チョコレイト 公演情報 キルハトッテ「チョコレイト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    今年に入って「初」の団体を中々の頻度で観ている(特に名のみ知る劇団の初観劇は感慨深い)が、こちらは中でも未知数度の高い一つで、「端正な作りをしていそう」なサイトの印象だけを頼りに(不安の面持ちで)観劇せり。
    思っていた以上に作劇の工夫と饒舌さがあり、「書く人」なのだな、との印象。

    ネタバレBOX

    挙式を控えたヒナが婚約相手から「俺の歯全部差し歯なの」とのカミングアウトと共に婚約(一旦)破棄を告げられる・・と説明にあるが、「体の良い断りを入れて来たクズ野郎」ではなく実際の芝居では彼はパニクっており、傍若無人の逆パターンでの「男の独りよがり」に翻弄される女=私の内省へと入って行く物語のようである。
    本作は「相手不在」のカップルの行方が現実的に辿られるリアルではなく、彼氏側に絡むのは「差し歯の治療をする」と申し出て女性歯科医。彼が十年前(十代の思春期)にかかった歯科医であったがその時彼は大人の女性への無邪気な告白をし、表面上軽くいなした女医の方はその事が心にわだかまっており、ストーカーよろしく大人になった彼の前に現われた格好。一人妄想を膨らませていた彼女は終盤事情を悟った相手に拒絶され撃沈するのだが(先般観たA.R.P.のボンゴレ・・に似た展開)。一方主人公ヒナの元には、彼女たちが思春期にハマった長尺の恋愛コミック(アニメ?)の主人公の男女が、連載が終ったのを機に「その後」の恋愛関係を続けようとした男に対し女が「やっと解放されたから外の世界を見てみたい」と現実世界へ飛び込んで来る、それを追って男もやって来るという展開(男女逆だったか?ちょっと忘れた)。ヒナはコミック彼氏と偶然出会って暫く同道し、漫画を知らないヒナの婚約破棄男はコミック彼女と出会ったりと、荒唐無稽ぶりが許容された世界が構築され、それなりに成立するのを眺めていた。
    ただ差し歯にこだわる男とは何の隠喩であったか、彼のナイーブな態度の根っこの問題は解消されたのかと言えば、作者なりの決着はあったのかも知れないが、霧散した印象。たとえ不条理でも何かの隠喩である事はむしろ色濃くあり得るのであり、ギャグを磨くか人間洞察を深めて作劇に反映させるか、進化を求めたい欲求を持った。固有の世界観により磨きをかけられたし。

    0

    2025/05/23 02:29

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大