シューマンに関すること 公演情報 劇団東京イボンヌ「シューマンに関すること」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    設定に頼りすぎの感
    フライヤーから膨らんだ期待やイメージとは大きくそれた作品だった。クララとシューマンをめぐる愛の物語はある程度知られた話だが、本作の作者による独自の物語としての感動が薄かった。登場人物が多いが、エピソードが作者の頭の中で組み合わせられた感じで作品の中で呼吸していない気がする。もう少し話の筋を音楽家夫妻に集約して描いたほうがよかったのでは。ほかのエピソードを入れて逃げているような印象が残った。具体的にはネタバレで。

    ネタバレBOX

    まず冒頭のクララ、シューマンの愛の物語の紹介部分での俳優の演技に失望した。こういうシリアスな会話劇的な場面で俳優の声が腹から出ておらず胸から上で話しているというのは致命的。台詞が心に響いてこないからだ。シューマン&芦屋小太郎役の銀座吟八は額に指を当てたポーズから発せられた台詞のしゃべりかたが田村正和そっくりでふき出しそうになった。出版社の場面は本筋には影響しないし、重苦しいドラマの息抜き的場面なのかもしれないが、明らかに浮いている。その理由は台詞自体は面白いのに、社員のやり取りが演技のキャッチボールになっておらず、めいめい覚えた台詞をしゃべっているようにしか見えなかったから。場面によって次々チャイナドレスを着替えて出てくる女社長(秋定里穂)は、密貿易をやっている謎の女といったいでたち(笑)。声が美しく、若いときの阿木燿子みたいななかなかの美女。どうせなら、もう少しドラマにからむ役どころにしてほしかった。編集者(富真道)とベンチで短い会話をする場面があるが、これもあまり必要を感じない場面だった。いっそのこと、女流作家と女社長を一人の人物として描くか、原田をノンフィクションライターとして女流作家を省くか、人物を簡素化したほうがよくなると思う。女流作家が女性編集者原田に芦屋夫妻の周辺を取材させる必要性からか、原田の夫が重い心臓病を抱え、手術のための費用を必要としているという設定になっている。野球好きで妻のことに無頓着な原田の夫(望月雅行)の様子を描き、シューマンに取りつかれ利己的な芦屋と妻との関係との相似性も与えているが、描き方が中途半端になってしまった感もある。設定に頼りすぎ、人物の内面性が胸に迫ってこないため、感動がうすくなってしまったというのが私の感想だ。
    女流作家(奈良﨑まどか)はスランプとはいえ、どうしてあんなに暗い表情なのか。芦屋の妻(蒼井まつり)も常に目をしょぼしょぼさせているし、女優が2人も陰気なのはやりきれない。女優を複数使うときは、はっきりとした色分けをして描いたほうが生きてくる。芦屋の銀座はデビュー当時絶賛されたころの過去の栄光を示す記事のスクラップブックを読むところが良かった。反面、目をむくばかりの狂気の演技が巧くないので、興を殺いだ。 断片的なエピソードをあれこれ入れるより、芦屋が狂気に至る過程と夫婦の情愛をもう少しきめ細かく描いてほしかった。
    終演後、外に出ると作者らしき人に観客が「いろんなお話が詰め込まれていて、面白かったです」と話しかけ、「日ごろのいろんな思いを入れました」と答えていた。入れるのはけっこうだが、もう少し一歩引いて観客の立場になって書いてみるのも大切では?始まる前は「1時間40分なら短くていいな」と思ったが、終盤は少々飽きてきて、時計を見てしまった。

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    2010/03/13 19:42

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  • はじめまして。きゃるさんのコメント、私が思ったことが忠実に文章になっていて、「そうそう!」と感動してしまいました。

    2010/03/17 01:42

    >芦屋が狂気に至る過程と夫婦の情愛をもう少しきめ細かく描いてほしかった。

    これは同感です。ここをきちんと描いてくれれば、シューマンとクララの関係までも浮かび上がってきたように思えるのです。
    皆さん、評価が高いので、私のような見方は偏っているのか? と思っていましたが(笑)。

    2010/03/15 05:23

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