに・ここ笑うところ?)。かなり力のある女優さんだとは思うのだが、これではもったい。

    また、シューマンの曲は、ラストのシーンでは効果的だったが、途中での使い方は、単に曲紹介だけのようであり、せっかくテーマに据えているのであれば、もっと積極的に、かつ印象的に活用すべきだったのではないだろうか。

    つまり、「舞台とクラッシックの融合」を標榜するのであれば、せめてシューマンの数々ある曲とストーリーを融合させるぐらいのことはできたのではないのだろうか。

    シューマンの生まれ変わりという男と妻、編集者の女性とその夫という2つのストーリーを女性小説家が、虚構の中で交錯させるという構造はとても面白く、狂った男の現実と虚構という対比もあるので、この物語はもっと面白くなったのではないかと思った。

    小説家が、小説の主人公芦屋を、シューマンがセーヌ川へ身を投げたように、小説の中で、多摩川へ身を投げさせたような展開、クララと称して現れた女性編集者の姿のような、虚構と現実がない交ぜになったあたりに面白さが潜んでいたように思うのだが。

    唯一救いなのは、ラストで、シューマンが没した日に、芦屋が妻を「クララ」と呼び、芦屋夫婦に希望の光がかすかに射すところぐらいだろうか。そこで交響曲が流れる様子もとてもよかったのだ。

    4

    2010/03/15 05:05

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  • きゃるさん

    チャイナドレスと、さらにそれを衣装替えした意味はイマイチわかりませんが、あの中では目を引きました。
    衣装で言えば、登場した男性が全員、いわゆるパンツイン(シャツをズボンに入れている)しているのもちょっとだけ気になりましたけど(笑)。

    2010/03/22 05:42

    アキラさま

    >特に、社長は出るたびに、彼女だけはなぜか衣装替えまでしているのだ(チャイナドレスなのに・ここ笑うところ?)。

    アキラさまのコメントの中で、自分と同じようにチャイナドレスの着替えに気づいて書いておられるところが嬉しかったです(笑)。3着もあるのは女優さんの手持ちの服なんでしょうか、気になります(笑)。芝居の衣装でチャイナドレスって目をひくのか、以前、別の劇団の公演で、やはりチャイナドレスの女性が出てきたのですが、終演後のトイレで、観客の女性が「あの人物、どうしてチャイナドレス?わかんない」と笑ってたことがありました。

    2010/03/20 11:57

    きゃるさん

    コメントありがとうございます。

    私の評価は上の通りですが、やはり他の方の評価の高さとは感じ方が違ったようです。
    しかし、きゃるさん同様に感じた方もいらしたようでですし、私もほぼ同意見でした。
    クラシックとの融合という点と、どこがポイントなのかの見方によって評価が異なったのでしょうね。
    私は代替案みたいなものは思いつかなかったので書きませんでしたが、この構造を、このまま活かしてもっと深掘りできたのではないかと思いました。

    2010/03/17 05:42

    アキラさま

    コメントありがとうございました。アキラさまのネタばれを読ませていただき、まったく同感です。私が言いたかったのも、つまりそういうことなのです。もっと良くなりそうな作品なんですけどね。私もあまりみなさんが高評価なので一瞬ためらったのですが、嘘をつきたくなかったので正直に書きました。
    以前、みささまが私にご指摘くださったことを踏まえ、単に欠点を言うのではなく、「では、どうすればよいのか」という代案も考えて書いてみました。もちろん、日ごろも「悪口を書こう」という意志を持って書いたことは一度もないですが、読む人の心情を慮って書くってむずかしいですね。大多数のかたが絶賛し、感動されているようなので、たぶん良い作品なのでしょう。私には不協和音のごとく、引っ掛かりが最後まで残った点がいくつかあったので、あの点数になったのですが。

    2010/03/16 11:20

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