実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/23 (水) 14:00
座席1階
久しぶりのアトリエ公演。今作は地方議会で子育て中の若い女性議員が書いたブログの記事をめぐる議員たちの群像劇。結論から言うととても面白かった。国会にも通じる、地方議員たちのメンツのぶつかり合いなどが現実に近い形で描かれている。劇作家の内藤裕子が実によく取材し、練り上げた物語だ。
この女性議員は、子育て期間中に議会を欠席することを容易に認めようとしない保守系会派の長老議員たちを揶揄して「おっさん」と表記し、議員たちの怒りを買う。謝罪と記事の訂正をすれば矛を収めてやるという議員らに、女性議員は「訂正するつもりはない」と突っぱね、代表者会議は紛糾する。
古株の女性議員が上から目線で懐柔しようとするところなど、結構リアリティーがある。これは性別の問題ではなく、世代の問題だ。だから「子育てには代わりが利くが、議員の代わりはいない」という発言を受け入れられない。だが、世の中は既にその方向に流れている。昭和のオジサンたちが置いてけぼりになっているのが痛々しい。いつまでも自分たちの常識で物事を判断してはいけないのだ、つらいことではあるが。
ただ、この女性議員と仲の良いフリーライターが代表者会議を傍聴し、不規則発言をして退場させられるというエピソードは疑問だった。この記者は完全に女性と一体化していてメディアとしては一方的なスタンスだし、そもそもアジテーターのような振る舞いをするなんてあり得ない。同じように記者を登場させるにしても、もう少しスマートにオジサンたちを追い詰めるようなキャラクターにしてほしかった。
また、この女性記者もブログで挑発するような表現、つなり「オッサン」などと揶揄するのはどうなのか。もちろん、言論の自由があるから書くのは自由なのだが、言われた方が激怒して引かなくなるのは目に見えている。
とまあ、突っ込み所はあるのだが、地方議会の実態を舞台で知ってもらういい機会。こうしたテーマが舞台で上演されるのはあまりないし、エンタテイメントとしてもおもしろい。