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浄罪、もしくは余りに強欲な寄生木

浄罪、もしくは余りに強欲な寄生木

salty rock

遊空間がざびぃ(東京都)

2014/08/28 (木) ~ 2014/08/31 (日)公演終了

満足度★★

鑑賞日2014/08/31 (日)

今月、予定外にリピートになった舞台です。
30日の夜に観て、24時間置かずに今日(31日)のお昼にもう一度!(後はネタバレboxにて)

ネタバレBOX

北欧神話の主神オーディンの子・バルドル。光の神である彼は、母フリッグ、恋人のナンナを初め、世界中の誰からも愛される存在だった。しかし、そんなバルドル自身が心穏やかにいられるのは、無垢な精神のまま成長した寄生木(ヤドリギ)の精?のもとで過ごすときだけだった。
ある日、悪夢にうなされるバルドル。心配したフリッグは、世界中の全てのものにバルドルに危害を加えぬよう誓わせた。無力・無害と思われたヤドリギを除いて…。

バルドルの弟ヘズ。何故か記憶を失ったまま、囚われの身。
邪神ロキの手引きで、監獄から解き放たれるも、行く当てもなく、ただ彷徨(さまよ)うばかり。だが、少女ヴァーリとの出逢いをきっかけに、ヘズの前にも、ようやく光が射し込めた、かにみえたのだが…

この芝居のモチーフは、いわゆる「バルドルの夢」という、北欧神話では有名なエピソード。ところが、このエピソードを知っているオイラでも、お話の展開、途中まで捕捉困難な場面がありました。他にも色々と考えるところがあって、こりゃ、おかわりしなくちゃ!と思ったのが、今回のリピート観劇。でぇ、日曜のお昼、再度、端から拝見したうえでの感想は…

【感想・その1】
ヤドリギ役の山田佳奈さんの演技が抜きん出ている!確かに、山田さん、技術のある方なんですが、それだけでなく、他の出演者が緩急に乏しい・一本調子のセリフを(役者本人の考え? 演出の指示?)繰り出しているせいで、彼女の静的演技が際立って、観客の目には映っていたようです。

【感想・その2】
観客席の後方で、時折、役者が演じてみせるパントマイム(☜他の方の感想より)、観客には理解不能…というより、途中まで気づかれもしなかった模様。もっと広い会場で、観客の目前で披露したならば、意味合い、ないしは、雰囲気、察してもらえたのでは?

【感想・その3】
北欧神話に関しては、劇の冒頭、「語り手」による説明があったのですが、それも含めて、バルドル・ヘズ兄弟のことや、恋人ナンナ(☜実は二重人格)に関してなど、パンフレットに文章で記載された方が良かったかも?
決して馴染みのあるとは言えない話。観客の層も様々なので、どのレベルをターゲットにするのかは難しいとは思いますが、今後の動員を勘案なされるのであれば、もっと親切に!と願わずにはいられません。

【最後に】
脚本・演出の方が、この芝居に、いかに心を砕いておられるのか、薄らとですが、気づかされました。正直言うと、初回は席を蹴って!の気分だったのですが、再び(初回とはトイ面とはいえ)客席に腰を降ろしたところをみると、細かいところに目をつむれば、どうやら手の合う傾向のお芝居のようでした。次回作に期待いたします。
まめ芝。その陸

まめ芝。その陸

まめ芝。事務局

レンタルスペース+カフェ 兎亭(東京都)

2014/01/24 (金) ~ 2014/02/02 (日)公演終了

満足度★★★

いろんな劇団さんや役者さん達が、30分の持ち時間で、お芝居やったり朗読したりする「まめ芝。」というイベント。日芸の地元、江古田まで観に行ってきました。
出し物は3本(後はネタバレboxで)

ネタバレBOX

蛻皮表演(だっぴひょうえん)の女優さんお二人が出られた『Q』。
ストーカーの相談相手が実はストーカーで、相談者のストーカーが狙った相手が相談相手…演者の奮闘!も相まって、素直に面白かったデス。

salty rockさんの『fermata(フェルマータ)』。
兎団のお二方の朗読2題。
演者の皆さんは私にとってはもうお馴染の方々。
良い意味で期待を裏切らなかったし、そうでない意味では既視感を抱く…ゴメンナサイ!今回は後者の印象の方が強かったかな~

いずれにしても、色んなモンを一度に観られるのは嬉しいこと。
次も機会が合えば行ってみたいと思います。
get cranky

get cranky

劇団スクランブル

シアター711(東京都)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★★

男女の思い違い!
男なら誰でも大小関係なく経験ありそうだ、やっぱり単純なのは男です。
大いに笑える!

「緑のオウム亭ー1幕のグロテスク劇ー」

「緑のオウム亭ー1幕のグロテスク劇ー」

雷ストレンジャーズ

小劇場B1(東京都)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

仮面なき仮面舞踏会!
どこまでが芝居でどこまでが事実なのか?心の中は仮面だらけ!
俳優個々のレベルが高く芝居にどっぷり浸かれる。衣装も素晴らしい!

シュベスターの誓い

シュベスターの誓い

私立ルドビコ女学院

ザ・ポケット(東京都)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2017/03/01 (水)

座席1階I列

私立ルドビコ女学院『シュベスターの誓い』 於:ザ・ポケット

同シリーズの「祈り」と「秘密」の総集編
2作が上手く再構成されていて、初心者でも分かりやすく観られました。
世界観がしっかりしていて、特にチャーム(武器)や衣装などの舞台美術のクオリティは出色の出来です。

全体的にシリアス寄りな雰囲気ではあるのですが、
20名強の女優さんたちが舞台狭しと動き回る姿は大変華やかです。
ラストのダンスも圧巻で、見応えがありました。

登場人物が多いので顔と名前を一致させるのが大変です。
全員3rdネームまであって、人によってその呼び方が違ったりするので未だに混乱します(^_^;)

ネタバレBOX

終盤の佳世とつぐみの場面がとても印象に残りました。
その直後のヒュージ戦のノインベルト戦術で2人でエネルギーを籠める姿が胸熱でした。
赤い金魚と鈴木さん~そして、飯島くんはいなくなった~

赤い金魚と鈴木さん~そして、飯島くんはいなくなった~

九十九ジャンクション

インディペンデントシアターOji(東京都)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

見事なまでの不穏・嫌悪という負の感情を抱かせる怪作。それは単にヘイト・クライム(憎悪犯罪)でないところに真の怖さを覚える。当日パンフには、3組の家族が紹介されているが、その表記は夫1.2.3、妻1.2.3などという数字であるが、劇中ではしっかり姓・名で呼んでいる。この長いタイトルの種明かしになるため、敢えて形而上の表記にしているところに作者(土屋理敬氏)または演出家(後藤彩乃女史)のしたたかさを感じる。
(上演時間1時間35分)

ネタバレBOX

物語は、ホラーでもサスペンスとも少し違うし、その描き方もスプラッターでもバイオレンスでもない。別人として生きる男、その家族(男の弟)の苦悩。過去を隠して生き続けること、その血脈への慄きが切ない。また若い女(後妻)の心の奥底にある狂気が静かに牙をむく。それは決して社会や家族、周囲の人達に対する怒りや不条理に対する抑制された感情から生まれたものではない。その不可解さは「解らない」という台詞の凝縮されている。

舞台美術は、部屋の一室(リビング)で、3組の家族の住空間を同じに見立てつつも、その異空間をしっかり演出している。フローリング、そこにハの字型に3壁面を作り、それぞれの間を出入り口としてその先に他の空間があることを想像させる。その壁前に食器棚、飾り棚(上には電話兼FAX)が置かれている。上手側にソファー、中央にダイニング・テーブル、椅子がある。3組の家族は、ハウスクリーニングを営む家族1、同じマンションに住む2組の家族2・3(息子同士が中学の同級生)。そして家族1に住み込みで働いている男の弟が、家族2の夫という関係で物語は展開して行く。
このハウスクリーニング店と分譲マンションの2つの場所で流れる時間と運命…知ってしまった衝撃の事実。これから先の人生をどう乗り切っていくのか興味を惹く。

以前マンションで猫の惨殺事件が起きている。そして家族2の部屋ベランダに同じように猫の屍骸が...。それを契機にハウスクリーニング店で働く男の過去、家族2の夫の苦悩が露になり、夫々の家族崩壊が始まる。意外な人物が犯人でその動機が不可解。それだけに不気味で後味が悪いが、逆に言えばそれだけ脚本、演出そして演技が巧みということだろう。

なお、少しネタバレになるが異空間であるがハウスクリーニングの話とマンションでの話は時間軸が1年ずれている。またタイトルとサブタイトルの名字は犯人を示唆している、という凝らしたもの。

次回公演を楽しみにしております。
ジャーニー

ジャーニー

AnK

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2017/02/22 (水) ~ 2017/02/26 (日)公演終了

満足度★★★

自己の内面と対話、または兄弟の会話を通して作品への深化を高めようと試みた異色作のようだ。
さて、20世紀ソ連で驚異的な観客を動員した映画「不思議惑星キン・ザ・ザ」(邦題 1986年公開)…地球は遠かったと。その映画は脱力系SFであったが、本公演は脚本・演出の山内晶女史が「星の王子さま」をサンプリングしたあてもない旅の物語である。舞台美術は一見、雑然、雑多な印象であるが、反対に確固たるテーマを掲げた寓話を意識した作品のようだ。もっとも「星の王子さま」そのものが寓話。
(上演時間1時間35分)

ネタバレBOX

舞台セットは、少し高い段差のある長変形六角型を中央に設え、その面は格子模様。その周りに木片、木脚立、綱などが置かれ雑然としている。
「星の王子さま」をサンプリングした物語であることは先に書いたが、サンプリングの能書は省略し、原作の「伝承」をセカンドモチーフにしたという。

本公演では、星の王子さまに出てくるサハラ砂漠が鳥取砂丘に変わり、そのロードムービーならぬロードライブは宇宙の星々を巡る壮大なもの。自星「温泉と音楽」の旅立ち、暗黒星、インドカレー、仮面舞踏…全12星を訪ずれるというもの。目的星は地球であるが、その途中にあるいくつかの星はその特徴を説明するに止まる(例えば「クズ星」「水の星」「岩の星」など)。そしてその星での体験を繰り返す、または回想するような演出はクドイように思う。それよりも表現を省略した星々の体験談を観てみたかった。
ちなみに星の王子さまでも7番目が地球だったと思う。

地球人と異星人の交流・交感を通して人生譚を描き出す。異星人の兄弟は、真上で光っている星(地球)を目指して旅が始まる。先にも書いたが5番目くらいまでの星での体験が描かれているがそれ以降は台詞での説明のみ。それがどうも中途半端なようで…。

寓話性は、環境問題が透けて見える(大切なものは目に見えない)。もっとも公演は、サハラ砂漠→鳥取砂丘→大都会・東京砂漠を連想させるような、その乾き切った夢(ドライ・ドリーム)を潤す瑞々しい感性が感じられるようなもの。その一種独特の表現であるが、しっかりとした主張が見て取れるところに”力”を感じる。この劇団公演は、前回と今回だけであるが、どちらも伝えたい主張が明確なところが自分には好み。
しかし、その表層的な観せ方が繰り返しと抽象的になったことから分かり難い印象を持ったのが残念。
もう一つが死生観のような台詞…死んだら忘れられて寂しい。そこで伝承…生きていたことは子(ヨタカ)、孫(ミタカ)、曾孫(コタカ)へと言い伝えられる。

次回公演を楽しみにしております、と言い伝えます。
音楽劇「金色のコルダ Blue ♪ Sky Second Stage」

音楽劇「金色のコルダ Blue ♪ Sky Second Stage」

音楽劇「金色のコルダBS」製作委員会

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2016/12/08 (木) ~ 2016/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

いわゆる「2.5次元モノ」だが、脚本・演出はそれに媚びるような作りをしておらず、2.5次元モノのイメージが覆された。
音楽は全て生演奏であり、特に、終盤は編曲も相まって手に汗握る展開になっている。
原作であるゲーム、アニメを知っている人はもちろん、原作を知らない方でも、(この2nd Stage、前作First Stage含め)初めて触れるものとして適しているように感じる。
2.5次元モノの舞台の中で、自信を持ってオススメできる作品だった。

ネタバレBOX

主軸は「東金千秋」とその父親の確執だが、合わせて、各校副部長の「土岐蓬生」「榊大地」の対立も描かれていた。
初日、中日、千秋楽と観に行くことができたが、「土岐蓬生」は初日から最も完成されており、ライバル校として「立ちはだかるもの」の風格に溢れていた。
反面、「榊大地」が初日よりも中日、中日よりも千秋楽の方が完成されてきた感があり、特に千秋楽、土岐に詰め寄るシーンの気迫は圧巻だった。
そういった点でも、高め合うライバル関係が感じられて非常に良かったように思う。
悦楽乱歩遊戯

悦楽乱歩遊戯

虚飾集団廻天百眼

ザムザ阿佐谷(東京都)

2017/02/26 (日) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★★

美輪明宏版とは違った「黒蜥蜴」はいかほどのモノか期待しての観劇。
原作を劇団カラーにどっぷりと染め上げたエログロ、アブノーマル感たっぷりのアングラワールドは江戸川乱歩作品の懐の深さも同時に実感でき、とても良かったです。
脳裏に焼き付く総合美術、コアなファンがついているのも納得できます。
ただ開演前に役者さん達が、景気よく物販活動されるのはちょっと・・・
頭の切り替えがうまく出来ず、すぐに劇中に入り込めなかったのが惜しかった。
しかし公演後では舞台も役者もグッチャグチャで難アリだし、ファン恒例のお楽しみかもしれないので慣れればいいのか。
妖しい感じで売るっていうのはどう?

見よ、飛行機の高く飛べるを

見よ、飛行機の高く飛べるを

劇団青年座

練馬文化センター(東京都)

2017/02/28 (火) ~ 2017/03/01 (水)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/03/01 (水)

セットがリアルでドラマを観てる様でした。
今って幸せななんだなぁ。自由だもんなぁ。
どんな時代でも新しいことをする人には圧力はあって、どんな時代でも「ただしイケメンに限る」はあって、勉強になる内容でした。
演技も動き一つ一つ、かつらの位置にまで個性が作り込まれてて勉強になりました。

赤い金魚と鈴木さん~そして、飯島くんはいなくなった~

赤い金魚と鈴木さん~そして、飯島くんはいなくなった~

九十九ジャンクション

インディペンデントシアターOji(東京都)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

社会派
素晴らしい!!チラシに惑わされてはいけません。

ネタバレBOX

生き物の命を奪ってみたくなる人がいること、実際に少年のときに重大犯罪を犯した者の今、そして、その少年の犯罪者家族の生き様が絡んだ秀作。

ちょっと名大女子大生を想起させすぎる点は引っ掛かりましたが、久し振りで、考えさせられる、しかもファンタジーでない現実社会を描いた緻密な筋立てのあるお芝居を観た感じでした。

年配の人を年配のプロの役者が演じることによる現実味を感じたのも先月の『ダークマスター』以来で、ここも小劇場ですが、小劇場に通い過ぎる弊害も若干感じました。

恨みによる殺人願望は昇華できても、生き物の死ぬところを見たいという願望はなかなか消すことができないというのが怖いところでした。
これはペンです

これはペンです

H-TOA

gallery to plus(東京都)

2017/02/08 (水) ~ 2017/02/13 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/02/12 (日)

価格2,200円

円城塔の小説の部分部分を時に読み上げソフトによるものも挟みつつ2人の女優が読み上げ、観客はマーカーで読む部分を示した文庫本(各自1冊ずつある)を見ながら聞いたり考えたりメモを文庫に書き込んだり(!)という自由参加型(?)パフォーマンス。

ある意味「文章の洪水」の中に身を置くことになる訳で、目で元の文章を追ってはいるものの、次第に耳から入ってくるものが言葉や文章ではなく単なる「音」に感じられてしまうという「文章や言葉のゲシュタルト崩壊」を経験し、「これは文章ですか?」「これは言葉ですか?」を経ての「これは演劇ですか?」になるという……。

また、テキストに忠実だが句点がほとんどなく文章がダラダラ続く自動読み上げと部分的に意図してノイズ風にする(←子音だけ発音するらしい)生身の役者が読む文章のどちらが「文章らしく聞こえる」か?という実験のようにも感じられる。

芝居(に限ったことではないが)にはすべて用意されていて出てくるものを享受しているだけで楽しめるものと、観る側が想像力や思考力を駆使して積極的に参加(?)して楽しむものがあるが、本作は後者の極限に近いのではないか。

観ている最中にアタマの中に浮かんでは消えてゆくあれこれを楽しむ、みたいなものもアリ。そしてその場その時間の中で生じては消え行く観客の「想い」を残す文庫本というのも粋。
しかしそうするといろんな人の書き込みがある千穐楽が一番面白いんじゃね?(笑)

見よ、飛行機の高く飛べるを

見よ、飛行機の高く飛べるを

劇団青年座

練馬文化センター(東京都)

2017/02/28 (火) ~ 2017/03/01 (水)公演終了

満足度★★★★

2014年に行なった再演の地方ツアー(神奈川、北海道)、東京にもお立ち寄りが一般対象で2ステージ。1日目の夜公演は受付体制悪く15分押しでの開演。
この戯曲は印象的だった(非の打ち所がない)ため、かなり期待を脹らませてしまったのだが、まず上々であった。青年座の新劇風演技が前半では「人物判別」の邪魔をしたものの、大きな舞台での表現としては勘所を押さえ、「つらい現実」(文字にすれば平板だが)が、リアルに押し寄せて来る怖さ、悔しさ、切なさ、哀しさがくっきりと描かれ、彼女らの内心に共感し思わず涙であった。
「ザ・空気」も「歌わせたい男たち」も、端からみれば滑稽だがその状況の渦中にあって右往左往し、四苦八苦する、彼らの中での必然性が、否応にも理解させられる。
自分自身にしてからがこの時代という状況の中で右往左往している存在であって、それはそれは哀しい光景なのだろう、とは思いたくないから思わないのだが、多分そうであるな。そう思った方が良いのだ。あまりに赤裸々に、最後には己の本当を話さないではいない彼女らの潔さの眩しさ、美しさが、そのままメッセージである作品。リアルさに裏打ちされた分、女学生の苦悩しながらの、既に敗北を実感しながらの行動さえ、自分らはやれてるの? そうマジに問うてしまう。ドラマの中の人物は私の実感を伴った記憶に刻まれてしまった訳である。

一人芝居 桜の森の満開の下

一人芝居 桜の森の満開の下

KArNa

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/01 (水)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/03/01 (水)

無題2023(17-026)

19:00の回(曇~雨)。1時間前開場。18:15着で中へ。天井から桃色の薄布が垂れていて、中央には縦縞ということは桜の木のイメージか。

原作:坂口安吾はもちろん読んだことはなく、帰りの電車内で青空文庫を超斜め読み。
※人間椅子の同名曲はCDを持っていて良く聴きました。

当パンに「青山学院大学の音楽劇サークルに所属する同期3人」とありました。青学は昨年10月に青山祭公演「トキグスリ、売ってます。」を観に行きました。今週も公演「Night Prism」があるので行ってみようかと思っています。

18:55「5分おし」の告知、70~80分とのこと。19:05開演~20:15終演。

菅沼菜々子さんのひとり芝居ですが、個人的には「語り」のように感じました。「語り」は「かたりと(語り、津軽三味線、箏の3人)」をイメージしています。

1時間を超える上演時間、役柄を使い分け、動き、朗読のようなシーンを挟み、よくここまでできるものだと感心しました。

本筋からは外れますが、(wikiより)「ある峠の山賊と、妖しく美しい残酷な女」という設定において「妖しく美しい」はそのままでよいのですが、山賊というより凛々しい若武者に見えるのでした...でも、それはそれでもいいのか悩ましいところです(個人的には◎)。

薄布はずっとそのままかと思っていたら巧く使っていました。

ピーピング・トム『ファーザー』

ピーピング・トム『ファーザー』

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2017/02/27 (月) ~ 2017/03/01 (水)公演終了

満足度★★★★★

以前映像で観た演劇的なダンス(確か「フォーレント」)の、物語性の深さ(つげ義春的、最近の演劇で言えばペニノ的)に惹かれて、初めて実物を観た。舞踊の身体の切れ、動きのバリエーションと物語性に、圧倒される。その部分を担っていた若い中国女性と韓国男性(母国語で喋るので判る)が狂気じみて凄みがある。また欧州顔の女性二人(一人はポルトガル語らしき言語)、ボーイっぽい役の白人男性が若手。ところが鋭利な踊り手以外にも、年齢層の高い男女が相当数、何かと登場して賑やかしている。老人ホームを舞台にした一夜の(あるいは数年に亘る)物語であった。
中心的な老人役は白人の二人で、もしや舞踊界の重鎮でもあるか。一人は巨漢、一人は顔が埋もれそうな白髪。「その他」の人達は実際の年齢はさほどでなさそうだがその特徴だ。ほぼアジア系の顔が揃っている。この人口構成は明白に意図的だと解釈できるが、舞台の飄然として思わせ振りな相貌に紛れて「違和感」の一つに収まり、ただ彼らがそこにいる事実が何かを物語るようで、ないようで。
だがこの「意図」らしきものは効いていて、さりげなくふいに訪れたラストも受け入れさせる。
そしてカーテンコールに並んだ晴れやかな顔たちを見て漸く、直前まで異界にどれだけ深く嵌まり込んでいたかに気付く。
最終場面では老人ホームの酷な現実があからさまに、静寂の中に呈示されるが、それまでの喧騒が倒置法のように私の中に復活し、酷薄な現実を乗り越えるべくいつしか補っている。自身がそのような「人間的」心の所作を行なった事によるのか、我に返れば、視覚が認識しているものとは違う、不思議な幸福感があった。
衝撃のパフォーマンスだ。
(殆んど何も説明していないに等しいが・・)

「緑のオウム亭ー1幕のグロテスク劇ー」

「緑のオウム亭ー1幕のグロテスク劇ー」

雷ストレンジャーズ

小劇場B1(東京都)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/03/01 (水)

価格4,000円

辻しのぶさんの美しさに息を詰めて見入ってしまった。
終わったあとしばらく身震いがとまらない、幸せな演劇体験でした。

原作は都内公立図書館では軒並み閉架の禁帯出扱い、数日前に駆け込みで都立図書館にて昭和11年刊と27年刊とを読んで行きました。
色あせる「羽子」の解釈が翻訳によって異なっていたのが気になっていたんだけど、生きて踊る言葉になって発せられたそれはすとんと腑に落ちました。

ネタバレBOX

太陽や星と戯れるのは恐らく誰かあらう。
私は人間の魂と戯れる。
意味はただそれを求める人によって発見される。
互いに流れ入って、確実はどこにもない。
我々は他人のことも自分のことも何一つ知ってはいない。
我々はただ戯れる。それを知るものは賢明である。
ーパラツエルズス
RANPO chronicle【憂鬱回廊】

RANPO chronicle【憂鬱回廊】

TUFF STUFF

シアターノルン(東京都)

2017/02/25 (土) ~ 2017/02/28 (火)公演終了

満足度★★★

キャストの動きが良かった、声の出方もしっかりしている。演出も独特の雰囲気でなかなか良い感じであったが、あれっ?この話し言葉ではない言葉の会話って、なんか昔、アングラの舞台の手法のような・・・そういえば人の動きも近い匂いを感じる。もちろん、歪さもない。隠微さもなく、えぐさやグロテスクさもないが・・・洗練されているその中に昔の舞台の影を感じた。ひとつの話を三つに分け、その合い間にふたつの話を組み込む。一見上手く流れているようで、チグハグさが残るのは、気のせいだろうか?

横浜グラフィティ アゲイン

横浜グラフィティ アゲイン

(株)オフィス35

俳優座劇場(東京都)

2017/02/28 (火) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度

いくら古い話だからと言っても、あまりにも演出が古過ぎる。舞台が平坦な感じがする。もっと出演者の感情を前に出せないものかと、イライラした。良い出演者もいるのに、宝の持ち腐れ状態。古い話でも今の見せ方を、演出のオリジナルの見せ方をするべき。古い定番の舞台の形に終わってしまってがっかりした。扇さんの歌は絶品に良かったが、これなら彼女のライブの方が良かったんではないかと思う。

RANPO chronicle【憂鬱回廊】

RANPO chronicle【憂鬱回廊】

TUFF STUFF

シアターノルン(東京都)

2017/02/25 (土) ~ 2017/02/28 (火)公演終了

満足度★★★★

【Aキャスト】観劇

ネタバレBOX

『木馬は廻る』の間に『幽霊』と音楽劇『押絵と旅する男』を挟み込んだ形で江戸川乱歩の作品が連続的に演じられました。

『木馬は廻る』 夢の中に出てきた中年男に惹かれ、モルグが親友アッシャーと探しに出る話。で、女子二人は好き合っていたという話。アッシャーの衣装がおぼんろ風でした。残り二つの演目に本演目をまぶすことで、全体のファンタジー性をより高めていました。

『幽霊』 長い間女の幽霊に怯え続ける男は、実は女を殺すための事前準備で、この間に女を殺し、時系列的なかく乱を図ったものでした。

『押絵と旅する男』 旅する弟が持っていた押し絵に入り込んだ兄は、実は普通の人には見えていなかったというのが新鮮でした。
出口なし/芝居

出口なし/芝居

双身機関

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/02/25 (土) ~ 2017/02/27 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/02/25 (土)

史上最高の双身でした。これまで本作を含めて三公演四作品拝見していますが、いつも、最新作が最高傑作と感じます。尊敬いたします。
誰がなんと言おうとこの「芝居」はエンターテイメントでした。

「ああ、この芝居のいちばんいいところを分かってるのは私なんだ」「これは私のための『芝居』なんだ」とおこがましいありがたい気持ちになってしまった瞬間が訪れたことがありました。

「芝居」上演中に、発話している俳優に照明があたらない瞬間が数秒あって、私はその瞬間の内圧や密度に心を揺さぶられました。
照明のキューイングや発話のタイミングそのものについては、もしかしたら(いやもしかしなくても)実際に想定されているものとは違っていたのでしょう。しかし、その瞬間に舞台全体の集中力や緊張がぐっと高まったように感じられて、なおかつ、何事もなかったかのように三人の男女の「告白」が連綿と続いて行ったときに、私はこのベケットの「芝居」というタイトルをごく個人的な感覚で、でもハッキリと理解できました……。

本当にそれは、観客として最高の幸せ。ああ、これは私の芝居だった。

この体験は、誰とも共有できないのかもしれない。でも、だからこそ、これは私の芝居で、私にとってエンターテイメントなんだ。

ありがとうございました。

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