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貝殻つなぎ

貝殻つなぎ

劇団25、6時間

吉祥寺シアター(東京都)

2023/06/23 (金) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 B班を拝見、華4つ☆

ネタバレBOX

 舞台美術はかなり手の込んだもので、通常の出捌けだけで6か所、様々な場所に高低差のある踊り場が設けられ劇の展開をサポートしている。物語自体は若い男女の純愛物といえようがヒロイン、波依音(はいね)の故郷にある“青い池”に纏わる伝説と彼女の出生の秘密、彼女の恋する爽雨(そう)への恋と波衣音に矢張り恋する爽雨故に時空を超え青い池に幾度となく舞い戻って…
 オープニングから中盤迄は、作家が若いのだろう、爽雨に恋する波衣音以外の乙女たちの恋心を現代日本のちゃらついた口語表現で台詞化している為、自分のような爺世代にはやはり空疎な表現にしか聞こえなかったが、まあ、若い人たちの未来を妄信したがる(と言うより現代日本の現実を直視したら耐えられないから回避している)表現と言った方が正しかろう。
 爽雨に起こった事態は、最初今作の説明を読んだ時にはニーチェの「永劫回帰」に似た体験かと思ったがそれとは異なっていた。然し最初に回帰し、少なくとも2度目まではその違いにも原理的に気付けないからその余りに深い絶望にもっと落ち込むのが当然と思われるが脚本にそこまでは描き込まれていないことも確かである。但し冒頭部分で述べたように、だからこそ宿命としての純愛に迄密度を上げたともとれる。中盤から終盤、ラストへの展開はその純度の高さで観客を引っ張ってゆくだけの力を持っている。
 物理的には特殊相対性理論即ちE=mc²で主張されたことをベースに考えればエネルギーと物質の関係は理解でき、以て今作の特殊な構造についても一定理論的解を得ることができるから興味のある方はこの等式にもチャレンジしてみたまえ。
 ところで、ラストシーンに繋がる場面でも良い演出がある。お楽しみに。
テラヤマ音楽劇★くるみ割り人形

テラヤマ音楽劇★くるみ割り人形

シアターRAKU

駅前劇場(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

いや、結構面白かった。平均年齢69歳の劇団というふざけた座組。それを観に来る客も年齢層高め。オーバー80割なんてチケットまである。ゴッホゴホ咳込み続ける老人に序盤から熟睡の老人達。気の滅入る客席にうんざりしながらも脚本はよく出来ている。

1816年に発表されたE.T.A.ホフマンの『くるみ割り人形とねずみの王様』を大デュマが『はしばみ割り物語』に翻案。それをマリウス・プティパがバレエ作品として台本化し、1892年チャイコフスキーが曲をつけた。
1978年、実写人形アニメーション映画『くるみ割り人形』をサンリオが製作。寺山修司が書いた脚本を子供向けに直したものが使われた。今作は寺山修司のオリジナルを流山児祥氏が脚色。

元大分放送の女子アナ、原きよさんが主演。美少女のまま老いたような楳図かずお調の可愛らしさ。岡部まりと黒木瞳を足したような美貌。とにかく自然に物語を流れて行く。

高橋牧氏(『時々自動』)の作曲した名曲揃い。
戦争や虐殺死体の古いニュース・フィルムが投影される。坂本龍一の遺した言葉。
今作のテーマは現実に起きている戦争を演劇で止める方法の模索。
先日のキャンドル・ジュン氏の会見で「(キャンドルを灯したからといって、世界の戦争が終わるとは思っていませんが)いつか世界から核兵器をなくして、戦争という争いごとがなくなる日を作る。自分が戦争を終わらせるんだと。」との発言があった。
誇大妄想狂の台詞のようだが、このぐらいの大風呂敷を広げられないと“アート”なんか意味がないのだろう。

「目をつぶると見えて、目を開けると消えてしまうものはなあに?」

ネタバレBOX

物語はクララ(原きよさん)が誕生会前夜、夢を見る。

お菓子の国では15年前、皇帝(二階堂まりさん)が城中の鼠を大量虐殺。生き延びた未亡人鼠マウゼリンクス夫人(村田泉さん)は皇女(永田たみ子さん)に呪いをかける。皇女の口元は醜い鼠の姿に。その後、鼠達が皇女の誕生会用の生クリームを食べてしまったことで、更に激しい弾圧が。その復讐に強力な呪いをかけるマウゼリンクス夫人。醜い鼠の姿で昏睡状態のまま意識が戻らない皇女。医師ドロッセルマイヤー(桐原三枝さん)は親戚の息子・コッペリウス(川本かず子さん)を使ってその呪いを解く。マウゼリンクス夫人は死の間際、コッペリウスに呪いをかけてくるみ割り人形にしてしまう。目を醒ました皇女は醜いくるみ割り人形を嫌い追放。
独りクララは彼の呪いを解く為、旅に出る。あやつり人形にチェスをさせている人形遣い。誰もが思い出を持たない町。誰もが争い憎しみ合っているが、「お菓子屋さん」と三回呼ぶと闘いをやめ、人間の実存に向き合う町。

寺山修司はホフマンの代表作でもある『砂男』を合体させている。
21 1/2 世紀の少女

21 1/2 世紀の少女

アートプロジェクト集団「鞦韆舘」

藝術工場◉カナリヤ条約(大阪府)

2023/06/24 (土) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/06/24 (土)

AIは心の病気に罹らない。人間は心に向き合って生きなければならない。そんなことを思ったお芝居でした。
それにしても、主演の女優さんのイッチャている演技はとてもうまかったなあ。今から推しになっておいたほうが良いかもです。

瀬戸内の小さな蟲使い

瀬戸内の小さな蟲使い

桃尻犬

OFF OFFシアター(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/28 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

まず、設定が面白い!そこから展開する会話劇はシュールで、まさに野田ワールドを存分に堪能できる。
もう、この世界観にどっぷり浸かって、一緒に溺れるように落ちていくのが心地よい。
役者陣も好演。
もっと、もっと公演を増やしてもらいたい、今もっとも期待する劇団である。

白眉濛濛

白眉濛濛

海ねこ症候群

インディペンデントシアターOji(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/06/23 (金) 13:00

初見のユニット。女性3人の劇団のファンタジー作品。(3分押し)94分。
 3人で「劇団青い鳥」のような集団製作を目指したそうだが、興味深く観た。絵を描くことが好きなミソラが画商を名乗るツキシロに誘われオークションに出品するが…、という物語。現実には起こらないだろうな、という展開と演出や、突然歌やダンスを入れるあたりは、ファンタジーなんだなぁ、と思うが悪くはない。悪くはないが、焦点が絞れていない印象が残念。絵をフレームだけで示したり、独特の話し方の演出とか、気になるところは多い。
 直前に体調の悪い役者が出て、役を変えたり演出を変えたりしたそうだが、違和感はなかった。女性だけ、に拘った理由は知りたい。

兎、波を走る

兎、波を走る

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2023/06/17 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

野田MAP『兎、波を走る』を観劇。

新作である。

あらすじ:
不思議の国に迷い込んだアリスを探しに時代を彷徨うアリスの母親。そこに白兎が旅を共にしするが、迷い込んだ世界は現実と妄想が入り組んだ場所だったのだ。
果たしてアリスを探す事が出来るのだろうか?

感想:
アリスと母親と白兎。この三人は一体誰なのだ?という疑問を抱き続ける事が、テーマへと繋がっていく。『夢の遊眠社』が復活したのか?というぐらいに時代と場所と歴史上の人物が急展開に飛び周り、追いかけていくのがやっとだと思っていると『妄想』という言葉が追い討ちをかけてくる。
「そうかぁ〜、全てが伏線だったのか」と思ってしまうが、それが落とし穴になってしまうのが野田秀樹の戯曲だ。観劇後に「あれとこれはどういう関係だったの?」観客同士で述べ合う声は多々聞こえたが、伏線と捉えてしまうと大事なものを見過ごしてしまうのだ。
急展開する作品を「ジェットコースターに乗っている気分だ」と例える事もあるが、これほどの乗り物は過去にあっただろうか?というぐらいにアリス、母親、白兎の道行きには驚かされる。
社会に対する怒りは毎作品に感じ取れるが、その先には一体何があるのだろうか?
答えを少しだけ垣間見えてきたが、「今までにはないラストには驚愕だ!」
野田秀樹の新作はあと何本観れるのだろうか?という不安もあるが、
「こんな傑作を観ないのは勿体無い」
当然の結末

当然の結末

シベリア少女鉄道

俳優座劇場(東京都)

2023/06/17 (土) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

順を追って見ていけば比較的わかりやすい伏線回収もの。98分。

ネタバレBOX

大事なストーリーの導入(10分)+召喚と退散のルールの植付け(40分)+アップデート&一部修正(40分)+ストーリーの回収(8分)みたいな感じ。昔の作品のように見てる世界が全く変わってしまうというタイプではなく、前半の苦痛ともいうべき話の展開は今作でも変わらないが、後半がそれを凌駕するほどでもない。
瀬戸内の小さな蟲使い

瀬戸内の小さな蟲使い

桃尻犬

OFF OFFシアター(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/28 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

チラシからは想像できないシチュエーションでの会話が面白い。後日談もシュールな展開で、独特なユーモアのセンスが感じられた。桃尻犬のステージは久しぶりですが、これを機に、もっと頻繁に作品を発表してくれたら嬉しいな。

『消えなさいローラ』『招待されなかった客』2本立て

『消えなさいローラ』『招待されなかった客』2本立て

Pカンパニー

西池袋・スタジオP(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

いやあこれは私には難しい方の別役だ。何かそれらしいことを書いてみたいのだが「説明」にあること以上にはつかみ取ることができなかった。もちろん実際に観たのだから短い文章とは全く違う膨大な情報を浴びているはずだ。しかしそれを沈殿させ言語化することがまるでできない。
まあでも「わが町」も「ガラスの動物園」も観たことがあったのは演劇ファンとしての基礎ができているようで単純に嬉しい。

瀬戸内の小さな蟲使い

瀬戸内の小さな蟲使い

桃尻犬

OFF OFFシアター(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/28 (水)公演終了

実演鑑賞

 白と黒の天板付き骨組み箱馬2体を縦に組み合わせ連結した道具を出演者1人が1個ずつ持つがオープニングで並べられているのは2体のみ。天板の色は一体の上が白ならば、隣のもう一体の方は黒、一体の上下は上が白なら下は黒。2体並べられた時は隣の一体は上が黒、下が白。こんな所にもオシャレなセンスが息づいているのは舞台の醍醐味だ。出捌けは上手奥の袖と下手ホリゾントに設えられた幕開口部の2カ所。基本的に素舞台。この条件から、内容は、役者陣の演技、演出の良さ、会話劇の仕上がりの良さに依存していることが分かる。華4つ☆

ネタバレBOX


 物語は2パートに分かたれ、柔らか目な表現で進行してゆくが設定は可成り特殊である。神戸に在る遊園地の大型遊具・フリーフォールの類で事故が起こった。利用客は既に4時間地上50mでストップしてしまった遊具の支持機構に支えられた状態である。
一組の男女カップルが何か話している。無論、脚本の展開はおしゃべりしている場面から始まる。男の方は前向きであるが、女の方はやや別の何かに気を取られているような感じを受ける。暫くすると肩口に取り付けられた何等かの器具が意味する所がハッキリして来、上に述べた状況であることが観客に伝わる。実はこのカップル、瀬戸内に面する地域に住む男の実家へ行く途中なのである。ところが本来結婚に繋がるハズの男の実家初訪問は、真逆の結果に終わる。この経緯が暴かれる過程が、新たに登場する他の登場人物(同じフリーフォールに乗っていた客と遊園地従業員)との対話によって明らかになる。そこにはシリアスな破綻を揶揄するかの如き効果を発揮する笑いの種もふんだんに仕込まれているが、どこで笑うかは観客の知的位置や想像力の質に拠るのは無論のことだ。何れにせよタイトルに直接通じるのはカップルの結婚話が無に帰した3年後、振られた男の地元で起きて居た状況を描くシーンに継承されてゆく。この顛末がどうなったかについては上演中のことなので明らかにしないが、蟲師とは古来陰陽師などとも共同し蟲を用いた呪術等を担っていた。そして使われる蟲たちは、元人間だったと考えることができるような内容でもある。蟲にされる前に獲物とされた人間はダウンサイジングが施されるのだ。子供なら本当に怖がる恐怖を実際に感じられる。

青春の会 第四回公演「熱海殺人事件」

青春の会 第四回公演「熱海殺人事件」

ゴツプロ!

新宿シアタートップス(東京都)

2023/06/20 (火) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

良い舞台だったと思います。

当然の結末

当然の結末

シベリア少女鉄道

俳優座劇場(東京都)

2023/06/17 (土) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

近代能楽集 

近代能楽集 

演劇集団Q

同志社大学・新町キャンパス 新町別館小ホール(京都府)

2023/06/23 (金) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

満足度★★★

らしい作品
最初のころは、良い意味合いで不思議な劇団と思っていたが、最近は理解が少しできるようになった
あの照明はいただけないけど、それなりだった

瀬戸内の小さな蟲使い

瀬戸内の小さな蟲使い

桃尻犬

OFF OFFシアター(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/28 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

登場人物達の置かれた状況がとんでもなく面白い!
生で観劇しているからこその緊迫感から一時たりとも目が離せない
のに加えて、そこからポロポロこぼれ落ちてくる人間性の妙味を思いっきり堪能できてしまう仕組みがもう天才的
こんなに人が困っているというのに笑ってしまって良いのだろうか…と思うくらい、ヤバい!人間というものがあまりにも面白過ぎる

“蟲使い”というキーワードは特に後半から生きてくるのだけれど、もうその頃には妙ちくりん能力もすっかり受け入れ態勢モードに
あぁそうなったか、そうか、そうなっちゃったかぁ…申し訳ないが、可笑しい(笑)
この公演自体が舞台空間の空気感を自在に操ることのできる”空気使い”だったのではないかと思えてくるほど鮮やかなシーンさばきの“瀬戸内の小さな蟲使い”ワールド

老若男女、全タイプの観客が固唾を飲んで楽しめる全方位型エンターテイメントでした、力強くお勧めします

舞台「Go Forward!」

舞台「Go Forward!」

舞台「Go Forward!」製作委員会

かめありリリオホール(東京都)

2023/06/16 (金) ~ 2023/06/22 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

HPくらいは読んでいくつもりがバタバタしてしまい、前知識ゼロで行ってしまいましたが単純熱血青春もので楽しめました。
ラグビーはサッカーやテニスと違ってそんなに球が遠くへ飛んだり早かったりしない(多分)ことが多いらしくて、本物のボールをパスしたり転がしたり。みんな新入部員ということでルールなども観客も一緒にレクチャーしてもらって分かり易かったです。7人制の試合のラグビーもあると知りました。機会があったら見に行きたいです。
舞台の高校生たちも個性的で応援したくなりました。
かめありリリオホールは通路から後ろの階段席の段差が大きいので、前の人が邪魔にならなくて良かったです。
最近は千秋楽が平日の公演が増えているのでしょうか。しかもマチネなので人の入りは少し寂しかったです。

恋するアンチヒーロー

恋するアンチヒーロー

イルカ団!

上野ストアハウス(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

笑い興奮の坩堝、熱狂的なファンが支えるコメディ作品。理屈っぽいことなし、肩の力を抜いて そう脱力して観👀よう。
🆎両チーム観劇したが、コメントはまとめて記す。

世界征服を企む悪の組織、その戦闘員がカフェの店員に恋をした。しかし 彼女は正義のヒーロー戦隊の大ファンという ありがちな物語。何故か悪の組織がヒーローをやっつけるという逆バージョンの痛快娯楽アクションが見どころ。弱いダークヒーローが圧倒的に強いヒーローの それもリーダーのガルレッドに立ち向かう。愛の力は本当に強くしてくれるのか、彼女の心を捉えることが出来るのか、ドキドキハラハラというよりは 面白可笑しい展開に思わず楽しい~と心が弾む。

弱いダークヒーロの強みはお互い〈仲間〉の思い遣り、その協力する姿に<力>が漲る。一方、独善的に(1人で)戦うガルレッド、圧倒的に強いが いつの間にか浮いた存在へ。やはりチームワークの大切さ、ガルレッドの いざとなったら一般人(自分が好きな女性=美樹)をも傷つけるという卑劣な行為。ゲーム感覚を取り入れた 分かり易い展開、本来の勧善懲悪的な設定を逆にして小笑・爆笑を誘う。
仕事帰りの疲れた神経を癒してくれる、あ~愉しい。是非とも💨
(本編1時間30分、カーテンコール兼舞台転換10分、アクション編<ファンサービス>15分)

ネタバレBOX

イルカ団!は、「Q.T!!!」で第34回池袋演劇祭「豊島区長賞」を受賞するほどの実力。この公演は笑いというサービスで楽しませることに徹しているが、作品ごとに その観せ方というかポリシーをしっかり示しており、幅広い創作に魅力を感じる。

さて 本公演、舞台美術はカフェ店内…壁にはポスターが貼られ、上手奥にカウンター、上手 下手にテーブルと椅子がいくつかあるだけのシンプルなもの。勿論アクションをするためテーブルと椅子だけで、壁際に寄せるだけで中央にスペース。

悪の組織「シャムニャーン」の戦闘員 真中はカフェの店員 菜々に恋をしたが、彼女は正義の戦隊「ガルルンジャー」の大ファン。仕方なく 真中は休んでいるガルルンジャ-戦隊の1人である<ガルグリーン>だと嘘をつく。そこへガルルンジャーのメンバーが現れ混乱・隠蔽・誤魔化しなど、そのドタバタ滑稽さが笑いの渦を作る。

【A】チーム ★★★
ガルレッド(中村龍介サン)とシャムニャーンの怪人ヘルタイガー(大地翔護サン)を演じた役者の体躯のよさ。その存在感と圧倒する圧力が凄い。そしてマドンナ的なカフェ店員 菜々(板野成美サン)とは違うコメディエンヌ的な美樹(はぎの りなサン)、奇抜な化粧に嬉々とした振る舞いを 実に生き活きと演じている、というか楽しんでいるような。
【B】チーム ★★★
アクションのスピードとキレ、バク転・側転、ジャンプといったダイナミックさで観(魅)せる。それだけにドルオタ的な観客も多く、ケミカルライト、デコ団扇があちらこちらで…。その応援に応えるかのような熱き運動量が半端ない。特にガルレッド(渡辺隼斗サン)、ガルブルー(川合立統サン)の動きはシャープだ。

公演の魅力は、分かり易い笑いとアクションという両輪。それが上手く噛みあって心地良い癒しとちょっとした緊張感という場を作り出している。演出はアップテンポな音楽、アクションを支える効果音、情景の変化を印象付ける照明の諧調が巧い。案内をいただき観た回は無料、こんな楽しい公演が只(ロハ ⇐死語?)とは…。
次回公演も楽しみにしております。
ホテル・ミラクルThe Final

ホテル・ミラクルThe Final

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2023/06/08 (木) ~ 2023/06/20 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

シアターミラクルさん。長年のエンターテイメントをありがとうございました。
また、場所を変え継続されることをお祈りいたします。SF的な締めはいいね。

キューちゃんは僕を探さない

キューちゃんは僕を探さない

Quno(旧:projecttiyo)

元映画館(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

未見の団体、元映画館も初めて。
ダークファンタジー系にして心象劇のよう。なかなか手強い観せ方をする。かと言って見巧者向けという訳でもない。

説明にあるピアノを擬人化し、永い旅物語を抒情的に紡ぐ。少しネタバレするが、キューちゃんとは擬人化したピアノの名前というか愛称。そして僕との対話を通して生と死、自然摂理、食物連鎖といった漠然とした心の彷徨が始まる と思うのだが…。そこに第三者もしくはキューちゃん との因縁があるモノが絡み、今いる空間(部屋)と外の世界が歪に捻じれ狂気を孕んだ様相を見せる。

会場は元映画館、その構造を巧く利用した観せ方によって違った感覚(劇中劇)に陥りそう。いや そうかもしれない といった物語の結末がふわふわして つかめない。敢えて そう観せているのか、脚本(内容)が未消化なのか、または自分が解らないのか、その意味で手強い。
(上演時間1時間25分 途中休憩なし)
♪北 みれい さんver♪

ネタバレBOX

舞台美術、冒頭は黒いビニールシートに覆われた堆いもの。上手壁は映画館のスクリーン、下手はカウンターがあり黒電話が置かれている。スタンドライト等、いくつか形状の異なる照明器具が暖色を灯している。天井にはシーリングファン。

物語は3人の男女(ひろ、太郎、あい子)が或る部屋に忍び込んで、黒ビニールシートを叩き 中のモノを壊すところから始まる。壊したのはピアノ、それ以外に取り出したのは、ソファ・ローテーブル・椅子、それらをリビング風に並べる。同時に白い衣裳の少女が現れる。少女は ひろの祖母が大事にしていたピアノの生まれ変わりという。本当かウソか 信じられない話に戸惑う3人、そこへ塚井という人物が現れ不思議な話をし出す。ひろ(田山陽大サン)は 太郎(斎藤大學サン)とあい子(三木沙也香サン)が買い出しに行っている間に、ピアノの脚を1本焼いた。供養の意も込めて焼骨したという。

塚井曰く、ピアノは もとは羊(ヒツジ)で、その昔 雌狼のために一本の足を与え、狼は飢えをしのぎ越冬して子を産んだ。羊は三本脚のピアノに産まれ変わり、今また二本足の人間に生まれ変わった。姿かたちは変われども魂は生き続ける。そして塚井は助けられた狼だという。輪廻転生といった印象、人間の3人はキューちゃんに言葉を教えるが、その中で食事の時に「いただきます」…尊い<命>を頂くのだと…。
*羊(4本足)⇨ピアノ(3本足)⇨人(2本足)

キューちゃん(羊)、塚井(狼)とも異なる行為、そのため自然界から見放され孤独な世界へ…彼女らに関わった人々も異常な世界(狂気)へ。神の仕業か精霊の悪戯か?正常な場所は この部屋だけ、ここから出られない。主体的に選択判断できないボク(ひろ)は、どうするのか?ひろ とキューちゃんがソファに並んで座った時にスクリーンに生命・自然界をイメージさせる映像が映る。映画館で映画を見ている二人 その劇中劇と思ったが、さらに物語は続く。ひろは祖母が嫌い、いや正確にはピアノが嫌いだったよう。まさかピアノに<魂>があろうとは想像だにしなかった。人(キューちゃん)は壊(殺)せないが、動物やモノは簡単に…寓話か。

キューちゃんは白衣裳、塚井は黒衣裳で前世イメージ、薄暗い室内に暖色の照明が柔らかく灯る。音響は外世界の狂気と乱舞のような騒音。そんな中で塚井(春日紗矢子サン)の美しい歌(声楽)が聴き所。因みに観た回は、楽器(ピアノ)の音量と彼女の声量がアンバランスで、せっかくの歌声が聞きにくかったのが残念。演出は幻想的であり、その雰囲気作りは巧い。演技は手堅くキャラクターをしっかり立ち上げている。特にキューちゃんを演じた 北さんは純真な赤ん坊の演技が愛らしかった。
全体的に好印象なだけに、結末が今一つなのが惜しい。
次回公演も楽しみにしております。
点滅する女

点滅する女

ピンク・リバティ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2023/06/14 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

不思議な空気のある新人の舞台である。初見の劇団。
ホームドラマに幽霊を出すという手はもうノエル・カワード以来、出尽くした手だし、ホームの事情もよくある話、蛍を最後のクライマックスに持ってくるのも、もう何度も見た芝居の設定なのだが、いつのまにか2時間、持ってしまう。
たぶん、これは舞台の独特のテンポにあるのだと思う。ほとんど従来の序破急の劇的構造による進行に頼ることをしないで、ひとつひとつ確認するように事件が進んでいく。そのテンポに乗ってみているうちに不思議なリアリティが舞台に生まれてくる、この他愛もない世界が、実は「現代の社会の中で失われた家庭」であることが解ってくる。作者はこのことについて劇中で、なくもがなの短い家族論の演説を試みるがそんなモノはなくてもいい。
長い歴史のある演劇の世界では、「はじめて」と言うことは、貴重である。ことにこの作品は、戯曲、とか台詞、役者、美術など具体的、固定的なモノでなく「独特の芝居の空気」
だから、霧散するのも早い。次回を見るのが怖いような公演だった。


ネタバレBOX

野田秀樹も岩松了も前川知大も自分だけの独自の空気を舞台から失わないために、大きなエネルギー、と知恵を使っている。それを見る観客がいるから、彼らは続けられるのだ。作者頑張れ!
キューちゃんは僕を探さない

キューちゃんは僕を探さない

Quno(旧:projecttiyo)

元映画館(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

劇団初見。この劇場も初めて(迷いました)。ちょっとキュートだけど、ダークなファンタジー。割と入り込みやすい世界観でしたが、ラストは分かりにくいなー。劇中歌よかったです。

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