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まじめが肝心

まじめが肝心

文化庁・日本劇団協議会

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2020/01/24 (金) ~ 2020/01/30 (木)公演終了

満足度★★★★

たまにはエコー劇場で気の利いた喜劇を、と足を運んだ。かのオスカー・ワイルドが書いた18世紀の戯曲だったとは観劇後に知った。階級意識丸出しの婦人の台詞や牧師の登場など古めかしさが漂うが、作り込まない美術や人物の按配に現代感覚がある。演出・大澤氏は「翻案」とあった。
人の取り違えから大騒動に発展する喜劇では双子(又は兄弟)、あるいは瓜二つの人間という設定が常套だが、この話は架空の「弟」アーネストという存在が(居ないながら)中心となる。前半は伏線のための平常なやり取り、それが後半一挙に立ち、ドタバタとスピーディに喜劇が展開する。最も深刻なはずのエピソードの伏線が、ついでの如くサラリと回収され、最後を締めて大団円。

ネタバレBOX

見終えてもう一つ何かが・・足りんなァ、と考え始めた。未だ言葉にならず。
第13回公演 明日花ーあしたばなー

第13回公演 明日花ーあしたばなー

日穏-bion-

「劇」小劇場(東京都)

2020/01/29 (水) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

とても素敵な作品でした。
ちょっと笑いを交えながらも戦争の悲惨さなども描きつつも人のつながりの素晴らしさを伝えてくれました。
初めてでしたがとても心地よい空間でした。

メアリー・ステュアート

メアリー・ステュアート

アン・ラト(unrato)

赤坂RED/THEATER(東京都)

2020/01/31 (金) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★

 ほとんどの日本人が昔、世界史で習っただけで、すっかり忘れてしまっている16世紀の英国史の一駒。イギリス人ならだれでも知っている信長―光秀的歴史寓話は、わが国でも人気があって、現在は二劇場で競演中、春にはさらにもう一つ公演が控えている。このマライーニの本は、女優二人だけで演じ切るという趣向が、女優たちの心をくすぐるところもあってか、よく上演される。今回の競演の一つは別の本で普通の歴史劇のようだが、メアリー・スチュアートといえばやはり本はこれだろう。(1975年初演)
 今までは、はっきりしたキャラや技の立つ女優の組み合わせで見てきた演目だが、今回は、小劇場でミュージカルスターの顔合わせという異色作である。。
感想1。実質二時間半ほどもあるせりふ劇で二人の女優は、メアリー(霧矢大夢)とエリザベス(保坂知寿)のほかに、それぞれの相手のおつきのもの(侍女など)の役も演じる。休憩が二十分あるが二人はほぼ出ずっぱりで休む間がない。女王以外の役は受け役だが、ここでしっかり受けてくれないと、イギリス人ほど話になじみのない日本人には、筋がつかめない。第一幕(60分)は、説明も多く女王から、侍女役へのスイッチングもあわただしく、苦労している。動きがないから、結構寝ている客も多い。
ところが、第二幕になると舞台は急変。幕開きの夢の中でメアリーがエリザベスに出会う甘美なシーンに始まり、メアリーの処刑に至るまで、一幕がウソだったみたいに二人の女王の女の激突がドラマチックに展開する〈75分〉。この狭い劇場の舞台中央に、せいぜい5メートル四方の演技スペース、奥には鏡を置き周りは舞台裏のような雑然とした道具類を飾っただけのセットで、なにもかもやってしまおうというのはいい度胸である。しかもそこが一つの劇的宇宙になっている。蜷川門下の新進の演出(大河内直子)、評判にたがわぬ力量である。それにしては、第一幕のぎこちなさは何だったのだろう?
次は木下順二の「冬の時代」だそうだ。歯ごたえのある既成の戯曲でせいぜい場数を踏んで、最近多い創作劇になると手も足も出ない「新進演出家」の轍を踏まないよう精進を祈って、楽しみにしている。
感想2。俳優。いずれも大役で、無事に幕が下りただけでもご苦労さまなのだが、やはり俳優にはもって生まれた柄がある。今回はそこが苦しかった。それぞれの役の微妙な心理の変化を演じ切らねばならない小劇場では、大きくまとめることに慣れてきた大劇場出身の俳優には戸惑いも大きかったのではないだろうか。宝塚から突然これでは荷が重すぎる。その辺は周囲も考えなければ、とは言うものの、この役はやはり40歳前後でやっておかないといけないところが悩ましい。白石加代子がエリザベスを演じた時はぴったりだった。(相手は麻美れいだったっけ)
 感想3。これでチケットが8,800円というのは高すぎる。宝塚、四季の固定役者ファンのリピートを当てにしているのかもしれないが、それは邪道である。この値段なら、もっと仕込みに金をかけるとか、せっかくだから歌うところをなんとかするとか、客を酔わせるところがないと。二人の衣装を同じにした意図もわかるが、生きていない。



GIRLS TALK TO THE END

GIRLS TALK TO THE END

藤原たまえプロデュース

千本桜ホール(東京都)

2020/02/04 (火) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/04 (火) 19:00

座席1階3列3番

価格5,500円

 初日観てきました。
感想は、心がざわざわしたり、びっくりしました。(笑)
 間違ってるかもしれませんが、この劇の主人公は、場面によっても変わり、
演技、セリフ、観客の観方によって、出演者、誰でも主役になるのでは?
 何回か、観る機会が、あるので、その辺を楽しみたいと思います?

ネタバレBOX

 初日は、大人アイ役の常松花穂さんが、印象に残りました。
グロサリー

グロサリー

吉祥寺GORILLA

スタジオ空洞(東京都)

2020/02/04 (火) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/02/04 (火) 19:30

価格2,500円

一言で言えば「バックヤードのオカしな人々」。
スーパーマーケットの店員休憩所を舞台に繰り広げられる人間模様……というよりは次々に暴かれる人々の本性。
背景として不穏な事が起きている上に照明や音響で不安感を煽っておいてのあのクライマックスはヤだねー。(笑)
が、一部「ワカる!」だったσ(^-^)って……(爆)
また、不安感の煽り方に巽祐一郎監督・脚本「D#1」(1997年)を思い出した。
なお、クライマックスまでに「どゆこと?」「それってもしかして……」な伏線・ヒントがちりばめられているので「そういうことか」や「やっぱり!」だったりする快感もアリ。

残機尽きるまで私は戦う~再演~

残機尽きるまで私は戦う~再演~

U-33project

高田馬場ラビネスト(東京都)

2020/01/30 (木) ~ 2020/02/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

めっちゃ良かった。スピード感もハイテンションも、若いっていいなーって。どんどん引き込まれて。大満足です。

グロサリー

グロサリー

吉祥寺GORILLA

スタジオ空洞(東京都)

2020/02/04 (火) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/02/04 (火)

4日19時半開演回(85分)を拝見。

ネタバレBOX

地場スーパーの休憩室を舞台に、各々が様々な事情を抱えつつも、ある一連の「事件」のために過度の緊張を強いられている、店長からレジ打ちのパートに至るまでの登場人物達を、役者陣がじっくりと演じる、昨年の旗揚げ公演『くるっていきたい』とはガラリと趣きを変えての85分。
でっ、この85分という短めの上演時間が、サスペンスタッチの作品のテンポを冗漫にさせず、特に中盤以降、より一層引き締めていたと思う。

【配役】
かわかみ(グロサリー担当。高校の頃は小説をコツコツ書き溜めていたが…今はたた漫然と日々を過ごしている)
…川上献心さん(モノローグのシーン、観ていて、思わず肩に力が入った)
はやま(新しく入って来たグロサリー担当。友達思いな、かわかみの高校時代の同級生)
…平井泰成さん(かわかみの心境に劇的な「影響」をもたらす「あまりにも爽やか過ぎる友人」を好演)
まつだ(デリカ(惣菜)担当。かわかみの高校時代の同級生)
…まときいちさん(かわかみの「変化」に気づき始めている友人を丁寧に演じている)
おかの(グロサリー担当。仕事よりもユーチューバーの番組づくりに執心)
…岡野優介さん(本作品の「飛び道具」。怪し過ぎる程、怪しい人物を「怪」演)
えのもと(青果担当。純情なプロボクサー。レジのもりさきに片思い)
…榎本悟さん(癖のある登場人物達の中で唯一、裏表のなさそうな人物を好演)
ながとも(レジ担当。30過ぎの芽の出ない声優。(周囲には薄々感づかれているが)店長と密かに付き合っている)
…長友美聡さん(役柄の女性の、本作では描かれていない半生が目に見えるよう!)
もりさき(レジ担当。店内に隠れファンが多い大学生。だが、実は裏で密かに…)
…森崎真帆さん(アンニュイな雰囲気の中にも、ながともへの対抗心?が垣間見える女性を好演)
よしい(「善いヒト」ではあるが、店長に不満タラタラの副店長)
…ヨシケン改さん(この方が演じる「副店長」に、個人的に一番シンパシーを覚えたw)
こじま(店長。本社から店内・外で発生する数々の問題を追及され、募るイライラのはけ口に…)
…小島明之さん(『卒業制作』の教師役、『ダブルダブルチョコレートパイ』の弁護士役…と、こういう心理状況の役柄は実によくハマるなぁと改めて感心)
第13回公演 明日花ーあしたばなー

第13回公演 明日花ーあしたばなー

日穏-bion-

「劇」小劇場(東京都)

2020/01/29 (水) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

打ち上げ花火は綺麗だけれども何とも儚い。
哀しみしかもたらさない戦争を背後に、懸命に生きる人々の人生が、その花火の儚さ、更には激しさとリンクしていくように思えた人情ドラマ。

個人的に日中、何かと頭の忙しかった観劇日。
非常に集中しにくい精神状態ではあったのだけれど、自然な芝居の流れは非常に優しくて乗り心地が良く、遂には目頭が熱くなってくるのでした。
かつて同劇場にて大泣きで拝見した東京セレソンデラックスさんの初見公演を何故だか懐かしく思い出していました。

窓越し

窓越し

青色遊船まもなく出航

劇場MOMO(東京都)

2020/01/30 (木) ~ 2020/02/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/02 (日) 12:00

「幸せ」とは何なのか。
それぞれの思いが織りなすほろ苦い群像劇。
以下、ネタバレBOXにて。

ネタバレBOX

いきなり私事で恐縮ながら、まもなく、節目の結婚記念日を迎える我が家。
去年、同じく節目を迎えた知り合い夫婦が離婚。
結婚って何だろう?と思うことが多い今日この頃、そういうタイミングで
結婚と離婚を扱った本作を観劇するのも、巡り合わせというものか。

本作は川を挟んで向かいに住む二組の夫婦を軸に物語は進む。
テーマの柱としてあるものは「幸せとは何か」ということではあるのだけれど、
そんなに単純な話でもない。

まぁ、言ってしまえば、夫組の二人はクズですよ。そしてガキ。
梅沢富美男あたりに一喝されちゃうやつ。
ただなー…男として、夫として、人として、全く理解できないかと言われれば、
そんなこともなく。
さりとて、共感もできない。同情もできない。
この二人に関しては、感情の持っていきどころが非常に難しかった。

まぁ、学はね、わりと分かりやすいアウトだなって思う。
昔の女が忘れられなくて、その女の方でも男の方が忘れられなくてってなったら、
心がぐらつくのは、正直、分かる。
でも、そのくせ、与一のことはよく思わないわけだからねぇ。
あんた、自分勝手だよ、って思うけれど、そんな理屈だけで割り切って生きて
いけないから、辛いんだよなという思いもある。
ただ、共感も同情もしないけれどね。

卓真の方は、パッと見、学以上にクズ感があるし、残念ながらその通りなん
だけど、いや、ホントにこの人は…
何というか、割り切れない人なんだろうなぁ。
卓真が本当にやりたかったことは、目の前で消えかけている命、すなわち、
初季のおなかにいる子を、守ることだったんだと思う。
もちろん、家族を持ちたいのに持てない初季の悲しみを救いたい気持ちはあっ
たろう。
けれど、それ以上に、彼は小さく弱い命が目の前で失われることに耐えられな
かったんだと思う。

それを女性陣が指摘したように「病気」の一言で片づけることは、正直、どうか
と思うが、言われても仕方のないことだとも思う。

多分だけれど、卓真はまた同じことを繰り返すと思う。
彼にとって、大切なのは「彼自身が小さな命を救った」ことであって、それを
永続させることではない気がする。

この物語が象徴するように、誰かにとっての幸せは、誰かにとっての不幸になりうる。
世の中、すべてがWin-Winにはなりえない。zero-sumになることだって少なからずある。

にもかかわらず、卓真は少なくとも、彼自身の目に留まった不幸は、全て自身の手で
救おうとしているように思える。

それ自体は、まぁ、悪いことではないかもしれない。
如何なる事情であれ、目の前にある不幸を見過ごすことが良いことだとはもちろん思わない。

ただ、彼が大変な勘違いをしているのは、彼が与える幸福はあまりにも刹那でありすぎること。
苑子には結婚という幸せを与え、初季には家族という幸せを与えた。
でも、それだけ。
そこから後のことに目が向かない。
幸せを持続させることよりも、不幸な人を幸せにしたい。
それが結局は、大量の不幸を築いていることに気づいてない。
初季の「醒める夢なら最初から見させないで」という主旨の言葉は、何とも象徴的である。

結局、厳しい言い方をすれば、彼の優しさ、使命感は、彼のためのものであって、
他者に対してのものじゃない。

卓真の苑子に対する
「君はひとりでも大丈夫」
という言葉は、自分勝手の極みで、私は席上からロケットパンチを食らわせてやりたい衝動に
駆られたが、彼が苑子に抱えていたコンプレックスを思うと、この部分に関してだけは同情的
になった。

書きながら、ちょっと背筋が寒くなったのは、三戸。
彼はある意味、幸福追求の原理主義者。
幸福は行動しないと手に入らないと信じ、グイグイと突き進む。
彼は天真爛漫であるだけに、平気で紀香に対しても、そして苑子に対しても、幸せに
なって欲しいといって憚らない。

その心意気は良いんだけど…
行く末は卓真以上のクズに進化しそうでちょっと怖い。
卓真は、まだ自分のありように対しての疑問があるだけまだいいのかもしれない。
三戸は…多分、そういうのないだろうから、ちょっとヤバいよねぇ。
EDでベランダから桜を観ている時の表情はすごく良かったけど。
あれはグッと来たな。

まぁ、男ってのは、基本バカで、子供で、ロマンチストでナルシストだなって改めて思う。
皆が皆そうだとは思ってないけれど、そう思ってしまうことは少なくない。

ろくな男がいない中、江田と与一の存在が、この物語に光を与える。
とはいえ、江田はめちゃくちゃいいやつだなと思う反面、柔軟性には欠けるきらいがあるし、
煙草のタイミングをアラームで設定しているというのは、正直、ちょっと引いてしまったけれど、
彼自身、その異常さに気が付いているところが救いだなと思う。
作中では詳細に言及されてはいないけれど、彼は一度ストレスで身体を壊しているのかな。
大好きな羽田さんが演じておられたという事は抜きにしても、男性陣の中では、一番好きな
キャラだった。

与一もまためちゃくちゃいいやつなんだけれど、紀香との距離感は、見誤っている感がある。
まぁ、これも良くある話ではあるんだけどねぇ…
与一はつらいなって思う。
あれだけ献身的に紀香に尽くしているにもかかわらず、当の紀香からは男性としては見られて
ないんだし。

与一と紀香って言うのは、お似合いには見えるのかもしれないけれど、じゃあ、付き合ったら
どうなんだと言われれば、きっと上手くいかないだろうなという気はしている。
根拠はないんだけどね。何となく。

人それぞれベストの距離って言うのがあると思う。
紀香と与一は、性別を超えたところでの繋がりがベストだと思う。
愛だの恋だの言う次元をはるかに超えたところで、人としての繋がりを持ってほしいなって、
個人的には思っているけれど・・・与一はいつか、自分の気持ちを伝えてしまうような気がするなぁ。
そして、それは、埋まらない溝を二人の間に作ってしまう気がする。

江田と与一はともかく、ガキが揃う男性陣に対して、女性陣は総じて大人。
苑子の女神っぷりは、もはや、涙なしでは観られないんだけれど、その女神っぷりが、ある意味では、
卓真を不倫に走らせる要因になったのは、何とも皮肉ではある。
とはいえ、これもよくある話ではあるんだよなぁ、悲しいことに。

あまりにも幼い卓真に対して、苑子は大人であり過ぎたように思う。
もちろん、それは苑子には責任のある話では全くないんだけど、まぁ、男を見る目がなかったとしか
申し上げるほかない。

それにしても幸奈の存在は大きい。
悲惨と言っても良い苑子の境遇に、幸奈の存在がどれほど支えになったろうか。
いくら友達のためとはいえ、なかなか、探偵までは雇えない。
親友というには、あまりにも熱いつながりだなと思う。

本作で一番好きなシーンが二人のやり取りのシーン。
「あの時の私、今のあんたの顔してた」
みたいなやり取りがあったところなんだけど、あのやり取りはすごく好きだったな。
ちょっとウルっとしながら観てしまった。

雇われた探偵の後藤は、実は全キャラの中で一番好き。
ビジネスライク、無関心なようでいて、何だかんだ色々と気にはしているんだよね。
ちょっとおいしい役だな、と思いながら観ていた。
そして着ていたMARVELトレーナーがめちゃくちゃ似合ってた。あれ、私も欲しい。

苑子は男運には恵まれないが、同性の知人には恵まれているなと思う。
幸奈、後藤はもちろんだけど、涼子もそう。
彼女はこれからも妹ではあり続けるんだけど、あらかた片が付いたところで、
苑子を思いギャン泣きするところがあるんだけど、あそこも良かったな。
メッチャいい子だなって思う。
ただ、ちょっと分からなかったのは、
「苑子さんはかわいそうじゃない。かわいそうなのはお兄ちゃん」
っていうセリフ。
あれが未だに呑み込みきれてない。
あれはどういう意味だったんだろうなぁ・・・

「結婚」というものを軸として「幸せ」を考えた時に、紀香、小町、亜矢が思う、
それぞれの「幸せ」の形が面白い。

結婚だけが幸せとは思わない小町。
結婚に幸せを見出そうとする亜矢。
そして。
結婚は必ずしも幸せなことばかりではないが、さりとて、不幸なものでもないと
思う紀香。

小町と亜矢の思想は対極的だ。
そのまさに中間、もっと言えば俯瞰する立場にある紀香からすると、二人の思いに
それぞれ感じるところはあったのではないかと思う。

多分、紀香は結婚するまでは亜矢と同じ考え方だったのではないか。
けれど、結婚してから色々な現実を見たのだろう。
彼女自身が言ったように、結婚相手というのは、家族には違いないが「他人」である。
何もかもが重なるわけではない。

象徴的なのがトイレのごみ箱と、与一の風呂掃除のエピソード。
ひどく些細なことに見えるが、実際の結婚生活で火種になるのは、浮気、不倫の類よりも、
こうしたごくごく日常における意見の相違である。

紀香の中から、結婚に対して抱いていた夢や憧れは、日に日に色褪せていったと思う。
けれど、彼女は、学が「他人」であることを意識したうえで、言うなれば「60点の結婚生活」
に妥協したのではないかと思う。

残りの40点にはトイレのごみ箱や、亜矢との浮気が入っているのだろう。
けれど、それを差し引いても、幸せだと思える60点分が残っていると考えたのではないか。
だから、彼女は自らを
「幸せ」
と言えるのだと思う。
その40点がどれだけ辛いものであったとしても。学をマジで殴り倒したい。

作中、ただ一人、幸せになったといっても良い初季。
ずっと不幸な境遇のまま生きてきた彼女が、望んでいた殆どすべてを一日で手に入れてしまう。
そのことに恐怖し、泣きじゃくる彼女の姿は、非常に印象的だった。
これから先、彼女が幸せに生きてくれることを、個人的には願ってやまないけれど、相手が
卓真だと思うと、彼女の行く末を案じずにはいられない。

川向こうの家の明かりが、温かいものに見えても、その中にある空気が、必ずしも温かいとは限らない。
言ってしまえば「隣の芝生は青い」だけであって、誰しもが、それぞれの思いを抱えて生きている。
幸せの形も人それぞれ。結婚の形も人それぞれ。

本作を観て、すっきりした気持ちで劇場を後にしたかと言われれば、正直、全くそんなことはない。
観劇後、こうして感想を書いている今でも、飲み込み切れない部分は多々ある。

私にとっての幸せ、妻にとっての幸せ、我々夫婦にとっての結婚って、一体、何なんだろうと
考え続けているけれど、その答えもまだ見えてこない。

けれど、そういうことを考えるきっかけが出来たことはとても大きい。
結婚してしまうと、何となく、惰性で時は流れてしまう。
一度立ち止まって、色々と考えてみたいなと思う。
三戸の「行動しない人のところに幸せは訪れない」という言葉が、胸の中でざわついている
理由も考えてみたい。

何はともあれ、人生において観ておくべき演劇を、観ておくべきタイミングで観劇できたと思う。
劇団の皆様、役者の皆様、素晴らしい舞台を本当にありがとうございました。

脱獄戦隊ニゲルンジャー

脱獄戦隊ニゲルンジャー

生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した

新宿LIVE FREAK(東京都)

2020/01/31 (金) ~ 2020/02/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

想像していたより濃厚で海馬に絡みつくようなステージ。
冒頭の脚本家独白は骨太で真摯な言葉が紡がれその世界観に惹きこまれる。
個性あふれる八人の囚人と際立つ看守が織りなす世界平和への歩みに思わず共鳴する。
赤鼻言い切った俺は許す。復讐の連鎖を断つために唇をかみ血を流しながら許す。
今の自分に一番足りないことを見透かされているようで凍り付く。
ぜひ第1回の公演から見てみたかった。

コタン虐殺

コタン虐殺

流山児★事務所

ザ・スズナリ(東京都)

2020/02/01 (土) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/03 (月)

過去と現代を交差しつつ「アイヌ民族」「差別」を考える。倭人とは、他物語の軸なる事件・説明がススキノキャバレーでの歌となり面白く心に残る。流山児祥ここにあり!!的な演出も面白かった。何より今回音楽担当の鈴木光介の生演奏が舞台を盛り上げ一緒に戦っていた。私にとって詩森ろばの作品は今までちょっと、と敬遠しがちになっていたのだけれどこれはすごく楽しめました。舞台美術も素敵でした。

沖縄世 うちなーゆ

沖縄世 うちなーゆ

トム・プロジェクト

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2020/01/25 (土) ~ 2020/02/02 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2020/01/30 (木)

「沖縄」歴史を顧みると様々な思いがよみがえりますね。今も苦しい想く辛い思いをしているニュースを見るたびに何か出来ないものか、とも感じます。今回の舞台はわかるのだけど心に響きませんでした。女性二人の場面はすごく良くて、あの二人の出世物語にしてくれた方がドラマ的だったかも。

ネタバレBOX

息子のハイウエストのラッパジーンズのポケットに手を入れる格好は懐かしさも感じました。
カラカラ。

カラカラ。

劇団もっきりや

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2020/01/23 (木) ~ 2020/01/26 (日)公演終了

満足度★★★

日本の社会構造の縮図を提示されたようで、発せられる台詞に己の愚かさのベールをはぎ取られ、欺瞞的な心根がさらけ出されるようで痛い。
あまりに直球勝負の物語だからか、言葉が鋭い刃物のように喉元に迫る。登場人物の背景が見えるサイドストーリーを絡めてエッジを滑らかにして、物語を飲み込めるようにしてもよかったのではとも思う。
エンターテインメントとしては少しばかり窮屈な展開に物足りなさを感じる。

NET“網”が切れたら、終わり?

NET“網”が切れたら、終わり?

劇団 枕返し

遊空間がざびぃ(東京都)

2020/01/24 (金) ~ 2020/01/26 (日)公演終了

満足度★★★

一言でいうと「欲張り」。
動くものに興味を持ち、視界に入ったもの何でも欲しがる童のように、雑多に積み上げられたサイドストーリーがとりとめなく連鎖する。
救いは各シーン物語が見ごたえあり、うまく創り込まれていること。これは表現力の高い役者陣の力に依るところも大きい。
客演、団員問わずスキルの高い役者さんたちの今後にも期待。
もちろん面白い着想で物語を綴った脚本家の次回作も楽しみ。

ウエアハウス-double-

ウエアハウス-double-

る・ひまわり

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2020/01/25 (土) ~ 2020/02/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

まさにハマリというキャスト!小林且弥さんという役者はこういう不気味な役、上手いですねぇ!好きなタイプの方ではないけど、この役に関してはが、その捉えどころのない、相手を圧迫していくような存在感が秀逸!また相手役の平野良さん、彼の思考と観ている側が同化していくのがわかる演技でした。おそらく大半の観客が彼の感情と共に話の流れに引き込まれていたのではと思います

それは秘密です。

それは秘密です。

劇団チャリT企画

座・高円寺1(東京都)

2020/01/23 (木) ~ 2020/01/30 (木)公演終了

満足度★★★★

コメディー化と思えば、かなり深刻な内容で、ストーリーがどう流れていくのかが気になる舞台ではあった。しかしリアルなネタに対して、かなり甘さも感じる。お芝居なんだからではなく、もう少し切実な現実の色が欲しかったかなと思いもする。

『帝都メルヒェン探偵録 ~幽霊屋敷のブレーメン~』

『帝都メルヒェン探偵録 ~幽霊屋敷のブレーメン~』

REON NEO COMPANY

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2020/01/29 (水) ~ 2020/02/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/01 (土) 13:00

 2020.2.1㈯PM13:00 池袋シアターグリーン BIG TREE THEATER

 明け方地震に揺り起こされたものの、麗らかに晴れた土曜日の池袋を、池袋シアターグリーン BIG TREE THEATERへREON NEO COMPANY vol.2『帝都メルヒェン探偵録~幽霊屋敷のブレーメン~』を観に足を運んだ。

 2階にある劇場へ入り、前から3列目の真ん中の席へ着くと目の前には、この物語の舞台となる“カフェグリム”の店内が現れる。

 階段を下り、舞台右手に千崎理人の教育係であり、店主小野カオルに仕える“カフェー・グリム”の店員三宅が、珈琲を淹れるカウンター、舞台の左右に二人掛けの席が一席ずつある“カフェー・グリム”を舞台に起こるひとつの事件。

 伝統とモダンが、新たな市民文化を花開かせる帝都。昭和の初め、ドイツ人の母を持つ華族の青年・千崎理人は、乙木(おとぎ)夫人が経営するカフェで知り合い、仕事を紹介してもらおうと訪れた乙木夫人のサロンで出会った謎の美少年小野カホルに、理人に職と住まいを用意する代わりに、グリム童話に擬え、3ヶ月の間に自分の本当の名前を当てる賭けを持ち掛かけられると同時に、「自分が事件を解決するから、『探偵』として表に立ってほしい」と頼まれた事から、華やかな昭和の初めを舞台に、理人は「少年助手を従えた美貌の探偵」として、様々な事件に巻き込まれていく小説『帝都メルヒェン探偵』を原作に、舞台の為に書かれたオリジナルストーリーとオリジナルキャストを加えて描かれる物語、それは。

 とある日、千崎とカホルは明治末期に活動した「音楽隊」と名乗り強きをくじき弱気を助けると人気のあった窃盗団とその手口を模倣しているが、なりふり構わず人を傷つけて盗む強盗団のやり口に違和感を感じるという常連客遊馬親子の話をカフェー・グリムで耳にした同じ頃、新人画家・宇崎善太郎(うざきぜんたろう)と新人音楽家・吉永侑哉(よしながゆうや)に出会い「幽霊屋敷」の怪談話を聞いた千崎たち一行は屋敷へ赴き、巻き込まれる事件とは……という物語。

 全編オリジナルの楽曲による【CLASSICAL ROCK MUSICAL】と銘打っている如く、幕が開いた瞬間、千崎(冨森ジャスティンさん)の独白から、舞台の主題歌から始まり、登場人物たちが現れ歌い上げ、踊り、華やかに物語の中へと誘われる所から高揚感に包まれた。

 REONさんが『帝都メルヒェン探偵録』を舞台化すると聞いてすぐに原作を読んだ時からイメージしていたそのものの冨森ジャスティンさんの千崎に瞠目した。

 漫画や小説が原作の場合、読者がイメージしていた登場人物と余りにもかけ離れていて、残念な事も多々ある中で、今回のこの舞台はイメージ通りの登場人物たちが目の前に現れたので、小説を読んでいた時のように自分がその物語の中に迷い込み、物陰から見ているような臨場感があった。

 観ながらふと、頭の中を「ねずみ小僧次郎吉」や「石川五右衛門」「大岡越前」が過ぎった。

 これらに共通するのは、義賊と呼ばれた盗賊の話し。この物語の窃盗団「音楽隊」も義賊のように扱われ庶民に人気があった。

 けれど、盗んだお金を施す事で助かる人がいる反面盗賊に間違われたり、お金を奪われた事で、人生が一変し、謂れのない労苦を強いられ不幸になった人もいるのではないか。

 金持ち=悪、悪どい事をし、人を傷つけて金を儲けた人たちばかりではない。金持ち=悪と決めつけ、根こそぎ金を奪った窃盗団「音楽隊」によって、犯人と間違われ、人を傷つけず仲睦まじく暮らしていた家族の幸せと夢を奪い、一家離散になった子供たちが強盗団「音楽隊」を名乗り盗みを繰り返し、人を傷つけた強盗団になった者たちの憤りと悲しみと悔しさを思う時、正義と悪の紙一重、表裏一体の怖さと危うさも感じた。

 自分の育った家を強盗団のアジトにされ、家業の不振から家を手放し、一家離散になるも、悪に走らず、画業に打ち込みながらも孤独と切なさを抱えて生きていた画家の宇崎(古畑恵介さん)を包み、前を向かせたのは千崎や花村(REONさん)たちの温かさと思いだったのではないか。

 人は人によって、傷つけられもするが、また、救われもする。

 観終わってしみじみ、人っていいな、人が好きだなと思った。

 もうひとつ、最後に付け加えるならば、音楽と踊りの素晴らしさ。役者さんの超えと歌が素晴らしく、ダンサーさんたちの踊りが格好良かった。

 特に千崎(冨森ジャスティンさん)、花村(REONさん)、一谷(大橋篤さん)、三宅(川井康弘さん)は、原作のイメージそのままで素晴らしく、遊馬(楠田敏之さん)の声と歌、宇崎(古畑恵介さん)が好きだった。

 ミュージカルの楽しさと物語の面白さに惹き込まれた舞台だった。

               文:麻美 雪

スーパードンキーヤングDX

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ヨーロッパ企画

小劇場B1(東京都)

2020/01/22 (水) ~ 2020/01/26 (日)公演終了

満足度★★★★

初めての 大歳作品 でした
面白かった~
中川さんの熱演
呉城さんの熱演、そして美貌
見所満載でした

四角い2つのさみしい窓【三重公演延期】

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ロロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2020/01/30 (木) ~ 2020/02/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

幸せ一杯❗

コタン虐殺

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流山児★事務所

ザ・スズナリ(東京都)

2020/02/01 (土) ~ 2020/02/09 (日)公演終了

満足度★★★★

かなりよいです。難しいテーマを扱いつつ流石詩森ろぼ、しっかりエンターテイメントでした。

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