雉はじめて鳴く 公演情報 雉はじめて鳴く」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
1-20件 / 21件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★

    演劇鑑賞会にて 2023.8.2

    鋭い観察眼と綿密な取材を元に人間や題材を多面的にとらえる戯曲で数々の賞に輝く横山拓也(俳優座HPより)の作品ということで、かなり期待していた。
    3年前の評判作とは思えない、拍子抜けの舞台だった。役者が、とても高校生には見えなくて戸惑う

    健の父親が自分の母親の介護を選ぶのも息子として一つの選択かもしれない。だが、自分や家庭を捨てた夫に彼女はどれ程絶望し苦しんだろうか。母子家庭の生活苦から酒や薬に溺れた彼女を私は責められない。養育すべき我が子に依存してしまうケースも珍しくない筈だ。
    彼女は果たしてモンスタークレーマーなのだろうか?

    結婚願望がありながら、同僚の既婚教師戸倉と不倫をしていた教師の浦川に、これもまた「結婚の現実」であることを垣間見せたかったと思う。

    わずかな間に劇的に変わっているジェンダー観の変化に舞台はついて来られたろうか。

  • 満足度★★★★★

    前方席だったので、いきなり舞台にデーンと階段状のものがあって見づらそうと思っていたら、それは回って別の表情を作るのでした。
    舞台の奥に現れた車椅子の老女と中年男性が誰かは最後にわかるのですが、切なかったです。

  • 満足度★★★★

    iakuの横山拓也さんの脚本を俳優座の眞鍋卓嗣さんが演出。

    チラシの文面や写真からの漠然とした(メロドラマチックな)予想などかすりもしない切実な内容にしっかりと惹きつけられた約2時間。

    戯曲・演出・キャストそれぞれの確かさが美しく実を結んだ、見応えのある舞台だった。

    老舗劇団らしいしっかりと細やかで誠実な舞台。よいものを見せていただいた、と思う。

    ネタバレBOX

    高校生。まだ大人とはいえない。けれどもう子どもでもない。さまざまなことを感じ、そして考えながら、理不尽な親から逃げ出す手立てはない。

    彼が小学生だったら、迷うことなく抱きしめてなぐさめてやれただろう。

    でも三十代の女性教師と男子高校生となると、相談に乗り、相手の心を落ち着かせるためのハグだとしても、いろいろと難しいこともある。

    でもたぶん、それは恋ではない。そんな気がした。

    そもそも彼女自身、人に言えない相手と関係を持っていたり、そのくせ結婚願望があったりもして、高校生相手に心を動かしてる場合じゃないのだ。

    彼の方だって先生が好きと言いながら、それは恋というより頼るべき人を持たない彼がようやく見つけた安心できる場所だったのかもしれない。

    父は家を出て居場所がしれない。母はいつも疲れて苛立ち、彼を怒鳴ったり脅したりするヒリヒリするような家庭。もう、無理かもしれない、と彼は呟く。姿を消した彼を皆が探し、その名を呼ぶ。「健、ケーン!」と繰り返される名前が、雉の鳴く声のように聞こえる。

    途中で何度か挿入される中年の男と年老いた女性の会話は、少年の父とその母親だと思って観ていると実はそうではなくて。 たぶんこれは意図されたミスリードだろう。

    クライマックスで彼女が示した強い意志は観客にとって小気味よかったけれど、それ以上に彼がその先も生きていく上で大事なことだったに違いない。

    キャストはそれぞれにリアリティがあって、いろんな場面で身につまされる。なかでも健の母親を演じた清水直子さんの演技は凄まじかった。
  • 誰もが懸命に生きている。

    押し潰されないように距離感を大切に生きる人。
    責任を全うしようと自分をすり減らしながら生きる人。
    正解なんか分からないし、結果論でしか語れないのかも知れない。

    そんな世の中なのに、建前や世間体をかなぐり捨てた「おかしなことを言ってるのは分かります。でも舞原くんは、今、私を必要としてます。」と生徒の事を最優先して言い切った先生の姿に感動して涙が溢れてました。

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2020/01/19 (日) 14:00

     iakuの横山拓也が俳優座に書き下ろした2作目。横山脚本にしては、かなりシビアな展開になっているが、最後は人間を信じていると言えるものになっている。とある高校の37歳女性教員の浦川は、担任するクラスの生徒で、副顧問をしているサッカー部の新キャプテンである、家庭に問題を抱える生徒の健の話を度々聞いているが、実は不倫もしている。新たにスクール・カウンセラーが来ることになって、物語が動く……。横山の作品にしては珍しく「悪い人」が出てくるのだが、それも已むを得ないと思わせる展開は巧い。しかし、結局は健が救われたのか、よく分からない展開が切ない。タイトルは七十二候の一つだが、健の思いを表わしているようだ。
     ただし、教頭をちょっとピントがずれた人物として描いているが、実際の学校は校長より教頭(今は副校長と呼ぶことが増えている)を軸に動くことが多いのが現実に思える。

  • 満足度★★★★★

    俳優座でも小劇場界に出張る保亜美や清水直子、また若手を配し、年配をエライ役にしない戯曲、杉山至の(久々見た)グレイトな美術で、新劇の俳優座の舞台である事をふと忘れ「事態の細かな推移」を凝視する小劇場演劇の世界に入り込んでいた。
    女性の会話がやはり巧い作家。俳優座俳優が精度高く戯曲の要求に答えていた。危うげなストーリーが崖から転落せず踏みとどまってイイ話に収まるが、これが青少年(人間)理解の議論に一石投じる結末となり、広く現代批評ともなる。微かな辛味が(私としては)作品の命であった。

    ネタバレBOX

    二つの時が流れていた事が最終場で分るのだが、三十年の時を経た「答え合わせ」が本当に正解であるのかも含め、単純に割り切れない人生の時間を思わせられた。十代当時、学校という空間で、「俺に仕事をさせろ」状態の教頭も含めて(含めて良いのか疑問はあるが・笑)、彼を巧くいなす女性校長、ズルいサッカー部顧問、主人公である副顧問の女性教師と、新任のスクールカウンセラー、そして同部員の生徒(男女)が、問題の男子生徒と彼が離れたいと思っている一人親(母)と対峙する場が、彼を救わねばという真摯な思いを凝縮して結晶となる。その伏線は、演出か戯曲の指定か、芝居の冒頭に飛び交う声、即ち問題の生徒を探して呼ぶ声である。舞台中央上手寄りに立つグランド用スピーカーを通して流れる幾つかの声が、限定された区域を越えて行く音として残響するのだが、これと装置とのマッチングが素晴らしい。
    多様に使いまわす回転舞台を舞台手前中央に据え、奥にややカーブのあるプラットフォームが左右袖まで渡されているが、それら全体がくすんだコンクリートの地肌色で、特に奥の高みのある通路は左右に立つランプと相まって、高速道路に見える。ごうごうと鳴る走行音に「声」が掻き消される情景がまず提示されるという按配である。前方席から見上げる角度がその印象を強めたのかも知れないが..。
    奥の通路は「もう一つの時間」で、年を重ねた男がさらに年嵩の女性の車椅子を引き、見晴らしの良いそこで会話をする場所になる。
    殺伐とした都市の象徴から、喧騒を離れたのどかな時間への変化。変化する背景色、生々しくひりつく「現在」が展開する回転舞台エリアとの対照も印象的であった。
  • 満足度★★★★★

    劇団俳優座と言えば、「新劇」と呼ばれた老舗劇団のひとつ。でも最近、元気があるようには見えません。若い観客が少ない、少な過ぎる。演劇人口が減ったとは思いません。宣伝が上手く有名俳優の出る舞台はチケットが取れないほどの人気なのですから。今日は久々の劇団俳優座の俳優座劇場公演。平日の昼、満席ではありませんでした。良い作品だからと言って客を集められるとは限らない。そんな日本の演劇界の現実を感じるのです。

    iakuの横山拓也氏の書き下ろした戯曲を眞鍋卓嗣が演出、昨年の『首のないカマキリ』に続く第2弾。誰もが経験している学校の話。生徒側から言えば、素敵な先生の思い出。先生側から言えば、優秀な生徒より手を焼いた生徒の苦労。ありきたりの話のようですが、父の不在、母子家庭、男子生徒と女性教師、ヤングケアラー、現代性があります。同じく高校が舞台だった畑澤聖悟『親の顔が見たい』(2009年)のような迫力がありました。

    新任のスクールカウンセラー藤堂智絵(保亜美)が物語を分かりやすく解きながら展開し、主人公舞原健(深堀啓太朗)の家出へと話が進みます。担任教師浦川麻由(若井なおみ)が優しく接します。舞台は抽象的なセットですが、回り舞台を上手く生かしています。舞台を回し、照明を変えることで、一瞬にして「場」を変える。上手い。緊張感が途切れないのです。前回『首のないカマキリ』と全く異なるキャラクターを演じた健の母親役の清水直子。どんな芝居でも存在感抜群の劇団桟敷童子の板垣桃子と重なります。私が驚いたのは、同じく前回に続いて出演の後藤佑里奈。潔癖性の強い今時の女子高校生役がぴったり。本公演の連続出演、とても嬉しいのです。

    開演前から悩みを抱えた健が舞台にいました。物語のスタートラインを明確にしているのが良い。タイトルですが、雉は「ケーン」と鳴くのですね。「健」とのつながりなのでしょうか。そして最後の「えっ!」と誰もが思うまとめ方。素敵な作品に仕上がっていました。是非多くの若者に観てほしい。もちろん若くない人にも。高校生を対象にした演劇鑑賞会でも、衝撃的ですが、人間関係のあり方を考えさせる適切な作品だと思いました。

  • 満足度★★★★★

    生徒、教師、親、それぞれ縦や横のコミュニティーが織りなす人間模様。
    清濁合わせ持つその鮮やかさたるや。
    まるでスポンジになったかの様に舞台から溢れ出る感情が、紡がれる言葉が沁み込んできました。

    男子生徒の女教師に恋焦がれる頑なさにピッタリ張り付いた涙したくなる痛み。
    ごくごく普通の37歳でもある女教師の、一人の女として、常識ある教育者として、人生の先輩である大人として一体何が正解なのか、悩ましい心情。
    もう切なくて切なくて胸が締め付けられます。

    登場から速攻でこちらのペースをも掴み取ってしまうカウンセラー女性の人間力、
    代表者として真価を問われる校長の立ち振る舞い、
    ある意味台風の目でもある母親の目が離せない言動、
    調子に乗って全て挙げてしまうとネタバレになってしまいますが、もう出演されていた人たち全員が(時には厄介ながら)とても愛おしい。

    ことごとく教頭先生には笑わせて頂きましたが、これは油断すると同じ穴の狸になりかねないので気を付けなくちゃ(笑)

    確実な総合力で心揺さぶられる極上の人間ドラマでした。

  • 満足度★★★★

    学園ものである。どこにでもありそうな高校の青春物語なのに、現代社会の辛いところをシャープに織り込んで、見事な現代人間ドラマになっている。さすが、横山拓也!
    昨年の秀作「熱い胸さわぎ」のカップリングとでもいうべき作品で。同じく母子家庭の母子が主人公になっている。こちらは子供が男の子、あちらはひと夏の物語、こちらは冬。家族、親子がすべての人間の避けられない根源的人間関係だということを作者がよく心得ている。
    ぎりぎりの暮らしの母子家庭の高校二年生男子の冬物語。体をすり減らして働く母(清水直子)を重荷に感じて、サッカーの部活と、担任の年上の女教師(若井なおみ)に避難所を求めているケン(深堀啓太郎)。母との殺伐とした日常関係と、もう二年間も、祖母の介護のためといって国へ帰ってしまった父の不在で心理的に追い詰められているケンを、担任の女教師は話し相手になり求めに応じてハグしてやる。そういう、人間同士の肉体的接触の多義的な意味あいもこの作者は巧みに取り込んでいる。「あつい胸騒ぎでは「乳房」、こちらは「父」。その「ハグ」が学内で問題になる。
    物語は高校に派遣されてきた新任のスクールカウンセラー(保亜美)を通して分かりやすく展開し、ケンの家出、失踪へと広がっていく。
    感想1。新劇団が、小劇場のめぼしい作家に作品を委嘱するのは、ここ数年の趨勢で、文学座、青年座、民藝はもとより、銅鑼とか青年劇場とか、以前から戯曲主導でやってきた劇団はどこでも同じことをやっている。それぞれの文芸制作部の力がなくなってしまって、窮余の策だろうが、作品的にはあまり成功例がない中で、この作品はかなりうまくいっている。よくある、劇団側も作者の側もお互い帳尻を合わせました、という発注作品的安易さがない。深みのある出来のいい現代青春ものになっている。見ていても気持ちがいい。
    感想2。さすが俳優座で演技がモダンで鋭い。脇がもたもたしていない。母親の清水直子の無駄のない人物造形。学校の校長(山下裕子)と教頭(河内浩)もウけ芝居をやりたくなるところを見ごとに抑えてリアリティを担保する。たいしたものだが、ここでも、熱い胸騒ぎのiakuと俳優座の違いがくっきりと出ている。どちらがいいというレベルではなく、二つの提示が舞台にある。面白い。
    それにしても、ブレヒトと田中千禾夫、千田是也の俳優座も変貌するものである。しかし、時代とともに歩まざるを得ない演劇では変貌を畏れてはいけないだろう。
    感想3。平日の昼公演、客席は三割がた空いていた、若い客も少ない。Iaku公演なら満席である。客席数が違うというかもしれないが、アゴラで見るより、最初から演劇劇場として作られた六本木の真ん中の俳優座の方が客にとってはいいに決まっている。そこで僅か10公演でも客が埋まらない(アゴラの手打ちは15公演全席完売である)というのは、やはり、経営部がよく考えなければならないだろう。つまらないことを言うようだが、せめて、当日客席パンフで、配役くらいは知らせるべきだろう。俳優座なら役者は誰でも知っている、配役表など無駄だと思うところがダメなのである。

    ネタバレBOX

    思いがけない最終場面でのどんでん返しがあるが、これは見事である。青春は一時の激情、だからこそ貴い、という青春物語のくくりがここではっきり見えてくる。
  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2020/01/14 (火) 14:00

    125分。休憩なし。

    ネタバレBOX

    後日記載。
  • 満足度★★★★★

    ぎりぎり支えられたプラ・モデルの現場報告。 その空気圧の高さに縮み上がるなか、われ知らずスパークした勢いで 覚悟と真心の両輪が回りだす。
    非難し合うのでなく 避難し合うこと。 今度は私の番・・・ほの甘いやすらぎに満たされる秀作。

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2020/01/10 (金)

    今年の観劇初めがこれって幸先いい!!すごくずしんとずきゅんときたぁ~~~。カマキリに続いてなので劇団俳優座の色はこうだからこうしたらいい!があったのかしら。観る世代によって感じ方も違うのだろうな。親子で観るのも良いかもですね。

  •  ハグで始まり時を隔ててハグで終わる、
    オープニングとエンディングの整った形式美と
    その両シーンで流れる同じマックス・リヒター?の
    郷愁を誘う曲の旋律との相性抜群の作品。

     舞台セットのムーブメントの諸相が、舞台上の
    人物たちの振舞いと連動してその内面や人間関係の
    繋がりのデリケートな揺れ動きの表出に寄与している
    だけでなく、その揺れを増幅して後方の観客にも
    伝えようとするアンプ的な役割を果たしている感もあり。
    また、ほとんど間を置かず連続接続する場面転換など
    『インコグニート』で魅せてくれたスタイリッシュな
    演出術の片鱗がうかがえるのも好印象。

  • 満足度★★★★★

    ■120分強■
    綺麗事で収めないのが横山流。危うい関係を、とても細やかに描いていた。

  • 満足度★★★★★

    いやあ、ガツンとくる芝居で気持ちがいい。観に来てよかった。今回の舞台は2列目が最前列になるので、前方の席のチケットをお持ちの方はご注意を。

    ネタバレBOX

    最前列だったが、舞台上には1mほどの高さ+5〜6m径の円弧状になっているコンクリート状のセットがあって見上げる形になり、このままだと首が疲れそうだなあと思ったら、盆が切られているのが分かったので一安心。
  • 満足度★★★★★

    脚本、演出、出演者、セット、とにかくウマいの一言。いかにも今風の学園群像劇、グッときましたね。しかしながら終盤で、あのおじさんとおばあさんは実はそうだったのか、とちょっとした驚き。

  • 満足度★★★★

    さすがに手堅く巧い。

  • 満足度★★★★★

    爽快にやられました。

    ネタバレBOX

    雉はケーンと鳴きますが、雉が初めて鳴く、即ちケンは主張できるくらい大人になったってわけで、雉も鳴かずば撃たれまいなのですが、鳴いたことによって周囲が反応して助けてくれて無事高校生活を続けることができましたという話。

    そして、後ろに出てくる男女は父親とその母(ケンの祖母)だとばかり思っていたら、30年後のケンと避難所として守ってくれた担任の女先生だったということが分かってやられたなと思いました。

    ただ、内容の割には舞台が広すぎて横スクロールが目立ち、立体感がありませんでした。また、若い人のお芝居に慣れたせいか、全く若さが感じられませんでした。
  • 満足度★★★★

    人間関係の微妙な距離、甘酸っぱい三角関係、愛情一歩手前の親密さを巧みに描く横山拓也らしい舞台。小劇場とは違って、広い舞台を、効果的に使った演出もよかった。

    高校の女性教師ウラカワ(若井なおみ)を避難所にする男子生徒ケン(深堀啓太朗)。サッカー部の新キャプテンになった彼の家は、母親(清水直子)が夜勤に疲れ、酒に頼って家事はできず、ケンが主婦代わりである。いわゆるヤングケアラーとして、健気に母を支えているが、もう限界になっている。父親は母親を見捨てて家を出たまま、2年以上帰ってこない。

    一方、新しく学校に赴任してきたカウンセラーのトモエ(保亜美)に、ケンに思いを寄せる女子マネージャー(後藤佑里奈)が、ケンとウラカワが抱き合っていたのを見たと相談を持ち込む。はたしてケンとウラカワは教師と生徒の一線を超えてしまったのか。独身のウラカワは、不倫関係にあるトガワ先生(宮川崇)との関係も終わらせたい。シリアスなドラマに、空気の読めないおせっかいな教頭(河内浩)が笑いをおりこみ、スピーディーで緩急のある舞台は、非常に濃密な時間を作り出す。

    俳優は母親役の清水直子や教頭役の河内浩の脇役がしっかりと要所を締め、ウラカワの若井なおみとケンの深堀啓太朗の主役は、落ち着いた抑制的な演技でよかった。カウンセラー役の保亜美が教頭に次ぐ、第二のトリックスターで、洒脱な演技で笑いを誘っていた。

    ネタバレBOX

    最後、ウラカワ先生は「私が責任を取る」とからだをはって、ケンを守る。しかし、決して、無責任に恋愛関係にはいりこむわけではない。二人だけになったカウンセリングルームでハグを求めっれても「そういう気持ちには答えられない」と一線は守る。教師としてどこまで生徒に寄り添えるのか、という課題設定はリアルだった。トガワの「ちょうどいい位置から見守るしかない」という、通り一遍の対応とは違う。

    舞台の奥の崖の上に時折現れる車椅子の老女と中年男が、最後、30年後のケンとウラカワとわかる。その種明かしで、それまで見えていたのとは全く違う景色が見えてくる。これは意表をつかれた。互いに年輪を重ね、教師と生徒という関係を超えた二人のハグは切なく愛しいものだった。
  • 満足度★★★★★

    横山拓也の書き下ろし。舞台は、とある高校。独身の担任教師(女性)と、精神的に問題のある母親を世話する教え子(男子)との〝恋愛〟事件を軸に、ヤングケアラーという極めて現代的なテーマを投げかける。家庭に事情を抱えた生徒とどう向き合えばいいのか、女性教師の悩みが手に取るように伝わってくる。おそらく真面目で熱心な教師ほどぶつかる難問なのだろう。よく取材された脚本。俳優陣の熱演もすばらしかった。特にトンチンカンな教頭役は、シリアスドラマに唯一笑いをもたらす存在として光っていた。問題作。

    ネタバレBOX

    物語の序盤と終盤に、30年後の教員と教え子が登場する。しかし、それが30年後であることに、最初は気づかない。その演出をどう見るか、評価は分かれるのではないか。

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