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カタブイ、2025

カタブイ、2025

名取事務所

紀伊國屋ホール(東京都)

2025/11/28 (金) ~ 2025/12/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

素晴らしい傑作。現在の沖縄を舞台にどんなドラマが展開できるのか予想もつかなかったが納得の脚本。三上智恵監督のドキュメンタリー映画『戦雲(いくさふむ)』にも通じる内容。

升毅(ますたけし)氏がシリーズを通じる主人公、杉浦孝史75歳を演じる。大学時代の恋人、石嶺恵75歳は佐藤直子さん。娘の石嶺智子は古謝(こじゃ)渚さん。孫の石嶺葵は宮城はるのさん。その恋人の陸上自衛隊員、中村悠太に山下瑛司氏。彼の母親、中村敏江に馬渡亜樹さん。町の名士(?)、池原実に当銘由亮(とうめよしあき)氏。

自衛隊員と反基地運動の活動家との邂逅。
『戦雲』でも自衛官と県民との対話がある。県民の根強い不信感に自衛官は答える。「軍が県民を守らなかった前の戦争の過ちを教訓として我々は県民の為に行動します!」

馬渡亜樹さんは体育会系女子。動きや受け答えがハッキリしている。
古謝渚さんと宮城はるのさんは何となく顔立ちが似ていて母娘にふさわしい。
古謝渚さんはどことなく鈴木紗理奈みたいにくっきりした顔立ち。
宮城はるのさんはある種の天才だろう。全く演技を感じさせず自然に素の感覚を出せる。ちょっと松田聖子っぽくも見えた。

三線(さんしん)による演奏と琉球舞踊の優雅さ。「ヒヤミカチ節」が始まると、カチャーシー(祝宴の最後に皆で手を振り上げて自由に踊ること)が外にまで出て延々と続く。『焼肉ドラゴン』を彷彿とさせる名シーン。「ヒヤ ヒヤ ヒヤヒヤヒヤ ヒヤミカチウキリ」(「えい」と言って奮い立とう)。ヒヤ=えいやっ!

ジーマミー(落花生)豆腐=芋餅に近い。
オスプレイが頭上を通る轟音が凄まじい。これが日常か。
戦後の人々の再生に歌と踊りがどれだけ力になったことか。ただの現実逃避だけではない。人の心の再生に力を貸す。
こうなるとカタブイ全3作一挙上演なんかを期待する。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

ラスト、琉装を着て「かせかけ」を舞う宮城はるのさん。恋人に蜻蛉の羽のような薄い着物を作る為、綛(かせ)に巻いた糸をはやまい(筒状の枠)で巻き取っていく。桑野みゆきの『野を駈ける少女 』のラストを思い出した。

当銘由亮氏のキャラが良い。「綺麗事、綺麗事。何も変わらないし何の意味もない。」
デモや座り込み、抗議活動に何の未来もなく、地域住民の無駄な対立を煽るだけ。長年の暮らしから全てを馬鹿馬鹿しく感じてしまっている。そんなことよりもっと沖縄の為になることに力を注ぐべきだ、と。こういう本音を言う登場人物がいるお陰で観客は楽になる。

いや、結果を生む事だけが意味ではない。あの時の気持ちを確認する為の儀式でもいい。戦争で地獄の煮え湯を飲まされた沖縄県民。あの時の気持ちを決して忘れてはならない。どんなに時間が経っても大切なことは何も変わらない。二度とこの地に戦争を持ち込ませないこと。その為に戦う。平和とは戦いのことだ。

正解なんか何処にもない世界。いつかその日は来るのだろう。その時、悔いるのか?あの時、ああしておけばと。沖縄の問題を考えることは実は日本の未来に直結しているのかも知れない。興味深い観点。「試してみないと分からないじゃない。」
フルモデルチェンジ

フルモデルチェンジ

劇団フルタ丸

STスポット(神奈川県)

2025/11/28 (金) ~ 2025/11/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

フルタ丸講談は今回で2回目の観劇でしたが、やっぱり面白かったです。
3人のキャストが役柄とは別にテンポよく講談師役を交代しながら物語を紡いでいくスタイルは、もはや完成された安心感がありますね。
講談師による状況説明や心情描写も分かりやすく、気づけば物語にぐっと引き込まれていました。

それぞれの役に、見せ場があり、共感できるポイントも随所にありました。
そしてラストはひねりの効いた締め方で、観終わったあとも心に余韻が残る満足度の高い舞台でした。

ネタバレBOX

次回公演?マイナーチェンジも楽しみです(笑)
友達

友達

劇団カナリ

玉川学園3丁目子ども広場(東京都)

2025/11/30 (日) ~ 2025/11/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

野外⁈の心配も吹き飛ぶ役者さん方の力量に
圧倒されました。ちょうどよい時間、構成で
すっかり引き込まれて、とても楽しませて
いただきました。素晴らしかったです。

三つの透明な和音

三つの透明な和音

劇団回転磁石

スタジオ空洞(東京都)

2025/11/27 (木) ~ 2025/11/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

華4つ☆

ネタバレBOX

 三作品何れにも共通するテーマは女性の孤独である。この孤独に女性達は苦悩している。ではこの孤独を彼女らに齎しているものは何か? それは彼女ら独り、孤りを取り囲む社会である。タイトルにある‟透明“は、彼女らの生きて働く実存を温かく抱擁し柔らかに受け止め同じ生きる者として対等に接したり観られたりされていないことから来る孤立によって、生きていることの意味、実感、喜び、実の或る悩み等々が失われ自らの存在意義が透けてしまって最早、自己確認の根拠すらも持たぬ侘しい孤立である。
 近年ジェンダー論が、盛んに論じられるが何だか自分には根底に女性達が抱えている上記の如き事態が存在し続けているように思われる。
 実際の物語の描き方は、上記の観点から書かれているシナリオには表現されておらず、筆者の如き捉え方をしなければもう一回り外周にある社会性は隠れてしまって観客に届きにくい為、作品が真に訴えたかったことは中々伝わらないと感じる。三話何れの作品でも主人公の女性は社会に貢献しようと一所懸命に生きている。だが彼女が認めて欲しい社会、即ち彼女の人間関係の中で肝心な人々が彼女を第一段落で挙げたような形では彼女を認めてくれない、乃至は認めてくれていた人が亡くなってしまう。三つの作品は各々全く異なった状況下での女性の孤独を扱っているので作品によってややショッキングなラジオニュースなどを音声で背景に流すシーンがあっても良いかも知れない。デリケートな作品故難しい点もあろうが。それが上手く機能すればより多くの観客に作品の趣旨がもっと伝わり易いのではあるまいか?
 短編オムニバスミュージカルとあることから分かるように登場する役者全員、歌が上手い。
11ぴきのネコ

11ぴきのネコ

劇団テアトル・エコー

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2025/11/29 (土) ~ 2025/12/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

『11ぴきのネコ エコー版』観て来ました!
子どものためのミュージカルですが、私は子どもじゃないけれど楽しく観劇しました。
「未就学児童観劇回」ではきっと盛り上がるだろうなあと思いますね。
子ども観客とかも一緒に歌ったりしてね〜〜!!

コロナ騒動?のころ劇場の入場時ツライことが多くご無沙汰だった観劇ですが今回とっても楽しかったので再開しようかなと思いました。

病は気から

病は気から

関西芸術座

ABCホール (大阪府)

2025/11/28 (金) ~ 2025/11/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

有名な喜劇で他の団体さんでも拝見したことがありますが、関西弁良かったです。この4月から仕事で関西に来て、大阪弁のお芝居に新鮮さを感じていましたが、本作はとてもぴったり、最高でした。特に召し使いと主人の掛け合いは楽しかったです。
とても楽しい時間を過ごすことが出来ました。ありがとうございました。

『いつものオーロラが割った夜』

『いつものオーロラが割った夜』

月波兎

ザ・ポケット(東京都)

2025/11/27 (木) ~ 2025/12/01 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ギャグ漫画がテーマの一つになっているためか、演技や演出でかなりギャグ的な要素が強くなっていると感じる。ただ、少々うるさい。無理に大声を出すためか、俳優陣の中には声がかすれ気味で、大声・早口の場面など聞き取りにくくなっている人もいたよう。

病は気から

病は気から

関西芸術座

ABCホール (大阪府)

2025/11/28 (金) ~ 2025/11/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

関西を代表する老舗劇団(若手も育成)だけに、抜群の安定感
金目当てで結婚した継母 愛情が第一の先妻の娘 病気?なのに元気すぎる父 生気な御手伝い等々が繰り広げる、家族への道程ストーリー
あるあるだけど、めっちゃ楽しめました!!

わらわら草紙 十の章

わらわら草紙 十の章

神原組

ウイングフィールド(大阪府)

2025/11/29 (土) ~ 2025/11/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

リーズナブルな料金設定で何本も素敵な作品が観れる最高の時間を過ごさせて頂きました☆有難うございましたm(_ _)m

首2

首2

きっとろんどん

OFF OFFシアター(東京都)

2025/11/27 (木) ~ 2025/12/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

北海道・札幌から東京・下北沢に乗り込んできたまだ若い男性役者四人で構成された劇団(1人は北海道在住らしい)。
猟奇殺人事件の加害者・被害者双方に「何らかの関わりがある」という設定で、舞台役者としての役者が事件に迫っていきます。
実際に起きた事件の検証・考察もかなりされていて、人間的ドラマが非常に興味深かったです。
最初に「この作品はフィクションです」と説明がありましたが、どこまでがノンフィクションなのか境目がないほどにリアリティが感じられました。特に風呂場のシーンは鬼気迫るものがあって、魅入ってしまいました。年配の役者さんの演技がとても味がありました。

「​​沈む。躍れ、ひとり」

「​​沈む。躍れ、ひとり」

万博設計

AI・HALL(兵庫県)

2025/11/28 (金) ~ 2025/11/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

震災で息子を亡くした母 息子の配偶者(お腹に息子の子有り)を中心に巻き起こる群像劇
とても分かり安く、楽しめました!!
かなりひねりをこなしていた劇団でしたが、今回はシンプルでした

あたらしいエクスプロージョン

あたらしいエクスプロージョン

CoRich舞台芸術!プロデュース

新宿シアタートップス(東京都)

2025/11/28 (金) ~ 2025/12/02 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

あの限られた空間を、
堀越涼さんはまるで新たな景色へと
変えてしまうように、巧みに生かしていた。
次々と繰り出される私好みの演出に心が揺さぶられ、
気がつけば舞台の呼吸に寄り添っていた。
演者さんたちは一人で幾つもの影をまとい、
場の空気を自在に編み替えてゆく。
なかでも金子侑加さんは、
声色さえ軽やかに変化させ、
そのたびに物語の表情がふっと変わるのが
面白くてならなかった。

ネタバレBOX

狭い劇場なので仕方ないが
結構、見切れやかぶりが多かった気がする。
終盤の舞台の下から登場するシーンで
その人より前にいた演者さんの後ろ姿で見えなかった。
上手側、階段付近。

チケットの売り方が細かすぎて
座席指定型のSS、S、A席くらいで
土日は+500または1000円にしたほうが
買いやすいような気がした。
こういう挑戦はいいと思う。


五十億の中で ただ一人

五十億の中で ただ一人

トム・プロジェクト

赤坂RED/THEATER(東京都)

2025/11/27 (木) ~ 2025/12/03 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

不穏な時代に、静かに反戦を訴えかける芝居でした。
5人の出演者で、難しい設定を対話を通じて成就していくさまが見事です。
作、演出である、ふたくちつよしさんの得意とする新しい切り口の家族劇の誕生だと思いました。

あたらしいエクスプロージョン

あたらしいエクスプロージョン

CoRich舞台芸術!プロデュース

新宿シアタートップス(東京都)

2025/11/28 (金) ~ 2025/12/02 (火)公演終了

実演鑑賞

良かったです。

彼方の島たちの話

彼方の島たちの話

ヌトミック

シアタートラム(東京都)

2025/11/22 (土) ~ 2025/11/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『ガラスの動物園』が衝撃的だったのでヌトミックにも興味を持った。観ていてNOKKOみたいに派手に踊る女優(原田つむぎさん)がローラだったことに気付いて驚く。東野良平氏の登場で盛り上がったが作品をぶち壊すまでにはいかず。凄く伝え辛い感覚をいろんな方法を模索して無理矢理表現しようとした作品。自問自答しながら途中で打ち消したり話をやめたり、ギターを爪弾いたりディストーション・ノイズを起こしたりやめたり、親子の関係性を謝ったりやめたり、忘れていたことを思い出したりやっぱり否定したり。Public Image Ltdの「Fodderstompf」を聴いた時の感覚。

ネタバレBOX

実験作なのか失敗作なのか。楽器演奏抜きで演ったらどう見えたのか?ただのつまらない繰り返しか。範宙遊泳の『心の声など聞こえるか』でも思ったが曲が中途半端。効果音と劇伴の扱い。もう曲で勝負して欲しい。PiLの「METAL BOX」のようにやってくれたら文句なし。曲がメインで演劇は彩るエピソード位で丁度いい。

15年前、離婚した父親(金沢青児氏)から携帯に電話が掛かってくる。友達と3人で海に遊びに来ていた稲継美保さんは出なかった。かき氷を食べていたから。その後すぐ、父親は日本海に面した自殺の名所の崖で飛び降り自殺。父が大好きだった新作缶ビールを買ってその崖にお供えに行く。夜の9時、そこに片桐はいりさんが飛び降りようと立つ。「待って!」と止める。一度はとどまったものの結局飛び降りてしまったようだ。片桐はいりさんの娘(原田つむぎさん)は海外にいて、メールで自殺することを知らされたがどうにも出来なかった。1万年前にここで飛び降り自殺したムー(東野良平氏)が現れる。ムー大陸とかアトランティス大陸をイメージしたような服装。ムーは寝ている父親(長沼航〈わたる〉氏)の左腕を刺し、逃げ出して自殺した。父親への異常な恐怖心。父親トキサカは黒人ハーフのような風貌で崖を彷徨って自殺志願者に「待て!」と言い続けている。原田つむぎさんが弾き語りで歌う「彼方の島たちの話」が良い曲。父親が船を呼び皆を乗せて島に向かう。着いたのは家、誰の胸の内にも残されているそれぞれの家。稲継美保さんは思い出す。昔、フェリーでラムネを父親に買って貰ったが転んで海に落としてしまった。怒った父親は母親を殴打する。娘をきちんと見ておかなかったお前の管理不行き届きだと。アル中でDV癖の父親はいつも母親を泣かせた。その夜、稲継美保さんは父親を殺そうと思う。だが出来なかった。結局両親は離婚してアル中の父親はどうしようもなくなって自殺した。ここは死者達の意見交換会。ずっと同じ所、同じ気持ちをぐるぐる回っているだけ。どれだけ時間を掛けても執着は剝がれない。死んでいない者達が演奏を続ける。ギターの細井徳太郎氏、ベースの石垣陽菜さん、ドラムの渡健人氏。石垣陽菜さんがキャッチーなベースラインを繰り返す曲が良かった。こういう話にはベースが合う。ジャー・ウォブルのように世界を低音で支配して欲しい。渡健人氏は昔の知り合いに似ていた。

台本とバンドへの指示が文字で全て背後に表示されるのだが逆効果では。役者は丸暗記した台詞を言っているだけだし、バンドの演奏は全く指示と合っていない。
あたらしいエクスプロージョン

あたらしいエクスプロージョン

CoRich舞台芸術!プロデュース

新宿シアタートップス(東京都)

2025/11/28 (金) ~ 2025/12/02 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

6人で色々な役を演じているので、演劇って感じがする。また、1人で音楽を奏でるのは凄い!

フルモデルチェンジ

フルモデルチェンジ

劇団フルタ丸

STスポット(神奈川県)

2025/11/28 (金) ~ 2025/11/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

客入れSE、N'夙川BOYS「プラネットマジック 」がBARBEE BOYSみたいで良かった。中山うりカヴァーの「月の爆撃機」も。

政府の関与する自己変革プログラム、治験モニターとして3人が参加。十日間、マンションのような施設に閉じ込められて暮らす。演者各々キャスター付きの演台と張扇のような物を持つ。一日一つのお題が出され、それぞれ音読し考える。各人、他の二人の観察日記を付けなくてはいけない。
篠原友紀さんは学校の教師、いつも他人と自分を比べて回る。
山田伊久磨氏はTVのプロデューサー、バラエティ担当。自己啓発本マニア。パエリア好き。
真帆さんは「絶対に変わらなくては」と強い決意。流されやすい弱い性格を変えなくては。

後ろに英語字幕がずっと流れる。

精神的な話の為、流れるのはアンビエントな曲。これに弱い人は居眠りしそうな雰囲気。自己啓発系の面白さは自分の価値観を変えられるんじゃないか?との期待。世界や人の見え方が変われば面白い。

真帆さんの表情がBARBEE BOYSの杏子っぽい感じがして好感。

ネタバレBOX

真帆さんは結婚出産、ファミレスでパートを始める。そこで若い男に口説かれて流されてゆく。浮気がバレ離婚。息子も取られた。男にも捨てられた。どうしたらいいか途方に暮れている夜道、交通誘導員の男が道を指し示してくれる。

①ポケットに手を入れて「ここには何もない」と言う。
②鏡を見て「誰?」と訊く。
③ため息をついたら2回深く息を吸う。
④捨てたゴミを自分だと思う。
⑤嘘で自分を褒める。
⑥怒るとお金が貰える。
⑦自分はもうここにはいない。
⑧否定と肯定を繰り返す。
⑨カッコイイ程、カッコ悪いことはない。
⑩0は100、100は0。

最終日に見る夢。
篠原友紀さんは卒業式の日に生徒達に自分の本心を打ち明ける。他人と自分を比べる生き方のつまらなさ。
山田伊久磨氏はライバル視していた社長のスキャンダルを自分のアイディアで救おうとする。
真帆さんは交通誘導員をしていると別れた夫と息子と見知らぬ女が歩いて来るのに出くわす。息子への複雑な想い。誘導灯をヲタ芸のように高速で振り回す。

この作家の特徴は登場人物の心境の変化。何だかどうしてか心境が変わっている。駄目な自分を受け入れることが出来るように。駄目な世界を受け入れることが出来るように。
絶滅のトリ

絶滅のトリ

だいだら

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2025/11/13 (木) ~ 2025/11/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/11/17 (月) 16:05

絶滅危惧種の鳥の保護/繁殖のために島で活動しているグループの群像劇。
新たに加わったミステリアス(?)なメンバーをきっかけに微妙に保たれていたバランスが崩れてゆくさまを、じっくりと時間をかけて並べたドミノの牌が終盤で次々に連鎖して倒れてゆくように見せる110分。
この終盤の「あの歌」が流れる中、台詞なしに演技だけで見せる手法に奇しくも少し前に観たたすいち「果てなしランデブー」と通ずるモノがあり共時性にビックリ。
あと、(この会場で)かなり凝ったツクリにした舞台美術も見事。
なお、ONEOR8の初演は未見。

一九一四大非常

一九一四大非常

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2025/11/25 (火) ~ 2025/12/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

流れるのはベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章。どうしようもない宿命のレールの上、粛々とそれを受け入れるしかない人間の群れ。もう変えようのない過去の人々。今それを振り返っている自分も先の世界から見れば同じ存在。逃れようのないレールの上をただ黙々と歩んでいく恐怖。どんどんどろろ、どんどろろ。

1950年代に中東やアフリカで巨大油田が発見、石油の低価格での提供が可能となり、1962年に日本でも石炭から石油へとエネルギー政策が転換。(第三次エネルギー革命)。「黒いダイヤモンド」と称された石炭の時代は終焉。用が失くなれば邪魔なゴミ。それが時代の宿命。

福岡県田川郡にある三菱方城炭鉱は三菱鉱業の主力鉱として栄えた。昇降機で地下270mまで縦坑を降り、そこから横に延びた坑道を掘り進めていく。270mは50階建て高層ビルの高さ。その深さの地底に推定1249人が働いていたと言われる。1914年(大正3年)12月15日午前9時40分、方城大非常(三菱方城炭坑ガス大爆発)。抗内用のトーマス式安全灯に気密不充分の物があり、侵入した石炭粉が引火したものとされる。生存者は僅か18名。

炭鉱夫は身体中を黒く汚す為、何役も兼ねる人は脚にあらかじめ汚してあるシアータイツを着用。顔を汚したり洗ったり大変な現場だ。

小学校の教師役板垣桃子さん。梁瀬農園の娘!チャーミングな眼鏡にのんのような髪型、学校の人気者の可愛らしい先生。

余所者の稲葉能敬氏と妊婦の長嶺安奈さん夫婦。
長嶺さんの妹の大手忍さんと許婚の藤澤壮嗣氏。
瀬戸純哉氏ともりちえさん(実際の夫婦!)は籍は入れていない。二人共腕が立つ。
柴田林太郎氏と川原洋子さん夫婦と姪の井上莉沙さん。

鈴木めぐみさんも流石。夏蜜柑を掻き集める。

炭鉱会社の救助隊中野英樹氏は佐藤允とRINGSの成瀬昌由を足したような苦味。三人の息子が炭鉱に降りている山本あさみさん。半狂乱の母親を収める為、「自分が必ず息子さん達を救出します。」と約束してしまう。気持ちには気持ちで応えるしかない。一酸化炭素の充満する地獄に夏蜜柑の皮を咥えて降りて行く。最早理屈じゃ何も出来ない。神頼みだ。

MVPは中野英樹氏、山本あさみさん、もりちえさん。無論、集団芸術として皆で成立させているのは承知。
中野英樹氏の抱え込んだ無数の痛みと山本あさみさんの無理を承知の足掻き、骨噛み、もりちえさんのいぶし銀の生きる術。

この劇団は皆にどうにか観て貰いたいが、表現しようとするものが文学の地平の為、人によっては消化し辛いだろう。熊井啓映画の貫禄。伝えようと試むものがデカ過ぎる。今こんな劇団があってこんな役者達がこんなことを訴え続けている事実。これは黒澤映画と同じできちんと評価し後世に残さないといけない。こんなもん再現不可能。今、観るしかない。後の世にこんな劇団があったなんて聞かされてもしょうがない。
「ご安全に。」

ネタバレBOX

初めて坑道に降りた井上莉沙さんが地獄でおかしくなる。真っ暗闇の坑内で「星が見える!」と繰り返す。皆、ガスを吸って頭がおかしくなったといなす。だがその死の瞬間、坑内は星空でまみれる。余りにも美しい光がそこらここらで発光。この為だけの舞台美術が尊い。富野由悠季ISM。無数の星空に囲まれて死んでいく。

自分がこの作家の作品にのめり込むのは白土三平の血が流れているからだと思った。人間は皆平等、生命に貴賤などはない。生きることはそもそもが素晴らしい。現実には色々な物事に阻害されてその素晴らしさを見失ってしまう。汚れで覆われてしまう。だが生命の本質は何一つ変わりはしない。生きていることを素晴らしいと感じ取れる毎日こそが幸福。どうにか創意工夫してその毎日を獲得して欲しい。その生命への真っ直ぐな姿勢こそが正しさ。塗りたくられた泥を剥がし、洗い落とし、輝かせないと。

※『カムイ伝』にて百姓の正助と非人のナナは恋人同士だった。百姓と非人の分断を謀る支配層の企みによってナナは百姓により輪姦され自殺しようとする。裸になってナナを説得する正助。正助は村人の前で人間は皆平等であることを宣言する。身分なんて本当は何処にも存在しない。そして非人のナナを愛していることを。
これを当時「ガロ」の連載で読んだ宮崎駿は東映動画の社内にこのページを貼り出す程感動した。自分達がやるべき仕事とはこれである、と。
あたらしいエクスプロージョン

あたらしいエクスプロージョン

CoRich舞台芸術!プロデュース

新宿シアタートップス(東京都)

2025/11/28 (金) ~ 2025/12/02 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

素晴らしかったです。実力派の俳優だけを集めた舞台だけあるな…と思いました。1人で4役5役されていますが、どの役も声質を変えたりキャラを完全に変えていて観てる方はまったくストレスを感じませんでした。あと、劇版の生演奏もすばらしかったです。役者の演技と完全にシンクロしていてすごいなーと思いました。演奏者も1人の役者ですね。それと、アフタートークも参加させてもらいましたが、まさか毎朝観ているZIP!のレギュラー出演者さん2人に出会えるとは思いませんでした。俳優の仕事もされているのですね… いやー、スペックの高さに脱帽です。

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