湿ったインテリア
ウンゲツィーファ
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2025/05/19 (月) ~ 2025/05/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「新しい家庭を築くひとが直面する不条理」
劇場入口へと至る階段脇には幼児向けと思しきちいさな靴と可愛げな装飾が施されている。受付を済ませ扉の向こうに目にしたのはダイニングテーブルにソファとどこにでも目にするようなリビングだ。タイトルの持つ不穏さに似つかわしくない数々に首を傾げながら開幕すると、けだし傷口をえぐるようなブラック・ホーム・コメディがはじまった。
ネタバレBOX
不動産屋のタク(藤家矢麻刀)の案内で新居の内見に訪れたジュウタ(黒澤多生)とチア(豊島晴香)の間には、そう遠くない日に新しい命が産まれる。築年数に騒音対策、収納に立地条件にと新生活を夢想しながらほほえましい様子の二人だったが、じつはタクがチアと学生時代に交際していたことをジュウタが指摘すると急に妙な空気が流れる。
半年後に生まれた娘のソラをあやしているチアのもとへ「ただいま、パパですよ」と帰ってきたのはなんとタクであった。育児ノイローゼ気味のチアは、おぼつかない手つきでソラをあやそうとしたり、まもなくやってくるという母親に預けて外出を提案したりするタクの軽薄さを鋭く咎めるのだった。そこへやってきたタクの母タナコ(根本江理)は「はじめまして」とチアに挨拶をしたものだからいよいよ物語の行方がわからなくなる頃に、じつはソラが生まれる前にジュウタが急死したことが明かされる。チアの立場を慮ったタクは二人で育てることを提案したのだが、この事実をタナコには告げていないためタナコはソラがタクの子どもであると誤解してしまっているようだ。
このあとジュウタの母のカキエ(松田弘子)がやってきて事態はさらに混乱を極める。ソラを離さずこっそり持ち出したカキエはジュウタの喪失から立ち直れていないようで、あたかもじつの息子であるかのようにソラをあやし続けると、なんとソラが死んだはずジュウタになってしまうのであった。行き着く先の見えない物語のなかで、男女の三角関係とそれぞれが負った家族の物語も詳らかになる。親子とはなにか、子どもを持つとはどのようなことなのかという答えのない問いが我々観客に向けて投げつけられる。
平易な台詞とどこにでもありそうな設定で不条理を描き、近年話題にあがることの多い反出生主義や親ガチャについて観客を問う本作は、親しみやすいながらも魅惑的な仕掛けが随所に施されている。観客の認識のズレを利用して物語に没入させつつ、それぞれの登場人物を深く掘り下げる丁寧な作劇にまず感心した。
円筒形のブルートゥーススピーカーを赤ん坊に見立て、そこにソラやジュウタの声を重ねる演出もよく考えられたものである。一杯飾りながら上下に置かれた小道具を用いて部屋に屋外に、現在から過去にとスピーディな転換を実現することで、舞台が実に広々と感じられた。全体的にしっとりと、夜を基調とした照明変化も多大な貢献をしていた。
作者の要求に応えるかのように俳優たちも充実した芝居を見せ、よく調和も取れていた。過保護気味に育てられ少年時代にいじめに遭っていたジュウタは、黒澤多生が演じたからこそ「子どもを持つことは親のエゴではないか」という問いかけに説得力が感じられたように思う。継母に育てられたためじつの子どもを大切に育てたいと願うチア役の豊島晴香と、やや軽薄だがチアを思うタク役の藤家矢麻刀はほどよい釣り合いといったところである。それに根本江理と松田弘子の演技合戦が、それぞれの母親としての立場を明確にしていた。
kaguya
まぼろしのくに
ザ・ポケット(東京都)
2025/04/03 (木) ~ 2025/04/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
「激しい身体が描く少年の思慕」
『竹取物語』を自由奔放に翻案しながら家族の愛を描く意欲作である。
ネタバレBOX
日本最古の歴史をもつ家具屋の嫡男ノゾム(二瓶大河)は七夕の夜に輝く星に願いを込め望遠鏡を覗く。ノゾムの願いは月に還った遠い先祖のかぐや姫が実在するのか確かめ、月からの迎えを待つことだった。そんなノゾムを祖父のミヤツコ(渡久地雅斗)は古びた家具とおびただしい数の人形に溢れた部屋に住まわせ、妙な夢は持たずこの地に留まれと諭すのだった。ミヤツコをはじめ一家はかぐや姫の末裔と盲信しており、近隣の人々から「アダムスファミリー」と揶揄されている。ノゾムの両親であるらしいアダム・アダムス(玉木葉輔)とマダム・マダムス(町田達彦)とは疎遠のようである。
ノゾムの部屋の人形が次々に立ち現れては動作する様子を見ていて、どうやら現実と妄想の境目が描かれていることが少しずつわかってくる。そこで立ち現れたkaguya(高畑亜実)と名乗る少女との対話を経て、ノゾムは両親への愛の渇望を叫ぶ。kaguyaに導かれるようにして家族の知られざる過去を知り、自身が地上に縛りつけられていることを知ったノゾムは、宇宙へと旅立つのであった。
本作の魅力は大量のセリフの応酬と激しさが横溢する芝居である。俳優は皆早口で舞台上所狭しと動き回り、流れるようなあっという間の2時間であった。登場するキャラクターは皆個性的でクセが強くグイグイ押してくるが、もう少し引きの芝居があってもよかったのではないか。
セリフの言葉遊びや人形が人間に変化する身体表現など作り手側の表現したいことは十分に伝わってきたが、そこに専念した結果人物造形が乏しい印象を受けた。空に願いを込め母を慕うノゾムの激情であるとか、祖父ミヤツコの歪んだ願望など掘り下げれば深いドラマになった箇所が流されていってしまった点は残念である。加えて、身体表現の場面では不意に力が抜けて空間がさみしくなる点も惜しいと感じた。
牧神の星
劇団UZ
アトリエhaco(愛媛県)
2025/05/10 (土) ~ 2025/05/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「地域の現実を描き国家を問う」
ネタバレBOX
カーテンコールを終えた俳優たちは、松山大空襲後の荒廃した風景が投射された扉を開けた。その先に広がる松山の夜景を目の当たりにして、私は息を呑んだ。それはこの芝居がまさに現実かという切迫した内容だったからである。
幕開きで車椅子に乗った老人(上松知史)が敗戦直後の8月24日に己が携わった事件を回想する。老人の若い時分である久保田少佐と本多中尉(黒岩陽斗)は、埼玉県川口市の放送所を占拠し、敗戦に納得できない同士たちに思いの丈を伝え決起を促そうとしていたのだった。ここで急に演出助手のホンダ(黒岩陽斗・二役)の声が入って一旦芝居が止まり、演劇の稽古場へと場面が移り変わる。そこにいる俳優たちのやり取りから、先の老人の回想は実際に起きた事件であり、それをもとにした新作の稽古中であったことがここでわかる。機密書類を処分すべく職員たちが忙しく立ち働いている場面の稽古が始まると、そこへ先程の久保田と本多がやってくる。職員たちはかつて演劇活動をしていた女子挺身隊員であり、軍人の恫喝に戸惑いを隠せない。必死に抵抗していた頼子(林幸恵)や尚子(川崎樹杏)をそばに、戦争で恋人を失った幸子(汐見玲香)は久保田たちの願いを聞き入れようとするのだった。
こうして80年前の事件と稽古場の様子が描かれながら舞台は進んでいく。自らと同じ名前の役を与えられた俳優たちは80年前の事件に距離を抱きつつ演じているようだ。挺身隊員を演じているサチコ(汐見玲香・二役)は「今回の話って、未来の話っぽいて思ってる」と感じているらしい。ホンダは軍人役を演じるために座長のクボタ(上松知史・二役)にビンタをされたと言い、ヨリコ(林幸恵・二役)に訝しがられる。稽古の合間の他愛のないやり取りから浮かび上がるのは、俳優たちの演劇活動と日々の暮らしである。近隣の劇場が閉じ正職の傍ら演劇活動に勤しむ俳優たちは、周囲からの心無い言葉に傷ついている。恋人との間で波風が立っているナオコ(川崎樹杏・二役)は最近体調が思わしくないようで、わざと稽古場に居残って年長のヨリコに胸の内を明かす。新作を書きおろした作・演出家は稽古場には頻繁に現れず、やや独裁的で身勝手な振る舞いが目に付く人物らしい。賑やかながらも少しずつ荒んだ雰囲気の稽古場の俳優たちはじょじょに虚構の世界に絡め取られ、やがてサチコが予見したかのような光景が現実化してしまうのだった。
劇中劇の手法を用いて虚構と現実を重ねて描く作品は数あれど、本作はきな臭い昨今の世界情勢と敗戦時の光景を重ねつつ、地方劇団の置かれた境遇を描いた点が独創的である。作り手にとって演劇活動が切迫したものであるということを思い知らされたし、身を削るような思いで歴史と日々の生活を総括しようとした姿勢にまず胸を打たれた。80年前と現在の時間軸が行き来しながら、合間に俳優たちが羊の被り物をして牧神(山野と牧畜をつかさどる半人半獣の神)を演じる不穏な光景や、ヘイトスピーチやネットの誹謗中傷といった現代の諸問題を挟み込むという込み入った作劇はやや盛り込みすぎという感もあったが、目線がブレることなく結末まで進んでいく作劇が見事であった。ただ冒頭で介護士が老人になった久保田にビンタをしたり、終盤で爆撃の描写があるなどの点は事前のアナウンスがあったほうがよかったように思う。
作・演出の課した高いハードルに果敢に応えた俳優たちの熱演も見事である。80年前と現在の同じ名前の役ながら、自身とは距離のある人物をいかにして演じるかと苦悶する姿や、稽古場で時折見せる本音が俳優自身と重なって見えて生々しい感触がした。特に上松知史は80年前の理性的だが内面には熱情がトグロを巻いている久保田少佐と、その晩年の老いさらばえた具合、そしてやや間の抜けた座長のクボタや日本人の外国人観を揶揄するクルド人青年などを演じ分けており圧巻だった。
僕は肉が食べたくて裸(ラ)
南京豆NAMENAME
新宿シアタートップス(東京都)
2025/05/28 (水) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
南京豆NAMENAMEを初めて拝見した。カーテンコールの後、前の席の女性がしゃがみ込んでで泣いておられた。 前の席の女性の気持ちが判る気がした。 底辺をギスギスと生きる弱者とその愛を描くそれぞれの個性が良かった。
歳を言い訳にしたくないけど客席が沸くのだけど、台詞にあるそのキーワード達が引っ掛からない、展開/設定を咀嚼し切れないところがあった。ただ人物の描写は、14人の俳優が素晴らしく、無謀で場当たりに生きるアウトローの若者を上手く描けていた。
終盤の物事をはなから忘れていって覚えられないツボミさんの台詞「急に繋がった気がして」の一瞬前に、自分自身も物語が急に繋がって、ぐっと引き入れられていた。
面識があった俳優の方が尾﨑優人さん/後関貴大さんだったけど、 そのお二人とて、しっかり化けていて、何度かシーンが見た後に確信をもって認識できた。あの尾崎優人氏の豊満なボディー/豊かな声/髪をもってしてでさえだ。主宰/作/演の河村慎也さんはイメージが刷り込まれていて認識できた。他の11人の皆さんはほぼ初めまして(だったと思う)。でも、皆さん、かわいく、一途だし、思いが見えて、粗野で乱暴だし、ピストルを撃つし、でも、なによりも愛を描いていて、良かった。
アパートの一室の舞台美術も思い切り、本当にあそこには居たくないな、演者の皆さん、良く居るなと思わせる汚しっぷりで、リアルさが。爆音の音響も良かった。初めての南京豆NAMENAME、また一つ次を観てみようと思う劇団が増えた。
リア
劇団うつり座
上野ストアハウス(東京都)
2025/05/28 (水) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
琵琶の演奏が印象的でした!
僕は肉が食べたくて裸(ラ)
南京豆NAMENAME
新宿シアタートップス(東京都)
2025/05/28 (水) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
なかなか感想が難しいですが、登場人物のキャラクター設定が面白かったです!
Brother~another father~
“STRAYDOG”
アトリエファンファーレ高円寺(東京都)
2025/05/28 (水) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ストーリーは良かったです!
ただ、重くならないようになのか、笑いの挟み方が少し違和感に感じましたが面白かったです!
『イライラの依頼人とベンベンの弁護人』
コケズンバ
サンモールスタジオ(東京都)
2025/05/27 (火) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
いくつもの仕掛けが隠されてるストーリーに笑いも散りばめられていて楽しかったです!
あと、占いの人が凄く気になりました!!
高尾山へ
さよなら人生
スタジオ空洞(東京都)
2025/05/22 (木) ~ 2025/05/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
まさに、人生とは?を考えてしまいました。
あと、観る人の年代によって感じ方がだいぶ違うのかな?!とも思いましたが面白かったです!
チョコレイト
キルハトッテ
小劇場 楽園(東京都)
2025/05/21 (水) ~ 2025/05/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
漫画と現実の世界が交錯する構成は面白かったです!
ただ、冒頭の「差歯だから別れる」が最後まで引っかかっていました
驟雨(Syuuu )
劇団芝居屋
中野スタジオあくとれ(東京都)
2025/05/20 (火) ~ 2025/05/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
家族だからゆえ、ってところが絶妙でした
少し台詞の聞き取れないところがあったのが気になりましたが、良かったです!
フィッシュボウル
マチルダアパルトマン
水性(東京都)
2025/05/29 (木) ~ 2025/06/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
黒い金魚チーム初日を鑑賞。すんばらしかった。
水性で上演される作品に外れなし。
冨岡英香さん出演ということで黒を選んだけど、即座に赤い金魚チームを予約して翌日に鑑賞。
あえてどんな作品かは書かないでおくけど、マチアパを観たことがないという人、いやさ演劇を観たことがないという人にこそ観てほしい(18歳以下は無料!)。これを観たらこの劇団のことを、演劇のことを好きにならずにはいられないと思う。そしてあなたも町民になりましょう(何のこっちゃ)。タイトルも秀逸。
降臨SOUL ~是非ニ及バズ~
降臨SOUL製作委員会
六行会ホール(東京都)
2025/05/21 (水) ~ 2025/05/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
倉田瑠夏さん出演。
ご結婚されてからもペースを落とさず舞台出演を続けてくださって、ありがたいです。風憐火斬のときに書きましたが、アイドリング!!! OGで結婚後も舞台を続けられているのは倉田さんだけなのです。
「戦国降臨GIRL」の最初は2012年だったでしょうか。その世界観を引き継いだ人気シリーズ「降臨SOUL」も3作目。
このシリーズ第1作のプレスリリースによれば「舞台ヨルハの初演をプロデュースしたチームが再び集結」とのこと。そりゃあ凄いものが出来るわけです。
「ヨルハ」は舞台の後、ゲームも話題になり、アニメ化もされてます。メディアミックスというのですかね。降臨SOULもスマホ版のカードバトルゲームを展開するとのこと。ヨルハのように成功するといいですね。
ネタバレBOX
前回のエンディングで示唆されたとおり、徳川家康と真田幸村が新登場。
自分にとっての幸村のイメージは戦国BASARAの松村龍之介さん。不思議と、それに近いものを感じました。衣装が赤いことだけではなく。
家康はびっくりでした。想像もしなかった設定と戦い方、気に入りました。歌の力で太平の世を築くわけですね。そう言えば戦国BASARAの家康も武器を持たずに絆の力でパンチするという、なかなかのものでした。ありですね。
本多忠勝の高見彩己子さん。アクションが得意な方という印象で、最初に拝見したのは2017年「SOUL FLOWER」「雷ケ丘に雪が降る」で、その後「メイカ」「イリクラ」など、アンサンブルで何度か拝見。前回もそうですが、カッコいいですね。これまでの経験が花開いたと、勝手ながら思っております。
倉田さんの汐崎弥生と、根岸愛さんのアシカガ=響子の関係。次回作での展開にも期待します。
秘密
劇団普通
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2025/05/30 (金) ~ 2025/06/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
全編茨城弁で綴られる、とても静かな会話劇。登場人物は主に、両親、子どもたち、孫たち、親戚などで、家庭内での日常が描かれる。物語の起伏は少ないものの、リアリティの高い繊細なシーンが多く、見入っているうちに飽きることなく終演。劇団普通は、その名の通り「普通」を極めようとする団体だと思う。
ネタバレBOX
封建的で意固地な父親。父親を立てることで家庭を保ってきた母親。実家を離れた長男夫婦、同じく実家を離れたが両親の看病や支援のため帰省中の長女、等々。リアルな設定が活きる物語。淡々と綴られる日常がここまで観客を惹きつけるのは、この団体の特性だと思う。ごく個人的なことですが、僕自身の状況とかなりオーバーラップするため、他人事として観ることはできません。この感想が、僕個人のものなのか、多くの観客たちに共通するものか、その辺りに大変興味があります。
母さんが嫁ぐ日
Kトゥエンティワン
シアター711(東京都)
2025/05/21 (水) ~ 2025/05/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
継母の誕生日(かつ結婚記念日)のプレゼントの相談に毎年集う三兄弟、今年は結婚30周年ということで張り切るが、母が再婚するようだと耳にして、なハートウォーミングコメディ。
終盤、それまで蓄積されてきた継母に対する正負両感情を爆発させる長男と、それを経ての大団円を筆頭に物語・演出ともに「昭和のホームドラマ」に通ずるあたたかさがあり懐かしかった。
この眩い世界にネガは瞬く
劇団サイエンスフィクション眼鏡
πTOKYO(東京都)
2025/05/28 (水) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。えのもとぐりむ 作品(脚本・演出)の朗読劇。
観る者の胸に余韻を残して、その先を想像させる そんな味わい深い作品。
登場人物は、台詞から「ネガ」「ポジ」「部長」「母」「妹」そして「友人」といったところ。主人公 ネガ の高校1年の夏の終わり(9月)から社会人として歩み出す迄を、その時々のエピソードを時系列的に紡ぐ。
少しネタバレするが、ネガは 色々な理由で引き籠りだった。そんな彼を、クラスの問題児であるポジが部屋のドアを壊し強引にネガを外へ連れ出した。外の眩しい光、その新鮮な気持を得て 学校へ登校するようになる。そして 写真部で4人の仲間と活動を始める。公演は、物語の内容はもちろんだが、音響・音楽や照明といった舞台技術の効果付けが巧い。例えば 上演前、劇中で乾杯をする場面があるため飲み物(ビール ハイネケンやコーラ等 )を勧めていた。そのシーンは、ハイネケンを思わせるグリーンの照明色にするなど、拘りをみせる。
人を惹きつける写真は「もう二度と見(撮)れないと思う瞬間にシャッターを押す」こと。朗読は、その台詞を地で行くような瑞々しさ、そんな情景が浮んでくる。この公演を支えているのは、感情表現豊かに朗読する役者陣の力であろう。そしてラストシーンの趣に誘われ、新たな物語が始まるような予感…そんなことを思わせるところが好い。
(上演時間1時間35分 休憩なし) 【Aチーム】
ネタバレBOX
舞台上、横一列に6つの椅子。
物語は、高校1年の夏、2年の冬、3年の梅雨と季節を彩り、時々に車の騒音・猫の鳴き声、雷鳴、川に落ちる音など、短い音響で情景を効果的に表す。そして優しく癒すようなピアノの音色、また照明の拘りのある色彩と諧調がなんとも抒情的に感じられる。
登場人物の「ネガ」「ポジ」の考え方や行動は正反対、写真に準え 性格や生活環境を対比しているが、もう1つ隠された意味が…。「ポジ」は「ネガ」に好意を抱いており、「ネガ」は幼い頃から女子の心。カメラのシャッターボタン、「ポジ」が「ネガ」の指に重ね、撮影チャンスをうかがう。そして「ポジ」が「ネガ」にキスした瞬間を捉えた写真、それはコンクリートに伸びた2人のシルエットを撮ったもので、最優秀賞を受賞した。
「ネガ」の家は、両親と妹の中流家庭、なんの不自由もなく暮らしている。一方「ポジ」は、母子家庭で市営住宅 住まい、生活は荒れていた。部屋にはハイネケンの空き缶、そこで「ネガ」は初めてビールとタバコの味を知った。実は「ポジ」が「ネガ」を苛めていた生徒に暴行を加え、さらに コンビニからビールや猫の餌を万引きしていたことがバレて少年院へ。持っている幸せは当たり前で気づかない、そんな対比を巧みに描く。それは人の気持も同じで、「母」は引き篭りだった「ネガ」を外の世界へ連れ出してくれたのがポジなのに、今になって 彼の素行を気にして付き合いを止めさせようと…。
「ネガ」は「部長」と結婚し、ニューヨークで写真個展を行うまでに成長した。その才能を開花させてくれた「ポジ」は少年院を出て、会場の外から見てくれていた。「ネガ」は後を追って声をかけたが、振り向きもせず…。なんとも印象的で余韻の残るラストシーン。
次回公演も楽しみにしております。
INDEPENDENT:FUK25
INDEPENDENT
ぽんプラザホール(福岡県)
2025/05/31 (土) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
一人芝居は、誰かに何かを“伝える”という演劇の最も純粋なかたち。
だからこそ、演じ手も観る側も、その作品と、そして“自分自身”と向き合う時間になる。
今年のINDEPENDENT:Fukは、6つの異なる人生を通して、
「一人で立つとはどういうことか」
「言葉を発するとは何か」
「誰かに届く声とはどんなものか」
を、じっくりと、鋭く、そして優しく問いかけてきた。
演劇という形式の中で、社会と個人、過去と未来、自分と他者が交差する。
その交差点に立っていたのは、俳優たちだけではなく、観ていた私たち自身だったのだと思う。
ネタバレBOX
[a]ポタリポタポタ
出演:荒木宏志(劇団ヒロシ軍)/脚本・演出:上田龍成(星くずロンリネス)
■ ネタバレなしの感想
荒木宏志の爆発力ある演技は事前の期待通りだったが、それを「フットボールのサポーター」というキャラクターにどう落とし込むかが見どころだった。
単に熱狂的というだけでなく、その裏にある「孤独」や「葛藤」が徐々に浮かび上がる構造が見事だった。
■ ネタバレありの感想
主人公は、かつて九州のクラブチームのゴール裏に立ち続けた男。
転勤で北海道の田舎町へ左遷され、生活も情熱も冷めていく中、かつての応援仲間と再会。再びスタジアムへ足を運び、太鼓を叩き始める。
「自分のしてきたことが、誰かの人生を支えていた」ことに気づくという、自己発見と再生の物語。
■ スカウティング視点
体の向きを変えるだけで複数の人物を演じ分ける技術は圧巻。
応援スタイルをリアルに再現した演出も秀逸で、荒木の熱量が舞台空間を“スタジアム”に変えていた。
[b]二度反転したその先は
出演:伊藤圭司(産業医科大学演劇部)/脚本・演出:中村唯人
■ ネタバレなしの感想
産業医科大の演劇部という未知の存在が提示する「偽悪」というテーマに惹き込まれた。
ロジックと演劇が見事に溶け合っていて、“理性”と“感情”のはざまを描き出す。
■ ネタバレありの感想
かつて数学教師だった男が、空き巣事件の通報で取り調べを受ける。
現れた刑事は、かつての教え子。数学の証明に見立てて、男は自分の「偽悪=悪を装った善行」を語り出す。
観客に善悪の判断を委ねたまま終わる構成が鮮烈だった。
■ スカウティング視点
数学を演劇言語として取り込んだ発想が新鮮。
伊藤の語り口は未熟ながらも、誠実さと曖昧さが同居し、演劇の素材として面白い成分を持っていた。
[c]ひとりできた
出演:隠塚詩織/脚本・演出:山﨑瑞穂(万能グローブガラパゴスダイナモス)
■ ネタバレなしの感想
「女の子のリアルな日常を、これでもかと見せつけられる」…と思いきや、もっと複雑で切実な物語だった。
“ひとりで来た道”を静かにたどる語りが胸を打つ。
■ ネタバレありの感想
自転車に乗れた日、初めてのソロパート、恋、そして避妊や中絶のリスク……。
女の子として生きる現実を、時にユーモラスに、時に抉るように語っていく。
「好き」とか「愛してる」なんて簡単に言えなくなるほどの現実がそこにあった。
■ スカウティング視点
見立ての「自転車」や空間の使い方が巧み。
隠塚の“等身大の語り”が観客との距離をぐっと近づけ、性や孤独を真正面から受け止める勇気を与えてくれる。
[d]天才の一撃
出演:萩尾ひなこ/脚本・演出:到生(劇団ジグザグバイト)
■ ネタバレなしの感想
「戦う者の物語だろうな」と思っていたら、競走馬を題材にした静かな逆転劇。
予想を大きく超える作品だった。
■ ネタバレありの感想
三冠を逃した競走馬が、再起して“伝説の一撃”を放つまでの内面劇。
人間の言葉で語りながらも、あくまで馬の心情として成立している。
競馬への愛が、馬自身の言葉として語られるのが面白い。
■ スカウティング視点
萩尾の演技が“人間を超えて動物の感情”を表現する領域に達していた。
比喩でなく、ガチで“馬の言葉”として演劇が成立していたのはすごい。
演劇と競馬の間に橋をかけた一本。
[e]虚数がわからない
出演:八木秀磨(劇団ぐらみー)/脚本・演出:井上みこと(劇団いしころ)
■ ネタバレなしの感想
演者も演出家も初見だが、静かなテンションの中に燃える“知と欲”の物語。
知性の裏にあるエゴがじわじわと見えてくる構成が上手い。
■ ネタバレありの感想
虚数の補習に来た女子生徒の告白から始まる物語。
実はすべてが「嘘」で、彼女は“好き”という気持ちを隠しながら近づいてくる。
女子の賢さがずるさに変わる瞬間に、教える側の葛藤もにじむ。
■ スカウティング視点
「虚数=愛」と重ねた設定が秀逸。
クッションが降ってくる演出が、“答えのない問い”のメタファーになっていた。
八木の抑制された演技も、作品のバランスに貢献していた。
[f]ふれるものみな
出演:犬養憲子(芝居屋いぬかい)/脚本・演出:樋口ミユ(Plant M)
■ ネタバレなしの感想
犬養憲子が演じる“琉球もの”はやはり強い。
生きることの重さと軽さ、悲しみと笑いが同居する語りが沁みた。
■ ネタバレありの感想
米軍基地が今もある土地で、「不幸だ」と言われ続ける琉球。
それでも「手のひらに花を咲かせてやるよ」と、笑いながら生きる女の姿に圧倒された。
50歳での初産という奇跡のエピソードが加わり、“生の再生”を強く感じた。
■ スカウティング視点
琉球語と標準語の混合比率(8:2)でも意味が伝わるのは演者の表現力あってこそ。
座布団の使い方も巧みで、生活と物語が地続きにある空間を構成していた。
歪ノ器
夢腐論
spazio rita(愛知県)
2025/05/22 (木) ~ 2025/05/24 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
感想が遅れてすみません。
自分なりにどう解釈すればいいのか
しばらく考え続けておりました。
夢腐論さんのいつものあの得も言われぬ独特の世界観。
面妖で怪しげ、
そしてまた恐ろしくもあり哀しくもあり
まるで観客共々深い闇の中に引きずり込んでいくかのような演出に
我々は皆、戸惑い、たじろぎ、身をすくめてしまいます。
作者さんがこの芝居を作るにあたっての
登場人物たちの人物設定の生い立ち、
プロフィール欄を読むとこれまた壮絶で衝撃的。
全てが芝居に反映されているわけではないとの
断り書きがあるものの想像に難くありません、
少女たちの刹那的な生き方、もがき続ける姿に
観客はただ固唾を吞んで見守るだけです。
Blue moment
Theater Company 夜明け
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2025/05/29 (木) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白かったです。
主人公の人生を描いたストーリーで、懐かしさを感じる背景でした。
その人生にリアル感がありましたが「そんな結末なの!?」という何とも言い難いラストでした。
役者さん達の活き活きした演技が良かったです。
この眩い世界にネガは瞬く
劇団サイエンスフィクション眼鏡
πTOKYO(東京都)
2025/05/28 (水) ~ 2025/06/01 (日)公演終了