OrganWorks(東京都)
作品タイトル「ひび割れの鼓動-hidden world code-」
満足度★★★★
2021年12月の神奈川芸術劇場(KAAT)での初演後、本来は広島と愛知でのツアー公演を予定していたそうですが、残念ながら感染症拡大の影響で中止に。おそらく東京・シアタートラムでの公演がツアー4ヶ所目ということになる予定だったと思うのですが、新作初演の作品のツアーで、しかも商業ベースではないインディペンデントのダンスカンパニーの主催公演としては、KAATとシアタートラムの両方をこの短いスパンの間で回るというのは結構珍しいと思います。しかもどちらも劇場の提携公演になっています。公演情報を最初に目にした時は結構驚きました。
企画段階でこのツアーを成立させたことはすごいなと思いますし、現在の日本コンテンポラリーダンス界におけるOrganWorksのプレゼンスの高さを感じます。
満足度★★★
ギリシア悲劇の「コロス」という存在に着目し、かつて祭りのコロスから俳優が生まれ、時代とともに演劇、俳優、コロスが変容していく──その壮大な人類史と舞台芸術史を見たようでした。
舞台芸術がまだ今の形ではまったく無かった頃、人間たちの営みの背後に広がる大地、古代ギリシアの野外劇場の周囲に広がる町々、ステージという舞台にあがる人びと……そのような光景が見えるようでした。緻密で静謐。美しくも、なにか覗き込んだら食われるような深淵がある。タイトルは『ひび割れの鼓動』。そこに書かれた英字の『HIDDEN WORLD CODE』をまさに探すような、壮大な時空の旅でした。
満足度★★★
「表現」の源泉を求めた、古代ギリシャへの旅。
白い布をかけ、色をなくしたシンプルな舞台は儀礼の場のよう。
その周囲を「俳優」が歩き、時間の旅を始める冒頭から、深い時間の奥行きを感じました。「俳優」と「コロス(ダンサー)」が対置されながら進行する展開のなか、印象に残ったのは、ディデュランボスの祭礼の場面です。その踊りの輪には、盆踊りにも通じる、死者や過ぎ去った時間への思いが表れていました。
舞台構成、ダンサーたちのキレのある身体……頭脳と視覚を刺激する作品です。断片的で抽象的ながら、不思議なニュアンスを感じさせるイキウメの前川知大さんが執筆したテキストとのコラボレーションも含め、「ダンス」でもない「演劇」でもない、「パフォーミングアーツ」を開発する意欲、意思がそこにはありましたし、その地盤はすでに十分に固められつつあるとも感じます。この魅力的な場が、時には逸脱や混沌も含みつつさらにオーラ、熱量を放つ展開をみたいと思います。