諸国を遍歴する二人の騎士の物語 風に吹かれてドンキホーテ 交互公演
Pカンパニー
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/03/15 (水) 19:00
座席1階
Pカンパニーの別役実シリーズ。「諸国を遍歴する」を鑑賞。不条理の中にもいくつか笑いがあるのが別役さんの芝居のいいところであり、不条理でも安心できるところなのだが、今作はさすがに笑えない。不条理の果ては背筋が寒くなる展開である。
舞台は「移動宿泊所」という看板を樹木に引っかけた宿屋で、テントの中にベッド、その脇に簡素なテーブルだけ。ここを訪れる医者と看護師、牧師、そして二人の騎士と部下というメンバーで話は展開する。テーブルにさりげなく置いてある水差しに下剤を入れて、体調が悪くなったのを見て治療をしようとか、死んだら祈りを捧げてあげようとか、医者や牧師は自分の仕事で儲けようとする下心からスタート。その先は何でこうなるのかという「事件」が次々に起きていく。背筋が寒くなるというのは、次々に起きる事件の後味がよくないからだ。
これぞ別役ワールドというわけなのだが、Pカンパニーが上演した「トイレはこちら」のような笑いはない。手厳しい展開になっていく今作の方が、この世の中で生きていると身近に起きる裏切りとか、策略とか、見たくないものが眼前に現れ、世の中の不条理を浮き彫りにしている。
レプリカ
ハツビロコウ
シアター711(東京都)
2023/03/14 (火) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
最初から最後迄、ボーっとしてる暇もないくらい、舞台を観いってしまう迫力がスゴい。
入ってすぐ、インパクトのある音響で、もう役者さんがすでに演じている。
ビックリして仰視してしまった。
内容は、本当に申し分なく素晴らしい。
愛情の強さゆえに起こる悲劇。
観ていて恐ろしいが、ある意味では興味深い。
悲劇なので、おもしろいといっては語弊があるかもしれないが、退屈しない。
迫真の演技で、本当に素晴らしかった。
ハツビロコウ、期待を裏切らない。
次回も楽しみ。
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視点
座・高円寺1(東京都)
2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/03/15 (水) 19:00
1時間×2劇団を4組上演する企画の第1弾。
#東京にこにこちゃん #elePHANTMoon を観た。58分(16分休み)51分。
東京にこにこちゃん『またね?ばけものかぞく』
1度だけ観たことがある劇団だが、馬鹿馬鹿しい(誉めています)コメディを力技で演じる力がスゴイと思ってて、本作もそう。終盤の飛行場面を頑張って演じるあたりは割り切り方が潔い。
elePHANTMoon『落書き』
旗揚げから全作品を観ている劇団だが、主宰のマキタが映像系にシフトしたために8年ぶりの公演。今回、全4組を観てみようと思ったのは、本劇団の参加が大きい(もう一つはMuの『変な穴』)。いつもながらのヒリヒリしたメンタルの痛みを感じさせてくれて、主人公の井神沙恵の存在感が見事だが、4人の役割をしっかり描き分けた脚本と、しっかり演じる役者陣が強烈。
芝居とは関係ないが、4組全てを観ようと思って、事前精算の指定席を取ったが、それがD列で、目の前を通路として使われる。これってヒドクないでしょうか。
Light on TennesseeWilliams
一般社団法人 壁なき演劇センター
シアターX(東京都)
2023/03/11 (土) ~ 2023/03/15 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
今まで観たこともない客席の配置で、新鮮な驚きでした。
難解というコメントもあったので、恐る恐る行きましたが、あまり深く考えずに楽しんでしまいました。
これでいいのでしょうか?個人的にはおもしろかったです。
お母さん役の役者さんの演技が、インパクトがあり、素晴らしかったです。
最後のオチはビックリでした。
テネシーウイリアムズらしいかな、と思いました。
預けた靴、探せるのか心配でしたが、とてもステキな返還で、感激でした。
のりの良い音楽と共に...
次こそは男
銀プロ
雑遊(東京都)
2023/03/15 (水) ~ 2023/03/26 (日)公演終了
since 1991
ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2023/03/15 (水) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ssチームの初日を観劇。
沢山の架空劇団の会話によって演劇界から見た時代の移り変わりを見せた舞台でした。
役者さん達の芸達者に魅入りました。
特に糸原舞さんと小林知未さんが良かったです
19日までの上演。
お時間ある方はぜひ。
Light on TennesseeWilliams
一般社団法人 壁なき演劇センター
シアターX(東京都)
2023/03/11 (土) ~ 2023/03/15 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
テネシー・ウィリアムズという人物を、靴を題材にして表現された舞台でした。
役者さんの熱演で、自分に中で、何となくですが人物像が浮かんできました。
斬新な演出で、独特の雰囲気は良いのですが、自分の座った席が悪いのか、ずっと舞台照明が目に直撃で、眩しくて見えにくく、目も痛かったです。
良い舞台なのに、集中がそがれ残念でした。
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視点
座・高円寺1(東京都)
2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#elePHANTMoon
#落書き
#井神沙恵 #加藤なぎさ
#菊地奈緒 #寺内淳志 (敬称略)
B初日。8年振りの公演を披露する彼等が、今回の企画に参加する団体8組の中の目玉だと思っている。参加を知ってリアルに叫んでしまったし、もう楽しみで楽しみで仕方なかった。マキタカズオミさんが紡ぐ世界は、いつだって危険な香りが漂う。怖いけれど嫌じゃない。そのヒリッとするのに気持ちがイイ感覚は、少し早いのに瘡蓋を剥ぐような、蚊に刺されて出来た膨らみに爪で十字の跡をつけるような、ゾクッとする快感に似ている。
その世界の真ん中に大好きな井神沙恵さんがいるのだから堪らない。
トラウマって何だろう。幻覚って何だろう。優しさや思いやりから生まれる善意が、意図に反して誰かや何かを、ましてや救いたい対象を傷つけたり苦しめたりする結果を招いたらどんな気持ちになるのだろう。それが多くの人間に周知され、利用され悪用されたら、人は狂うだろうか、戦うのだろうか。
この世はいつでもどこでもスケープゴートを生み出す魔女裁判の法廷なのかもしれない。そこに暗躍する黒魔術。どこかのアビゲイルによって、誰もがジョン・プロクターにされてしまうかもしれないなら、もう正義が勝つ方法はないのかもしれない。
ヌルッとしたソレを飲み込んだ先に……アナタは何を見ることになるのだろう。
その目で確かめて欲しい。
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視点
座・高円寺1(東京都)
2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#東京にこにこちゃん
#またね?ばけものかぞく
#るい乃あゆ #四柳智惟
#澁川智代 #モリィ
#木乃江祐希 #髙畑遊
#鳥島明 #尾形悟(敬称略)
A初日トップバッター。
『日本一チケットの取れる劇団』が売り文句の彼等を最初に観たのは2018年の荻窪小劇場だった。当時から出演していたキャストも活躍し、演劇界で知られる俳優もキャスティングされ、今や人気沸騰中。それでも、変わらず作風も上演する姿勢もシャイで可笑しくて謙虚。そして可愛い。そう、この団体の持つオーラは紛れもなく『可愛い』だ。
作演出の萩田頌豊与さんが作る世界は、心の声が漏れる世界。いや、漏れるレベルでは無い。呟くも超えて心の声を語る世界。伝える世界と言ってもいい。その『全部言っちゃう』感じ、『全部説明しちゃう』感じが可笑しくて楽しくて可愛い。
大好きな木乃江祐希さんが躍動していて嬉しい。
髙畑遊さんの面白さは今後の活躍に疑いの余地は無い。
そして、作品に最もフィットし安定していて、あのクセのある台詞を自分のモノにして滑らかに届けてくれるモリィさんに惚れ惚れする。ヤバイわ。
クセ者ばかりのクセの強い作品なのに、後味スッキリ。
奇妙で可笑しいヒューマンドラマを観て欲しい。
果てのない 物語のない 旅にでる
精華高校演劇部・芸術総合高校演劇部合同東京公演実行委員会
シアター風姿花伝(東京都)
2023/03/11 (土) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「ファウスト-大阪、ミナミの高校生5-」2023.3.12 17時 風姿花伝
素舞台、上手に階段を設え登場しない生徒たちが座って待機する。タイトルに入っている5という数字は、ミナミの高校生がシリーズ化されており、今作が5作目であることを表していよう。
ところで今作を拝見し既発表作品も脚本を読みたくなった。何より最も本質的な問題に真正面から挑んでいるからである。この勇気を高く評価したい。
果てのない 物語のない 旅にでる
精華高校演劇部・芸術総合高校演劇部合同東京公演実行委員会
シアター風姿花伝(東京都)
2023/03/11 (土) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「Twinkle Night」 2023.3.12 17時 風姿花伝 埼玉県立芸術総合高校演劇部
某侯爵邸が舞台の作品である。板上は下手奥に侯爵令嬢の肖像画を懸けたイーゼル。上手奥に絨毯を敷いた応接セット。ソファの豪華さでその富を偲ばせる。
レプリカ
ハツビロコウ
シアター711(東京都)
2023/03/14 (火) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
この内容は当然5つ☆
尺は休憩なしの2時間15分を超える程度。然し一瞬たりとも気の抜けない舞台だ。観る者は、普段自分が拠って立っている存在感の基盤を揺すられ極めて濃厚な時間を過ごすことができよう。良く考えられた照明、音響、舞台美術効果も体験すべし。いつも通り、スタッフの対応も素晴らしい。
Light on TennesseeWilliams
一般社団法人 壁なき演劇センター
シアターX(東京都)
2023/03/11 (土) ~ 2023/03/15 (水)公演終了
『キレナイ/Dear Me!』
ラゾーナ川崎プラザソル
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2023/01/21 (土) ~ 2023/01/29 (日)公演終了
実演鑑賞
「Dear me! 」も「キレナイ」に続いて拝見していたが随分日が経ってしまった。WELLMADEな話ではあるものの、終盤私は興が冷めた。時代的な問題、というか、限界というか。
保育園に出入りする人間には親たちの他にこの保育園を建てる青年園長に出資をした旧友(見た目からして反社。子どもが泣く)とその同僚らしきイカツイ男が連れでやって来る。何しに来るでもないが「旧友の仕事ぶり」を「出資(無利子の融資)した者として」にかこつけて、癒されに来てる模様。
この存在がラストでちょっとしたどんでん返しをやるのだが。。
レプリカ
ハツビロコウ
シアター711(東京都)
2023/03/14 (火) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
主演の松田佳央理さんがやたら美人。丸川珠代の横山めぐみ風味。開演前から舞台上では豪雨と稲光、轟く雷鳴。毛布を被って恐れ慄く姿は中世の修道僧。独特な指の握り方。不安を掻き立てる。
嵐の中、突然の停電、けたたましく鳴る電話のベル。何かに怯えている人々。人里離れた田舎の山奥の家、十年前から因縁のあるストーカーの影がちらつく。娘を守る父親の必死の戦い。
父親の松本光生氏は竹原慎二っぽい。
医師の井手麻渡(あさと)氏は長井秀和的。
沖縄から出て来た新垣(あらかき)亘平氏は石井智宏のようなふてぶてしさ。
酪農家でアダルトグッズ屋も兼業している高田賢一氏、パロディTシャツに悠然たる髭を貯えた巨漢。ジョン・テンタを思わせる。
画家の田辺日太氏は小松政夫の味わい。
ウイスキー、煙草、砂糖の入れすぎたコーヒー、ナイフ、ラジカセ、カセットテープ、精巧なレプリカ人形。
誰もが肚の底で松田佳央理さんの美しい肉体を我が物とせんと静かに欲望をたぎらせているようだ。
『10 クローバーフィールド・レーン』みたいな雰囲気。アメリカのサイコ・スリラーを思わせる。誰の言うことを信じ誰の言うことを信じてはいけないのか。誰が誰を騙し誰が誰に騙されているのか。
張り詰めた狂気、二転三転する緊迫の舞台。
是非観に行って頂きたい。
人間ども集まれ!
ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ
浅草九劇(東京都)
2023/03/11 (土) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
えっ?新人!??
今後のイッツフォーリーズがとても楽しみになりました。
「無性人間」対「人間」
そんなSF。
人間は恐ろしいわ。
デラシネ
鵺的(ぬえてき)
新宿シアタートップス(東京都)
2023/03/06 (月) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/03/10 (金)
うひゃっ!!うす笑いを浮かべながら観てしまった。
そして最後スカッとしたと言うかなんと言うか
どうなったのでしょう 笑
「女」怖い!でも好き!!ともなった。
ここ数年でそんな怪物たちも居なくなりつつある。
いないで欲しいと願う。
Dramatic Jam 5
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2023/03/10 (金) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
本年6月で閉館となる新宿歌舞伎町のシアターミラクルのコント企画を観劇
9つのショートコントの詰め合わせ
岸田國士のパロディもあり、9作の小品1時間は、あっという間であった。
シアターミラクルは、上演作品どれをとってもほぼ素舞台、音照、美術に頼らない脚本・構成・演出と役者の表現力で、作品を提供してくれる、かなり出演者側には手強く、観客側に見応えのある、そして低廉なチケット代で、演劇の世界を魅せてくれる素晴らしい劇場である
この劇場で腕前を遺憾無く振るい、今も中劇場・小劇場で活躍する脚本家さん・演出家さんそして俳優さん達は綺羅星の如くいる
6月の閉館にむかって、小劇場・学生演劇界では知らないものがいない「ナイゲン」(富坂さんもこの劇場で新作にチャレンジしていたのを思い出すが)を2バージョンで、そして劇場主の池田さんの代表作「ホテルミラクル」が上演される
お見逃しのないようにお気をつけ召されたい
閉館を惜しむ声が湧いているが、推しは推せる時に推せ!は鉄則
決まったあとでは何の力にもならない
もし惜しむ声が本物であれば、上記2作(いや、3作かな)に足を運んで、劇場主池田さんの創作にかける情熱が消えてしまわぬよう、火を灯し続けられるように、しっかり見守ってもらいたい
Laghu prarthana
中央大学第二演劇研究会
ザムザ阿佐谷(東京都)
2023/03/09 (木) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/03/09 (木) 18:00
中国西部のとある国。そこでは国を挙げて1つの宗教が信仰されており、教えでは教祖は寿命を終えるごとに輪廻転生を繰り返し人々を理想郷(シャンバラ)へと導くとされていた。しかしある日、その国で新たな転生者は現れなかった......ことと、現代の日本にて新人刑事の結城は署内で煙たがられている先輩刑事見取と共に事件を調べていき、出どころが分からない銃が使用されたことで難航する捜査の中、見取は15年前のとある事件の資料を結城に渡す。とある宗教団体が起こしたというその事件は今回捜査している事件と類似点が多いこと、更に虐待を受け、不良仲間とつるんで学校をサボっている郷田ツカサがこの物語全体において最重要人物であり、その幼馴染の比丘レンなども絡み、ただの宗教2世の悩みや新興宗教による犯罪を取り扱った刑事サスペンス劇かと思いきや、思った以上の2重3重に物語が展開して、賛否両論を呼びかねないラストを観るに至って、一気に引き込まれた。
警察の刑事を束ねるパワハラを通り越した恐怖で周りを威圧し、叩き上げの女班長常田、はみ出し刑事見取と新人女性刑事結城を中心とした刑事サスペンス、郷田ツカサ、その親でやたらとツカサに暴力的な郷田清、ツカサの幼馴染の比丘レン、ツカサの不良仲間達を取り巻く他愛もない、だがいつ崩れるかもわからない青春群像、新興宗教団体の儀式や絆の物語、第二次世界大戦中の中国における国を挙げてのトゥルク王を中心とした1つの宗教を日本政府の命を受けて中国共産党の役人による大規模な弾圧の物語、これらの物語、あんまり噛み合わないようでいて、そこに郷田ツカサという人物が全ての話において深く関わりがあり、人々を誠に救済できるのはツカサだということがわかってくるという、徐々に物語を回収しつつ、劇の後半では生死の間でツカサが殺されたお母さんに会い、過去に遡ったりと一気に激的な急展開に持っていくあり方が、作品の構成として、とても学生劇団のレベルを遥かに飛び越えており、これからの可能性を感じ、見事だった。
郷田ツカサに対して、親父である郷田清が酒浸りで、ツカサに対して暴力的に振舞う行為は傍から見立ても、ツカサからみても虐待だが、そういう行為をするようになった経緯は、ツカサを守るために仕方なくやっていたことが後になってわかるが、息子であるツカサは信用しきれないところもあり、その事実に複雑な心境になりつつも、急に親父を抱きしめるという親子の絆の場面で、色々と感慨深くなり、感動して、思わず、涙が出た。
全体的には、緊張感、臨場感ある劇だったが、ところどころ笑える場面もあって、程よく肩の力を抜くところは抜くというふうに加減して観ることができたので、思ったよりかは疲れなかった。
個性的だったり、アクの強い登場人物、それにコミットした役者が多くて、可能性を感じた。
特に、女班長常田役の夏炉冬扇
がボーイッシュな上、過剰にパワハラ的で、鬼の如くに高圧的な態度と喋り方が普段からそうなんじゃないかと錯覚させるほど、出てきたときから雰囲気が感じられて良かった。
ただ、強いて言うなら、途中10分ほどの休憩を入れたのは間違いだったと思う。なぜなら、この手の刑事サスペンスで途中休憩を挟むと集中力が一旦途切れるから。案の定、後半戦が始まってすぐは客席がざわついていたきらいがある。
あと、あまりにも声が枯れ、言葉に詰まったり、噛んだりするところを気を付ければプロになれると感じた。
最後に、この劇のラストには賛否両論あると思うが、個人的にはラストで、郷田ツカサとトゥルク王が過去を彷徨い続けながら、だからといって過去が変えられるかは皆目見当がつかないが、人々を救済する至高の実態のない神のような存在となっていく終わり方は、上手い逃げ方をしたなと感じ、多少の不快感さえ感じた。
本当の意味で、戦争や争い、弾圧を止めさせ、抑圧され、自由を奪われた人々を救済し、全ての人が平穏な日々を遅れるようにするためには、過去は変えられる可能性なんて薄いのだから、今、この生きている瞬間を大事にしつつ、今私たちにできることを、小さなことからでも良いから実践していく。そうするといずれ平和に結び付いていくというような終わり方のほうが私的には、トゥルク王と郷田ツカサを自己犠牲にすることによって全てが救われる在り方よりかは、よっぽど共感出来るんじゃないかと感じた。
マリー・キュリー
アミューズ
天王洲 銀河劇場(東京都)
2023/03/13 (月) ~ 2023/03/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
キューリー夫人の一代記を韓国製ミュージカルにした。二十分の休憩含み2時間45分
夫人は超有名科学者だからその人生はよく知られている。その一生は、現代にも通じるテーマ満載で、主だったところでは、ポーランド出身者への民族差別、女性科学者へのアカデミズムの差別。科学とその実用化のモラル、科学の人体での実験モラル、日本人にとっては放射能科学の先駆者が自身も放射能被曝のために死去したこと、わかりやすい世界的名声などだが、このあたりを、本は古いタイプのミュージカル本の型どおりのパターンで作っている。その人生そのものが波瀾万丈だから見ていて飽きないが、現在の世界の課題と関わると偉人伝だけではすまなくなる。そのつめは結構甘く、難しいところは詰めずに八方うまくまとめた韓国製で物足りない。
スターとして確立している俳優は出ていないが、皆一生懸命にやっていて動きも歌も無難だが、突き抜ける天才の話としてはおとなしすぎる。主役の四人だけ(キューリー夫人:愛華れいか(タカラヅカ娘役出身))、夫:上山竜治、起業家:屋良朝幸、娘:清水くるみ)が持ち役で、そのほかは九人の男女のカンパニーダンサーが、さまざまな役をこなしていく。ほとんどノーセットの舞台をこの手のミュージカルはお得意の演出鈴木裕美が手堅くまとめている。キャストを考えれば、よく出来ているのだが、本がとにかく安全なところでまとめてしまい、曲も今の英米ミュージカルを見ていると曲想も古くオセンチな曲が多い。アミューズの中堅おさらい会である。