kazuoga5409が投票した舞台芸術アワード!

2015年度 1-10位と総評
泳ぐ機関車

1

泳ぐ機関車

劇団桟敷童子

15年は桟敷童子の4公演すべてを2回ずつ観た。観ずにはおれなかった。 
“炭鉱三部作”はいずれも再演なので、BEST10に入れるのは「エトランゼ」にしようと思っていたのだが、この「泳ぐ機関車」を観ると、15年はこの作品以上と言える舞台がないことを痛感させられた。東憲司がこれをもって一区切りと宣言するだけに、その密度と完成度が素晴らしい。 
2時間を切る上演時間でこれだけスゴイ作品が創れる劇団なんて桟敷童子以外にはない。

丘の上、ただひとつの家(全公演終了・ご来場ありがとうございました)

2

丘の上、ただひとつの家(全公演終了・ご来場ありがとうございました)

鵺的(ぬえてき)

2月の公演だが、この作品の衝撃は年間通じてずっと残ったままだった。 
この作品も劇団としての上演体制を大きく変える区切りとされていたが、歪んだ家庭を舞台にした、濃密な空気の、悪夢的なホームドラマ。 
子供を産むということ、そして家族とは何かという問題を強く突き付けてくる。

忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆

3

忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆

企画演劇集団ボクラ団義

この作品でボクラ団義を初体験。驚愕の裏日本史が圧倒的な面白さをもって描き出される。上演時間は10分の休憩を含めて3時間弱と長いが、それを少しも感じさせない。日本史上の大きな謎のひとつとされる本能寺の変にこうした解釈をもってくる才覚に脱帽。権力が、そして権力への欲が人間を変える…

愚かもの梶鉄

4

愚かもの梶鉄

グループK

今時珍しい本格的なヤクザの話。が、誰一人として気を緩めることなく終幕まで駆け抜ける役者陣の熱演と脚本の良さが相まって、見事な舞台を創りあげた。 
「観てきた!」を書いているのは私一人だけだが、この作品、もっともっと多くの人に観てほしかった。

追憶のアリラン【ご来場ありがとうございました!】

5

追憶のアリラン【ご来場ありがとうございました!】

劇団チョコレートケーキ

3年前はLE DECOというごく小さな空間で公演していたチョコレートケーキが東京芸術劇場に進出した記念すべき作品だが、古川健が祖父の思い出をベースにストーリーを膨らませて書いたという脚本の素晴らしさと、役者陣が漂わせる青い炎のような研ぎ澄まされた熱意、そして固い台詞に血肉を与え観客の集中心を途切らせない日澤雄介の演出とが見事に噛みあった舞台だった。 
日本と朝鮮、それぞれの立場を描きつつ、終戦という未曾有の体験を挟んだ日本人のドラマとして秀逸な作品。

BIRTH ~ペルー日本大使公邸人質事件~【アンケート即日公開】

6

BIRTH ~ペルー日本大使公邸人質事件~【アンケート即日公開】

劇団バッコスの祭

1996年12月17日に起こり、解決までに4ヶ月間以上を要した在ペルー日本大使公邸占拠事件を扱った作品。 
同じ題材で7月下旬にTrigger Lineが「祝祭」を上演(09年11月初演作品の再演)した直後の上演となったが、舞台の緊迫感や密度はTrigger Lineに及ばないものの、作品全体の演劇としての面白さという面からみればこのバッコス版の方が勝っていた。 
私的には11年1月の「メゾン・ド・ウィリアム」以降はほとんど観ているバッコス作品群の中でも最高の出来。“軍備”という言葉だけでそれこそ“右翼”的だと過剰に反応するエセ文化人のウケは悪いだろうが…。

スィートホーム

7

スィートホーム

トム・プロジェクト

15年に観たトム・プロジェクトの作品群の中では「スィートホーム」と「満月の人よ」が抜きんでていたが、後者は再演なのでこちらを。 
目黒・中学生両親祖母殺害事件』に想を得て、人を殺めた少年と家族を喪くした老人による悔恨と再生の物語が綴られる。古川健の脚本、日澤雄介の演出というチョコレートケーキのコンビによる作品だが、高橋長英の風格ある演技も加わって、チョコとは違う空気の作品となっていた。

伝奇浪漫「芳一(ほういち)」

8

伝奇浪漫「芳一(ほういち)」

劇団め組

素晴らしい伝奇時代劇。15年の時代劇BEST3は3位に入れた「忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆」とこの作品、そしてグワィニャオン「ほたえな 胸中が猿」の3本だ。
この作品は幕末期に崇徳院の怨霊を登場させるという着想がいいし、ストーリーも史実と虚構をうまく取り混ぜて、最後まで興味を失わせずに引っ張っていく。照明も舞台に華やかさと不気味さ、厚みを加えて秀逸だった。

刻印

9

刻印

innocentsphere

1月に観た作品。 
少女誘拐事件を描いた「刻(きざむ)」と太平洋戦争下で慰安婦だった老女を描く「印(しるし)」の中編2本(それぞれ1時間強)という構成で、一見無関係な2つの物語が見事に対照しあい、その間に横たわる深い谷が日本の傷ついた現状を否応なく浮かび上がらせる。 
私としてはこの作品がグリーンフェスタ参加作品の中ではダントツだったのだが…。

僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪

10

僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪

天幕旅団

“本歌取り”をコンセプトに濃密でダークな世界を創り続けている天幕旅団が、3年前に「白雪姫」をベースに上演した作品を再演。 
とはいっても再演の「モノクロ版」と、出演者と脚本はそのままで演出を変えた「カラフル版」の同時上演。同じ日に2本続けて観たが、やはりモノクロ版の密度が圧倒的。 
天幕旅団に比すれば、14年からVoyantroupe(旧:海賊ハイジャック)が始めたダーク童話シリーズなどまだまだ。

総評

13年の440本(チケット枚数ベース)をピークに14年は403本と年間観劇数を1割減らし、15年も同様に年間日数と同じ365本まで減らそうと思っていたのだが、結果は375本。芝居に慣れてきたこともあってか、最近はつまらない舞台も増えてきた。それでもそこから10本選ぶとなるとかなりの苦労となる。
BEST10に入れたい作品はまだまだ多い(例えば桟敷童子の4公演は全て入れたかった)。

断腸の思いで次点に回した作品は例にとると
  メガバックスコレクション「Rabies2021」
  劇団だるま座「3年G組 -ある夏の日に-」
   トム・プロジェクト「満月の人よ」
  遊戯空間「心中天網島」
  ラチェットレンチ「落伍者、改。」
  ワンチャンUNIT -ストクエ-「チョイスw」
  フジテレビジョン「グッバイ・ガール」
 …等々

他にもピープルシアター「新宿・夏の渦」、えうれか「岸田國士 短編四作品上演」、 DEVIATE.CO 「ネットワークプロジェクト 円環 vol.9」 などはある思いもあって心情的にはBEST10に入れたかったのだが… 

リストアップした作品群を眺めていて気になるのは、再演作品の多さだ(最近はハリウッド映画もその傾向が強い)。無論再演に当たってはかなりのブラッシュアップが図られていることとは思うし、経済的な問題も影響しているだろうが、その一方では新しいものを創り出そうという意欲が薄れてきているのではないか。いくら評判が良かった作品だとて、若い時から自分達の過去作品に頼ろうとしているようでは大きな飛躍は望めないのではないだろうか。もっともっと遮二無二演劇と向き合ってほしい。


さて、【WORST】の方は例年にも増してリストアップ数が増加したのだが、その内で下(悪い方)から順に5つ挙げておこう。

  Supreme Sunders「One Mic Two Girls ~忘れ去られた女編~」
  DPI/NGO 国連クラシックライブ協会「青い地球は誰のもの:OUR BLUE PLANET」
  惑星☆クリプトン「SMOKIN\' LOVERS」
  コヤジ劇場「アラホォーオーゲー」
  The Gazpacho Theater「旦那様は”釣り”にお出かけ」

これらに共通しているのは舞台をナメているとしか思えない役者・スタッフの態度や、客が観る立場になって創ろうとしていないことだ。舞台はマスターベーションや自己満足の場ではない。客は金と時間を割いて観に来ているのだ。客に観せることがまず前提となっていない舞台の何と多いことか。 
オトモダチを頼りに、安易に板に上がれる現状こそ小劇場全体が軽く見られてしまう大きな原因だ。もっと厳しい目を注ぐ必要があるだろう。

このページのQRコードです。

拡大