雉はじめて鳴く 公演情報 劇団俳優座「雉はじめて鳴く」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    劇団俳優座と言えば、「新劇」と呼ばれた老舗劇団のひとつ。でも最近、元気があるようには見えません。若い観客が少ない、少な過ぎる。演劇人口が減ったとは思いません。宣伝が上手く有名俳優の出る舞台はチケットが取れないほどの人気なのですから。今日は久々の劇団俳優座の俳優座劇場公演。平日の昼、満席ではありませんでした。良い作品だからと言って客を集められるとは限らない。そんな日本の演劇界の現実を感じるのです。

    iakuの横山拓也氏の書き下ろした戯曲を眞鍋卓嗣が演出、昨年の『首のないカマキリ』に続く第2弾。誰もが経験している学校の話。生徒側から言えば、素敵な先生の思い出。先生側から言えば、優秀な生徒より手を焼いた生徒の苦労。ありきたりの話のようですが、父の不在、母子家庭、男子生徒と女性教師、ヤングケアラー、現代性があります。同じく高校が舞台だった畑澤聖悟『親の顔が見たい』(2009年)のような迫力がありました。

    新任のスクールカウンセラー藤堂智絵(保亜美)が物語を分かりやすく解きながら展開し、主人公舞原健(深堀啓太朗)の家出へと話が進みます。担任教師浦川麻由(若井なおみ)が優しく接します。舞台は抽象的なセットですが、回り舞台を上手く生かしています。舞台を回し、照明を変えることで、一瞬にして「場」を変える。上手い。緊張感が途切れないのです。前回『首のないカマキリ』と全く異なるキャラクターを演じた健の母親役の清水直子。どんな芝居でも存在感抜群の劇団桟敷童子の板垣桃子と重なります。私が驚いたのは、同じく前回に続いて出演の後藤佑里奈。潔癖性の強い今時の女子高校生役がぴったり。本公演の連続出演、とても嬉しいのです。

    開演前から悩みを抱えた健が舞台にいました。物語のスタートラインを明確にしているのが良い。タイトルですが、雉は「ケーン」と鳴くのですね。「健」とのつながりなのでしょうか。そして最後の「えっ!」と誰もが思うまとめ方。素敵な作品に仕上がっていました。是非多くの若者に観てほしい。もちろん若くない人にも。高校生を対象にした演劇鑑賞会でも、衝撃的ですが、人間関係のあり方を考えさせる適切な作品だと思いました。

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    2020/01/16 09:54

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