満足度★★★★
主宰・長谷川優貴さんは当日パンフレットにこう書かれていました。
「この作品は、只々話を聞くだけの内容です、ドラマチックな物語はありません」
そして、その言葉通り、本作の俳優たちは只々話をする/聞くという行為を繰り返しました。しかしながら、観客の一人である私に残ったのは「只々話を聞いた」という体感のみではありませんでした。
満足度★★★★★
タイトルの『きく』。この「きく(聞く)」に特化した演目で、コンセプト通りのパフォーマンスが展開されます。あらゆる角度から「聞く」ことの実例が提言され、「それは何か?」「どういうものか?」について考察・検証が繰り返し行われ、それらに関する明確な解答はなく、受け止め方も観客それぞれ。それでいて多くの表現が日常的であり、私たちの生活や人生に深く関わる内容となっています。実験的パフォーマンスと捉えることもできるけれど、僕には非常に刺激的な体験であり、自身の記憶や経験に変換しやすい身近な一作に感じられました。観劇後は「聞くこと」に関する様々な解釈や可能性が頭の中を駆け巡り、作品の余韻にじっくり浸ることができました。
満足度★★★
発話をめぐる哲学的な洞察
白壁にアートや落書き、スウェットなどが掛けられた殺風景な空間の真ん中に席が六つ設けられている。「演者のテンションやコンディションで上演時間が変わります」。開演前のアナウンスがかかると男女が席に座りはじめるがなかなか芝居が始まらない。彼・彼女らの関係性は明示されず、なぜそこに腰掛けているのかも不明である。