雉はじめて鳴く 公演情報 劇団俳優座「雉はじめて鳴く」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    俳優座でも小劇場界に出張る保亜美や清水直子、また若手を配し、年配をエライ役にしない戯曲、杉山至の(久々見た)グレイトな美術で、新劇の俳優座の舞台である事をふと忘れ「事態の細かな推移」を凝視する小劇場演劇の世界に入り込んでいた。
    女性の会話がやはり巧い作家。俳優座俳優が精度高く戯曲の要求に答えていた。危うげなストーリーが崖から転落せず踏みとどまってイイ話に収まるが、これが青少年(人間)理解の議論に一石投じる結末となり、広く現代批評ともなる。微かな辛味が(私としては)作品の命であった。

    ネタバレBOX

    二つの時が流れていた事が最終場で分るのだが、三十年の時を経た「答え合わせ」が本当に正解であるのかも含め、単純に割り切れない人生の時間を思わせられた。十代当時、学校という空間で、「俺に仕事をさせろ」状態の教頭も含めて(含めて良いのか疑問はあるが・笑)、彼を巧くいなす女性校長、ズルいサッカー部顧問、主人公である副顧問の女性教師と、新任のスクールカウンセラー、そして同部員の生徒(男女)が、問題の男子生徒と彼が離れたいと思っている一人親(母)と対峙する場が、彼を救わねばという真摯な思いを凝縮して結晶となる。その伏線は、演出か戯曲の指定か、芝居の冒頭に飛び交う声、即ち問題の生徒を探して呼ぶ声である。舞台中央上手寄りに立つグランド用スピーカーを通して流れる幾つかの声が、限定された区域を越えて行く音として残響するのだが、これと装置とのマッチングが素晴らしい。
    多様に使いまわす回転舞台を舞台手前中央に据え、奥にややカーブのあるプラットフォームが左右袖まで渡されているが、それら全体がくすんだコンクリートの地肌色で、特に奥の高みのある通路は左右に立つランプと相まって、高速道路に見える。ごうごうと鳴る走行音に「声」が掻き消される情景がまず提示されるという按配である。前方席から見上げる角度がその印象を強めたのかも知れないが..。
    奥の通路は「もう一つの時間」で、年を重ねた男がさらに年嵩の女性の車椅子を引き、見晴らしの良いそこで会話をする場所になる。
    殺伐とした都市の象徴から、喧騒を離れたのどかな時間への変化。変化する背景色、生々しくひりつく「現在」が展開する回転舞台エリアとの対照も印象的であった。

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    2020/01/17 03:00

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