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ミュージカル「マチルダ」【4月18日18時の回、19日公演中止】

ミュージカル「マチルダ」【4月18日18時の回、19日公演中止】

ホリプロ/日本テレビ/博報堂DYメディアパートナーズ/WOWOW

東急シアターオーブ(東京都)

2023/03/22 (水) ~ 2023/05/06 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

原作を10数年前に読んだ。天才(?)少女が横暴な校長を懲らしめ、追い出す話。マチルダ役の子役が、予想以上の聞かせる歌、切れ味ある動きで感心した。マチルダは孤児のように記憶したが、そうではなく、本も読まず品性もない父母のもとに生まれたという設定。この父母の愚かさ加減が戯画的で救いがない。毒をはらんだダ-ルらしい。が、容赦なさすぎる描き方に、少々引いてしまう。

校長の恐怖支配がこのマチルダによる復讐をよぶことになる。ことばで怖さと暴力が強調するが、実際に校長がやったことは漫画的でしかない。女の子をハンマー投げの要領で上空遥かに投げ、それが落ちてくるが、落ちても女の子は(なぜか)無事。校長のケーキをつまみ食いした男性との罰も、ケーキを腹が破滅するほど食わせるというのは、怖さより滑稽味が先に立つ。「お仕置き部屋」に閉じ込めるのは舞台上では演じられないし、どちらかというと校長の空疎さが目立つ。

2幕の生徒たちのブランコ乗り、校長をやっつけた後の歓喜の爆発シーン、二つの場面の弾けたダンスとステージングがよかった。

ネタバレBOX

マチルダの語る、脱出男の父と娘の話が、マチルダの担任の先生ミス・ハニーに繋がる展開は予想していなかった。一種のオカルトだが、でもスムーズ
「キムンウタリOKINAWA1945」「OKINAWA1972」【4月6日(木)19時の回の公演中止】

「キムンウタリOKINAWA1945」「OKINAWA1972」【4月6日(木)19時の回の公演中止】

流山児★事務所

ザ・スズナリ(東京都)

2023/04/06 (木) ~ 2023/04/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

沖縄裏社会の抗争を、フィリピン男とのハーフの日島(五島三四郎)を軸に描く。並行して、佐藤栄作(塩野谷正幸)と若泉敬(里見和彦)の、密約をめぐる密会を描く。少々説明的なのが難点。二つの全く関係のない物語を並行してみせるのも、焦点を甘くした感がある。尻丸出しで、ペニスをちぎられる(!)拷問を受ける日島のマブダチ(工藤孝生)の体を張った演技には脱帽である。

戦前に沖縄にやくざはいなかった。戦後、米軍の物資を盗んで売買した「戦果アギャー」が沖縄やくざの始まりだという。直木賞を受賞した真藤順丈「宝島」は戦果アギャーから始まり、3人の主人公のうち一人がやくざだった。この舞台を見て「宝島」の背景も分かった。戦後沖縄の裏社会の抗争の歴史を、沖縄旋律のラップにして見せたのが、この芝居の見どころ。ただ、そうした「説明」が必要だったろうかという気もする。舞台を見るうえでは、三人の親分(ミンタミ=甲津拓平、スター=杉木隆幸、金城=龍昇)と一人の大親分(流山児祥)の関係さえわかればいいので。

彼女も丸くなった

彼女も丸くなった

箱庭円舞曲

新宿シアタートップス(東京都)

2023/04/12 (水) ~ 2023/04/18 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

箱庭円舞曲は多分10年近く前、711だったかアゴラだったかで観た。震災が尾を引いていた時期の、災害にまつわる話だったが書き手の古川氏には発展途上な劇作家のイメージ。"やり手"(作為か天然か悟らせぬ)という印象の白勢未生が入団しその点でも注目していたが機会を逃してこの度久々「二度目」の観劇となった。
構成に難解さがあるのは恐らくこの劇団の特徴、書き手の指向。役者の技量が細かな演出(指定)に応えて、繋がりの判らない前半を乗り越えさせ、禁欲的な叙述の雫が後半になってようやくグラスの表面張力を破ってじわっと流れ落ちる感触で、ドラマの要素が浮上し、全体図が霧の向こうに見える感じで見えて来る。
物語自体も自分は面白く観たが、それ以上に芝居を通じて溢れ出て来る、時代を生きる感覚のようなものに共鳴させるものがある。

きらめく星座

きらめく星座

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2023/04/08 (土) ~ 2023/04/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

こまつ座公演のたびに見て、いままでに7,8回は見ているが、見るたびに発見がある。今回は宮沢賢治へのオマージュ。5場で「星めぐりの歌」から、竹田の「人間のための広告文案(賛歌)」は、星々の世界から人間を見ることができた賢治風(前回2020年公演と今回、竹田を演じる大鷹明良は、演出の栗山民也から「竹田は宮沢賢治だよね」と言われたと、パンフ「ザ・座」で語っている)。だが、それだけではない。1個の卵をめぐって、どうやって食べるかを語り合う場面は、卵かけご飯、卵焼き、日の丸焼き(目玉焼き)、それぞれの作り方、食べ方をオノマトペたっぷりに実演してみせる。ここなど、オノマトペの達人だった宮沢賢治を感じる。

後妻のふじ役の松岡依都美は明るい女神のように、この一家を照らしている。割れた卵をかたずけるときに、卵のついた手をなめるのは、貴重な食品への未練を示して、リアリティーを高めた。そのほか、それぞれの俳優が役に命を通わせて、間然するところなし。初参加の脱走兵・正一役の村井良大もすばらしい。「蜘蛛女のキス」は物足りなかったが、がぜん見直した。チャイナタンゴを歌い踊るシーンは、声もよく、若さの華が輝いた。

前半1時間35分、休憩15分、後半1時間半。大変長い芝居なのだが、全く長さを感じない。劇場のユートピアを堪能した。

ネタバレBOX

それにしても本作、物語を動かすのは、実は傷痍軍人・源次郎にある。ガチガチの軍国主義者から、まず脱走兵小1ををあつけるためにうそをつき、幻肢痛に苦しみ、帝国の大義を疑うに至る。それぞれ、2,3,4,5場のクライマックスの源次郎の姿である。彼の変化が、この芝居の軸になっている。
毛皮のマリー

毛皮のマリー

紙魚

スタジオ空洞(東京都)

2023/04/07 (金) ~ 2023/04/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

アフタートークによって、やりたかったことは分かりつつあり、解釈は鋭いと感心した。
一方でそれが芝居を見てて伝わらないのと、演出が過剰で間延びとダレが多かった。
例を1つ挙げると、ブルートゥースのスピーカーをつなぎ演者の実演感を出していたが、カセットなどのスピーカーが客の近くにあるため、変化がむしろ悪目立ちしている。
コンセプトと芝居を面白くすることは違うはずなので、せめてお金をとる以上破綻なく成立させてほしい。

彼女も丸くなった

彼女も丸くなった

箱庭円舞曲

新宿シアタートップス(東京都)

2023/04/12 (水) ~ 2023/04/18 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

初日を拝見。最初は、これってどういう構成なの?って思いながら観ていたのが、段々分かってくるにつれ、じわじわと面白くなってくる。面白いって言い方が適切なのか分からないけど。

播磨谷ムーンショット

播磨谷ムーンショット

ホチキス

あうるすぽっと(東京都)

2023/04/07 (金) ~ 2023/04/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

フライヤーのカッコ良さからは想像できないコメディーインパクト
主人公の潜入先となる田舎町ドライブインの独特なセンスと超個性的な面々
あぁことごとく殺し屋の超クールキャラと違いすぎる
主人公がカッコいいほどに生まれるミスマッチの笑い
「なんそれ!」のツッコミだらけでめっちゃ忙しい(笑)
もはやストーリーがどうのこうのと言うより笑ったもん勝ち!な感じ

きらめく星座

きらめく星座

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2023/04/08 (土) ~ 2023/04/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/04/12 (水) 13:00

座席1階

こまつ座創立40周年の井上ひさし「昭和庶民伝三部作」の第1弾。自分は3年前の舞台に続いての鑑賞だ。今回はレコード店「オデオン座」夫婦の息子で脱走兵という役柄を、ミュージカル俳優として進境著しい村井良大が演じた。

「青空」など当時の流行歌がふんだんに歌われる舞台。ラストシーンの日付は先の大戦の開戦日の前日、12月7日。嫌がおうにも戦争に巻き込まれていく日本国民の生活が、レコード店夫婦の家庭を通じてクリアに描かれる。直接物語とは関係ないが、舞台の日めくりを見ると開戦の年の8月15日という日もある。4年後に日本が破滅するという運命を、客席は呪わずにはいられない。
ただ、庶民が一方的な犠牲者であるという描き方もしていない。すき焼きを食べるシーンでにおいが外に漏れると「あの家は何かよからぬことをして儲けている」と密告されるから雨戸を閉める、という場面がある。隣組もそうなのだが、庶民がお互いを監視し合う世の中が戦争を後押ししたわけだ。これは最近のコロナ禍でもあった自粛警察を思わせるし、この舞台を見れば現代が新たな「戦前」であることは明白に分かる。
前回の上演で紀伊國屋演劇賞を受けた松岡依都美の演技はやはり、見事だった。さらに、その義理の娘を演じた瀬戸さおりもよかった。村井良大はこまつ座初出演とのことだが、きれのいい演技と歌はとても安定感があった。こまつ座作品への今後の出演も期待できるのではないか。

米国に追随して兵器を爆買いし、今にも戦争が起きるのではないかと不安が募る今だからこそ、戦争前夜の国民生活がどうだったかを知るためにも、ぜひ若い世代に見てほしい舞台だ。こまつ座のお客さんはやはり高齢者が主体で、今回もそうだった。多少、演技が荒っぽくても若い世代にアピールする俳優をあえて起用しても、上演を繰り返してほしい。

『餅好き × カラ/フル』

『餅好き × カラ/フル』

火曜日のゲキジョウ

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2023/04/11 (火) ~ 2023/04/11 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

生きている者に生気が無い 舞い降りた者に生気がある
年に一度の七夕、過去と合って、
メイクが薄くなって見た目にもその境がぼやける
この演出が芝居を作る。
天に届くハルカスは過去の人とつながる道
人の心の優しさを感じた。

本人たち

本人たち

小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク

STスポット(神奈川県)

2023/03/24 (金) ~ 2023/03/31 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

言語の仕組みに対する意欲的な考察

 「コロナ禍の時代の上演」を前提として2020年に始動し、何度か上演されてきたプロジェクトの現時点での到達点を示す二本立て公演である。

ネタバレBOX

 第一部「共有するビヘイビア」は出演者である古賀友樹から聞き取りを行ったテキストで上演された。古賀は客席に向けひとり語りを続けるが、なにか意味のある内容を話しているというよりは、心に留まった言葉をダジャレや連想を交えてリズミカルに紡いでいく。客席に向けて「ようこそいらっしゃいました」と語りかけ、観客とじゃんけんに興じたりと終始客席に注意を向けていた。膨大なセリフをよどみなく発しながらなめらかに動いていく様子は達者であり、作・演出が課した高い要求に応えていたことは見事だったが、舞台と客席の間に見えない壁があるように感じた。むしろひとり語りの場面よりはコンピュータの音声と対話するくだりのほうがイキイキしているように見えた。終盤になると場がほぐれてくるからか、照明が点灯したままの状態で観客に目を閉じろと促す「念力暗転」のくだりは面白いと感じた。

 第二部「また会いましょう」では二人の女性(渚まな美、西井裕美)が思い思いに発話を続け舞台上を所狭しと歩き廻る。こちらもまた客席に向け話しかけたかと思えば相手に対し好きな映画について問いかけたり犬を見つけた話をしたりする。しかし対話が成立することはごく稀で噛み合いそうで噛み合わず、基本的には延々と好き勝手にひとり語りを続けているように見える。語りの切り替えはとてもスムーズで聞いていて心地が良い。まるで発話という音楽に合わせたダンス作品を観ているような心地になった。話が袋小路に行く場面がおかしみにまで至ればなお良いのにと思った。

 本公演に貫かれているのはセリフに込められたリアルな感情の再現ではなく、どこまでも醒めてシステマティックな言語の仕組みに対する考察であると私には感じられた。第一部の雑念まみれの客席への語りかけは、人間が発話するまでに交錯する感情の流れを追体験するように感じられたし、雑念が言葉になり発話したところで他者がそのまま受け止められるとは限らない、むしろ誤解されることの方が多いということを第二部で表明していたように思う。言語でしか世界を把握できない人間の哀しさを舞台で観られたのは、他では得難い体験であった。

 ただこの試みは満場の客席を湧かせる大きなうねりのようなものにまで至っていなかったように思う。加えて、第一部で自己開示をしている割に古賀が客席に対し恐れを抱いているかのような目をしていた様子であるとか、第二部で俳優が互いにマスクを外し素顔を見せたときの恥じらいなどのリアルな表現はいかにもナマっぽく、この作品の乾いた感触からは浮いているように見えた。
きく

きく

エンニュイ

SCOOL(東京都)

2023/03/24 (金) ~ 2023/03/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/03/24 (金)

発話をめぐる哲学的な洞察

 白壁にアートや落書き、スウェットなどが掛けられた殺風景な空間の真ん中に席が六つ設けられている。「演者のテンションやコンディションで上演時間が変わります」。開演前のアナウンスがかかると男女が席に座りはじめるがなかなか芝居が始まらない。彼・彼女らの関係性は明示されず、なぜそこに腰掛けているのかも不明である。

ネタバレBOX

 そこから他愛のない会話が始まり、物語の主軸は母親が癌と告知された男性A(小林駿)になる。皆はAに「はあ」「そっかぁ」などと声をかける。いまお母さんと一緒にいてあげないと一生後悔するよと声をかけた男性H(オツハタ)に対し、Aは「そんなのわかってるよ」「勝手なこと言うなよ」と怒声を浴びせる。そこからAが身の上話を始めるのだが、じょじょに話題の主軸が他の俳優にずれはじめていく。Aが自身の祖母に言及すると女性B(浦田かもめ)が耳の悪いおばあちゃんの話を始める。やにわに男性C(市川フー)が自分の祖母に関する事実を打ち明ける。BとCの話は重なるようで重ならず、そこにまたべつの女性G(二田絢乃)と男性E(zzzpeaker)が会話に入り込み、以降も主たる発話者の話題をもとにして別の発話者へと主軸が入れ替わっていく。途中で舞台の映像が背景に投影されたり、言及された音楽の映像が流れたりする。果たして主軸はAへと戻っていくのだが、他の人物たちが自分の話をほとんど聞いていなかったことへの怒りを吐露するものの、それをBにたしなめられる。

 私が面白いと感じたのは発話者の主軸が連想ゲームのように切り替わり、ひとつの流れを形成していた点である。他人の話題からまったく別の連想をするというのは日常誰しも覚えがあることだが、そのことを他者に示すということは行われないことだろうし、雑念だらけの内面をそのまま口にしてはただの垂れ流しになってしまうだろう。本作品では俳優の発話方法を対話/独白/傍白などで区切らず、むしろ観客の視点の移動を利用し、その時点で物語の展開の中心にいる人物に話をさせて観客の注目を集め、流れを作っては位相をずらして壊し、また作っては壊しという円環構造が出来上がっていた。これは立派な演劇批評だと思うし、言語で世界を把握する人間の限界を示す哲学的な洞察になっていたと思う。

 しかし後半になってくるとこの流れがやや単調で冗長に感じたということも否めない。ところどころ入れ込まれたギャグや動物を模した動き、終盤で長い筒を用いて「聞く」という動作を立体化して見せた試みなど手数は多いのだが、それがこの作品で用いられた発話者の主軸をずらす方法論の提示とうまく噛み合っていたとは思えなかった。

 とはいえ実体験をもとに他者の話を聞くことの困難さを、こうした形で作品化してみせた長谷川優貴の企みはとても興味深い。終幕にどの観客も覚えたであろう、話をすることの傲慢さやバツの悪さを含めて他では得難い観劇体験であった。
松竹亭一門会Ⅱ 春の祭典スペシャル

松竹亭一門会Ⅱ 春の祭典スペシャル

afterimage

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2023/03/17 (金) ~ 2023/03/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/03/17 (金)

色物としてのコンテンポラリーダンスの可能性

「異常事態です」

 松竹亭白米の引き合いで口上を述べる松竹亭ごみ箱が開口一番会場の笑いを誘う。それもそうだ、コンテンポラリーダンスのカンパニーが落語会を催すとはいかなるものか、すんなり想像できる観客はそう多くはなかっただろう。私は3月27日に「すし組」「そば組」両プログラムを鑑賞した。

ネタバレBOX

 オープニングでは、カンパニー5名が口上の並びのまま上下に首や手先を傾けた落語の所作や扇子を口に含む動作を振付にした工夫と形の綺麗さがまず印象に残る。各自そのまま立ち上がり股を広げ脚を開いてと群舞が始まるが、足袋姿のまま固い床を踏み、裾に絡まりそうになるくらい高く脚を上げる動作にハラハラした。

 すし組のトップバッターは松竹亭撃鉄。映画のサウンドトラックのレコード盤を見せながら、自身の映画愛やランキングをマクラに、ランボーやインディ・ジョーンズ、ジェームズ・ボンドの吹替声真似で、「まんじゅうこわいfrom Hollywood」を披露してくれた。映画のエンドロールに見立てた巻物の小道具も気が利いている。

 すし組二人目の松竹亭青七は古典落語「今戸の狐」である。自身のばくち好きのエピソードをマクラに噺にはいったが、好みを爆発させていた撃鉄を聞いた後なだけパンチに欠けていたように思う。生来生真面目な性格なのだろう、註釈を多めに噺を進めてくれたが、あまり内容に入っていけなかったのは残念である。

 対してそば組一人目は白米。素朴な植木屋が裕福な隠居を真似ようとして起こす滑稽噺「青菜」を、柳かけのくだりでワンカップ大関を出し、鯉の洗いのくだりで缶からシーチキンを出して食べるなど大胆な変化球を入れつつ、ごくごく素直に披露してくれた。

 そば組の二人目、afterimage主宰の松竹亭ズブロッカは、なめらかな口調で「蒟蒻問答」を披露してくれた。六兵衛と僧侶の問答が白熱すると、なぜか舞台上から人形が降りてきて踊りだすという展開に客席は大いに湧いた。ただこの場面は人形ではなくぜひ人間で見たかったと思う。

 仲入り前最後のゲストは両組共通、名古屋で落語会を主宰している登龍亭福三である。名古屋弁の話題から竹川工務店が名古屋城を作ったというオチにつながる「名古屋城築城物語」(すし組)、四つ葉のクローバーを差し出す霊がチャーミングな「善霊」(そば組)、ふたつの新作で力量を示してくれた。

 仲入り後に始まる「ダンスで分かる三方一両損」は本公演のハイライトである。金太郎(撃鉄)が拾った三両を持ち主である吉五郎(ズブロッカ)に返そうとするも、一度落とした金だからと受け取らず、喧嘩するこの二人を大岡越前(白米)が機転を利かせて和解させるという有名な筋を、ナレーションに合わせたダンスでこなしていて度肝を抜かれた。大岡越前の衣装がロボットアニメの敵キャラのように戯画化されていておかしい。

 両組共通でトリはごみ箱の「居残り佐平次」。さすがにほかのダンサーと比べて表情が豊かで間もよく、一番の見応えがした。特に佐平治が身の上話をする瞬間の空間の切り替え方、鮮やかさが印象に残っている。

 椎名林檎とトータス松本の「目抜き通り」をバックにエンディングはゲストを除く5人の群舞である。オープニング同様にハラハラしたが、好き放題やったあとの多幸感とでもいう明るさがあってさわやかな見ごたえがした。

 本公演はダンサーたちが意外なほど愚直に落語に取り組んでいる落語会である。本職と比べ見劣りするのは是非もないが、合間に挟まるダンスプログラムが彩りを添えていた。私はかつて立川談志の独演会で、前座が日本舞踊を踊っていたことを思い出した。最近は寄席や落語会で舞踊を見る機会はあまりないが、噺の合間に漫才や紙切り、モノマネなどと同様にダンスが入れば、演芸の裾野がより広がるようにも思える。そうした意味で私にとっては発見がある興行であった。

 ただ劇場の使い方はいかにも殺風景で物足りない。例えば入り口に演者の名前を染め抜いた昇りを出したり、劇場内の黒壁に寄席に見立て木目調の壁紙を貼るなどの工夫があってよかったのではないだろうか。
ナイゲン(にーらぼ版)

ナイゲン(にーらぼ版)

24/7lavo

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2023/04/06 (木) ~ 2023/04/11 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

何度も見ているナイゲンだが、しっかりとにーらぼ色がでていて面白く楽しめた。
この演目をやるのにとても合っている箱がミラクルだと思っていたのでとても残念。

少女仮面

少女仮面

ゲッコーパレード

OFF OFFシアター(東京都)

2023/03/16 (木) ~ 2023/03/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/03/16 (木)

劇場へのカウンターを提示する

 1969年に早稲田小劇場が初演し第15回岸田國士戯曲賞を受賞したこの唐十郎の代表作は、これまで数多の劇団が上演してきた。これまで一軒家での上演を主としてきたゲッコーパレードが本作を演劇の街下北沢の劇場でどのように上演するのか、まずは興味を惹かれた。

ネタバレBOX

 劇場に入ると舞台下手側と客席の壁を背景に半円状の演技スペースを設け、そこから舞台後方と客席の段差に向け同心円状に椅子を置き新たに客席を設けるという空間設計にまず目を奪われた。いままで見たことがないOFF・OFFシアターの空間の使い方を見ていると、この劇団の劇場に対する姿勢とテント芝居を敢行した唐十郎の姿勢が重なるように思えてきた。

 宝塚歌劇団の伝説的な男役トップスター、春日野八千代に憧れる少女の貝(永濱佑子)は老婆(ナオ フクモト)を伴い春日野が経営する地下喫茶店「肉体」へと向かっている。その頃「肉体」では腹話術師(長順平)が人形(平野光代)を操りながらひとりで対話ごっこをしている。ボーイ(小川哲也)はコーヒーを引っ掛けるなどして腹話術師を軽くあしらい口論になるが、ボーイは腹話術師のことが見えなくなってきている、まるであなたが人形の付属物のようだと主張する。店に入ってきた男(林純平)は喉が乾いているのか、店内の水道の蛇口に口をつけ汚い音を立てて吸い気色が悪い。

 やがて入店した貝と老婆はボーイに春日野への取次を申し出るも断られ、諦めて帰ろうとしたそのとき、奥から春日野八千代を名乗る人物(崎田ゆかり)が出てくる。憧れの人に会えた貝は舞い上がり、『嵐が丘』のキャサリンとヒースクリフになりきって芝居を続ける。しかし春日野は演じていくうちに、自分の肉体はファンによって奪われてしまったと嘆きはじめ、幻想的な存在である自分自身を総括していく。終幕では春日野が慕う甘粕大尉(佐藤冴太郎)が春日野のファンの少女たちを連れて登場するが、彼女たちが春日野に返したいと差し出したものが、春日野をさらなる狂気の世界へと突き落とす。

 伝説的な作品をテキレジせずほぼそのままの形で上演することで、古典としてのアングラ演劇の魅力を堪能できたのはよい機会であった。俳優の熱量や大仰な動作が劇場のサイズとフィットしているのかはやや疑問ではあったが、戯曲の言葉の強度とは合っていると感じた。小川哲也らボーイたちが見せるアンサンブルの妙、林純平の水飲み男が醸し出す退廃的な味わい、そして春日野八千代を演じた崎田ゆかりの狂気の世界に陥る芝居が特に印象的である。

 ただ今となってはやや時代がかって聞こえるセリフや古い固有名詞に対する註釈がないため、偉大な作品を上演するという以上に現代的な意義が感じられなかった点は気になった。劇場での上演に問いを投げかけるこの劇団が、演劇における肉体論がテーマであるところの本作へ新たな解釈を提示してほしかったと思う。
DADA

DADA

幻灯劇場

AI・HALL(兵庫県)

2023/03/03 (金) ~ 2023/03/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/03/04 (土)

幽霊たちが奏でるコミカルな音楽劇

 劇団のアンサンブルと若い才能が光る2017年初演の三演である。

ネタバレBOX

 ケン(本城祐哉)とラジョ(布目慶太)は京都駅にある架空の地下鉄、清水線12番出口のコインロッカーに18年前に捨てられた。ふたりはじつの兄弟のように肩を寄せ合い育ってきた。

 駅にはさまざまな理由で現世を去らねばならなかった幽霊たちが行き交い、役人の成仏唯(橘カレン)や、体を売ろうとしているサナエ(鳩川七海)ら人間たちも出入りしている。生前の後悔を晴らせない幽霊たちは成仏することを目指しているのだが、成仏できない幽霊は記憶が薄れてきたり、人間の体を乗っ取ろうとすると魂が消滅してしまうため成仏できないという。ラジョは自分を知るマリ(松本真依)という女性に啓発され、最近記憶が薄れはじめているケンを助けるべく奮闘するが、やがて逃れられない現実に向き合うことになる。

 私が面白いと感じたのは歌唱場面の多彩さである。冒頭で演奏される「京都駅地下鉄清水線」では幽霊たちが傘を差しながら舞台上で「叶わぬ願い 描くほどに/ありえぬ未来 望むほどに」とこの世の無情を歌い、さながら寺山修司の天井桟敷の舞台を見るような感触がした。続いてケンが幽霊たちに「あぁ、成仏せよ」と激しく歌い上げるタイトルチューン「DADA」はロック調、ラジョと因縁のあるマリがトイレで歌う「水はことば」での鮮やかなトイレットペーパーの工夫、終盤でラジョの旅立ちを見守るように再度歌われる「DADA」はミュージカル『RENT』の「No Day But Today」のような爽快感がするなど、幅広い楽曲が聴けて飽きることがなかった。ケンを演じた振付・作曲の本城祐哉の才気が横溢していたし、劇団員のアンサンブルがよく取れていたことも成功の一因だろう。

 私が疑問に感じたのは主に芝居部分の作劇と演出である。開演前に「ゴーストバスターズ」や「お化けのロック」が流れていたこともからも予想できたが、本作の幽霊たちは皆コミカルでまったく怖くない。それはいいのだが、幽霊と人間との差別化ができていたとは言い難いため、彼岸と此岸のあわいを描く設定があまり活きず、クライマックスになってようやく効いてきたために歯がゆい思いがした。そして作中ではキャラクターたちが会話の多くが、本作における幽霊の世界観の説明に費やされていた。そのため物語に入り込む以前に設定に馴染むのに時間がかかってしまった。幽霊が日光に当たると体の一部が大根になってしまうというような場面は面白かったしキャラクターたちは皆チャーミングだが、こうしたコミカルな作劇が照明や音響のどっしりとした感覚とあまり調和しているようにも思えなかった。

 また冒頭の場面からおおよその結末は読めるため、ラストの感動が今ひとつ盛り上がらなかったことも残念である。たしかに作中で幽霊と人間は一種の疑似家族を形成していたが、それが従来の家族像へ問いを投げかけるまでに至ってはいないように思う。ラジョとマリの対話や、人間の体を乗っ取ってまで亡くなった娘のあやめ(今井春菜)に会おうとしたホームレスの幽霊サンショウウオ(藤井颯太郎)の想いなどを通し、子どもを置き去りにすることの暴力性とその背景、親子の未練といった要素を感じたいと思った。
ナイゲン(にーらぼ版)

ナイゲン(にーらぼ版)

24/7lavo

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2023/04/06 (木) ~ 2023/04/11 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 エネルギッシュな舞台。

ネタバレBOX

 理想を喪って既に長い時間を経過した現代日本に在って、鴻陵高校では文化祭・鴻陵祭に参加する各団体の発表内容を審議する内容限定会議(ナイゲン)が開かれる。ナイゲンの精神とは“自主自立”に基づき文化祭に関しては生徒自らが責任を持ち相互の自由活発な議論によって皆が納得する合意を創出すること、目指すことである。
 会議劇コメディーの傑作・「ナイゲン」。今バージョンは、役者全員が、恰も高校生に戻ったような熱い演技が際立った。上演回数も多い作品だから細かい内容については述べないが、クールを装いその実、何ら内容を持たない多くの現代日本人の現状を見るにつけ、魯迅や竹内好が懸念していた賢者、愚者、奴隷の諸関係についての寓話「賢人と馬鹿と奴隷」1925が思い起こされる。そして「賢人と馬鹿と奴隷」という寓話が何を意味しているのかを考え、その思考をベースに今作を考える時、今作の描く問題の真の深さもまた見えてくるように思う。 
あげとーふ

あげとーふ

無名劇団

無名劇団アトリエ(大阪府)

2023/03/17 (金) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/03/18 (土)

同級生たちの会話から浮かび上がる普遍性

 2008年の高校演劇の大会で準優勝に輝き、第19回テアトロ新人戯曲賞佳作にも選ばれた作品が、15年の時を経て再演された。

ネタバレBOX

 舞台はアメリカのアリゾナ州。卒業旅行でアメリカ横断の最中である5名の男子高校生は、タイちゃん(粂野泰祐)が発した「あげとーふ(I get off)」の一言で移動中の馬車を降り、そこから5マイルも歩いた先のグランドキャニオン駅にたどり着く。留学経験があり日本で留学生を口説いたこともあるマセたシュート(西ノ原充人)が鉄道会社に電話して確認したところ、つぎに電車が来るまで12時間もかかるという。観光シーズンのため周辺のログキャビンはふさがっており、彼らは一晩駅で過ごさねばならなくなってしまった。

 列車を待つまでの長い時間、ぶっちゃけ話や将来の夢を語り合い盛り上がる5人の会話から、それぞれの人物像が浮かび上がってくる。自分専用の車を持ち免税店でブランド物を土産に買ってこいと家族に請われているリョー(佐伯龍)は一番の金持ちのようだ。景色のきれいなグランドキャニオンに行きたがっている成績優秀なタクトゥ(松田拓士)は、家庭の事情からか達観しすぎた言動でタイちゃんを心配させている。彼らを心配し差し入れを持って現れた現地人のコーディー(太田雄介)に、カン(泉侃生)は自分の進路が絶たれた苦悩を打ち明ける。ネイティブ・アメリカンの精霊(天知翔太)が見守るなか、彼らはやがて内面に隠していた激情をぶつけ合うことになる。

 同級生間の階級格差や家庭問題、エスニックマイノリティやアイデンティティの問題がさらりと書き込まれた本作は、15年前の作品とは思えないほどの新鮮さと切実さを我々につきつける。『テアトロ』2008年8月号掲載の過去の台本と比較すると、時事ネタやギャグが書き換えられていたことに加え、コーディーに該当する人物がおそらく女性の設定で登場人物がナンパしようとしたエピソードがあった。さらに他の登場人物の淡い恋愛話も盛り込まれていた。今回のテキレジによって思春期から青年期へ移行する男性の葛藤や、他者を思いやることの難しさと尊さという作品のメッセージはそのままに、高校生たち5名の初心さが際立ちホモソーシャルの結びつきが強まったように感じられた。彼氏に四股をかけられた女性たちの結託をコミカルに描く同時上演『4人のアケミ』と対比のとれた二本立て興行になったと思う。

 俳優たちは熱演でありエネルギー過剰な役者ぶりが戯曲の求めるアツさに合致していた。20名程度しか入れない小空間で行なうには大仰で空回りしている箇所もなくはなかったが、客席全体でこの芝居を、そして劇団を応援していこうというアットホームな雰囲気は忘れがたい。開演前の島原夏海(劇団代表・脚色・演出)による、コロナ禍を経ても活動を継続していきたい若手中心の公演であるというアナウンスと相まって、地域に根ざした演劇の展望について思いを馳せる貴重な機会となった。
「キムンウタリOKINAWA1945」「OKINAWA1972」【4月6日(木)19時の回の公演中止】

「キムンウタリOKINAWA1945」「OKINAWA1972」【4月6日(木)19時の回の公演中止】

流山児★事務所

ザ・スズナリ(東京都)

2023/04/06 (木) ~ 2023/04/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/04/12 (水) 14:00

『キムンウタリOKINAWA1945』を観た。心が痛くなる芝居。(3分押し)106分。
 敗戦直前の沖縄を舞台に、沖縄戦線に配属されたアイヌ人兵士たちと沖縄人兵士を軸に、戦争と民族差別という2つの問題を題材にした。不明にして「人類館」事件も、本作のベースとなったらしい知念正真の戯曲『人類館』も知らなかったが、強烈な内容で、エンターテインメント要素を入れてはいるものの、ひたする心が痛くなる。

明日の卒業生たち

明日の卒業生たち

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すみだパークシアター倉(東京都)

2023/04/07 (金) ~ 2023/04/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

森田涼花さん出演。

すみだパークシアター倉。2018年の「心臓が濡れる」に森田さんが出演してます。それ以来5年ぶりに行きました。入口が以前と異なり、公園側になっていました。駅から遠い劇場ですが、細長い公園を散策しながら着けるのは良いですね。

工事して新しくしたのかな、と思いましたが座席は昔のまま、年代ものでした。塗装が剝げてたりテープで補強してたり、床のボルトが抜けていたり。それもまた、いい雰囲気でした。

3面に客席を配置した形。自分の席からは表情が見えたり見えなかったり。それもまた想像が膨らんで良いです。4面の舞台も見たことありますが、そういうの好きです。

タイトルの「明日」は「あす」と読むと思ってましたが、会場で「あした」と耳に入りました。でも略称は「あす卒」なんですよね。

※こりっちには4/7からと書いてありますが、4/8 14:00が初回です。

ネタバレBOX

2011,2015,2019,2023年の「4つの時代が入り乱れる群像劇」。予習しておいたほうが良いというのが公式見解のようで、公式Twitterでけっこう細かく書かれています。実際のところ、あらかじめ読んでおいたほうが理解できて良いと思います。できれば観劇中もチラシを手元に置いたほうがいいかも。上演の序盤で4つの年代が示されますが、それを頭に入れるのはちょっと難しいかと。

これも書かれていることですが、森田さんは2011年も2023年も演じます。主演の中村静香さんは2023年の人で、2011年は別の方が演じます。これはさすが森田さんというべきか、幅の広さを感じました。先日の「女の一生」では19歳の役でしたが、今回はさらに若い18歳なわけで。

これもまた書かれていることですが、2015年のシーンのうち2人が主人公の高校の生徒会仲間である、と。自分はそこを見落としていたので、高校との関係が分かりませんでした。根本的に、そのシーンが2015年なのか2019年なのか迷ってました。チラシを手元に置いておきたかったなあ、と思ったものです。

これもよく読むと分かることなのですが、2019年の今出舞さん演じる劇団スタッフと「先生」との関係がよく分かりませんでした。セリフを聞き逃したのかもしれません。先生は劇団の主宰だったのですね。

「先生」役の丸山正吾さんは「月に吠えろ、夜ヲ焦ガセ君ヨ」という演目の「外道丸」での、三枚目な印象を持っていました。いやいや、かっこよかったです。

主人公の幸子は、先生と上島が兄弟であることに気づいたのか。そもそも先生が4年前に亡くなっていたことを知っていたのか。どうなんでしょうね。
播磨谷ムーンショット

播磨谷ムーンショット

ホチキス

あうるすぽっと(東京都)

2023/04/07 (金) ~ 2023/04/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

かっちょよいイケメンだけではなかったようです。客席の女性たちのざわめきとともに楽しいお芝居でした。

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