最新の観てきた!クチコミ一覧

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略式:ハワイ

略式:ハワイ

劇団スポーツ

OFF OFFシアター(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/16 (木) 19:00

観るのが3度目のユニット。2017年作品の再演で、一種のタイムスリップものだけど面白い。(10分押し)92分。
 初演は観てない。悩み多き高校生活を送る山戸(内田倭史)の前に現われたのは10年後の自分(田島実紘)で、山戸がしようとしている決断を「後悔するから」と言ってやめさせようとするが…、の物語。時間軸を何回も戻ってやりなおしができる、という無茶な設定が巧くて、笑って観ていられるのだが、終盤の切ない展開が急でちょっと驚く。いい話、になりきれない所が勿体ない。ただし、教師が暴力で部活を強くする、って、10年前だとしても、いつの話だよ、とかは思う。
 入場のハンドリングで手間取り、ダダ漏れ的に10分押し。このままでは帰りのバスに間に合わない、というのが気になってしまい舞台に集中できなかったのが悔しい。

除け者(ノケモノ)は世の毒を噛み込む。

除け者(ノケモノ)は世の毒を噛み込む。

キ上の空論

新宿シアタートップス(東京都)

2024/05/09 (木) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「性に支配される人々の末路」

 承認欲求を満たすためにグレーな商売に手を染める主人公と彼の顧客の姿から、性や家族のあり方を問う力作である。

ネタバレBOX

 17年間家に引きこもっていた37歳の正木円治(藤原祐規)は、篠田純(山口快士)の斡旋によりカップルの依頼で女性パートナーを寝取るというセックスワークに従事している。依頼者はさまざまで、パートナーの歌音(平野紗貴)が円治に寝取られている様子をアイマスクをして聞き耳を立てている太郎(家入健都)や、付き合った当初から妻の三崎キョウ(小松原怜香)を誰かに寝取らせることでしか満たされない星野波瑠(田名瀬偉年)など、倒錯した性癖を持ち合わせている人物たちである。

 情事を終えた円治は三崎に引きこもりになった理由を打ち明ける。彼は小学校5年生のときに担任の汲田先生(藍澤慶子)から注目を浴びたいばかりに優等生めいた行動をしたことで、同級のキヨシロー(小野塚渉悟)らに目をつけられクラスから浮いた存在になってしまい、学校に行けなくなってしまったのだ。円治は社会からの承認欲求に飢えており、それを満たすために寝取り屋をしていることがここで明かされる。

 あるとき円治は三崎と星野から、子どもを作りたいので精子提供をしてほしいと持ちかけられる。戸惑う円治だったが相談した篠田や太郎、歌音にそこまで重く受けとめるなと返され、子どもに父親であることを明かさないことを決めて依頼を承諾する。自分が社会から必要とされていることに満たされた気持ちになった円治は、以降も数名の依頼を受けて精子提供を行い、ある日ネットゲームで知り合ったハンドルネーム「イワクラッシュ」(南出めぐみ)の紹介で「エース」(藍澤慶子・二役)という女性を紹介される。汲田先生の面影を感じる彼女の登場に円治ははからずも浮き立つが、これが思わぬ悲劇を生むことになる。

 本作第一の魅力は手際よい舞台展開である。円治を演じた藤原祐規以外のキャストは何役か兼ねて円治の現在と小学校時代、そして三崎と星野のカップルの現在と高校時代(演じたのは 小町実乃梨と板場充樹)を並行して描く。重いテーマながら手早く目まぐるしい展開のため、消化不良を起こすことなく2時間ちかく観続けることができた。これで円治が寝取り屋をしている動機と三崎・星野カップルが円治を頼る理由はわかったが、やや過剰で説明的になってしまった感は否めない。いっそ円治もしくは三崎・星野カップルのどちらかを重点的に描いたほうが論点がスッキリしたと思う。

 くわえて、長いあいだ引きこもっていたわりにはすでに評判のいいい寝取り屋になっている円治が、オンラインゲームのオフ会で出会った篠田からの提案を受けどのような遍歴を経てきたかや、小学生時代の回想でちょっとだけ出てくる母親[平野紗貴・兼役]との葛藤も描かれていなかったため、円治の人となりを把握することが難しいと感じた。周囲の状況に流されるまま寝取り屋から精子提供者になった円治の浅薄さをリアルに感じることができなかったのである。そのため円治との関係を知り激怒した夫からDVを受けたエースが病院に運ばれた報を受けてのイワクラッシュの批難が、私には理不尽かつ一方的に感じられてしまったし、最後に天から赤ん坊の人形を数体落として円治の胸の内を描く演出も今ひとつ腑に落ちなかった点は残念である。

 性行為の描写をフラフープを使い戯画化したり、円治がトイレで精子を採取した様子をカプセルを出して描くなど、デリケートなテーマをライトに描いたところは独特であり、私はユニークと思った。ただしこうした描写に違和感を抱く観客もいただろうし、いじめやDVの話題も入ってくるため、事前のアナウンスは必要だったように思う。
象

9PROJECT

上野ストアハウス(東京都)

2024/05/16 (木) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

別役実さん25才時の作品
圧倒的な台詞量
この公演で役者辞める
小川智之さんの覚悟が凄かったです
日曜まで
お薦め

マンザナ、わが町

マンザナ、わが町

創造ユニットTaiyo

シアター711(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

五人の女性による個室劇ですかね
スペイン語で果樹園を意味するマンザナ
日本人の強制収容所内で
合衆国憲法に違憲して集められた日系人
一世と二世の確執や人種差別
国への信頼と失望・・・
様々な要因現状希望等を舞台にした作品
なかなかの長丁場ながらも
熱量を維持して走り切っておりました

ネタバレBOX

中心的な人物というより
目立ったのが浪曲師さんだったかなー

舞台美術は隙間のある
掘っ立て小屋風の居住スペースで
狭い中5人の女性が暮らしてる生活感を
並べた歯ブラシ入りのコップなどで表現されてました
本物の鉄条網なども用いて

ラストは舞台に黄色い規制テープを張って
その後の顛末を立て看板にカキワリされて展示してました
リンカク

リンカク

下北澤姉妹社

ザ・スズナリ(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
当日パンフに作 西山水木さんが「不思議な客席に驚かれたことでしょう…」とあるが、自分も こんなザ・ズズナリは初めて。スタッフに たまたま空いていた席に案内されたが、まさかの正面ど真ん中。俯瞰するような感覚で観た。

梗概は それほど難しくはないが、そこに登場する人物の性格や情況、気持を推し量ることは容易でない。人物像の輪郭がハッキリしない、もっと言えば 自分がどうしたいのかといったことが自身で分かっていない。それが、色々な人と関わりあうことで自分の意思を持つ、そんな自覚していく様子が描かれている。

登場するのは一家族だと思うが、その人達の関係も歪というか不思議で、自分の狭い常識の中では考え難い 不可解なこと。そこに他人が関わることで分かってくる事実が、この物語の妙。そして、一見 不思議な舞台美術(客席配置含む)だが、物語を紡ぐ上では理に適っている。
(上演時間2時間 途中休憩なし) 追記予定

マクベス

マクベス

King's Men

座・高円寺2(東京都)

2024/05/14 (火) ~ 2024/05/16 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/05/16 (木) 15:00

価格3,500円

W.シェイクスピアの四大悲劇の一つとなるマクベス。
将軍マクベスが妻と共謀して主君を暗殺。王位となるものの、その重圧に耐えきれず次々と錯乱し暴君と化し、最後は貴族や王子らの復讐によって滅ぼされてしまう。
そんな名演目の旗揚げ公演をじっくりと観劇させて頂きました。
往年の舞台・古典作品の概念にとらわれず、演劇の自由そのものを捉えなおす…この意図は、パンフレットの厚さを見ても一目瞭然。主催側の熱い想いが伝わってきました。
また共生社会の形成にも積極的な劇団であり、障がいの有無(近年では特性と言われてきました)に関わらず、意欲ある人のチャンスの場として演劇を通じた社会参加を行う意義は素敵だなと。
以下、感じた事を忌憚なく書きます。

ネタバレBOX

「新しい栄誉は新しい衣服のようなものだ…」
こんなセリフが劇中にあったかと思いますが、文学的な台詞回しの多い古典劇を上演するという事は、その本質や様式を入れた上でどう壊していくか・自由であるかを考えなくてはいけない。
素舞台の劇場で、色んな特性を持った役者陣。それをまとめる演出兼役者。そこにプロフェッショナルさを見出すのは、未だ新しい服が馴染んでいないのと同じこと。

まず、台詞が長いので滑舌や末端の発語の処理が単に場のテンションで終わってしまい、素人感のぬぐえないバラつきが違和感を生み出します。特に長ゼリを自分の言葉として舞台で活かす…というのは、役者自身の能力が大きく左右されますから大変な事だと思います。
個人的にはシェイクスピア劇に拘らず、別の戯曲を扱っても良かったんじゃないかと(内容が難しい)。

またプロジェクタを用いた背景ですが…どう考えても劇作風景にかみ合わない写真が気になりました。背景は朝・夜などを考慮して、あとは照明の変化だけで十分じゃないかと。BGMは突然大きく表れたかと思えば、ミュージカル風の歌唱とダンス…取って付けた感が否めません。
全体的にプリモとプリマのお二人で主な動きの中心を担っていますが、箱が大きいのか視界的には小さくまとまっている印象。かと言って、派手なパフォーマンスは全体を俯瞰すると浮いてしまうので、ここも役者全体の足並みを揃えると言う意味では難しいです。
手話を使ったシーンも良い意味で「間」が生まれて良かったですが、折角プロジェクタがあるので何を言っているのか「台詞の投影」をしても良かったんじゃないかと感じました。

制約があるからこそ、自由が生まれる。
何をしても良い・何を着ても良い…これは私の感じる自由とは少し異なるように観させて頂きました。この団体で多様な特性を持つ役者がどんどん育っていく事を深くお祈り申し上げます。
こどもの一生

こどもの一生

あるいはエナメルの目をもつ乙女

王子小劇場(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

王子小劇場があらゆる意味でパルコ劇場仕様になっていてビックリ!
こだわりが感じられるセットは想像力を掻き立てられ、開演までの間いくらでも見ていられるし、いざ始まってみれば衣装、音響、照明、本当に細かいところまで並々ならぬ美意識が張り巡らされている
もっと大きな劇場でも充分通用する それら予算度外視の心意気もさることながら、全く引けを取らない役者さんの力量がこれまた
今回の「こどもの一生」という脚本の良さが存分に活きるためには、これだけの怪演、パワーとテクニックが必要なのでしょうが、それにしても何と言うかゴージャス!
思わず演劇界が大いに盛り上がっていた頃に戻った感覚に

コロチキ・ナダルが言うニュアンスの「イっちゃってる」感じに笑いも起き、めっちゃ破天荒な世界観は暴力的で破廉恥
それでいて美しさも感じられるのだから何とも不思議な世界
狂乱へと転がり落ちていく展開、深層心理に訴えてくる様な恐怖、最後に訪れるカタルシスに酔いしれました

リンカク

リンカク

下北澤姉妹社

ザ・スズナリ(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/16 (木) 14:00

こんなスズナリ初めて観た!
舞台奥から太い花道が伸びている。
三方に客席が作られ、花道の途中には四角い穴があいている。深さは不明。
気が付くと水が流れるような、雨のような音が聞こえてくる。
開演前からホームレス風に厚着をした女性が登場、舞台上の石を床に投げたりしている。
雨が降って来たのにはびっくりした。

ネタバレBOX

着物姿の女性が腰ひもで首を吊ろうとして失敗、ホームレスの女性に助けられて
一緒に自分の家へ帰って来る。
このホームレスの女性が、複雑な家族をシンプルにほぐしていく。

別居中の夫婦、夫は要介護状態で内縁の妻と娘が献身的に世話をしている。
着物の妻と息子は少し離れてそれを見守っている。
だがそこには実に複雑な事情があった・・・。

当日パンフに書かれた作・西山水木さんの言葉の中に
「私はほとんど他人でできています」という一文があった。
優しい人に囲まれてその気持ちがわかるから、自分と他人の境界が曖昧になって
本当は自分がどうしたいのか、わからなくなってしまう。
”誰かの望んでいることが、自分の望んだことになってしまう” ということだと思う。
自分が望んで選択したのだと思い込んでいる。

謎のホームレス女性は、「それは本当にあなたがやりたいことではない」と強く促す。
そして登場人物は皆真実に向き合い、自分自身を見つめて変化していく。
ラストは、長いことリンカクが定まらずに苦しんできた者だけが得られる
爽快感に満ちている。

登場人物の住まいや、息子のネット配信などが、もう少し解りやすく描かれたら
観客はもっと早く登場人物に寄り添えると思う。
内容の普遍性、表現のイマドキ感がとても素晴らしいだけに
チラシデザインなどに内容の深みが反映されていないように感じられて惜しい。

作者の真摯な姿勢が随所に感じられる意欲作。
役者陣のひたむきさが伝わって来る作品だ。
ホームレス女性(倉品淳子)の力強さが作品の推進力のひとつになっている。
言葉によって人間関係を失い、舞踏によって自己表現を得た
リョウマ(永田涼香)の喜びが美しい。
ラスト、感情を取り戻した麗羅(あさ朝子)の号泣に思わず私も泣いてしまった。
もう、どうにもトまらないっ!!

もう、どうにもトまらないっ!!

海ねこ症候群

シアター711(東京都)

2024/05/09 (木) ~ 2024/05/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

新しいようで昭和の香も感じる不思議な空間。
親が子の習い事にかける思いがシンプルに表現されていて、多くの人の共感を得るんじゃないかな。
発表会っていう展開はあれだけど、最近の自分と重ねて思わずグッときた。
面白かった。

法王庁の避妊法

法王庁の避妊法

ちょっこりひょうきん島

OFF OFFシアター(東京都)

2024/05/08 (水) ~ 2024/05/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

すごく良かった。
単なる伝記に止まらない命の物語。純粋に謎に挑む荻野医師の演技が時にコミカル、時にシリアスで惹き込まれる。4人の女性の異なる視点での命の捉え方がそれぞれに胸を打つ。30年前の初演から様々な団体で再演されているのも納得。

及川さんのシーン、ほんとほっこりする。
あの花の演出、時の流れを表現していたのかな?心に残る演出。

除け者(ノケモノ)は世の毒を噛み込む。

除け者(ノケモノ)は世の毒を噛み込む。

キ上の空論

新宿シアタートップス(東京都)

2024/05/09 (木) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

全く共感できなかったが、静かな世界に強弱ある芝居、心象を物理的に表現する演出など見応えある作品だった。
何が普通で何が異常なのか?もともと境界は微妙だし境遇や立ち位置で逆転するという事かな、それを丁寧に描いていた印象。

リンカク

リンカク

下北澤姉妹社

ザ・スズナリ(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/05/16 (木) 19:00

120分。休憩なし。

熱海殺人事件~モンテカルロイリュージョン~

熱海殺人事件~モンテカルロイリュージョン~

ActPost

すみだパークシアター倉(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

チラシを見て感じた違和感が、何だか腑に落ちる仕上がりの舞台。水野朋子/山口アイ子役がWキャストで、どちらの方にしようか迷ったが、Vanity'sの舞台を何度か観ていた音羽美可子の回に。

リンカク

リンカク

下北澤姉妹社

ザ・スズナリ(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

素晴らしかったです。舞台があのようなセットになっているとは…です。スズナリは何度も足を運んでいる劇場ですが、あそこまで舞台を作り変えた観劇は今回がはじめてです。最初の雨に濡れるシーンのためだけにあのセットをつくるのもすごいなーと思いました。

闇の黒蟲 ~漆黒双六悪徒錦絵~

闇の黒蟲 ~漆黒双六悪徒錦絵~

演劇企画戯舎

「劇」小劇場(東京都)

2024/05/02 (木) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/06 (月) 14:00

元々は落語の人情噺で講談化され歌舞伎化を経て井上ひさしが戯曲化もした藪原検校をベースにした作品にして5年ぶりの再演。
元ネタが元ネタだけに「講釈師」が随時登場して状況や端折った部分を説明して進め、黒地に白で松の木を描いた簾を背景に何種類もの小屏風を使って場を表すスタイルなど「立体講談」と言えるのではないか。しかも基本的には和風な中、「御用提灯ダンス」が洋風なのもアクセント。
そうして語られる物語は過去の罪を背負って(償わず)生きている者の因果応報的な末路……だが、初演時同様、主人公に感情移入して古典的な悲劇に思われてしまうのは不思議。

ファンタスマゴリ3

ファンタスマゴリ3

ガラ劇

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/15 (水) 19:00

Aチーム『#ガラ版銀河鉄道の夜』を観た。ちょっと驚くダークファンタジーだが面白かった。101分。
 風雷紡の吉水雪乃が出るので観に行ったのだが、タイトルから予想される寓話的な物語ではなかった。歌舞伎町の雑居ビルの屋上に集まる不良少女達の物語で、「銀河鉄道の夜」と似通った部分はないのだが、寓話的な感触は似ているかも。ちょっと心が痛くなる台詞が不穏な感じを醸し出すが、興味深く観て、ちょっとだけホッとした。期待の吉水は、あまりやらない役だと思ったが、しっかり演じ、っていうか、役者陣は皆しっかりしてた。面白い作品だと思った。

達磨さんは転ばない

達磨さんは転ばない

劇団龍門

シアターシャイン(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 初日を拝見。作・演は村手 龍太さん。如何にも村手さんらしい味のある深く而も観る者に勇気を与えてくれる作品。華5つ☆。ロンモチ、ベシミル!

ネタバレBOX

 金本 達磨は映画監督。名前からは想像するのが難しいが女性である。年1本のペースで作品を発表。数々の賞を受賞後、この5年間作品発表は無い。そんな彼女がキャスト募集オーディションをSNSで発信。応募者三千名を超える中から選ばれたのは僅か8名。共通項は1つの例外もなく闇を抱えた人々であった。応募の履歴書には、これ迄過ごしてきた人生を詳細に赤裸々に書くことが義務付けられていた。
 監督の5年もの沈黙は、表現ではなく利潤で差配される映画の製作過程で内容がスポイルされていることに対する挑戦があった。然しプロデューサーやスタッフからも著名俳優等を中心にキャスティングしなければ製作費が出ない、との反対意見が相次ぐ。当然、スポンサーやメディア報道等の動向も緻密にチェックしつつ、要所、要所に攻勢をも掛ける。こんな状況下、愈々オーディション当日に集められた志願者に対応した監督の為したことは? 通常のオーディションでは全く考えられない破天荒な内容であった。言ってみれば、それは各々の生き方そのものを問う、否根底から問い直す修羅場であった。集められた者全員と監督の面前で各々がありきたりの仮面、偽装、表の顔を剥がされ剥き出しの自分自身と対峙してゆく。そしてそのことを通してハッキリ己自身の位置と裸の己を正確に把握してゆく。即ち世間体等という表層を脱し己自身を確立してゆくのである。
 この過程が、監督の新たな作品だと分かる迄に二転、三転・・・と物事の本質と表現行為、皮相でしかない「現実」との対比、葛藤、止揚が行われる。この間の丁々発止が見ものだ。而も警察の者だと登場する人物による社会戯評が的を射ている。脚本、演出、演技も良く、先にも書いたように兎に角観る者に元気を与えてくれる作品である。
マクベス

マクベス

King's Men

座・高円寺2(東京都)

2024/05/14 (火) ~ 2024/05/16 (木)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

SHAKES2024~それは夢、だが人生という永劫の物語

SHAKES2024~それは夢、だが人生という永劫の物語

『SHAKES2024』製作委員会

俳優座劇場(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

日本でのシェクスピアの受容も幅広くなったもので、これは2.5ディメンションである。
2.5の世界も多彩になって業界内では、単一の興行主体が公演の責任を持つのではなく、映画のように持ち合いの製作委員会方式による製作もあるようだ。受付で、とは言っても責任幹事社はあるだろう?どこ?と聞いてみたが、受付はそれ以上のことは知らなかった。3D-Deluxの砲はもう十五年以上のキャリアのある2.5の演劇集団、
UNiFYの方は男性の男性ヴォーカル10名。まだキャリアは短い。いずれも初見である。
歌、踊り、アクション、驚き、笑い、涙をシェイクした舞台というのが売り文句。そこにに、今回はシェイクスピアの言葉をトーリのストーリの展開に取り入れている。欲張ったものだが、それが出来るところが2.5で、夢を持つ若者たちがシェイクスピアランドという遊園地のアトラクションの主役になり、それが、イギリスにも売れ、世界的なスターになるという大筋を売り文句通りにやってみせる。とにかく一瀉千里で役者も観客も忙しいが、段取りだけは初日なのに、ほぼ、ぼろも出さずにやりきったのは、スタフも役者もこういう舞台になれてきているということだろう。客席が若い女性客の固定客ばかりで8千円から1万1千円は、ショーの参加費という感じだ。ここから先は大変だろうが、あまり演劇に迫ろうという気もなさそうだった。ファン席は満席だったがこれで四組もチームを作って大阪、名古屋もやるという。興行としては成立しているのだろう。


マクベス

マクベス

King's Men

座・高円寺2(東京都)

2024/05/14 (火) ~ 2024/05/16 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 今作にはシェイクスピアの「マクベス」に対する新解釈が盛り込まれていると言うことができようが、これが素晴らしい。ベシミル! 華5つ☆本日楽日。3公演がある。尺は120分。

ネタバレBOX

 板上フラット。上手・下手側面に黒幕を各三枚天井から板面迄下ろして袖を構成。このようにして作られた袖を用いて出捌けに用いる他客席側通路が魔女たちの登場・退出や王子らの国外脱出、城攻めに参加する軍勢等の登退場にも用いられる。衣装、髪型などはカジュアル。拝見して直ぐに感じたのはシェイクスピアシアターに似ているということであったがそれもそのはず、今回マクベス、マクベス夫人を演じ、共同で演出にあたり制作まで担当した主宰のユニットキングスメンの平澤智之氏、篁エリさんはお二人ともシェイクスピアシアター出身であった。
 肝はラストシーンにある。今迄他の劇団が演ずる「マクベス」を何作も拝見してきたが総てシャイクスピアの翻訳作品に忠実で今回のような独自の解釈を付け加えている作品を拝見したのは初のことである。無論、このことに様々な意見は在ろうが、演劇たるもの、このように原作を忠実に反映しつつも、時代に生きる人々へのリアルな訴え、問題提起をすることは最も大切なアートの務めでもあると信ずる。
換言すれば我々が今現在生きている世界は、今作に登場する魔女たちの言説で端的に表されているように矛盾だらけの前提の上にその矛盾をどうにか糊塗し己の利害を優先する為に謀略が実行され、謀略によってあからさまに実行されてしまった取り返しのつかない惨虐によって後戻りできなくなった人間の喘いでいる時代ということができよう。その末路を描いたのがシェイクスピアの「マクベス」であると捉えられようが、この喘ぎの央(さなか)で最も苦しんだ人々が見出した最終判断こそ、今作のラストで描かれているシーンだと断じた。懸命な判断であろう。

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