
橋からの眺め
パルコ・プロデュース
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2023/09/02 (土) ~ 2023/09/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
よかった。いろいろ考えさせられる。港の労働者のエディ(伊藤英明)が20歳そこそこの姪のキャサリン(ケイト=福地桃子)をあそこまで縛ろうとするのは、なぜなのか。性的欲望があるのかないのか、その微妙な線は微妙なままに、とにかく事態だけは破局へと突き進んでいく。そこが大変スリリングだった。何かにとりつかれた人間の愚かさ・怖さを伊藤がよく出していた。一方の、福地も無邪気さとコケティッシュさの両方をバランスよく出して、若い魅力を存分に発揮していた。
奥行きのないコンテナの中のような部屋。安っぽい蛍光灯が並ぶ天井が上下して、メリハリと心理状態と、場面転換(アパートと弁護士事務所)を示す。ジョー・ヒル=ギビンズの演出は、労働者仲間などわき役3,4人をカットし、戯曲の本筋だけをくっきりと示す。90分という短さにも、その凝縮ぶりが出ている。
作者はギリシア悲劇・喜劇を意識して本作を書いたという。エディの異様ともいえる偏執・偏向ぶりも、ギリシア悲劇の人物がもとになったと考えれば、うなずける。かつて鄭義信の「たとえば野に咲く花のように」も、「あの男を殺して」という妄執にとりつかれた女性エキセントリックだったが、これもギリシア悲劇「アンドロマケー」を下敷きにしたからだった。

もやしの唄
劇団テアトル・エコー
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2023/09/06 (水) ~ 2023/09/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
経済成長でどんどん生活が便利になっていく60年代の日本。そこで6時間ごとに2時間の水やりをしなければならないという、超手間のかかるもやし栽培を家業とする泉家。長男の恵五郎(根本泰彦)はいつも眠い。長女の十子(吉川亜紀子)は結婚を控え、新しい家電製品に目移りするばかり。次男の一彦(松沢太陽)は6年行った大学もそろそろ卒業、しぶしぶ就活に回る…。やもめの恵五郎に見合いの話が起こり…
11年ぶりの2回目の観劇。懐かしいセットがまずいい。しっかり井戸の水が出て、家の縁の下や軒もリアルに再現。もやしが育つ室の中のシーンは圧巻だ。会社社長の父に反発して家出してきたという村松(川本克彦)、近所の中華料理店の娘なのに、やもめの恵五郎が気になっていつも手伝いに来る高野九理子(小泉聡美)。初老の大人なのに、なぜか子ども帰りをしている喜助(後藤敦)。それぞれのわき役もいい。特に自分の思いを打ち明けられない高野がいじらしい。
お尻にスイッチがあって、座ると眠ってしまう(息子のカンタ=小1の作文)という恵五郎のキャラが本当におかしい。そのうえギターがうまい。ギターがしたくてほんとは最初、もやしづくりが嫌だったというのもうなずける人物だ。

煙突もりの隠れ竜
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2023/08/31 (木) ~ 2023/09/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/09/02 (土) 18:00
幻獣と人間、幻獣と幻獣、人間と人間。それぞれの思いと欲とが絡み合い、時にはせつなく,時には暴力的に,時には自己中に、でもその根底には相手を思いやる優しさが見え隠れしている。いつもながらにハラハラわくわくさせてくれる作品。でも最後にはすごく温かい気持ちにさせてくれる作品。何回見ても飽きるどころか,違う視点や思いに気づかせてくれる作品でした。子供たちが見ても十分楽しめるファンタジー世界でもありました。

煙突もりの隠れ竜
壱劇屋
ABCホール (大阪府)
2023/08/18 (金) ~ 2023/08/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
映像化していないので劇場で観るしかないのが本当に惜しいと思う反面、劇場で観る以上の贅沢はないなとも実感しました。アクションモブや音響、照明、他の観客の反応さえもその効果で舞台を彩っていてとても素敵な作品でした。

煙突もりの隠れ竜
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2023/08/31 (木) ~ 2023/09/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
いつもの事ながら,アトラクションのような演出、あっという間の150分でした。複数のお話が並行して展開しながら絡まり合ったり離れたり・・・最後はキレイに全ての伏線を回収していく見事さ。暖かかったりせつなかったり黒く渦巻いていたり、色々な感情が表れたり隠れたり。もちろん殺陣も満載。アクションモブの人間CGの美しさと運動量に圧倒されっぱなしでした。「楽しかった~」と味わい反芻しながら帰路につける作品です。

『会議』『街角の事件』交互公演
Pカンパニー
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2023/09/06 (水) ~ 2023/09/12 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/09/06 (水) 19:00
座席1階
「会議」をまず、拝見。Pカンパニーの「べつやくづくし」の中でも、上位に入る面白さだ。
まず、開幕前の舞台に納得。定番の電柱に裸電球。これは自分的に言うと好みなので「そう来なくっちゃ」という感じである。冒頭、アルバイトと思われる数人が木製テーブルといすを運んでくる。まず、偉そうに振る舞っているのがこのバイトたちを束ねる担当者のおじさんだが、やがて入ってくるこの仕事を発注したと思われる紳士に会話の主導権が移る。この紳士によると、人間の会議志向を証明するのが目的なのだという。電柱がある屋外に机といすを持ち込んで「会議」だというのだから相当おかしいが、不思議なことに客席はこのシチュエーションをすんなりと受け入れてしまう。
別役戯曲の面白さの一つは、会話の主導権が次々に別の人に移り目くらましをされていくところだ。なるほど、相当な不条理だ。今作でも、バイトが「壊れているいすがあった」というのだが、バイトの担当者のおじさんは「そんなはずはない。壊れていたとしたらお前たちが壊したんだ」と毒づくがそれはその場面だけですっかり忘れてしまう。だが、こうしてすんなりと受け入れられるシチュエーションの中に、重大なカギが潜んでいる。
会話の主役は続いて、たまたま通りかかった風情の「会議参加者」に移る。これも別役戯曲ではよく見られるが、その一人ひとりが勝手な会話を繰り広げる。てんでバラバラに交わされている会話のようだが、実は巧妙に織り込まれていて、やがてキーパーソンである男が登場する。劇はこの男を中心に急展開し、客席は路上という公共空間で行われる殺人事件を目撃することになる。
こうした見どころが1時間20分の舞台に凝縮されているのだから、面白くないわけがない。
2本だてにしなくて、これ1本で締めたのは正解だ。帰りの電車で「あの場面の会話は、ここを解く鍵だったのか」などと反すうして楽しむことができる。

ラフタリ―の丘で
劇団俳優座
俳優座スタジオ(東京都)
2023/08/29 (火) ~ 2023/09/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
アイルランドの演劇では最近はマクドナーの暗い土着リアリズムの作品がよく上演されてきたが、この作品もこの系列のようで、下層階級の農民の家父長の圧制下に生きる一族の暗黒の物語である。物語の軸はこの家の子供たちで18才の娘、その姉四十才、その間に知能障碍の男の子。母親は下の娘が生まれるときになくなり、同居の祖母は認知症。父はもっぱら同年の友と荒野での兎撃ち、自宅の牧草地は荒れ放題。男の子は動物同然に牛小屋で糞まみれで生活し娘たちは父親の性奴隷になっている。その下の娘に縁談が起きるのが物語のスジだが、全編、内容は今は御法度の家庭内パワハラ、セクハラのオンパレードである。もちろん、舞台で見せたりはしないが、それではこの作品を上演する意味が伝わらない。
なぜ、上品という点では他劇団を引き離して独走の俳優座がこの戯曲をやる気になったのか解らないが、これはミスキャストならぬミス劇団である。文学座が上村聡でやっても、阿佐スパが長塚圭史でやっても、若いところでは温泉ドラゴンがシライケイタでやってもこうはならない。アイルランドの僻村の農家の食堂のセットは軽井沢のコテッジのようだし、衣装化粧は男の子の汚し方は極端だが、娘の方は良家女子校の生徒の普段着の感じ。台詞も上品な訳で、俳優座の俳優だから、台詞はきれいに通す(これは唯一の見所と言って良い)がそれが一層空々しくなるという悪循環である。
俳優座は、劇場も閉めると言うし、この先のレパートリーも発表発しているが、どういうことをやりたいのか解らない。文学座や青年座は時代の難局を切り抜けて新劇ファンの期待に応えている。劇界首位にあった劇団の充実した芝居を見せてほしいものだ。かつては日生劇場で公演が打てた劇団ではないか。百人足らずの客席八分の入り。老人多くエレベーター混雑。

SHINE SHOW!
東宝
シアタークリエ(東京都)
2023/08/18 (金) ~ 2023/09/04 (月)公演終了

ワーニャ伯父さん
ハツビロコウ
シアター711(東京都)
2023/09/05 (火) ~ 2023/09/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
コンパクトな舞台で繰り広げられる濃厚な会話劇。この演目2度目の観劇なので、今回はセリフをじっくり楽しむことができた。100年以上前の戯曲なのだが、人間模様は今と全然変わってない。自虐的昼メロの世界ですな。

ワーニャ伯父さん
ハツビロコウ
シアター711(東京都)
2023/09/05 (火) ~ 2023/09/10 (日)公演終了

煙突もりの隠れ竜
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2023/08/31 (木) ~ 2023/09/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
とにかく演出がすごくて、毎度圧倒されます。人間CG等、「役者」の力を存分に活かしたものが多くまずそこに感動します。
それぞれのキャラクター達がしっかりとした信念、考え方を持っていて魅力的です。彼らの言葉や行動を聞いて、見て、自分の考え方や行動を改めて考えました。
そして、一目で考え抜かれていると分かる衣装デザインがとても素敵です!様々な布を使って作られた衣装に毎度心が踊ります。

煙突もりの隠れ竜
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2023/08/31 (木) ~ 2023/09/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
大阪公演に引き続き東京でも観劇させていただきました。
大阪でも既に完成されていた作品を東京の舞台の大きさに合わせて調整するだけでなく、実際に大阪で公演した上での修正点を洗い出しブラッシュアップする微細な改変が多く観られました。そのより良き作品へというこだわりに脱帽でした。
公演を重ねる毎にどんどん洗練され最後は客席と一体となって空間の雰囲気ができていく、舞台でしかありえないとても素敵な公演でした。
作品の内容も大阪公演の方でも書きましたが大変に素晴らしい極上のエンターテインメントでした。
是非いつかまた観たい作品もう観ることができないのは非常に寂しいです、再演もしくは続編を熱く希望します。

ワーニャ伯父さん
ハツビロコウ
シアター711(東京都)
2023/09/05 (火) ~ 2023/09/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
俳優たちの演技に加え、演出がすばらしい。いつもの暗い照明、田舎の夜の虫の鳴き声、静かなギター音楽が静謐な雰囲気を醸す。ろうそくの火の前に座ったソーニャの姿はマグダラのマリアの絵を思わせる。最後の場面はひときわ美しく感動的。あらためてチェーホフが残したこの作品の良さを認識させられた。ワーニャの母親役は省略されている。

煙突もりの隠れ竜
壱劇屋
ABCホール (大阪府)
2023/08/18 (金) ~ 2023/08/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
とにかく楽しかった!
絵本のような世界観と登場人物。
誰かを思う心の大切さを改めて感じました。
小学校の頃の演劇鑑賞を思い出しました。
子供の頃に出会いたかったし、たくさんの子供にも観てほしい作品でした!

Dream
Musical Company POM
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2023/08/19 (土) ~ 2023/08/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
初回観劇。
旗揚げ公演初日、おめでとう🎉
様々なミュージカルの名シーンを、夢を叶えるストーリーで綴る、歌とダンスが中心のミュージカル。
皆さん素人の方の様ですが、全員歌がお上手!!
9割方知ってる名曲ばかりで、聞き惚れた🥰

『赤星 〜akaboshi〜 』
劇団ZTON
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2023/08/11 (金) ~ 2023/08/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ムチャクチャ良かった。
感動が増幅する方向にストーリーがドンドン進んでいって、観客の期待を裏切らない展開し、そしてしっかり感動を届けてくれるZTONさん、流石!!
このアカボシを半年待った甲斐は十二分以上、お釣りでる程あった。
素晴らしかった。
感動、涙😢こぼれた。
以上、SNS主戦場に加え、Corich「観てきた」コメントへの感想投下完!

ジョセフ アンド・ジ・アメージング テクニカラー・ドリームコート
ユースシアタージャパン(YTJ)
ABCホール (大阪府)
2023/08/09 (水) ~ 2023/08/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
奥様と観劇。
5年前も奥様と『Alice IN Wonderland』を拝見し、大興奮したのを覚えてる。
今回はお子様中心のミュージカルで、『Alice IN Wonderland』までは及ばないものの…
されど侮るなかれ、その分お安く、上手いお子さんはメッチャ上手 で、十分楽しめた。

ワーニャ伯父さん
ハツビロコウ
シアター711(東京都)
2023/09/05 (火) ~ 2023/09/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
国内外の優れた既成戯曲にフォーカスして公演を行うハツビロコウ
前々回に続きチェーホフの戯曲
このところ連続して観劇、安定のクオリティを示してくれているが、今日も十分満足のいく初日だった
キャスト全員の表情が良い
主役級以外ではマリーナの深町麻子も渋い演技だった
相変わらず暗めの照明がチェーホフの世界に合っている
最小限だが的確に作られたセット
舞台転換は暗転の間にそのテーブルや椅子を動かすだけなのだが、その時流されるギター曲が実にマッチしている
ちなみに最後のソーニャの宗教的セリフにかぶされたのはフォーレのレクイエムのギター演奏だった

川端康成の描いた女性
公益財団法人茨木市文化振興財団
茨木市市民総合センター(クリエイトセンター)(大阪府)
2023/08/11 (金) ~ 2023/08/11 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
本読みの時間さん中心の座組み、三味線&篠笛の競演·津軽節、聞き応えあり。
朗読も雪国含め、花、日向、雨傘、死面、写真、金糸雀、化粧、百合、火に行く彼女、ざくろ、全11作。
なかなか興味深い、川端康成の女性像。
楽しかった。
これで無料は超お得!

大過なく
ティッシュの会
大阪市中央公会堂(大阪府)
2023/08/11 (金) ~ 2023/08/11 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
お初の劇団さん。
初回観劇。
心に少しチクっとする、
ザラつく様な、
ちょっとした不平不満!
全く”大過”じゃない。
誰も悪くない。私も悪くない。
忘れてしまいそうなくらい、
でも、うっすら積もる不幸…
そんなお話でした。
なかなか微妙な空気感をつく劇団さん、面白かった!