
小刻みに戸惑う神様
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了
実演鑑賞
前回の「たましずめ」の時にも感じたことだが、なんだかふわふわしていて捉えどころがない作品だなという印象。何故だろうという疑問がぬぐえなかったので両作の作家、はせひろいち氏について検索してみた。すると今作のジャブジャブサーキットの公演時のはせさんのインタビュー記事が目に留まった。《最近、起承転結とか、観客を伏線とかで引っ張り込んでおいて、ここでこう見せよう、みたいなのが嫌で嫌で。》と語っておられた。そうか、それで合点が行った。私は起承転結があって伏線が張られて、回収されて...という「物語」に慣れ過ぎてしまっていたために違和感を覚えたようだ。長いこと観劇してきたつもりだが、今回、新鮮な驚きがあったと同時にこの作品の滋味を感じられなかった自分が情けない。

たぐる
ここ風
テアトルBONBON(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
愛すべきキャラクターが揃っていて、観ていてこういう芝居が一番楽しい。それに笑いのタイミングとセンスが絶妙で飽きさせない。(ふいに挟んでくる小ネタも外れなし)多数の人物が登場するシーンではにぎやかでスピーディーに展開、二人のシーンでは静かにスローで、と緩急も巧い。単なるコメディかと思いきや、終盤ほっこりしたり、しんみりしたり。お薦めです!

ムーランルージュ
ことのはbox
萬劇場(東京都)
2022/04/20 (水) ~ 2022/04/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
著名な劇作家の既成戯曲に小劇場で遭遇することはまずない。「斎藤憐」という名前は知っていても作品を拝見するのは初めてだ。この機会がなければ今後も観る事はなかっただろう。それだけでもありがたい。
舞台の方は約2時間半という長編ながら、時間を感じさせなかった。もちろん戯曲の力もあるが、それにも増して演者、スタッフの寄与するところは絶大である。その昔、新宿にあった小さな芝居小屋で、躍動し苦悩する人々の「生」が正に眼前にあった。観客は束の間、それを垣間見て納得したり、考えさせられたり...。これぞ芝居の魅力だ。
歌や踊りも素敵だったが、小道具や衣装もしっかり時代考証されていた。(衣装チェンジの素早さには驚いた)「ムーランルージュ」用語集も知らないことが多く、ありがたかった。感染対策も徹底されており、全てにおいて観客に「安全に楽しんで帰ってほしい」という演者、スタッフの気概が感じられた気持ちいい舞台だった。

一枚のハガキ
劇団昴
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2022/03/16 (水) ~ 2022/03/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
当日パンフの演出ノートで北村さんは「戦争という得体の知れぬ暗夜の底に突き落とされた人間が、崩壊から再生へと必死に這い上がる生命力を賛美し、その姿を粛々と再現したいと考えています。」と書かれている。なるほど、森川友子が慟哭する場面もサラッと暗転したり、暗雲に覆われた日々にどこかカラッとした場面が現れたりと、当時のリアルな日常が再現されていた。だからこそ戦争の狂気や悲惨さが痛切に伝わってくる。もちろんそれは昴の役者さんたちの確かな演技によって裏打ちされていました。

凪のように穏やかに
雀組ホエールズ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2022/02/17 (木) ~ 2022/02/21 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
被災して亡くなった者、被災して生き残った者、被災者に寄り添う者、被災地から離れて暮らし、震災から最も遠い者。様々な視点から描くことによって、震災の全体像がリアルに浮かび上がってくる。そういう配役の中でも、ポイントだったのは斉藤こず恵さん演じるキヨコ婆さんだ。単なるにぎやかし(失礼)かと思いきや、さにあらず。織部治一の先輩、杉浦友蔵の妻、典子に向かって「被災した当事者のことなんて絶対わからないんだ、わかったふりをすればいいんだ(“思いやって寄り添う”という意味だろう)。」というセリフが我々が被災者に接するときの正に答えなのだ。ラストのファンタジックな展開には少々面食らったが、亡き夫(織部治一)から生き残った妻と娘に対する最後のメッセージと捉えると胸が熱くなる。妻と娘を両手に抱きしめながら「二人が生きていて本当に良かった。」というセリフは、東日本大震災で亡くなったすべての犠牲者から家族に宛てたメッセージのような気がしてならない。

溺れるように走る街
吉祥寺GORILLA
劇場HOPE(東京都)
2021/12/09 (木) ~ 2021/12/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
「深夜ラジオ」というキーワードを通して描かれる絆とか愛とか。
伝えたいことは理解できるが表現がどこまで追いついていたかについては疑問が残る。例えば脳梗塞の後遺症を負ったミュージカル女優の姉がラジオを通して妹に語り掛けるシーン。物語のクライマックスであり、迫真の演技が求められるところだが不自由な言葉遣いは作りものの域を出ていない。(演じた日下さんは努力されたと思うが)これはどんな名優にとっても難役だろう。ミュージカルという身体表現の対極にあるものとして脳梗塞による身体不自由を選んだのかもしれないがそうだとしたらいささか安易だろう。女子大生の妹が姉の病気の発症を自分のせいにして見舞いに行けずにいる、という設定にも違和感がある。逆に毎日見舞いに行くのじゃないかな、という気もする。お笑いコンビの復活の過程もあっけなく淡白な印象。

マツバラQ
グワィニャオン
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2021/11/24 (水) ~ 2021/11/28 (日)公演終了
実演鑑賞
初見の団体だったが正直、私の好みではなかった。殺陣あり、ムード歌謡コーラスありとエンターテイメント性はあるものの肝心の物語には面白みを感じなかった。特に、どんなプレゼンも一蹴してきた出版社の二代目社長が(いくら編集長の熱意あるプレゼンがあったとはいえ)簡単に「松原忠司」本の出版を許可したのは合点がいかなかった。(何か伏線あったのかな?)ハッピーエンドの娯楽作品として細かいところはサラッと流して楽しめればいいのだが...。

異常以上ゴミ未満、又は名もなき君へ
good morning N°5
小劇場B1(東京都)
2021/11/25 (木) ~ 2021/12/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
いやーまいった、こんなにエネルギッシュでバカバカしい芝居を観たのは初めてかもしれない。最高!。こんな芝居を探してたぜ。特に「双数姉妹」時代から推しの野口かおる嬢が弾けまくってたなあ。うー、たまらん。中村中さんの音楽にも痺れた。無理やり引っ張り込まれるような強引さはあるが、入ってみるととても気持ちよく温泉の様な世界でした。

ME AND MY LITTLE ASSHOLE
藤原たまえプロデュース
シアター711(東京都)
2021/11/17 (水) ~ 2021/11/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「これは一人の人間の、たった二つの物語」とチラシにあるが、色々あったのち「一人の人間が、やっと一つになれた物語」なのかもしれない。人間とは何と滑稽な生き物かということを味わえた素敵な喜劇でした。

たましずめ
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2021/11/10 (水) ~ 2021/11/14 (日)公演終了
実演鑑賞
数年ぶりに拝見。トートバッグのプレゼントを継続されていることに感服。作品世界をより深く体感できる舞台美術も相変わらず素晴らしい。鑑賞マナーのアナウンスも心配りが行き届いている。ただ正直、作品は(あまり好みでない作風だったというっこともあるが)少々物足りないという印象です。特に3本目は1本目の後日談とはいえ、サラッとしすぎているような気がしました。

ちーちゃな世界
青春事情
駅前劇場(東京都)
2021/10/27 (水) ~ 2021/10/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
これだけ何度も自然と笑いがこみ上げてくる芝居に出会えたのは久しぶりだ。日常で出会いそうな人々や場面が生き生きと描かれているからだろう。登場人物の配置や配役も絶妙でした。これぞ小劇場の醍醐味を味わえる作品!。

好きで嫌いな珈琲と煙草
ふれいやプロジェクト
アトリエファンファーレ高円寺(東京都)
2021/09/15 (水) ~ 2021/09/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
チラシに「何時までも続くエンタメを貴方に」とあるが、小劇場という空間にピッタリのエンタメ感が心地よかった。七味さんの存在がまさに七味のようにピリッと物語にアクセントをつけてくれたのが印象的。ピアノの生伴奏は素晴らしかった。

春の終わり〈青年座・那須凜主演!シアター風姿花伝 劇作家支援公演〉
ENGISYA THEATER COMPANY
シアター風姿花伝(東京都)
2021/07/06 (火) ~ 2021/07/12 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
女優たちが生き生きと舞台上で語り、動き回る姿は観ていてそれだけで楽しいものだが、物語としては響いてくるものがなかった。群像劇では間々あることだが、人物紹介から各人にまつわるエピソードなども盛り込んでいくと肝心の作品のテーマが描き切れずに終わってしまうことがある。今作もシェアハウスにおける老女たちの友情はほのぼのするが、死生観がどれだけ伝わったかは疑問として残る。セットにブランコを取り入れたことやBGMとして流れるクラシックの名曲の数々は印象的。

『crash~M銀行人質事件~』
singing dog
小劇場B1(東京都)
2021/04/08 (木) ~ 2021/04/12 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
小劇場の芝居の魅力のひとつは限られた空間、シンプルな舞台装置で観客の想像力をいかに喚起するかという点にあると思う。この作品は、役者の台詞や音響効果で現場の緊迫感が十分に伝わってきて最後まで集中して観ることができた。前作もリアルで見応えがあったが今回も素晴らしかった。

INDESINENCE
LUCKUP
赤坂RED/THEATER(東京都)
2021/03/24 (水) ~ 2021/03/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
テンポのいい台詞のやり取り、分かりやすい内容で肩肘張らずに楽しめる作品である。ただ物語の面白さには欠けていた。遺産相続争いの結末がどのような結末を迎えるのかが最大の焦点になろうが、終盤の展開は少々お粗末で期待外れであった。女子大生探偵の登場で中盤までミステリー的要素が高まっていただけに残念だ。

#12『ピーチオンザビーチノーエスケープ』/#14『PINKの川でぬるい息』
オフィス上の空
シアターサンモール(東京都)
2021/02/07 (日) ~ 2021/02/14 (日)公演終了
満足度★★★★
『ピーチオンンザビーチノーエスエープ』を観劇。初っ端からなんだ、このシチュエーション?と思ったのだが後半、謎が解けて切なさがこみ上げた。人間に潜む闇の部分=狂気が目いっぱい描かれていたので、陰惨ではあるが後味は悪くなかった。役者陣の熱演が光った。

農園ぱらだいす
劇団匂組
駅前劇場(東京都)
2020/10/14 (水) ~ 2020/10/18 (日)公演終了
満足度★★★★
なるほど、女の園は彼女たちにとってこの上なく心地いい場所で「パラダイス」そのものだ。ただ、パラダイスであるが故、物語に波乱もなく観る者には少々物足りない感もある。逆に互いに惹かれあいながら素直になれない男女の心の機微は、この平凡な日常の中で見事に際立っている。

脳ミソぐちゃぐちゃの、あわわわーで、褐色の汁が垂れる。
オフィス上の空
シアタートラム(東京都)
2020/09/17 (木) ~ 2020/09/27 (日)公演終了
満足度★★★
なるほどこういう性癖もあるのか、と妙に納得させるところもあるが、(ラストシーンだったり、場面転換時の爆発音だったり)モヤモヤするところもありすっきり観られたとは言えない。現代の閉塞感を突破するような勢いは感じられた。

スーパー・ウーマン・リヴ
藤原たまえプロデュース
シアター711(東京都)
2020/08/04 (火) ~ 2020/08/09 (日)公演終了
満足度★★★★
小劇場の芝居ではよくあるタイプのハートフルコメディ。もともと好みのジャンルだがコロナ禍のこの時期だからか、余計心に沁みた。バラエティ豊かなキャラクターも物語を盛り上げている。

『ブラックアウト』
singing dog
雑遊(東京都)
2020/07/16 (木) ~ 2020/07/20 (月)公演終了
満足度★★★★
久しぶりに芝居を観ることができた喜びをしみじみと感じさせてくれる舞台でした。役者さんが皆達者でアルコール依存症のこわさが強烈に伝わってくる。また、この病気を通して患者と家族との関係を描くことによって、一段と濃厚な物語になっている。