畏怖(if) 公演情報 スライディングドアプランニングス「畏怖(if)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    予知夢を題材にしたサイコサスペンス風な公演。同じ場面をループさせる展開であるが、少しずつ何かが違う。その違いが螺旋階段のごとく同じところを回っているようで、少しずつ観点が異なる。その歪んだとも思えるような夢世界が現実に起こるとしたら...。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台は某大学の研究室。中央に階段があり上がったところがメイン舞台。上手側にテーブルが置かれミーティングスペース、下手側に実験装置、パソコンが置かれている。中央奥は四角い枠が2つ立っているが、一方は傾いており同型でありながら別なものに見える。また鎖のようなものも見え不安定な感覚にさせる。
    同一人物でありながら、その内にある”夢と現実”の似て非なる出来事が畏怖に描かれる。舞台美術はその歪みのような心象風景を思わせる。

    梗概…女子大生がある実験の被験者となり体験する出来事が繰り返される。もちろん繰り返しは仮定(=if 畏怖)の連続である。予知夢が現実に起こるような恐怖...その夢の中で出合う女の諦念と狂気が女子大生の思考を混乱させる。運命には抗えない、しかし予知夢の出来事は絶対に回避したい。予知夢の堂々巡りを通して明らかになる逆恨みによる恐怖。しかし別の意味で、目に見えない現代ならではの問題と恐怖も潜む。
    予知夢は、この研究室に銃を持った男が現れ、仲間を殺していくもの。始めは全員が殺されるが、2回目.3回目と回(1回10分と仮定)を経ることで助かる術も見えてくるが全員を助けることが出来ない。夢は現実...醒めている時の1/2のスピードで進むとされており、計算上9回目が現実となるようだ。その焦りと緊迫感がよく表されていた。ちなみに9回目(約90分は冒頭とラストシーンを除いた、上演時間に重ねているようだ)

    もう1つの現代的な恐怖は、インターネットでの誹謗中傷の類である。銃を持った男は、コンビニ店員で店内で悪ふざけをしているところを写真だか動画で自撮りし、親しい仲間に配信した。それを受信した人物が面白半分に拡散したことから、コンビニ店員はバッシングを受ける。そしてその母親が息子の免罪を願い自殺する。拡散した人物がこの研究室にいることを突き止め殺しに来るという夢と現実が錯綜する。確かにコンビニ店員の悪さが原因であるが、それを面白半分に拡散するというインターネットの怖さ。見知らぬ人からの容赦ない攻撃...そこに真の正義はあるのだろうか?むしろ無自覚・無責任な愉快犯的な不気味さを感じる。その雰囲気を十分漂わせる、そんな演出であった。

    この理不尽な夢を通して、愛情・友情・嫉妬・妬み・疎ましさ・裏切りなど人間が持つ色々な感情が見えてくる。恐怖による極限状態で冷静な判断が出来るか、最後は自分の身を守るという当たり前の行為が、なぜか卑怯に観えてしまう悍ましさ。
    宿命、未来へ備えることは出来ない。宿命に逆らえないという諦念に立ち向かうにはどうすれば良いのか…自分の信念を持つこと。そんな成長譚を思わせる公演。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/06/11 18:09

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