満足度★★★★
人間関係の微妙な距離、甘酸っぱい三角関係、愛情一歩手前の親密さを巧みに描く横山拓也らしい舞台。小劇場とは違って、広い舞台を、効果的に使った演出もよかった。
高校の女性教師ウラカワ(若井なおみ)を避難所にする男子生徒ケン(深堀啓太朗)。サッカー部の新キャプテンになった彼の家は、母親(清水直子)が夜勤に疲れ、酒に頼って家事はできず、ケンが主婦代わりである。いわゆるヤングケアラーとして、健気に母を支えているが、もう限界になっている。父親は母親を見捨てて家を出たまま、2年以上帰ってこない。
一方、新しく学校に赴任してきたカウンセラーのトモエ(保亜美)に、ケンに思いを寄せる女子マネージャー(後藤佑里奈)が、ケンとウラカワが抱き合っていたのを見たと相談を持ち込む。はたしてケンとウラカワは教師と生徒の一線を超えてしまったのか。独身のウラカワは、不倫関係にあるトガワ先生(宮川崇)との関係も終わらせたい。シリアスなドラマに、空気の読めないおせっかいな教頭(河内浩)が笑いをおりこみ、スピーディーで緩急のある舞台は、非常に濃密な時間を作り出す。
俳優は母親役の清水直子や教頭役の河内浩の脇役がしっかりと要所を締め、ウラカワの若井なおみとケンの深堀啓太朗の主役は、落ち着いた抑制的な演技でよかった。カウンセラー役の保亜美が教頭に次ぐ、第二のトリックスターで、洒脱な演技で笑いを誘っていた。