
六月大歌舞伎
松竹
歌舞伎座(東京都)
2019/06/01 (土) ~ 2019/06/25 (火)公演終了
満足度★★★★
夜の部の三谷歌舞伎。あまりなじみのない歴史に題材をとっていながら、現代のアドヴェンチュアに通じる面白さがある。満席の観客は、この遭難船の一行どうなる、光太夫の指導力いかに、と固唾を呑んでみている。一万円以上の席料を払っても、納得できる一夜芝居だ。休憩50分あって、3時間45分。堪能する。
劇評は渡辺保さんのネット劇評「歌舞伎劇評」に尽きているので、そこにないことを少し。
歌舞伎の様式的演技がうまく使われていて、時代物(でもないだろうが)より、世話物の面白さだ。下座が入るシーンはわざとらしくもあるが、芝居の流れの中で様式的になっていき、クライマックスになるところは、自然でつながりがいい。日本人の感情表現が長い間に洗練されるとこうなるのか、と乗せられてしまう。
歌舞伎劇場の機構がうまく生かされている。花道、御簾、波幕などの装置はもとより、大歌舞伎公演に必要な大部屋俳優などもうまく使う。二幕のぬいぐるみによる犬ぞりの疾走は大受けだが、役者はもとより、振付がうまい。
しらけやすいロシア人が出るところを三幕までは抑え、三幕の女王謁見に絞ったにのもうまい。だが、ここで八島智人が出てくると、本人は十分にうまいのだが、舞台に溶け込んでいない。それは無理というもので、ここは歌舞伎役者で行くべきだったと思う。
どうもなぁと思ったのは、松也の現代中学校の歴史教師を出す必要があったのか、二幕、黒子を白衣装にしたこと(雪のシーンという配慮だろうが)、くらいだろうか。
全体に新作歌舞伎にある嫌味例えば、(野田歌舞伎には感じる)がなく、これなら再演も余り難しくないのではないだろうか。(野田歌舞伎は野田なしには手が付けられないだろうが、こちらは、頭取さんの整理でも出来そうな気がする)。高麗屋は再演も視野に入れておいてほしい。花も実ももある王道のエンタテイメント歌舞伎の誕生を喜びたい。

玉響ノイズ〜空蝉に、風光る〜
えび
シアター風姿花伝(東京都)
2019/06/05 (水) ~ 2019/06/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/06/07 (金) 19:30
お父さんが亡くなったことへのショックから立ち直れないで、感情が無いような放心状態でいる少年が、少し変わった人たちに合うことで変わっていき、自分とは何者なのか、自分の個性とは何なのか、ということを考え、成長していったことに感動した。

2.8次元
ラッパ屋
紀伊國屋ホール(東京都)
2019/06/09 (日) ~ 2019/06/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
売れない新劇劇団がアニメ原作の「ミュージカル」に挑む物語。おすすめです。ピアノ、歌がうまくて、笑えて泣ける。演劇論にもなっていて、大衆演劇を道具たてにした井上ひさしに似ているところもある。1時間50分。

らぶゆ
KAKUTA
本多劇場(東京都)
2019/06/02 (日) ~ 2019/06/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/06/09 (日)
待ちに待ったKAKUTA。ここの劇団の世界観が好き。役者が好き。
何をした人でも何気なく生きている人でも何かが起きようと生きていく。中には絶望する人も。
そんな「ありふれた人」のドラマを見せてくれた。響いた。
KAKUTAはどんな演劇をやらせても真摯に取り組むし、大真面目にバカなこともしてくれる。毎度期待させてくれる劇団。
終演後に物販に当たり前のようにいてくれる親しみやすさ。本多劇場でしてくれるとは思わなかった。
前に応援していた某ユニットは終演後の挨拶が本多劇場で公演してからは関係者以外出来なくなった。
KAKUTA、これからも変わらずにいて欲しい!

畏怖(if)
スライディングドアプランニングス
中目黒キンケロ・シアター(東京都)
2019/06/07 (金) ~ 2019/06/09 (日)公演終了
満足度★★★★
予知夢を題材にしたサイコサスペンス風な公演。同じ場面をループさせる展開であるが、少しずつ何かが違う。その違いが螺旋階段のごとく同じところを回っているようで、少しずつ観点が異なる。その歪んだとも思えるような夢世界が現実に起こるとしたら...。
(上演時間1時間40分)

オレステイア
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/06/06 (木) ~ 2019/06/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/06/09 (日) 13:00
座席1階7列33番
1幕と2幕の間の休憩時、フロアに出てきた若い女性たち。
やはり、生田斗真人気かな。ギリシア悲劇を元ネタにした芝居にしては、年齢層が若く、女性が多い。
そんななか、「神の信託って何のこと?」という言葉が耳に入ってきた。
ああ、古代ギリシアの話で、神託の位置づけが判らないのだなと思う。
かくいう私も、そんなに理解などしていないし、アイスキュロスの原作を読んだこともない。ただ、作品がその翻案だということは理解し、役の関係は理解していないと、ちょっと導入からして苦しいことになる。
4時間20分の古代ギリシア劇、さて、眠らないか心配したものの、それは杞憂に終わった。3幕目のアテナイでの裁判を成立させるために、第1幕と第2幕は、オレステスの記憶を医師が呼び戻すという構成。2回の休憩も、幕間で話を整理するにはちょうどよく、オレステスの精神状態を読み解くのに助かった。

ONとOFFのセレナーデ
ことのはbox
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2019/06/05 (水) ~ 2019/06/09 (日)公演終了
満足度★★★★
トーリーとしては、葬儀というものの考え方の本音と建て前、また人の持つイメージの強さ、これらが印象に残りました。シタイのネーミングの意味合い、ラストの二人、ちょいとばかり唸りました。大変興味深い作品でした。出演者も熟年組がイイ味を出してました。叔父夫婦のコショコショ話、すんごく有りです!夫婦として成立してました!・・・なのですが、メイン三人は少し芝居がこなれていないような気がします。また、演出に細やかさが感じられない。劇場が使いづらいせいもあったかもしれませんが、セットから雑然とした印象しか受けなかった。なにか物足りない気がしたのも事実です。☆四つ付けますが、実際のところ3.8ぐらいだと思ってください。

ビューティフルワールド
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/06/07 (金) ~ 2019/06/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
モダンスイマーズはこれまで一度も「つまらなかった」と思ったことがなく、常に質の高いお芝居をみせてくれるので、今回もそれなりに期待しつつ観劇するも、軽々と期待値を超える面白さと痛々しさ。笑ったりゾッとしたりお芝居の醍醐味をしっかり味あわせて貰った。
家庭や職場でどうしようもなく生まれる「強者と弱者」。強者側の無神経な振る舞いと弱者側の辛さ切なさ。そして弱者の間でもまた「強者と弱者」が生まれる構造に「弱い者たちが夕暮れさらに弱いものをたたく/その音が響き渡ればブルースは加速してゆく」という歌が脳裏に流れる。
その力関係がふとした瞬間に崩れ、強者と弱者が反転する時の驚きと滑稽さに惹かれる。特に2部はその崩れ方が見事で、人間の愚かさと可笑しみに会場全体が笑いに包まれるシーンも。
「周りの人間がいつのまにか強者として振る舞うようになるのは結局自分のせいなのかも…」という疑念と絶望プラス憤怒に強く共感。私も何度それで悩んだことか。こういう感情をこんな風にお芝居で観たのは今回が初めてかもしれない。
劇団結成20周年にふさわしい傑作。このクオリティでチケット代が3千円というのも非常にありがたく、またその努力に頭が下がる。

横濱短篇ホテル
劇団青年座
カメリアホール(東京都)
2019/06/07 (金) ~ 2019/06/08 (土)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/06/07 (金) 18:30
人生いろいろあるよなあ、という、至極まっとうな言葉が心地よく思われる芝居。
青年座では何度も上演されていることから、かなりブラッシュアップされて、ここに至ったのだろう。
マキノノゾミの話のつなぎの巧妙さに、宮田慶子の安定感のある演出。
役者の演技の安定感が、7つの場の転換にメリハリを付けながらも、5年毎の物語(7話目は、それ以上の年月が経っているようだが)の空白を無理なく埋めている。
ちょっと悲しい出来事もあるのだけれど、それも人生。
主人公2人は、それなりに幸せを手に入れ、夢を叶える。「それなり」というのがよいよなあ。
三島由紀夫の自決、「デルス・ウザーラ」にポケベル、ちょっとした時代描写が洒落ている。
それぞれにきれいなオチがあるのだが、特に2話目の「人間観察」のオチは、バカバカしくも美しい。

過激にして愛嬌あり 宮武外骨伝
オフィスワンダーランド・(一社)演劇集団ワンダーランド
座・高円寺1(東京都)
2019/06/05 (水) ~ 2019/06/09 (日)公演終了
満足度★★★★
初見のワンダーランド・テイストをほぼ裏切らない二度目の観劇であった。明治以降の文化人を紹介する舞台がその仕事の全般と言って良い竹内一郎率いる「劇団」だが、演劇好きから見ると演劇という手段の勿体ない使い方をする集団である。言わば文章の立体化の域を出ない。もっとも文は演劇のドラマ性を導く重要な一方の車輪ではある。ただ竹内氏の文体が文学的でなく子供向け伝記シリーズのようで、よく言えば人間の内面にまで主観を踏み入れない叙述だからそうなるのかも知れない。それでも前作に比べ宮武外骨という傑物が題材だけにそれを味わう楽しみはある。前作への大いなる不満は人物紹介の素材である情報が薄く、風刺画の北澤楽天と岡本一平の漫画漫文の紹介があり、両者に対立や盛衰の図を当てはめる世間に対し、否前者から後者が生まれたのだ、それにホラ(ここはフィクション)ある公園で(確か楽天が生んだ漫画キャラの)片足の悪い少女を介して二人は出会っていた・・これで説明しきれる程度の内容で、似通った説明の繰り返しは少々きつかったがこれは題材の問題だったとは今作との比較で言える。が、その宮武外骨も、私の望むような演劇的高まりは見せない。あくまで文章で引っ張っていく、それを役者が立体化して判りやすく見せている。
前作のフィクション部分は漫画キャラの登場だったが、今作は宮武本人が現代のある風俗雑誌の編集室に突然現れる。というのもカメラマンが風俗店でたまたま撮った写真に政治家の裏取引の現場が写り込んでおり、これを公表するか否かで紛糾していたからで。現在の安倍政権による報道圧力を揶揄しているが設定自体には現実味はない。この設定にどういうこだわりを見せるかが、分れ目だろうか。
俳優は口跡よく噛まないし(噛みそうな人が約一名いたがノリで乗り切っていた)動きも明瞭、座高円寺の広さも気にならず、抜き板を組み合わせた抽象美術(松野潤)は風格があり、音楽も的確で分かりやすい。だがこの勿体なさは何だろう。

2.8次元
ラッパ屋
紀伊國屋ホール(東京都)
2019/06/09 (日) ~ 2019/06/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
紀伊國屋ホールで最前列なんて初めてでした!舞台には老舗劇団の稽古場のセット。古い木造の稽古場は紀伊國屋ホールの雰囲気にぴったりでした。みんな結構な年ですが、若い客演や演出、振り付けの人たちと2.5次元の舞台に挑戦します。笑って見ていましたが終盤の最終稽古風景にはグッと来ます。

山猫 / 辺獄の葡萄
牡丹茶房
新宿眼科画廊(東京都)
2019/06/08 (土) ~ 2019/06/18 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/06/10 (月) 16:00
価格3,000円
【山猫】(3ステージ目)
山中でひっそり(?)暮らしている村長(むらおさ)とその息子たち、野生児のような娘と拉致された(?)母性の塊のような慈しみ深い女性が織り成す物語。
設定や雰囲気から鵺的「死旗」や鬼の居ぬ間に「土蜘蛛-八つ足の檻-」を連想。それらがお好きな方は本作も気に入るのではないか?
また、最近の某政治家の炎上発言に通ずる部分もあってニヤリ。
いやしかし男尊女卑の権化のような男たちがほぼクズばかりで、その対比もあって「野生児(台詞はなくせいぜい唸り声までなので表情や動作だけで感情などを表現するのがスゴい)」の世話をする女性が神々しくさえ見えてしまうんだなぁ。
そうして、「どう着地させるんだろう?」と思いながら観ていたが、訪れた結末に「あ、それな♪」と大いに納得。
あと、描かれている山中の雰囲気を伝える音響や炎の揺らめきを筆頭とした照明効果も芝居に臨場感を持たせるのに大きく貢献していたと思う。

ビューティフルワールド
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/06/07 (金) ~ 2019/06/23 (日)公演終了
満足度★★★★
いやあ、良いように踊らされた。作者の上手さには感動したが、私には少々サービス過剰だったかも。
それにしても役者さんは実にリアル。ベタな言い方だけど普段からそういう人なのだと思ってしまう。

鈴木ごっこ
なにわニコルソンズ
TORII HALL(大阪府)
2019/06/04 (火) ~ 2019/06/10 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/06/10 (月)
練りに捻られたストーリー展開がお見事で気持ち良く騙されました☆木下半太さんの本はこないだの【こちらトゥルーロマンス株式会社】といい、コメディの中にも一筋縄では行かないスリルも含まれてるんで二重三重の魅力があるんですよね♪

止むに止まれず!
ソラリネ。
上野ストアハウス(東京都)
2019/06/05 (水) ~ 2019/06/10 (月)公演終了
満足度★★★★
こういったお芝居はひとつ間違えれば笑い重視の長いコントや、逆にクスリとも笑えない(そして、その割には心に響くものもない)作品になりがちだと思っているのですが、そうはならずに良いバランス。テンポも良かった(わりと大事だと思う)特に「三姉妹」のにじみ出る関係性などなかなかなもの。繊細なネタを扱っているのに笑いはそのものでは無くてそれによって生じた状況によって取っているところも「笑えるけど質は悪いなー」という事にならずに好感が持てた。

ビューティフルワールド
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/06/07 (金) ~ 2019/06/23 (日)公演終了

そんなの俺の朝じゃない!~再び~
ライオン・パーマ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/05/15 (水) ~ 2019/05/19 (日)公演終了
満足度★★★★
前作はDVDでしか観ていなかったけど、キャスト変更も今のライパさんの雰囲気にぴったり♡
持ち味のスピード感たっぷりで ラストまで楽しめました♪

夕夕方暮れる
立ツ鳥会議
AI・HALL(兵庫県)
2019/06/08 (土) ~ 2019/06/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
やるせなくて、報われなくて、ままならないけれどそれでも未来に希望を持たずにいられない人間関係を演劇ならではの演出で見事に表現されておられました。伏線が紐解かれていく様子も素晴らしい!!

過激にして愛嬌あり 宮武外骨伝
オフィスワンダーランド・(一社)演劇集団ワンダーランド
座・高円寺1(東京都)
2019/06/05 (水) ~ 2019/06/09 (日)公演終了
満足度★★★
現代の若者、気概を失ったかのようなマスコミ関係者に、宮武外骨の存在を知らしめようと工夫を凝らした舞台である。まずエピローグで、宮武外骨は明治の気骨のジャーナリストだった、という話を講談師の語り手で紹介する。本題に入ると、一転、舞台は現代のエログロ・ニュースサイトの編集部。思いがけなく政治家の汚職のネタを握ったが、それを発表すると政権やスポンサーから会社を潰される、と逡巡する編集長。そこに、外骨がタイムスリップ(!)で現れ、そんなことで恐れるな、俺の生涯を見ろ、と一代記を演じる。編集部には政治家の意を呈したヤクザが脅迫にあらわれるが、外骨は、彼らにも自分の話を聞かせるる。その結末は?
外骨は「迫害は勝利なり」と何度も発禁・投獄・罰金などの言論統制・弾圧をうけても、決してへこたれなかった。とくに刑務所の中で雑誌を作って売り出そうとしたのは、「退屈な毎日を少しでも面白く使用」という茶目っ気混じりのバイタリティーからだというのが面白かった。
刑務所の話は20代前半だから、恐れを知らない青年だったのだろう。ただ、「滑稽新聞」を廃刊したのは42歳で、今から見ると、早すぎる引退。さすがの外骨も頑張りすぎて、不惑でモチベーションが下がったのだろうか。「太く短く」生きるは明治の青春だが、現代は「太く長く」が求められる時代。そこが難しい。
お節介なナレーターあり、下ネタ連発のギャグ満載、ふざけたキャラクターが次々と、お行儀の悪い舞台である。しかし、それを通して語られる、「(ジャーナリストの)我々は絶望してはいけない。我々の絶望は、国民全体の悲劇だ」という訴えに、身を引き締めるものがあった。

オレステイア
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/06/06 (木) ~ 2019/06/30 (日)公演終了
満足度★★★★
元は3部作のギリシア悲劇を、現代英国の若手激作家がひとつにまとめた。重厚にして深淵で見応え充分。俳優の演技・存在感を堪能できる舞台だった。平知盛のせりふ「見るべきほどのことは見つ」という気分になった。そういえば、古典の現代化、武将をめぐる生死のドラマなど、「子午線の祀り」と共通点がある。