過激にして愛嬌あり 宮武外骨伝 公演情報 オフィスワンダーランド・(一社)演劇集団ワンダーランド「過激にして愛嬌あり 宮武外骨伝」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    初見のワンダーランド・テイストをほぼ裏切らない二度目の観劇であった。明治以降の文化人を紹介する舞台がその仕事の全般と言って良い竹内一郎率いる「劇団」だが、演劇好きから見ると演劇という手段の勿体ない使い方をする集団である。言わば文章の立体化の域を出ない。もっとも文は演劇のドラマ性を導く重要な一方の車輪ではある。ただ竹内氏の文体が文学的でなく子供向け伝記シリーズのようで、よく言えば人間の内面にまで主観を踏み入れない叙述だからそうなるのかも知れない。それでも前作に比べ宮武外骨という傑物が題材だけにそれを味わう楽しみはある。前作への大いなる不満は人物紹介の素材である情報が薄く、風刺画の北澤楽天と岡本一平の漫画漫文の紹介があり、両者に対立や盛衰の図を当てはめる世間に対し、否前者から後者が生まれたのだ、それにホラ(ここはフィクション)ある公園で(確か楽天が生んだ漫画キャラの)片足の悪い少女を介して二人は出会っていた・・これで説明しきれる程度の内容で、似通った説明の繰り返しは少々きつかったがこれは題材の問題だったとは今作との比較で言える。が、その宮武外骨も、私の望むような演劇的高まりは見せない。あくまで文章で引っ張っていく、それを役者が立体化して判りやすく見せている。
    前作のフィクション部分は漫画キャラの登場だったが、今作は宮武本人が現代のある風俗雑誌の編集室に突然現れる。というのもカメラマンが風俗店でたまたま撮った写真に政治家の裏取引の現場が写り込んでおり、これを公表するか否かで紛糾していたからで。現在の安倍政権による報道圧力を揶揄しているが設定自体には現実味はない。この設定にどういうこだわりを見せるかが、分れ目だろうか。
    俳優は口跡よく噛まないし(噛みそうな人が約一名いたがノリで乗り切っていた)動きも明瞭、座高円寺の広さも気にならず、抜き板を組み合わせた抽象美術(松野潤)は風格があり、音楽も的確で分かりやすい。だがこの勿体なさは何だろう。

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    2019/06/11 06:19

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