最新の観てきた!クチコミ一覧

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渇愛

渇愛

名取事務所

小劇場B1(東京都)

2018/03/09 (金) ~ 2018/03/18 (日)公演終了

満足度★★★★

韓国の国民性というか気質というか、そういった空気感が色濃く出ていた舞台。
どうも自己主張の強い登場人物が多いと思えてならない韓国ドラマは、個人的には苦手なタイプで、早々に投げ出してしまう事がほとんどですが、本作に関してはしっかり見届ける事ができました。というか観る事から逃げられない感覚。

ムーダン(巫堂)にまつわる禍々しさが蔓延する中、決定的な深刻さを持ち迫ってくるのは夫婦の巡り合わせの悪さ。
不幸の連鎖はあまりに衝撃的で、次々と重くのしかかってきますが、それはそっくりそのまま“見応え”として昇華。
随所に入る記憶のフラッシュバックは映像的でありながら、血と汗の匂いが漂ってきそうな生々しさで、終始 照明と音響と演技が絶妙に絡み合い、役者さんの背後に伸びた影にまで迫力を感じます。
観終わった後は、何だかもう喉がカラカラになっていました。

尊厳の仕草は弔いの朝に

尊厳の仕草は弔いの朝に

劇想からまわりえっちゃん

インディペンデントシアターOji(東京都)

2018/03/14 (水) ~ 2018/03/18 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/03/15 (木) 18:30

まずは上演時間が3時間弱と知って二の足を踏んでいる方々へ。
こわくないこわくない……いや、長くない長くない、ですよ。前半(90分)は完全に娯楽重視で、10分間の休憩を挟んだ後のシリアス気味の完結編が70分強という構成と時間配分が体感的に短く感じさせるのかも。

さて本論。前半のマンガチックな西部劇が後半のシリアス系の現代劇とどう繋がるの?と思いながら観ていたが「もしや前半は後半の物語のスピンオフ……いや壮大な序章?」な関係が示され、しかしそれだけにとどまらず物語が進むにつれて次第に繋がりが密接になり最終的に融合してゆく構造が鮮やか。
前半の終わり際=休憩の前に後半のイントロになる部分を見せるのも、休憩によって流れが途切れることを回避する妙案。

表現方法に惑星ピスタチオ(系)やひげ太夫に通ずるものがあるので、そっち系がお好きな方にもオススメ。偶然だろうが、ひげ太夫ではお約束的にほぼ毎回出てくるセリフのやりとりと同パターンのやりとりがあり、ひげ太夫ファンとして頬が緩んだりも。
通ずると言えば後半部分ではこの少し前に観たガレキの太鼓「地上10センチ」も想起。

前半は「1864年の話なのに主な銃の銃身がパイソンっぽいじゃねーか」「リボルバーで何発撃ってるんだよ」などとツッ込むのが野暮なほどマンガチックで時々劇画調な印象を受けたが、スゴい(謎)のはそう思わせた創る側かそう思ったσ(^-^)か?(笑)

つらつら思い返すと粗い部分もいくつかあるが、10年前にこれを書いたことと、何より異質な2つの物語を融合させたアイデアを評価したい。(何かエラソーだがちょっとした逃げだ(爆))

なお、アマヤドリ・中野智恵梨さんの女子っぽさ(二通り)とピヨピヨレボリューション・macoさんのアクション(ダンスは言わずもがな)も見どころ。

ネタバレBOX

前半の西部劇が、後半で亡くなった人物が少年時代に書いていたマンガであると明かされた時は小松左京「日本沈没」の成立過程を思い出した。
あれは元々は島国であるがゆえに永きにわたって安泰だった日本民族が、日本列島という国土を失って世界各国に難民として散らばった姿を書きたかったが、列島をなくすための理論を構築してその過程を書いたらそれだけで1つの長編小説になってしまったそうで、本作もそのマンガ部分を描いたら1本の芝居になってしまったのかと思ったのだった。
しかしそれがまさかあんな風になるとは……(ネタバレboxとはいえ自粛)
尊厳の仕草は弔いの朝に

尊厳の仕草は弔いの朝に

劇想からまわりえっちゃん

インディペンデントシアターOji(東京都)

2018/03/14 (水) ~ 2018/03/18 (日)公演終了

満足度★★★★

壮大な通過儀礼でした。

ネタバレBOX

1・2・3ショットマンレイと呼ばれるガンマンが、希望を叶える石を六つ集めるために冒険する西部劇であり、中学時代にこの原案であるマンガを描いていた親友の突然の死によって、自分が役者を志した原点があの頃だったと改めて自覚する物語。

テンションが異常に高い主宰のいる劇団ってたまにありますね。ただし、そこには必ず美しい看板女優が存在します。

激しい動きのある3時間ほどの大作で役者も大変、観客も大変ですが、劇団10年、これもまた役者を続けるための通過儀礼として必要なことだったのだと理解しました。
再生ミセスフィクションズ2

再生ミセスフィクションズ2

Mrs.fictions

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2018/03/15 (木) ~ 2018/03/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

初めて観たのですが、予想以上に楽しませてもらいました。特に1本目の「男達だけで踊ろうぜ」に心を鷲掴みにされ、これがあまりに良すぎて2本目の「東京へつれてって」が(これも充分良かったのに)少しかすんでしまったくらい。3本目の「男達だけで踊ろうぜ2」のバカバカしさ、4本目「上手も下手もないけれど」も好きですが、やはり1本目の印象が強烈すぎました。ああ、もう1回観たい。

愛もない 青春もない 旅に出る

愛もない 青春もない 旅に出る

精華高校演劇部・芸術総合高校演劇部合同東京公演実行委員会

シアター風姿花伝(東京都)

2018/03/13 (火) ~ 2018/03/14 (水)公演終了

満足度★★★★

二つの学校の好対照さが印象的でした。

ネタバレBOX

精華高校演劇部『大阪、ミナミの高校生2』  教室で彼氏とセックスをしているところを先生に見つかり、反省文を書くことになった女子高生の話。

校則の不純異性交遊の意味するところは知っていても不思議ではないと思いましたが、女子高生が先生との面談を重ね、彼氏との恋愛を真面目に考えた結果、反省文を書く必要がないとの結論に至って自主退学したのは一つのプライドの表れだと感銘を受けました。

途中で入る生徒が恋愛観を語るコーナーは、教育者からみると生徒が自分の考え方を人前で話す訓練と捉え、観客からすると今時の高校生の考え方を知る機会かもしれず、印象として高校演劇にありがちなことかと思いますが、元々のストーリーが面白かっただけに、実にウザったいテンションを下げる邪魔な時間帯でした。

高校のとき数学が得意だったにも拘わらずすっかり忘れてしまった私にとって、マイナスと虚数の考え方は新鮮でした。iの三乗はあそこだなって思いました。

新座柳瀬高校演劇部『Merry-Go-Round!』  そもそも伯爵を騙る詐欺師が統治するヨーロッパの離島で、多くの詐欺師たちによって繰り広げられる狂騒ドタバタコメディ。

前の演目との違いに先ずは驚きました。前の演目にもあったような青年の主張とかを入れがちな教育者的な観点を排除して、徹底的に面白いコメディを作ろうとする姿勢に感銘を受けました。高校演劇事情は良く分かりませんが、恐らく優勝はできないのでしょうね。

テディベアを売る兄弟を始めとして、例えすべってもニタニタしないで淡々と役をこなす役者たちが素晴らしかったです。

伯爵が青い服の女性を避けようとした理由、その割には出会っても何も起こらなかった理由は良く分かりませんでした。
ヤギの身代わり

ヤギの身代わり

果てとチーク

インディペンデントシアターOji(東京都)

2018/03/08 (木) ~ 2018/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

世界観が素晴らしいと思いました。

ネタバレBOX

とある芋虫が寄生すると、宿主を死なせないようにホルモン調整や遺伝子操作などをするために、結果その人間は長生きするという前提に立つSF物語。

50おばさんの説明台詞でようやく理屈は分かりましたが、全体として分かりづらかったです。

新興宗教が芋虫を使って布教活動している不気味さ、成長が止まった人間の苦悩等、世界観が興味深く、もっと面白くなると思いました。
坦々とおこり

坦々とおこり

シラカン

北とぴあ カナリアホール(東京都)

2018/03/07 (水) ~ 2018/03/11 (日)公演終了

満足度★★★

結局は幽霊物もどき

ネタバレBOX

ライブに行っておじいちゃんの葬式に出なかった孫娘が言い訳をするも、出てほしかったというおじいちゃんの声を聞いて葬式めいたことをしようと考える話。

高ビーな前説から葬式に出なかった理由を屁理屈込めて言い訳するまでの一連の流れが、頭の良さそうな小賢しさが伝わってきて嫌いだけど好きでした。

その後は、単純な幽霊物もどきでがっかりでした。

おじいちゃんをがんもどきで表現していましたが、癌で死んだおじいちゃんが元気でぽっくり死んだなんてどういうことかと思いました。
再生ミセスフィクションズ2

再生ミセスフィクションズ2

Mrs.fictions

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2018/03/15 (木) ~ 2018/03/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

なんだかよく分からないけどバカバカしくも笑っちゃうお話もありましたが、4っつめのお話が素晴らしい。時間があったらもう一度行きたいです。

ネタバレBOX

1本のお芝居が演じられている過程のようであり、人生そのもののようでもある4本目はジーンとします。
廃墟

廃墟

ハツビロコウ

シアターシャイン(東京都)

2018/03/13 (火) ~ 2018/03/21 (水)公演終了

満足度★★★

初めて観る団体だったが、かつてのガジラファンだったのと、前回の公演の口コミが好評だったのとで期待値が高かった。
ウェルカムな心持ちで観ていたはずなのだが、学生が帰る辺りから足りないものを埋めながら観ている自分に気づき始め、次男の登場で若干盛り返すものの、全体的に求心力、軸を欠いているように感じた。

座学、ディベート、演出などが不足しているのか、熱量そのものが目的化しているかのようで、台詞が刺さりきらないのが気になった。
渡しきらずに諦めを漂わせてしまうとやり取りが重くなる。
敢えて行き詰まった感を選んだのだとしたらあまり賛成出来ない。
NHKでカラー処理された戦後の群衆の映像を見た時、当たり前なのだけれどその「リアルさ」に衝撃を受けたのを思い出す。そこには悲壮感より命のしぶとさ、逞しさすら感じた。
暗さ、湿度的なものが全体を覆ってしまったせいか、演者の身体も語らず、ストレートな内容なのに悪い意味で状況が分からない瞬間が散見された。

期待値が高いがゆえにネガなコメントが並んでしまったけれど、さらに発展させ、媚びずに独自性を追究してくれることを期待したい。

かもめ~4幕の喜劇~

かもめ~4幕の喜劇~

遊劇社ねこ印工務店

シアター711(東京都)

2018/03/14 (水) ~ 2018/03/18 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/03/15 (木)

15日ソワレ(1時間45分)を拝見。

ネタバレBOX

言わずと知れたチェーホフの名作を「初心者向け」「敷居を低く」との意図で、1時間45分に短縮した「小劇場版」で上演とのことだが、話の運び自体は、フルバージョンを数回拝んだことのある身にも、違和感なく受け入れられた。
ただ、その「敷居を低く」するために施されたのだろう、劇伴・水着シーン!・コースチャの関西弁セリフ!!等々のお茶目な味つけ(演出)に関しては、意見が分かれるかなぁ。演劇に一家言あるベテラン観劇者あたりの渋い顔が想像されるかと(苦笑)。

ニーナ役の箕輪菜穂江さんは元々「純真な少女」の容姿と佇まいの方なので、トリゴーリンと出逢ったばかりの頃は文句なし! 後半のうらぶれたニーナも、デフォルトが「純真な少女」な方なので、前半とのギャップがより強烈に伝わってきた。
なお、女優ならば誰もが演じたい役を得た、箕輪さんの意気込みがひしひしと伝わって来て、役柄のニーナと二重写しに見えたのは、イチ観客として僥倖だったかもしれない。

最後に苦言。二日目にしては、全体に素人でも気づくレベルの噛みが多い。その都度、折角のお茶目な演出による魔法が解けて素の世界に戻ってしまい、つくづく勿体ないと感じた。


【配役】
コースチャ(ナイーブな感性の持ち主。ニーナとは恋仲だったが…)…森勇介さん
ニーナ(女優を夢見る純朴な娘だったが、後に…)…箕輪菜穂江さん
トリゴーリン(人気作家、アルカージナの恋人だが、ニーナにも…)…大塚メルセデス亮一さん
アルカージナ(コースチャの母親。子供への接し方は不器用。大女優、だった)…晴美さん
ソーリン(アルカージナの兄。穏健。屋敷の主人)…小栗健さん
ドールソ(恋の遍歴を重ねた50代の医師)…高橋浩一さん
シャムラーエフ(屋敷の管理人。芝居好き。マイペース)…なるせこうさん
ポリーナ(シャムラーエフの妻。ドールソ医師と何か…)…丸山美樹さん
マーシャ(シャムラーエフの娘。コースチャに片想い)…長沢朋枝さん
メドベジェーンコ(学校の先生。何かと「残念な」ヒト。後にマーシャの旦那)…榊原悠祐さん
ヤーコフ(屋敷の下男)…岡田竜二さん
振って、振られて

振って、振られて

光の領地

スペースふうら(大阪府)

2018/02/03 (土) ~ 2018/02/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

3度目の改憲で、基本的人権を失った日本…

憲法学者として憲法改悪が許せない林教授に、改悪派の椿教授が日の丸を振らせようと、あの手この手!

そのやり取りが、とても滑稽なのだが、
聡明清廉な人間でも、意に反し流されてしまう恐ろしさ!
笑い話ではないかも…

公演名『振って、振られて』は、日の丸の旗を『振って、振られて』に一喜一憂する様子から、

片時雨

片時雨

宝塚大学舞台芸術研究室

HEP HALL(大阪府)

2018/02/03 (土) ~ 2018/02/04 (日)公演終了

満足度★★★★

初詣の帰り、偶然出会った男が二人の人生を狂わせる。
男の移り気、女の情念、共に業が深いですね。

美術・衣装・小道具・脚本・演出・舞監・制作・役者・音響・照明…
何から何まで5人で作り上げた公演、素晴らしかった。

卒業後のご活躍を祈念しています。

めいめい

めいめい

ステージタイガー

近鉄アート館(大阪府)

2018/02/03 (土) ~ 2018/02/04 (日)公演終了

満足度★★★★

進学、親の再婚、文化祭出し物…
高校生の心の葛藤を爽やかに、
そして親・姉妹・友人・先生が暖かく見守る、

とってもハートフルな「ステージタイガー」さんらしい公演でした。

体育会系)西分さん、愛情一杯)谷屋さん、主演の三田さん含め、役者の皆さん、とても良かった。

そして、SHASENの卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
とても良い公演を観させて頂きました。

ネタバレBOX

そしてそして、
追伸、やはり近鉄アート館の3面囲み席は…
廃墟

廃墟

ハツビロコウ

シアターシャイン(東京都)

2018/03/13 (火) ~ 2018/03/21 (水)公演終了

満足度★★★★

「どんなことをしても生き抜く」が「戦後の奇跡的な復興」につながったのではないか、を感じた。

三好十郎の作品はどれも骨太である。
したがって生半可には扱えないのだが、今回は自分たち用に脚本を書き直すことで、自分たちができ、観客に伝えられることができる作品に上手く仕上げていたと思う。

ネタバレBOX

少し固いのかギクシャクしたようなやり取りが続き、どうなるものかと心配したが、先生の義理の弟が出てきたあたりからようやくエンジンがかかったような印象。
一気に面白くなってきた。

自らに「一人分の戦争責任がある」として、学校を休職し、ヤミの食料は食べない先生は強いと思っていたが、どうやらイヤなモノから目を背けるようなところがあるようだ。家の建築代金を取りに来た女とのやり取りでそれが現れてしまった。取り立ての女の前から姿を消すように防空壕に降り、対応を同居する女性に任せてしまう。
それが先生の狡さであり、戦中の行動、つまり戦争に反対と考えているのだがそれを表明することができなかった先生の行動に重なってくる。

ヤミを食べないとしても実際は食べているようだし、休職していても歴史の研究をしたいなんてことを言っていたりする。「御用学者」と言われれば、自分には「一人分の戦争責任がある」と言いながらも、それにつばを飛ばしてに反論する。

かつて別の劇団で同じ演目を観たことがあるが、そのときには「頑な人」という印象が先生にはあった。
しかしこの公演の先生には、戦中も戦後も理由をつけて「逃げている」ように見えてきた。
そして家族や周囲には迷惑を掛けているのだ。

先生宅には次々と登場人物が現れてくるが、いずれも戦後の日本人を象徴するような人ばかりである。
特攻帰りで自暴自棄になりながらも逞しく生きる者、特高に捕まり逆に獄中で共産主義を固め、その道を邁進しようとする者、何も考えられずに右往左往している者、正気を失い惚けてしまった者等々。
その人々が混じり合い、ぶつかり合いながら現在の日本を作ってきたのではないだろうか。

先生の主張する歴史の見方(「外からの力がない歴史観」)は興味深い。それは理想であろう。歴史は過去を語るということなので主観が入ってしまう。主観には外からの力は入らざるを得ない。したがって先生の理想は達成することはできないのではないか。
その「理想」を求める先生という存在は、浮き世離れしていると言っていいかもしれない。

先生とその息子たちは驚くほど議論好きだ。議論をしたいだけなのだろう。
その議論は、娘の「大切なのは(議論ではなく)人と人との信頼」という一言にかき消されてしまっている。しかし彼らの耳には届かない。
その議論は今も続いているのではないだろうか。その「問い」の「答え」は未だ見つかっていない。

先生宅のパンをすべて食べ、犬小屋にいたところを捕らえられた男は、一言も発しない。
先生たちの議論をぼうっと観ているだけ。
そして議論の末の乱闘の後、誰にしているのか頭をしきりに下げる。
この男とその様は、戦争という大きな問いに未だ答えを見出せないまま、とにかく頭だけ下げている現代の私たちの姿なのかもしれない。何が悪かったのかを、きちんと突き止めないままに、とりあえず頭だけ下げている姿。

以前観た『廃墟』は2時間半を超えていたと思う。
フライヤーや当日パンフに「上演台本」とあるように、原作に手が入っているようだ。
先生の弟は、少し軽薄なぐらいのノリの良いもっと軽い人だったように思うのだが、その「浮かれた」ようなトーンは控えめになっていた。
先にも書いたとおりに、先生宅に登場する人々は終戦後の日本の縮図のようだったので、新しい文化に触れ、自由になったという開放感から浮かれてしまった人もいたほうがよかったように思う。議論好きな先生と息子たちの対比としてもそのほうが印象深いと思うのだ。
また、長い台詞が整理されていたり、現代の観客が耳で聞いてわかりにくい言葉は削除されていたようだ。
さらに劇場の構造に合わせて先生宅を「屋根裏部屋」にしていたのではないかと思う。

いずれにしても上演台本にしたことで、観客としてはヘンに引っかかるところがなく、作品に集中できたのではないだうか。
つまり、今回は自分たち用の脚本に書き直し、自分たちができ、観客に伝えられる作品に上手く仕上げていたと思う。

先生には静かに「生きること」を放棄しているような「ズルさ」があるのだが、彼以外は「どんなことをしても生き抜く」という気概が溢れていて、それが「奇跡的な戦後の復興」につながったのではないか、ということがうかがえた。

当日パンフには役者名のみで役名がないのでどなたが演じたのかはわからないが、先生の弟役の方がいい感じではあった。あったのだが、先に書いたとおり先生の弟のキャラが少し異なっていたので、後半はあまり印象に残らなかったのが残念。
また先生と2人の息子たちの激しい議論のテンポがとても良かった。しかし激論のときにのみ面白く、そうでないとき(冒頭とか)にもっと観客を惹き付けてほしいと思った。
先生のところに同居している女性役の方の微妙な位置づけが上手く出ていたと思う。

それとシンプルなのだが、微妙な加減で徐々に暗くなっていく室内と、電球の明かりの様子、さらにその中で、観客の観劇の邪魔をせず登場人物をきちんと照らす照明がとても良かった。
1999

1999

福島県立いわき総合高等学校

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/02/22 (木) ~ 2018/02/25 (日)公演終了

満足度★★★

もがき苦しむ若い時間。それを「世界の終わり」で表す。

前半は彼女たちの言葉がイカニモなので「誰かに作られた」台詞を言わされているように感じてしまった。
演出が悪いのかな、とも思ったり。
なんかもやもやしてしまった。
311のエピソードには聞き入ってしまったが、なんか作品全体とのバランスが悪いような。
が、歌は楽しいし、とても活き活きしているのが良い。


文字通り「素顔」になる後半からはとても素敵な舞台になっていった。
彼女たちが彼女たち自身になっていくようだ。
全体がこの感じだつたら、もっと面白かったのではないかと思うのだが。

今度は背中が腫れている

今度は背中が腫れている

あひるなんちゃら

駅前劇場(東京都)

2018/03/01 (木) ~ 2018/03/05 (月)公演終了

満足度★★★★★

あひるなんちゃらには外れなし(※個人の感想です)。
いつもはへへへ笑いなのだが、今回は結構大笑いした。

ホントに背中が腫れていた。というかカジモドだよ、あれ。

突っ込みの堀さんはすでに名人芸の域に達しているのだが、さらにその上を行っていた。というか、ヤバイのレベルに(笑)。

&根津さんいい味だよね。

罠

俳優座劇場

俳優座劇場(東京都)

2018/03/09 (金) ~ 2018/03/17 (土)公演終了

満足度★★★★

俳優座劇場プロデュースでは最初に観た「12人の怒れる‥」が素朴に良かったので、名作レパには期待してしまう所がある。
「罠」は作品じたい初見、脚本の良さの上に、舞台化の成果が審査されるというどうも演目らしい。観てみると、やはりネタバレに慎重なコメントは正しい感覚だと納得し、果たしてどう感想を書くかと考える。
しっかり作られた舞台だった。最後に全てが客の前に示されるので、これからご覧になる方は安心して最後まで見よ‥というのも妙であるが、その事から逆に考えると、この演目の課題は最後で矛盾を来さない程度に、何かを特定しない限度で、ある事態が進行しているようだと、(皆目霧の中ではなく)ある想定を可能にするように、演じられ作られていなければならない。「良い演目」とは言え、これは中々難しい。ヘタにやれば最後にやっと納得したがそれまでは三文芝居としか‥‥そんな感想をもらう代物になりかねない。
加藤忍演じる役も最初こそ収まり悪くみえたが、次第にらしく見える。皆がそれぞれ謎を湛え、今確信に満ちた動線を見せたのに謎が深まるという不思議。
コメディタッチではあるが、人物が覚える恐怖心に共振することもあり、そうした部分が舞台を見応えあるものにし、終演後もその感触は快楽として刻まれている。

猫と針

猫と針

劇団Kalium

新井薬師 SPECIAL COLORS(東京都)

2018/03/15 (木) ~ 2018/03/17 (土)公演終了

満足度★★★★

恩田 睦の原作だが、ラスト迄ずっと板上には登場しない精神科医・オギワラの弔いに集まった高校映画研究会の面々、5人の疑心暗鬼を描くサスペンス。(花4つ☆)

ネタバレBOX


何の変哲もないような友人関係のハズが、誰かが席を外すとか、噂話をすると変な勘繰りを入れたり、矢張り登場しない外資系ディーラーの妻とオギワラとの不倫を疑う夫がストーカー紛いのことをしたり、映画監督になったタカハシと付き合っていたと噂の大地主の妻の自殺とタカハシの関係を周りが勘ぐったり、と。居ない他人の話を通じて沸き起こる疑念や、噂話の不確かさが生み出す懐疑によって簡単に崩されてしまう我々の信頼関係の脆さを、新作映画のエキストラを頼むとしてスタジオに集め、撮影をしながら、別の所に設置したカメラで終始隠し撮りを続ける、監督タカハシの深い人間不信から離人症でも発症したかのような執拗で陰惨な真実追及の手段を通して、我らの時代にここで生きる現代日本人の深く病的な不信という怪物を炙り出した作品、と解釈した。
恩田 睦が、何を描きたかったのかを深読みし過ぎるくらい深読みしても良いのではないだろうか? また、今回音響はオープニング、ラスト共にショパンの「ノクターン」を用いているが、観劇後、つらつら考えてみるに、自分ならラストには、エリック・サティの「ジムノペディ」を使うかな、などと考えてみた。演奏は高橋 アキだろうか。演技については、登場した5人それぞれにかなり演じてきているなと思ったら、高校時代の演劇部仲間が中心になって結成したグループだというので納得した。
スタッフの対応、作品を丁寧に作っている点でも好感を持った。
あるサラリーマンの死

あるサラリーマンの死

タテヨコ企画

Galeri KATAK・KATAK(東京都)

2018/03/07 (水) ~ 2018/03/18 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/03/14 (水) 19:30

座席1階4列

タテヨコ企画『あるサラリーマンの死』Galeri KATAK・KATAK

ある家族の歴史を走馬灯のように描いた作品。
会場全体を効果的に使った臨場感溢れる演出が出色。
作品内で本物のあれを実際に動かして使ってるのは初めて見ました(^^;)

色々衝突や問題もあったけど、ギリギリのところで繋がっていた家族の絆が救いでした。
母親の「知ってた」のくだりがすごい好き。
ラストどうなったのか直接描かれてはいなかったけど
タイトルや不穏な布石から考えるとそういうことなのかな。

座席は上手側の方が見やすいと思います。

埋没

埋没

TRASHMASTERS

座・高円寺1(東京都)

2018/03/01 (木) ~ 2018/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

この舞台、「悪くないナ」と思った、という記憶は残っているが情景を思い出すのに時間を要した。その理由はTRASHMASTERS、という索引文字に付着したイメージでもって脳内検索しても引っ掛からないから。「埋没」のタイトルが珍しく内容と合致していたなァ、、という記憶から手繰ってダムに行き当たり、漸く埋もれた(早っ)記憶の蔓を引き出せた。持って回ったようだが、ストレートプレイの秀作の雰囲気あり。別にあちらが高尚で、こちらが二流という訳ではないが(B級的とは言えるかも)、バタ臭い中津留節(ひどく正しいのだが)を俳優が吐いても崩れないものがあった。
今回の客演者の役へのハマり度数、団員による新傾向の役への挑戦、戸外と屋内双方を同じ装置で表現する美術、照明の重厚さ等等、印象深い部分が優った。
「ムツカシイ」問題を細部に留意して描出しようとすれば「世の中簡単じゃない」要素の波に飲まれる。単純図式化するのは割合簡単だ。殊更な悪や敵(としての態度)を登場させ、それに抗わせるのが常套だ(そのうまい処理は、それらの風景を、ある者の主観がもたらした幻影、かもしれない、としてまとめる方法)。今作も親の時代と子の時代(現代)を描き、ダム建設反対運動の「運動としての輝き」(純粋さ)と分断の悲劇、建設が既になされてしまった敗北の今を、そのまま見つめるものになっている。反目して別れたかつての親友夫婦同士が、その子の世代において相見える展開は、希望だが、双方は親の思いをしっかり身に受けていて、和解が目的化していない以上、物語が単純にそこに向かう担保はなく、それによって救い上げようという事でもない。そう願うのは観客の私たち自身であって、人物らは、私たちが「気持ちよくなる」ために、心温まる結末を与える訳ではない。いやそれでも十分に温かな情景は垣間見えるのだが…。
過去シーンの百姓はどちらも若めの夫婦にみえたが、その一方の妻が自分の人生では考えもしなかった「金」がチラついた瞬間から中毒のように感覚を蝕まれ、狂っていく様子を演じた客演女優の貢献大。

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