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音楽演劇「光かもしれない」

音楽演劇「光かもしれない」

エリア51

スタジオ空洞(東京都)

2026/05/20 (水) ~ 2026/05/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

オリジナル楽曲のバンド演奏と俳優の身体表現を同じ地平で立ち上げること。これが、エリア51が標榜する「音楽演劇」の形です。しかし、そこには、単なるジャンルの融合や横断だけではなく、観客が劇場という場や観劇という機会に対して抱える緊張や不安をできる限り解そうとする、演劇におけるアクセシビリティやケアへの観点が忍ばされていました。

ネタバレBOX

日本において「劇場」という場所はまだまだ多くの人にとって緊張を余儀なくされる場所であると感じます。もちろん、その緊張感も時としては濃密な劇体験の一部ではあるですが、体質や体調など様々な事情を持つ観客にとってはその数時間が喜びどころか苦痛に感じられてしまう。
そんな中で、本公演では飲食しながらの観劇やスマホでの撮影、ゆるやかな退場時間の設定や途中入退場がしやすくなるようなアナウンスと、状況や文脈が異なる他者とともに芸術や文化の喜びを体験する上での様々な工夫が凝らされていました。まるでライブやフェスに来た時のような体感で劇場での時間を過ごせること。そうした演劇公演が決して多くない中で、エリア51はこのフォーマットを追求し続けており、実際に多くの観客の方が前のめりかつ自由に楽しんでいる様子が伺えました。

物語としては、人類が「旧人類」と呼ばれるようになった未来のお話で、旧人類である主人公がかつて深い友情を築いたアンドロイドを探し、ロボットと旅に出る、というスペクタクルな宇宙冒険譚でした。そこにギター、マリンバ、ベースの生演奏とボーカルの歌声が並走していて、時には演劇が詩的なMVのように音楽の魅力を引き出し、またある時は音楽が劇伴として物語に流れる変化や予感を引き立てたりと、効果的な相互作用を生んでいました。会場はいわば、音楽と演劇を相乗りさせた一つの宇宙船。そんな風にも思えてくるパフォーマンスでした。

星を越えて紡がれる友愛を描いたこの音楽演劇は、圧倒的に異なる出自や背景や性質を持つ私たちが他者と生きていくことの困難と、それを越えた先にある喜びを伝えるものでもあったのかもしれません。同時に、アンドロイドやロボットといったAIとの共存という喫緊の社会現象を盛り込んだ劇作でもありました。そうしたメッセージを受け取るにあたって、音楽と演劇という異なる文化が同配分で混ざり合うフォーマットは理に叶うものであるとも感じました。
シャープさんフラットさん

シャープさんフラットさん

キューブ

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2026/06/19 (金) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初演は2008年。ナイロン100℃の15周年公演として、ブラック・ホワイトの2チームに分け、更に台本も書き分けて上演されました。今回はふたつの上演台本をミックスした「ハイブリッド版」とも言えます。

元々すごく好きな一作ですが、18年ぶりに観て、忘れていたシーンが多かったことも事実(すみません)。また、初演の出演者の「影」が見えず、今回のキャスト陣による良さや、初演とは異なる空気感が感じられたことも印象に残りました。

ネタバレBOX

サナトリウムに集う人々による群像劇。なのですが。時代がバブル後期で、高額な保養所としての機能も兼ねている、という設定。つまり、比較的元気な人と、病気治療中の人が混在する場所。登場人物たちの多くはそれぞれの闇や背景を抱えており、劇中でさらりと語られる真実ひとつひとつに重みがある。コメディ作としての「笑い」と、人間ドラマとしての「切実さ」。その両面が際立つ作品に感じられました。何より、主人公の劇作家の苦悩が、その立場であれば直面するであろうリアルな感情として描かれており、その印象が強く残りました。

タイトルには「世の中の動きや価値観と折り合いのつかない人」という意味が込められています。社会の分断が進み、その間をSNSが埋めようとして逆に溝が深まる……という今日において、よりリアルに受け止められるテーマだと思います。
かいころく

かいころく

安住の地

WAKABACHO WHARF 若葉町ウォーフ(神奈川県)

2026/05/14 (木) ~ 2026/05/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

『かいころく』は養蚕農家編、蚕種編、工女編の3部作から成る安住の地のツアー公演で、私が観劇したのは、横浜の若葉町ウォーフで上演された養蚕農家変・工女編でした。

ネタバレBOX

上演に入る前に、作・演出を手がけた私道かぴさんから、本公演の背景や、なぜ「蚕」に関するお話を書こうかと思ったのか、そこにどんな出会いや気づきがあったのかが語られました。簡潔でありながら、公演の意図や思いが伝わるとても丁寧な解説で、演劇作品に入る導入としても、舞台と客席を均すコミュニケーションとしても素晴らしい前説でした。その前説によると、本作の制作は「元養蚕農家で上演する作品を」という依頼をもとに始まり、取材やフィールドワークなどを重ねて作られたそうです。そうした人々の歴史や暮らしといった背景や、そこで発生する生の声からあらゆる言葉やシーンが紡がれたことが実感できる、生々しく繊細な作品でした。

『養蚕農家編』は養蚕農家に生まれた青年の人生やその葛藤を描いた一人芝居で、男手を中心に行われる厳しい肉体労働や母への思い、やがて戦争に召集される様子までもが描かれていました。対して『工女編』は、同じく一人芝居でありながら、養蚕農家に生まれ育った女性が製糸工場に出稼ぎにいくところから結婚や出産などを含み、数世代にわたって女性の姿を描いた作品でした。日本における男性性と女性性をめぐる様々な歴史や問題を考えるにあたって、この二つがセットで上演されている回があることにもとても意味があると感じました。

同じ女性としては、13歳という年齢で家を支えるために自立せねばならなかった少女の姿に、母性との距離感やえも言われぬ寂しさ、戦争がもたらした様々な苦しみや、現代にも通じるヤングケアラーといった問題なども切々と想起させられ、観劇後にもいろんなことを考えました。カンパニーの代表作としてはもちろん、戦争やそれによって人々の暮らしにどんな変化がもたらされたのか、また、性や性差をめぐる問題を考える上でも、今後も何度もさまざまな場所で再演される意味のある公演であると感じました。
関連して、チラシ束には劇場付近で開催されているシルクにまつわる美術展の案内が入っており、そのことに言及がされていたことも素晴らしく、「養蚕」という営みが最終的にどういった形になるのか、人の手に届くのかも含めて、深く考え抜かれたクリエーションであることが伝わる一幕でした。
幕末異聞 武士の影

幕末異聞 武士の影

演劇企画戯舎

「劇」小劇場(東京都)

2026/05/13 (水) ~ 2026/05/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2026/05/16 (土) 13:30

とある藩で起きた事件から十年の時を経て黒幕が再び動き始めたことに対して当時下手人とされた義賊も対応し……なピカレスク時代劇、2013年、2017年に次ぐ3度目の上演。
初演時に若干の抵抗を覚えた落としどころも再演ではさほどではなく、三演目の今回はむしろ説得力のようなものを感じたのは改稿によるものかこちら側の変化によるものか?
また、処刑された罪人の亡骸を「腑分け」に使うことに少し前に観た映画「幕末ヒポクラテスたち」との共通点を見出したりラストカットにスターウォーズ(第一作)のそれを想起したり(玄八=オビワン説(笑))。
それにしても初演にあの人、再演のその人がご出演だったとはすっかり記憶から抜け落ちていた……いやぁ、申し訳ない!(爆)

隕石

隕石

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2026/06/11 (木) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2026/06/11 (木)

これから経験するはずだった事柄を相続して代わりに経験するという話
独立した複数の話が次の話で繋がっていくという形になっているが、繋がりが微妙だったりもした

ネタバレBOX

過去の自分が未来の自分に相続できるというのもよく分からない。
そこの女将の話だけ全体の中から浮きすぎていて結局何が伝えたいことだったのか分からなかった。
ファーム・ホール

ファーム・ホール

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2026/06/15 (月) ~ 2026/06/30 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

昔、某映画監督がどんなシチュエーションであっても重要なのは登場するキャラクターの色気なんだと語っていた。色気を頼りに観客の意識は作品内をあちらこちら浮游する。それは性愛とかの意味ではなく、人を惹き付け興味を持たせる感覚のこと。汚らしい土木作業員の日常風景でもちょっとした工夫を入れることで色気は出る。殺し屋の残忍な殺し合いすら色気の有る無しで作品のイメージはガラリと変わる。色気のある関係性。

俳優座のレヴェルは群を抜いている。東映実録ヤクザ映画全盛期を思わす聳え立つ俳優山脈。その中でも選りすぐりの6人が色気たっぷりの演技合戦。俳優座スタジオで前売6800円は高いなと思ったが納得させられた。

1938年、オットー・ハーンの発見した核分裂反応。当時、ドイツの科学レヴェルは世界一だった。かつてアインシュタインの助手であった物理学者レオ・シラードはユダヤ系の為、1933年にナチスドイツから亡命。1939年、核分裂が連続的に起こる核連鎖反応の存在に気付き恐怖する。これを利用した爆弾を作ったら世界を征服出来る。アインシュタインを通じてフランクリン・ルーズベルト大統領に手紙を送る。(アインシュタイン=シラードの手紙)。一刻も早くドイツより先に原子爆弾を開発しなければならぬと。
結局の所、アメリカの天才、J・ロバート・オッペンハイマーが原爆を完成させる訳だが、連合国はドイツも完成させていると睨んでいた。天才ヴェルナー・ハイゼンベルクが完成出来ない訳がないと。23歳で博士号、「行列力学」「不確定性原理」を提唱し31歳で量子力学の創始者としてノーベル賞を受賞。彼がドイツの原爆開発の陣頭指揮を取っていたのだ。

1945年5月7日、ドイツが無条件降伏。
1945年5月1日から6月30日に渡りドイツのノーベル賞級物理学者10人の身柄が拘束される。(=オペレーション・イプシロン)。彼等は1945年7月3日から1946年1月3日までイギリスのゴッドマンチェスターにある田舎の屋敷、ファーム・フォールに抑留される。屋敷中に盗聴器が仕掛けられており、彼等の生活の中の自然な会話から原爆開発の実情を探ろうとした。(今作では6人になっている)。

ウディ・アレン、ジム・ジャームッシュ、アキ・カウリスマキ系のコメディ。淡々と観客を突き離した距離感から笑わせていく。何となく一人ひとりのキャラや人間関係が見えてくると特に何もしていなくてもその場を面白く味わえるように。ツッコミを入れずぼんやりと観客を空間に放置させる感覚はジム・ジャームッシュっぽいか。

メチャクチャ面白い。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

マックス・フォン・ラウエ(加藤佳男氏)
1912年X線の回折現象を発見し、X線の正体が波長の短い電磁波であることを明らかにした。1914年ノーベル物理学賞。(そもそも原子核物理学はX線の発見から始まったもの)。国家社会主義(ナチズム)に反対しナチスに睨まれた。

オットー・ハーン(河内浩氏)
1938年核分裂反応を発見し、1944年にノーベル化学賞。その時、莫大な熱エネルギーが生まれることが判り、原子爆弾の構想が誕生した。核分裂可能な元素はウラン、プルトニウム、トリウム。反ナチスの立場だったが、長年の共同研究者であり亡命したユダヤ人女性物理学者リーゼ・マイトナーの功績を横取りしたことで非難を受ける。

ヴェルナー・ハイゼンベルク(志村史人氏)
1925年、彼の行列力学によって誕生した量子力学。不確定性原理=存在と運動は同時に観測出来ない。ミクロの世界では粒子の位置や運動量は決まっておらず、観測された時点で初めて決まるという法則の発見。アインシュタインは「神はサイコロを振らない」と確率論的な解釈を否定、確固たる物理法則がある筈だと主張した。
※ハイゼンベルクの「コペンハーゲン解釈」は1920年代に提唱された確率論。観測するまで結果は存在しない。ヒュー・エヴェレットの「多世界解釈」は1957年に提唱された。全ての結果が並行宇宙に分岐して存在し、我々の世界の観測結果はその一つに過ぎないという壮大な話。

カール・フリードリッヒ・フォン・ヴァイツゼッカー(八柳豪氏)
名家であるヴァイツゼッカー一族の出、外交官の息子。弟は戦後、西ドイツの大統領となる。ハイゼンベルクの同僚であり彼を崇拝する親友。

エーリッヒ・バッゲ(野々山貴之氏)
ハイゼンベルクの教え子だがナチ党員。労働者階級出身の負い目。

クルト・ディープナー(斉藤淳氏)
ナチス・ドイツの原爆開発チーム、「ウラン・クラブ」を率いた陸軍兵器局主任のナチ党員。

ある意味、主人公の嫌われ者ディープナー。彼への皆の対応が前半のドラマ。
退屈しのぎに発注した壊れたピアノの修繕。加藤佳男氏と河内浩氏の見せ場。高畑勲っぽい。
野々山貴之氏のキャラ設定に味がある。アイディア勝利。

俳優座スタジオの床が盆となって時計回りに回転する演出。多分今回その機能を初めて知った。まさか動くとは思わなかったので相当の異化効果。現実感がぐにゃりと歪む。
※丁度この前、『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』を観ていたらクライマックスで席がドンと激しく揺れた。凄い演出だなと思ったら普通に地震だった。
阿呆船

阿呆船

演劇実験室◎万有引力

座・高円寺1(東京都)

2026/06/19 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

万有引力さん5回目くらいです
段々慣れて来てしまっている自分が怖いけれど
今回も凄い熱量ある舞台だと思いました
個人的に今回に限らず好きなところが
開場からすでにキャストのパフォーマンスが始まっていて
開演までの間抜けな時間が無いところ

しかし今回何か物足りない感じ???
前回辺りから気が付いてしまいましたがやっぱりそうかも…
最近万有引力さんを知った私ですが
こちらの劇団を感じるお2人のうちお1人今回出演されてませんでした。。。
三俣さんと森さん次回は一緒に拝見出来ると嬉しいかも

『約束ーpromise of reunionー』

『約束ーpromise of reunionー』

Actor’s University

クレオ大阪東(大阪府)

2026/06/20 (土) ~ 2026/06/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても、良かったです。内容も演技も心に響くお話でした。優しい気持ちになれました。相手を思いやる、信じること、尊いですね。難しいですが…
親の心子知らずなのも、親として共感しながら拝見しちゃいました。あっという間の2時間、楽しい時ありがとうございました。

ルーム1307

ルーム1307

劇団未来

未来ワークスタジオ(大阪府)

2026/06/19 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても面白かったです。2時間超えがあっという間でした。時間を遡るお話のセオリーを覆してのお話し、これは見るべき作品です。
役者の皆さんの演技も最高でした。昨年から関西に来ましたが、お気に入りの団体さんです。次も楽しみですね。

まほろば

まほろば

劇団往来

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2026/06/19 (金) ~ 2026/06/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

田舎の本家に女性ばかりの家族が集まった。
生きる上で向き合わなければいけない問題に
直面した女性たちの現実と葛藤を描いた作品。

母親の古い考えと子供達の自由な考え方の
ギャップの溝を埋めていく会話劇。
最後まで楽しめました!

感情のこもった演技がリアリティに見えてくる。
出演者の中に初舞台の人も居たけど
違和感もなく演技は馴染んでいた。
Wキャストなので配役が変わればまた違った見え方がするんだろうなぁと思えるお芝居。

ハムレット×AI

ハムレット×AI

半畳の宇宙

日本福音ルーテル蒲田教会 礼拝堂(東京都)

2026/06/11 (木) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

昨年は一人芝居三昧をやった半畳の宇宙の俳優陣を前面に、些か翻案を施した「ハムレット」を、一度一人芝居を観た会場でもあったルーテル蒲田教会で拝見。終演後挨拶にて「山の手事情社発・半畳の宇宙」と名乗っていたのが印象に残る。芝居のテイストは身体表現を駆使した山の手事情社流域のもので、よく練られていた。少々近過ぎな席(桟敷)で観たせいか動きの幅が目まぐるしく、今少し俯瞰で舞台を眺めたかった。様々な創意が感じられるも「半畳の宇宙とはこれ也」とまでの像が浮かぶには至らず。だが体一つで舞台に立ち、異形を醸す集団、今後が楽しみ。

長生炭鉱――生きたかった

長生炭鉱――生きたかった

温泉ドラゴン

座・高円寺1(東京都)

2026/06/05 (金) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

この題材をやると聞けば観るっきゃないか、と自分に言い訳しつつ劇場へ。
シライケイタ氏は事故後の坑内を舞台上に再現。そこからドラマが始まる。
現代の場面は歴史事実としての長生炭鉱(事故も含め)を発掘し、遺骨問題の解決を模索する人たち。両者が最後に出会う。
事故のことを詳しく知らない自分は、事故後に坑内で会話をしたり救出を待つことができたのかどうか、についてあまり疑問を持たなかった(海底炭鉱での事故ならアッという間に海水で穴は埋まったのでないか)。従って彼らが「死者である」予感も特に抱かず、日本人と朝鮮人のやり取りを興味深く見た。
しかし史実上彼らが助からない運命にあることは知れており、物語の展開的にワクドキは無い。韓国人俳優四名(炭鉱夫三名、潜水夫一名)のネイティブ韓国語と日本語が行き交い、中央上部に映される字幕は見やすかった。この字幕を追いながら物語を追うテンポは観劇としてちょうど良かったという事かな。
ドキュメントの要素を帯びる演劇は、とりわけそれが現在進行形のイシューである場合、観る者をある使命へと動かす圧を持ち得るが、それは事実のディテールの持つ説得力も手伝う。本作は坑内でのドラマの比重がどちらかといえば大きく、現代の発掘取り組みの部分は不足感を覚えるほどではなかったが、「事実」のインパクトという面ではもう少し描けたのでは・・と思わなくもない(欲張りな注文の類とは思うが)。
日韓関係そして国内の外国人差別、戦争そして植民地という「時代のせい」にできそうだがそれだけで終らせられないテーマが、交錯して熱を発するスポットでもある。だからこそ現代における日韓協力の側面を「事実」として描いたのが、本作の攻め処であったかも知れないが。

カッコーの巣の上で

カッコーの巣の上で

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2026/06/07 (日) ~ 2026/06/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

早々に予約した公演。で、予定の日に行ったら、初日だった。そうだっけ?
雨っぽい空の下渋谷から歩いて会場へ着くと、8階だ、そうだった。若干余裕を持って来て良かった、と安堵しつつも雨の湿気にやられて腹が痛い。持つかな..。
PARCO劇場でやる芝居は高いので滅多に来られないが、今日は上流階級の御仁達の間に入ってあちきもいっぱしの「一級品」を味わうこともあるんだわさ、と靴音のならない上流階級が通うサロンのフカフカの床を歩く。劇場としては観客とステージの距離感が収容人数にしては良い。なぜ見やすいと感じるのかは不明だが。
この作品と松尾スズキ演出というので馳せ参じたが、初日ハプニングが。動いちゃいかん物が動いてしまい、先々の展開の一つが知れてしまい・・結構痛かった。が、「知らず」に見たとしてどうだったかな?というのも一抹過ったが。休憩時に自分の前の席の女性のところへ、見た感じ演出と思しい帽子の人がやってきて一言二言。ざわめきで声は聞こえんが女性は相手の背中をポンポンと叩く。「まあ初日だし仕方ないよ元気出しな」的な光景。このハプニングによって、終盤一つ盛り上がりを作る場面が「予想された瞬間がやってきた」という心の声に迎えられ、展開するのだが、ギミック的になかなかの仕掛けであるものの、その瞬間を「盛り上げる所」としなくて良い気はした。怪力が、よくぞやった!と胸がすく出来事でなくてはならんが、本当なら蹴ったり左右に揺らしたり「おりゃ、おりゃ、どりゃ~~~!!」と目いっぱいの力で「それ」を果たすのに、借り物の装置を使ってでは、らしい演技にも限界がある、という所は別の何かでクリアしたかった(といっても方法は今思い浮かばないが)。
しかし観客の想像力というものがある。自分もそのように「あるべき筋書き」をなぞり、芝居に付いて行く。
時代的な制約、という事をやはり考えた。
自分は映画版しか見ておらず、舞台版で恐らくはフィーチャーされたインディアン出身の男の存在感が舞台を神秘的な哲学的な空間にした、という事だろうと推察。だが強調点やテイストの違いはあるにせよ、自由を求める源である「管理・抑圧」の存在が意識された時代と、管理をむしろ望んでるとしか思えない風土の現代日本では、主人公のハチャメチャ振りの根っこに横たわる抵抗精神や、自由をどこまでも希求してやまない精神を理解する人は実はえらく少ないのではないか・・と想像する。
コールガールを呼び込んでの深夜のパーティだのに、天晴れ!と溜飲を下げる空気が流れない。かと言って、観客の許容力以上に人物らが走ってしまうと観客を置いてってしまう。
主人公の造形は「できる男」としては見事であったが、ある部分で不器用さ、あるいは脇の甘さ(正直な分)が良きところで見えるといった事があると、感情移入の度合いも違ったかも知れない。(これは脚本の問題になるだろうか。)
主人公の魂に呼応するのが先のインディアン出身の大男であり、彼を悼む収容者たちが部族の踊りを踊る展開に、伝えたい趣旨を汲み取り、終幕手を握りしめた。残酷な現実が社会にはある・・映画を観たとき突き付けられた事実は、そこから持つべき希望を、彼が我々に託したと思えたことで胸の内で消化されたのであった。ただ芝居では彼を現実世界が許容できなかった犠牲者として、明瞭に位置づけるまでには至らなかった、かも知れない。それをかの「ミス」のせいと私は思っていたが、そうではない側面もあったかも知れない。
役者の弾け振りが、あるいは松尾演出の真骨頂であろうか。切れ味鋭い演技を繰り出す役者たち。江口のりこ演じる看護婦長が管理主義の権化であり、憎まれ役であったが、彼女の背後に彼女をそうさせている大きな影を想像せねばならない。
ロボトミー手術とは実際のところ個人の趣味志向によるおぞましい支配の具現形で、趣味志向を普遍的正義と言い換える吐き気のする欺瞞、虚偽。
代用監獄、人質司法も、メンツのための拘留を正義と抗弁する「欺瞞」かも知れぬ。

塔の上の

塔の上の

くによし組

スタジオ「HIKARI」(神奈川県)

2026/06/18 (木) ~ 2026/06/21 (日)公演終了

実演鑑賞

公演チラシなどから「寓話的な作品?」と思いつつ観劇しました。とある田舎町にある正体不明の高い塔と、その塔に住む謎の人物、そして、田舎町に住む人々にまつわる、少し可笑しくて、少し不思議な物語。中盤から、観客に「…おや?」と思わせるトリッキーな台詞やシーンが含まれ、終盤にそれらを伏線回収する展開。こういう過剰すぎない工夫や見せ方から、國吉さんの演劇創作経験の豊富さを感じます。大小の劇場、劇団公演、外部公演への参加など、様々な作品で作・演出を手掛ける國吉さんらしい一作でした。

ネタバレBOX

劇中の台詞や俳優たちの演技体は、寓話や絵本のような可愛らしさがあります。時代設定は(おそらく)現代のため、そこへUber EATSなどが交差する、リアルとファンシーが混ざったくによし組独特の世界観と言えるかもしれません。高い塔に住む人物は長髪の白髪を下界?へ垂らしており、その白髪の近くで人々は暮らしています。父親が亡くなり、久しぶりに実家へ戻ってきた美大生の青年は、卒業制作と称して、その塔の絵を描き続け、青年を慕う人々が彼のもとへやってきます。日常的であり、かつちょっと不思議な会話を交わしつつ、塔に住む人物の謎、街の人々の近況、青年の恋物語など、劇全体が少しずつ描かれていきます。

終盤に、劇中で感じた違和感が伏線回収され、人間の悲喜や人生の残酷さを感じさせる物語として終演。全編通してキャッチーな雰囲気をまとっており、観客の観やすさを伴う上演だと思います。その上で、「人生のうまくいかなさ」のような、切実な物語でもある。このあたりに、國吉さんの筆の力・魅力を感じる公演でした。
A Perfect Family

A Perfect Family

果報プロデュース

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2026/05/20 (水) ~ 2026/05/24 (日)公演終了

実演鑑賞

キャラメルボックスの俳優・山本沙羅が立ち上げた個人企画。 脚本 米内山陽子+演出 須貝英も楽しみにワタシは初見です。5月24日まで北とぴあ ペガサスホール。100分。

https://kawahira.cocolog-nifty.com/fringe/2026/06/post-9d69be.html

現代韓国演劇上演「四番目の人」

現代韓国演劇上演「四番目の人」

名取事務所

「劇」小劇場(東京都)

2026/06/19 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

お昼の回、観劇しました。
韓国のお話がすんなりと入ってくるかな、と心配でしたが、開始から引き込まれ、
アッという間に時が過ぎました。
静かな流れの中に各々の感情というか、個性がきらりと光ってどの方も素晴らしかったです。
冤罪を覆せない理由に「面倒くさい」があることが悲しかったです。

ゾロアスター 

ゾロアスター 

カプセル兵団

三鷹Ri劇場(旧 三鷹RIスタジオ)(東京都)

2026/06/18 (木) ~ 2026/06/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

如何にもな小劇場らしいハコで
演者さんらは逆Vの字型に置かれた椅子に
座って朗読時に立ったり動いたりしての
熱演 約2時間の作品 全席自由で飲食も自由
ドリンクチケットが500円

善神マズダさんが
ノリノリで客席に移動しての芝居は
とても受けたデス
アドリブでの一発芸大会も差し込まれ
自分はテッカマンが刺さりました♪

罠

日本テレビ

よみうり大手町ホール(東京都)

2026/06/06 (土) ~ 2026/06/26 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2026/06/22 (月) 14:00

120分。休憩なし。

舞台 つむぱぱ

舞台 つむぱぱ

劇団TEAM-ODAC

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2026/06/17 (水) ~ 2026/06/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白かったです。
登場人物が多いせいか、前半は少し混乱しましたが、背景を理解した後は、すごく良かったです。
自分自身との葛藤、家族の愛や人との繋がりなど、思う所が多かったです。
笑いあり涙ありの素敵な舞台でした。

優しい劇団の大恋愛 Volume11『もっと愛してくれよ節』

優しい劇団の大恋愛 Volume11『もっと愛してくれよ節』

優しい劇団

吉祥寺シアター(東京都)

2026/05/10 (日) ~ 2026/05/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

名古屋を拠点に活動する優しい劇団による大恋愛シリーズ第11弾。普段は別の土地で活動する俳優が公演当日の朝に初めて顔を合わせ、稽古、そして本番と“1日限りの演劇”を上演する試みです。
今回は「優しい劇団の浅草演劇祭」から1年を経て「優しい劇団の武蔵野演劇」と題し、一人芝居に大恋愛2本という怒涛のラインナップを3日間吉祥寺シアターで上演。本作『もっと愛してくれよ節』はその最終日に上演されました。

ネタバレBOX

まず、名古屋を拠点に据えつつも地域を横断してこの壮大な企画を立ち上げ、連日大盛況でやり遂げられた気概とエネルギーに拍手を送りたい思いです。

前日に上演された『夕焼け色のダイダラボッチ』は同窓会を巡るお話で、過去を懐かしみながら今を生きる人々の姿が描かれていました。それに対して、『もっと愛してくれよ節』は初の時代劇。キャラクターの名前や役職、流れているムードこそ時代劇のそれなのですが、内容はむしろ未来的、未来への願い、平和への祈りが強く込められた作品であると感じました。
優しい劇団の持ち味である、ペアによる愛の言葉の応酬、愛が積もり、愛が重なり、それによって世界は変わるのではないかという願い、未来をよくしたいという祈り…。

チラシに描かれているように、本作は「花火」がモチーフとなっており、冒頭からキャスト陣が口々に「たまやー」と叫びます。それに対し、綺麗な星があるのに花火なんていらない!と言う者が現れ、いや、花火は消えてほしくない!という者が現れ、いつの世も人は自分の信じる愛や正義に向かって突き進むわけで…。そんな愛らしくも偏屈なキャラクターたちが、今この瞬間に舞い上がる花火の如く熱烈に生きる姿を、文字通り見上げていました。

物語のラスト、時を越え、国を越え、星まで越えて、軌跡が一つの愛へと帰結していく。その音を、始まり同様に俳優らの生声に託していたこと。それらに私は平和への強い祈り、反戦への思いを感じ取りました。1日で出会い、別れる俳優への手紙でもある台本、その手紙に全力で応答する俳優たち。そして、それらによって紡がれた風景の集積が、やがて舞台と客席を越境して、人々を同じ場所へ、同じ歌へ、同じ空の下へと誘っていく。そんな時間や空間が1日で叶えられるということ。そのこともまた、演劇という営みにおける一つの希望であると私は思います。

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