かいころく
安住の地
WAKABACHO WHARF 若葉町ウォーフ(神奈川県)
2026/05/14 (木) ~ 2026/05/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
3都市ツアー、3演目公演。うちCoRich芸術まつり!2029の審査対象は「工女編」は、「養蚕農家編」との2作同時上演です。この同時上演は、養蚕の環境をめぐる変化を感じられる良い設定でした。
ネタバレBOX
3都市ツアー、3演目公演。うちCoRich芸術まつり!2029の審査対象は「工女編」は、「養蚕農家編」との2作同時上演です。この同時上演は、養蚕の環境をめぐる変化を感じられる良い設定でした。
かつて今ほど交通も情報網も発展していなかった頃、土地にはそれぞれの伝統的な産業があり、村ひとつがまるまるその産業で栄えていたということが各地にありました。いまや、文明の発達と平行して少子高齢化の影響を受け、多くの伝統産業がおかれる状況は危機的と言えます。
安住の地が「養蚕」をテーマに創作することになったのは、2023年に長野県大桑村で行われた地域芸術祭に参加した際、会場が過去に養蚕を行っていた民家だったことだそうです。長野、群馬、埼玉、兵庫、神奈川などでのリサーチを経て、作品が生まれていったそうです。
伝統産業とパフォーミングアーツが手を取ることはままありますが、『かいころく』もまた、互いへのリスペクトを持った創作・上演であるように感じました。開場前に私道かぴさんによるイラストでの蚕の説明など、作家が題材を丁寧にあつかう姿勢が好ましかったです。とくに、本編が(工女編・養蚕農家編の2作とも)一人芝居で個人の目線や人生が描かれていたため、その背景となる養蚕・蚕についてを先に観客に提示してくれたことは、作品の背景への広がりを感じ安心できるものでした。蚕のイラストも可愛かったです。
横浜で観劇しましたが、客席は約30ほどで、演劇関係者が多かったような雰囲気でした。CoRich芸術まつり!は「※優れた作品を、より多くの観客と分かち合うことを目指すフェスティバル」なので、今回のまつり参加をきっかけに観劇する観客が増えると嬉しいです。
何処へ行くギルガメシュ
パスプア
カタリナスタジオ(北海道)
2026/05/21 (木) ~ 2026/05/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
札幌の住宅街にあるカタリナスタジオで上演。
「移動」をテーマにし、世界最古の文学と言われる『ギルガメシュ叙事詩』の要素を取り入れているそう。「ギル(ギルガメシュ)」と名乗るひとりの女性(ともか)が家を出てからの様子と並行し、いくつもの要素が、多様な手法で表現されます。
ネタバレBOX
会話劇として結婚の許しを得るまで一歩も動かない男をめぐる物語や、咄家が桃太郎をベースにした語り、ラップバトル、リズム体操のような絡み合い、台詞による独白など、様々な表現がパッチワークのように細切れに展開されます。一つひとつの表現も勢いがあるので、刺激的なスピード感は心地よいほどです。
それらを表現する俳優たちには圧倒されました。台詞の歯切れの良さや、動き続ける身体など、そのパフォーマンスを見ているだけでも興奮しました。
対面舞台であることは、距離を認識し、空間全体としての平行感もあって面白かったです。シンプルかつビビッドな美術と照明はともに空間を変化させ、疾走感をうんでいました。一方で、客席からは向かい席に対して垂直感覚も強く、また作品の構成が短いシーンを組んでいくものだったのでそれと合わせると客席で受け取る情報量が多くてすこし雑多な印象にもなりました。かといって一面の方がいいかというとそうとも言い切れないので、くの字型やハの字型などだとどういう印象だったのかが気になります。
「移動」をテーマにしているため、どのエピソードにも様々な「距離」が登場します。食卓を囲む家族や、上演地である札幌の地理などの身近なもの。そして、どこを目指すともわからないギルの旅路や、パレスチナやメキシコなどをイメージさせる要素、鬼が島と桃太郎といったファンタジー内での移動や、月を目指す疾走といった、私たちの今いる場所(札幌)から遠い場所まで。近くのものと、遠くのものは、上演の間中その距離を行き来します。
様々な「移動」の感覚を投げかけられる心地よい刺激と同時に、今この時に現実で起きている問題・課題を、あと一歩で作品の材料にしかけている危うさも感じました。おそらく作品を通して「移動することが良いこと」「移動しないことが窮屈なこと」という価値づけが、明言されないまま生まれていた構成だったからではないでしょうか。
もし「移動すること」と「移動しないこと」がもっとフラットであれば、または、明確に「移動は良いだ/悪いものだ」という評価や主張があれば、もっと力強く作品を受け止められたように思います。
ネザー(Su)ポット
劇団しようよ
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2026/05/28 (木) ~ 2026/05/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
開演前、当日パンフレットの作家の文で「ほっておいてほしい。うれしいけれど、私の苦しみを今私が清算しようとしているだけだから」という言葉がありました。そのことに共感したのも束の間、その後の客席で「演劇におけるほっておくことの難しさ」を痛感することになります。
ネタバレBOX
舞台は、始発の地下鉄車内とホーム。酔っ払って飲み物を投げたり、カバンの中身を落としたり、ハンバーガーを食べたり……そんな行為も基本的には交わらないのですが、時々様子を伺ったり、距離をとったり、落とし物を拾ってうまく渡せなかったりする。それぞれがそれぞれの判断でそれぞれにとって適度な距離をとる日常が繰り広げられます。
けれども観客は見るもの関わるものを選択することはできず、すべてを目撃します。目撃せざるをえません。ここは劇場だから、退場しない限り、目をそらしても音は聞こえてくるし、同じスピードで刻まれ続ける時間を過ごしきるしかない。現実だと好きにほっておくことができるのに。
そんな環境のうえで観客に何を見せるか、何を見せないかは脚本と演出が提示します。同じ朝の時間(シチュエーション)を何度も繰り返し、その繰り返しにあたっては台詞が抽出され、動きが変わります。なにを観客に提示するかという作り手の選択により、焦点があたる言葉や人物が選ばれる。「もうすこしあそこが見たいな」「もっとこの人物を知りたいな」と思ってしまう。その構造は、私には「ほっておきたい人」と「ほっておきたくない人」がいるんだな、そして演劇ではそれを選ぶことができないんだなと気づかせました。
さらに観客は、「見られること」も問われます。車内に配置された客席に座った2名(私の観劇時)は私たちに見られると同時に、彼らだけは私たち観客を見ることができます。
見ること、見られること、見なければいけないこと……「見る」についての不自由さに強くさらされたことで、あらためて「他者」や「自分」を問い直すビビッドな体験でした。
「見る/見られる」「認知/自覚」を観客に問いかける仕掛けが随所に施されているなど、演劇の影響について意欲的でもありました。とくに入場後のインパクト。観客も、後の俳優と同じく、改札を通って電車に乗り込み客席につきます。その美術は好奇心を刺激し、劇場の広さに対して電車の閉塞感を感じさせる照明は目線を引き込み、空間を充実させていました。
音楽演劇「光かもしれない」
エリア51
スタジオ空洞(東京都)
2026/05/20 (水) ~ 2026/05/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
飲食OK、アルコールとおつまみあり、途中入退場OK、開場時からスタッフや来場者が談笑することもあり、席につく前からライブハウスにいる感覚に。その雰囲気のなかで、自然と演劇を観に来たという身体ではなくなっていきました。
ネタバレBOX
それは最後まで変わりませんでした。結局、途中退場する人はなくみんな客席に座ってステージを観ていて、その光景はやっぱりいわゆる観劇なのですが、なぜか身体のなかは音楽ライブのままなのです。
ミュージカルやライブ公演を模したものなど音楽×演劇の作品は数ありますが、今まで経験したどれよりも音楽ライブでした(演劇でもありました)。ミュージシャンは全員が団体メンバーだということに加え、作・音楽・演出である神保治暉さんの中に様々な文脈が並列で入っているんだろうかと想像します。
ひとりの旧人類(徐永行)は、かつて友情を結んだアンドロイド(堀春菜)と再び出会うため、ロボットY-3PO(原雄次郎)とともに長い長い宇宙の旅に出ます。3つの種それぞれの関係と、そこで繰り返される「友情」という言葉はいったい何を表すのでしょう。あまりにも長い年月が過ぎ去るなか、思いが変わらないことと変化すること、友達という価値観についてはもうすこし多層的であるといいなと感じました。その方がより多くの観客に自分事として手渡せるし、演劇性が高まるかなと。
多彩な表現の個々がストレートであるぶん、価値観に共感できないと、自分のなかで演劇よりも音楽の比重がどんどん大きくなってしまい、物語がただの筋になってしまうからです。
それらライブ性の強さもあり、今、上演することの意義が色濃い公演だと思います。台詞だけではなく、過ぎ去るスピードやリズムなどが今の世の中に流れる感覚に対してビビッドだと感じました。たとえるなら、音楽を流してなにかを飲みながらスマホのSNSアプリを同時に立ち上げまくってショート動画やタイムラインを渡り歩きながら同時進行している感じ。たまには投稿もするし、突然BeRealの通知がきたりもする。そんな心地よさがありました。
そんな身体感覚は、あと2年くらいたてば「遅いな」あるいは「速いな」になるかもしれません。それでもこの数年、社会と表現の距離感が変化していく中で、今この題材をどう扱うか、上演に対して何がリアルなのかという感度が高かったと感じました。
エリア51は「音楽演劇をより多くの方に届けていくことを目指しています」とのこと。ジャンルに縛られず、独自のムーブメントを起こす未来を期待してしまいます。
優しい劇団の大恋愛 Volume11『もっと愛してくれよ節』
優しい劇団
吉祥寺シアター(東京都)
2026/05/10 (日) ~ 2026/05/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「優しい劇団の武蔵野演劇祭2026」最終日の『もっと愛してくれよ節』。優しい劇団の大恋愛シリーズはいずれもですが、俳優の身体だけで舞台上にあるこの企画の魅力が強く発揮されていました。
ネタバレBOX
舞台奥に閉まるシャッターや、2階席と地続きのバルコニーなどを俳優が使用し、吉祥寺シアターの縦に高い空間を、がらんと空洞にすることなく上に伸ばしていました。黒い空間に人が、下から、上へ、行き来し、空を見上げる。そこに打ち上げられる花火は高く、その先には真っ暗な宇宙が広がっていて、きらりと星が光る……そんな、劇場が宇宙に繋がっているような感覚。とくに新しい吉祥寺シアターの使い方ではないのに、人間の身体で宇宙を作りだすカタルシスをうんだ劇場での表現に、驚きながらも心地よく吸い込まれました。
総勢20名の登場人物はいずれも力強く見ごたえがあり、俳優皆さんの力量の高さを実感しました。
基本的には誰もが優しい劇団の演技スタイルを用いているため、出会ったばかりとはいえバラバラ感はなく、役者の「個を出そう」という力に引っ張られすぎることなく、作品としてまとまっていて充実感があります。一方で、数日~数か月かけて擦り合わせた作品ではないにも関わらず、俳優それぞれの個性がそこまで出ているわけではありません。それが大恋愛シリーズの特徴とも言えますが、続けた先にどう発展してくのだろう…という疑問もよぎりました。
けれどその変わらなさが「優しい劇団的」であり、今回の「演劇祭」という設定と合っているのかもしれません。またCoRich舞台芸術まつり!応募文の「将来のビジョン」にある〝名古屋旅行の目的になる〟という目標にも合致していると思いました。
1日で異なる地域の俳優が集まり作る創作方法・上演形態は、作り手にとって希望を打ち出せています。出会うこと、向き合うこと、立ち会うことで生まれる本シリーズの魅力を思えば、客席には演劇関係者(俳優)が多いように感じられたことも納得です。
それらが観客にとっても希望になるかは強く断言できません。が、ひとつ作品として大きな発展の希望を感じたのは、1年前の同シリーズと比べて尾﨑優人さんの脚本の言葉が洗練されていたことと、劇団メンバーたちの佇まいが座組のなかで安定感を見せたことでした。
とくに、複数のペアが愛を交わす設定のなかで、ストレートな表現ではなく、「きっとそれは愛なのだ」と感じられる一人語りに自然と引き込まれはっとする場面がいくつかありました。
この大恋愛シリーズにしかできない貴重な試みのほか、優しい劇団としてほかにどういう企画をどういうバランスで打ち出していくかで、団体の今後が大きく変わるだろうなとわくわくしています。
京王
D地区
SCOOL(東京都)
2026/05/08 (金) ~ 2026/05/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
会話劇として、言葉や、人と人のあいだに流れる空気を味わえる舞台でした。
開場時に案内の方が、最前列の席の観客の足ギリギリまで「ここまで俳優が来るかもしれないので」というような案内をされていて、その時は「ひえっ、ちかっ!」と思ったのですが、それがどうして、その近さが良かったです。
ネタバレBOX
SCOOLの白い空間がまた、引っ越しの解放感や窓からの景色の良さなど新生活を感じさせ、会話の内容とあいまって、その清潔感が取り繕ったようでもありました。色づかいや音などの効果もあり、のぞき見しているというより、自分も部屋に存在する一部であるような距離感でいられたことが、作品の空気を自分事として感じやすい空間でした。
配役とその衣装が心地よく、7Aさん(リリー)の醸す空気と佇まい、織内傑作さん(ブラック)の重さと軽さが同居する受け答えは、空気の機微を楽しみ、ふたりの関係性の変化を想像させます。木村建太(ヘドウィグ)さんの登場で変化ががらりと起こるけれど、そこでのブラックの過剰過ぎない右往左往感が身につまされました。
人がうみだす変化を感じられるからこそ、上演回によって印象がかなり異なっていたと知って驚きました。「笑いが多い舞台だった」という声も聞きましたが、私の観た回は笑いは無く終始落ち着いた雰囲気でした。 リリーとブラックは初めから互いに腹に一物あるような、そもそも愛情ではない繋がりで同棲しているように見えたため、二人の未来にとくに宗教観が影響しているようには思えず、最後のブラックの台詞に大きな納得感がありました。と同時に、前半と後半に落差があればよりそれぞれの背景の対比や時間の流れが際立っただろうと思い、笑いがあった公演を観たくなりました。
観客やその日のコンディションにより、台詞のもたらす意味や作品の解釈が変わることはありますし、それは演劇の面白さのひとつでもありますが、変化によって物語の芯や密度にも差がうまれているようでした。
そんなわけで、私の観た回を振り返ると宗教二世という人物背景は作品における意味づけが薄く物語の設定としては少し浮いているようにも感じましたが、そのことは私個人の宗教二世としての経験もあり、好ましくもありました。あくまで各家庭の持つ背景であり、その差異が「新しい家庭・コミュニティ」を作る時に浮彫になったという、誰もがいつか直面する生き方の再構成についての物語として心強く感じました。
ベガスペガサス
やみ・あがりシアター
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2026/04/25 (土) ~ 2026/05/06 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
いまだに耳からとれないです「べーガス、ペガサス!」の歌。何度も繰り返し聞かされたのに、もう聞きたくないやとならずに、なんなら陽気に口ずさんでいて、たぶん私もあのカジノに囚われてしまっているんでしょうね…
ネタバレBOX
シンプルな舞台ながら、ルーレットをまわす時に開かれる布とゴールドの球のインパクトたるや。焦点を絞った舞台美術によってこの作品に通された一本の線が、天井から床に突き立っていました。こんなにも美術の力が強いのに、けして作品を食わずに芯を通している。もしCoRich舞台芸術まつり!にスタッフ賞があるならこの美術に送りたいです。
北区のペガサスホールを舞台に、イマーシブシアターとはなにかという問いかけとともに、カジノをテーマに人間の欲望や幸福に切り込んでいく充実のエンターテイメント戯曲。そもそも北区の王子には劇場の所在や取り組みをベースにした演劇や劇団や観客の繋がりがあり、多くの観客の反応からも(※客席に挙手や発言を促すシーンがある)、やみ・あがりシアターを何度も観ている、王子によく観劇に来る、という人の多さが伺えました。そのうえでの物語や、日替わりゲストの設定や紹介の仕方など、「どこで」「だれに」観せるかという土台のしっかりとある公演でした。
15人もの登場人物のそれぞれに葛藤があり、変化がある。演じるどの俳優も個性的で、作品において対等でした。今回の観劇で心惹かれて、過去の出演歴や今後の予定を調べてしまった俳優が何名もいました。全員大切ゆえに全員分の背景を描くことで、すこし中だるみしたきらいもありましたが、全体の印象として好ましく、まるでルーレットに並ぶ数字のように誰もが輝いて見えました。
この人数の座組と上演形態を実現する力と積み重ねに対する敬意でいっぱいです。楽しかった!
ガラパゴス
キルハトッテ
水性(東京都)
2026/03/10 (火) ~ 2026/03/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「イグアナ」はこれまで女性のさまざまな象徴として創作物に登場してきましたが、今回は、中絶手術をおこなったサチコ(吉沢菜央)の身体がイグアナになるところから始まります。ほかの生物に変身する設定や、どこかしらが過剰な登場人物たちにより、女性の仕事や出産や生活についての壁や葛藤が語られます。
ネタバレBOX
この社会で、女性はどう生きるか。どう働くのか、子どもを産むのか、そのタイミング、そもそも自分で選び取っていくのかさえ、人それぞれの人生と背景があります。それらは生まれ育った環境と経験によっても価値観が異なるものです。おそらく客席にいる人たちの考え方はバラバラで、だからこそサチコを中心にあれよあれよと進んでいく展開は抽象度が高く、人によって作品の解釈に大きな相違はなくとも、感想や意見などの受け取り方が異なるシーンが多いだろうと想像しました。
題材やその描き方は深く鋭い一方で、もっと力強い方向づけがあってもいいかもしれないなと感じました。けれどもひとつの作品ではなく劇団公演だとして考えると、観客がともに悩める上演だと肯定的に感じ受け取りました。「作り手の疑問」からはじまり、戯曲を書くことで悩み、演劇を創ることで考えるなら、観客はただ作品の受け手ではなく、同じ時代をともに歩む、演劇を媒介にした同志たりえます。
ただその場合は、身近な体感だけでなくもっと現代の社会的なことがらを組み込むと作品としての強度は増すかなと思いました(たとえば中絶薬の話題を出すなど)。
また4名の女性たちがそれぞれ抱える苦しさが描かれる一方、男性はどこか現実離れしており、1役ずつに多くのものを背負わされています。女性が女性というだけでさらされる苦難はデフォルメされつつも切実でしたが、そこに該当しない存在として、奥山樹生さんと村田天翔さんが作品におけるバランスをよく背負ったなと思いました。
それでも、軽やかに覚悟を感じる演劇でした。
奇抜な展開を受け入れさせる筆力・俳優の佇まいはともに、安定した場をつくれる劇団としてのさらなるポテンシャルを感じました。全体を通してコミカルなまま、疾走感を持ってラストシーンへと向かっていきます。最後の台詞は、夏の日に人々が騒ぎ去ったあとの荒涼としたグラウンドに水が落とされたような、渇きに染み込む心地よさでした。たとえその水がすぐに乾いたとしても、一瞬でも潤った安堵は生きる力になります。この次、さらにその先を、期待をもって追いたくなる劇団です。
一万円おじさん
株式劇団マエカブ
絵本の劇場カメレオン(香川県)
2026/03/07 (土) ~ 2026/03/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
愛媛県松山市の田町商店街のなかにうまれた「絵本の劇場カメレオン」のこけら落とし公演。カラフルで目を惹くグッズや内装に心躍らせ、客席について、受け取った当日パンフレットを開いたら、工事開始前の劇場内のがらんとした白黒写真が大きく目に飛び込んできて、「これが、この姿になったのか」と、演劇を祝福するような気持ちになりました。いろんな方の手をかけて、地道に作られてきたところに座っているんだと、感謝でいっぱいです。
ネタバレBOX
劇場の経営は、想いだけでは続けられない大変なことだと思います。こけら落としとなる本作については、その「想い」と「経営・経済」を両立する思想の込められた題材として、渋沢栄一がモチーフとなっています。一般チケット2,500円のほかに「経営者チケット」10,000円の設定も作品や劇場の在り方に沿っていて良かったです。
カナコ(宮本はるか)とハル(小川晴菜)というタイプは違うけれども自立心の強い女性ふたりと、「自分は渋沢栄一だ」と言い張る男(三嶋孝弥)。公園の片隅で、社会や働くことといった世の中のあり方を考える会話が続きます。一見、男性が若い女性に社会を説くマンスプレイニングのようなやりとりも、男がホームレスであるという設定と三嶋さんによるダメダメな人物造形で、3人が対等に人として意見を交わしているように感じられました。それにより語られている内容に意識がいき、バランスの練られた戯曲でした。
3人のキャラクターがはっきり活き活きと演じられており好ましかったです。どうしても物理的な奥行きがないので、空間が平たく、目的のために俳優が出てくるように感じられるところもありましたが、3名の俳優が物理的に限られたなかでもバラエティをもたらしていました。
できれば照明や音響などテクニカルスタッフの情報がどこかに掲載されていると嬉しいです。
マエカブさんは演劇でさまざまな取り組みをされていて、秋に全国の劇団が集まるカブフェスはいちファンとして足を運び楽しんでいますが、またあらたな拠点が、人の行き交う商店街のなかに「まちを変えていく最初の灯り」としてうまれたこと、場をつくるという取り組み、たくさんの人の「好き」が集まることが眩しいです。私は「演劇は営みだ」と思っていますが、まさに日々の営みとともに立つ小劇場。今後はここでワークショップなどいろんな企画がおこなわれるそうで、心から応援しています。
われらの血がしょうたい
範宙遊泳
シアタートラム(東京都)
2026/02/21 (土) ~ 2026/03/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
公演前から来場、入場、公演、終演まで全体を通して、情報も上演もガイドもスムーズで洗練されており、充実した観劇でした。
ネタバレBOX
これが2015年の作品かと、その脚本の弾力にまず驚きました。今同じ切り口で新作を書いたらどうなるんだろうという期待と興味はそれとして、なめらかに2026年の上演とした額田大志さんの演出に安心感があります。山本卓卓さんの戯曲はほかの演出家の手により強く叩きあげられる印象があるのですが、今回安定して感じられたのは、俳優をふくめた演出が空間全域に対して筋を通していたからのように思います。
音も、照明も、美術も、空間と姿勢を伸縮させていて、密度があるのに余裕がある、刺激的なのに安定感がありました。音が折り重なり、距離も時間もフラットに飛ばす演出。そこにある4名の身体は、人間を演じていなくも人間臭く、時空を超えても命を感じる。俳優の身体能力の高さと佇まいが力強くありました。
さまざまなセクションが互いに貢献しあい、充実した上演でした。
充実ゆえか、もくじの区切られた脚本構成ゆえか、全編を通して淡々とした進行は、時のない時空を揺蕩っているようでした。それは「ザマあるいはゼロ」の感覚に近いのかもしれません。
そんななか投じられる、後半の「4分の0」による叫び。無限の空間に個の声を投げかける様は数々のSF作品と重なるシーンではありますが、このアナログな叫びは2026年にリアリティを引き連れて響きます。それは大きな衝撃ではなく、私たちはもうこの世界に下半身くらいは浸かっていることを思い出させ、そこに響く叫びは希望と絶望が同居するように感じられました。4分の0役の端さんの、率直であり柔軟な演技にも惹きつけられました。
劇団活動開始から19年。四方に安定感のある上演が頼もしかったです。
Days Of Grey Sunlight
空想実現集団TOY'sBOX
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2026/06/26 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ダンスに力を入れているようで、観ていて楽しさのある舞台だった。
それぞれの生き物にそれぞれの背景をちゃんと描いていてキャラクターへの理解が深まるストーリーだった。
Days Of Grey Sunlight
空想実現集団TOY'sBOX
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2026/06/26 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
感動的なストーリーだった。イヌ役がみんな魅力的だった。
Days Of Grey Sunlight
空想実現集団TOY'sBOX
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2026/06/26 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ダンス満載、笑い満載で弾ける舞台!面白かったです。
杏仁豆腐のココロ
演劇ユニット「みそじん」
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2026/06/30 (火) ~ 2026/07/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
橙チーム観劇
究極のふたり芝居と言う感じ
鄭義信のホンはやはり面白い
ふたりとも表情が良かった
とりわけ大石ともこの演技が秀逸
コメディかと思ったらどんどんシリアスに
基底には温かさがある
セットも必要かつ十分で良く作られていた
Days Of Grey Sunlight
空想実現集団TOY'sBOX
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2026/06/26 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
心温まる舞台でダンスもたっぷりとても良かったです
ストーブがすっ飛ぶ!!!
演劇集団SMILE JACK
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2026/07/01 (水) ~ 2026/07/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
設定としては王道のハートフルコメディですが、前半のテンポの良いドタバタ劇から後半の展開への切り替わりが見事で、そのギャップにぐっと引き込まれました。
登場人物も基本的にみんな良い人ばかりなので、安心して物語に入り込めるのも魅力。
笑いあり、ほろりとする場面ありで、観劇後は心がほっと温かくなる作品でした。
ダジャレが物語のアクセントとして効いていて、最後まで楽しく観ることができました。
杏仁豆腐のココロ
演劇ユニット「みそじん」
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2026/06/30 (火) ~ 2026/07/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
橙チームを観劇。思っていたのとちょっと違って、シリアスでハードなセリフが飛び交う。面白い。(2分押し)82分。
鄭義信が2000年に書いた戯曲で、いろいろなところで何回も上演された作品だが、個人的には初見。クリスマスイブの茶の間、離婚しようとしている夫婦の2人芝居。ちょっとホッコリする芝居が多いユニットだが、本作はシビアなセリフも多いし、何故別れるのかが徐々に分かる展開が一種の謎解きの要素もある。優れた戯曲だが、演出も2人の役者も舞台美術も優れた、良い芝居だった。
構成員が三十路ということで「みそじん」と名付けたユニットも、40代の大石ともこ一人になったが、芝居作りは変わらず面白い。
「月の谷」「らん」「赤い石」
秦組
すみだパークシアター倉(東京都)
2026/06/26 (金) ~ 2026/07/02 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
『月の谷』『赤い石』を観劇。160分の大作でしたが、長さを感じさせない濃密な時間でした。
脚本、演出、キャスト、そして生演奏を含む音響まで、どれも素晴らしく、上半期に観た作品の中でも屈指の一本でした。
単なる勧善懲悪ではなく、それぞれの登場人物に譲れない想いや立場があり、誰の視点で見るかによって物語の見え方が変わるのも魅力的でした。
気づけば作品の世界にぐっと引き込まれていました。
この先へ続く『らん』もぜひ観たかったのですが、日程が合わず断念しました。だからこそ、なおさら続きが気になります。
ぜひまた再演してほしいと思える、心に残る作品でした。
ラーメンロック!!
KENプロデュース
シアターシャイン(東京都)
2026/06/30 (火) ~ 2026/07/07 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
味噌班の初日を観劇しました。冒頭から生歌とダンスで始まり引き込まれました。
観る前は「2時間は少し長いかな」と感じていたのですが、生歌の迫力と絶妙な効果音も相まって、ラブコメディがテンポよく進んでいきました。特にシャブリーの生歌が上手で、びっくりしました!
今回は舞台が間近で見える抜群の席だったのですが、役者さんのタトゥーに何て書いてあるのかまでマジマジと観てしまいました(笑)
身近なラーメン屋を舞台に、過去のバンド仲間や元カノたち、ラーメン屋のスタッフと客の人間模様がコミカルに描かれていて、笑いどころも多く、面白かったです。エネルギーをもらえました。
味噌や醤油、豚骨などチームによって違うみたいなので違いを見るのも楽しそうです♪
ネタバレBOX
舞台は、とある街のラーメン屋。
そこに新米として入店したユージンと、時を同じくして職を失いここで働くことになった元カノのサクラ。
かつて伝説のロックバンドを組み、当時の恋人・シャブリーから一方的に解散を告げられた過去を持つユージンは、いまや静かにラーメンの世界に身を置こうとしていた。しかし、そんな彼の前に、バンド再加入を企む仲間・ベニーが客のフリをして偵察に現れる!
ユージンをなんとかラーメン屋から連れ戻そうと、あの手この手で画策するベニー。一方で、共に働くうちにユージンへの想いを再び募らせていくサクラ――。
ラーメン屋という身近な場所を舞台に、過去のバンド仲間や元カノたちの思惑がドタバタと交差する、笑いと波乱に満ちたラブコメディの行方は……!?
ラーメンロック!!
KENプロデュース
シアターシャイン(東京都)
2026/06/30 (火) ~ 2026/07/07 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
味噌班を観劇しました。
ネタバレBOX
山保社長の際立つキャラクター造形がとにかく秀逸で、一度見たら忘れられない中毒性があります。ささもとのあまりにも個性的でユニークな立ち回りも、作品に最高のアクセントを添えていて愉快そのものでした。
そして物語のクライマックス、元恋人たちが涙ながらにエモーショナルな盛り上がりを見せる場面では、観ているこちらも祈るような気持ちになり、最後は熱いものが込み上げると同時にホッと胸をなでおろしました。
たっぷり笑わせるコメディでありながら、最後にはしっかり心に刺さるドラマがあり、楽しかったです。