満足度★★★★
前向きに!
現実から小説へ、小説から現実へのシンクロ具合が素敵でした。
ネタバレBOX
自分が乳癌に罹った現実を基に読者に受ける小説を書き始めたものの、身近な人たちを見るにつけ小説から元気をもらって現実を前向きに生きてほしいと考えた女流作家の話。
自分をモデルにしたアキハについてはどうしようと構いませんが、目の前の悪性リンパ腫の女性や肝臓癌の男性をモデルにした登場人物はそりゃ簡単に死なすわけにはいかないですよね。
癌を根治するシナリオに変えました。前向きになると闘病に対するモチベーションも上がります。しかも、大腸から転移して発症した肝臓癌は切除によって根治できる可能性が認められるなどの実際の治験の状況を踏まえているところが良かったです。
生存のためには指先の器用なオタク医師を手術担当に変更しておきながら、恋愛対象としてはイケメン医師を狙い続けるアキハの生物学的本能には恐れ入りました。
ところで、あれは手術用の手袋には見えませんでしたが、いずれにせよ大きさが合わなかったのか、オタク先生の手袋は指先がだぶついていて無残でした。
満足度★★★★★
すごく情緒的
村に歴史あり。
ネタバレBOX
大雨でダムが決壊して子ども夫婦と孫を亡くしたお祖母さんの混濁した記憶に基づいた脳内風景を描いたようなストーリー。
楽しかった村祭り、戦争で男手が無くなった時代に獅子舞の伝承に努めた少女がいたよねー、ああ懐かしい。人間がほぼ滅亡した後のアンドロイドの世界も想像すると、こりゃ大変だー。
水害で子ども夫婦と孫を亡くしたと言っても複雑で、子どもの行方を心配して悲嘆に暮れているところを再度の鉄砲水にやられた夫婦の心境って如何ばかりかと思うと、本当に可哀想。
村に歴史あり。どんな村や町にだって悲しい思い出もあれば、きっと楽しい思い出だってたくさんあるでしょう。でも、大災害やゲリラ豪雨の多い昨今、他人事とは思えないものがあります。悲しい記憶に占められた中での終活は辛いですね。
ところで、戦時中にタオルとは言わないような気がしました。イメージとしても、木綿の手拭いを腰にぶら下げているという絵が浮かびます。
満足度★★★
前半は予想通りの展開、
後半は予想とは異なっていましたが、
ネタバレBOX
あんな風に性格とか相性とか好みとか言い出したら日本の少子化は止まりませんって感じでした。
前半は擬人化してもいいのですが、後半は擬人化することによってどうしてもいい人を求めてしまうことになり、本来の精子の特徴であるがむしゃらさと矛盾してしまう結果になりました。
かと言って精子同士の話し合いで決めるでもなく、卵ちゃんが積極的に決めるでもなく、そうこうしているうちに主な精子たちは将来の不安のために人間になる気が失せてしまい、結局持久戦でその場を離れ酸素を取り込んでいた精子だけが生き残りました。その精子も卵ちゃんから生存のために取った行為をこすい性格と見透かされ、瀕死の精子に引導を渡したことにも引かれ嫌われてしまいました。
結局今回は受精には至らなかったということでしょうか。何としても卵に辿り着き受精をすることが使命なのに、その過程を否定されては可哀想です。もしかしたら暗転後に強引に受精したかもしれませんが…。
そもそも、太郎君の精子は映画好きで映画監督を目指している太郎君の性格が反映されていましたが、蘭ちゃんの卵は歌手を諦めて内助の功に徹するという蘭ちゃんの気持ちが全く反映されていませんでした。逆に、小悪魔的な卵の性格からすると、本来の蘭ちゃんは歌手を諦め切れない華原朋美さんのような、将来の再復活もあり得るといった感じの女性なのかもしれませんね。
とくお組の鈴木理学さんは良かったです。
満足度★★★
ずーっと
三人でシェイクスピアというのは副題のようなもので、三人の役者さんによってある時はロミオとジュリエット、またある時は夏の夜の夢という風にその都度演目が違っているものだとばかり思っていました。
ネタバレBOX
三人でシェイクスピアの37作品をやり切るというお話。
ロミオとジュリエットから始まり、これは比較的丁寧に、そんなんじゃ90分では終わらないと思っていると、喜劇十数本を、色々あって最後は幸せになりましたとさで一括りにして一気に終わらせたりして60分で終了。と思ったら、ハムレットをし忘れていることに気付き、さあラスト一演目頑張ろうというとこところで女優さんの気力が萎えて帰ってしまい、休憩と客いじりや客いじり的ワークショップがあった後で、何とかハムレットを終わらせて全体で120分の作品と相成りました。
毎回すねて帰るのがお約束なのでしょうが、そういうアドリブ風演出には辟易します。
跳び跳びロングラン、初演から満11年、公式公演184回目のこの日でしたが、役者さんたちは客いじりと客いじり的ワークショップで新鮮さを保っているのだと思いました。
満足度★★★
科学館らしからぬ
淡々と流れているのですがごちゃごちゃしていて、その割にさほど深くもなく、色んなことが腑に落ちませんでした。
ネタバレBOX
若い者同士とか、いくら恋は異なものといっても、あの中で一番無責任で社会や人間のことが分かっていない青年がなぜ心を閉ざした女子大生の心を開くことができたのか不思議です。
男が二股を掛けていて、そしてあちらとは完全に切れていないことが分かっていながら自分の実家の仕事を継がせようと結婚手前の同棲にまで持って行った女性の行動も不思議でした。
マイナスイオンを発する石を見つけて喜んでいた女性研究員ですが、マイナスイオンの効果を利用するというのならともかく、少なくとも科学者のはしくれであったはずの研究員がパワーストーンで一儲けできるとはしゃいでいたのは嫌なものでした。そして二股男とペットショップ兼パワーストーン店を開いたとのこと、科学者の業界団体から永久追放です。
主人公の研究員が近くの天文台の観測結果の数値を集計するアルバイトをしていましたが、紙の資料を見て手作業で入力するようなことがあるのでしょうか。自動集計や自動分析があって然るべしだと思いました。
満足度★★★★
ロシアが舞台
ロシアを舞台にするとこうなるのかという感じでした。
ネタバレBOX
ソ連の没落貴族ならぬ没落反主流派の末路を描いた物語。
肋骨レコードを取り扱うのは命懸けと言う割には、一家の没落の原因はスターリンの死去に伴う派閥争いの結果のようでしたし、人民を監視する組織の人も肋骨レコードを平然と保有していて子どもに秘密だよと言う程度の緊張感の無さに、史実がどうだったかは別にして、恣意的な取り締まりが行われていたことが分かりました。
即ち普段は大目に見ておいて、限度を超したり、気に入らないことがあるとそれを以って厳罰に処すという嫌な社会だったということでした。
上流階級の人たちの驕りやラストのモスクワを発つシーンは如何にもロシア風でした。
満足度★★★★
【チームB】観劇
年相応の役者さんによる切実な現実を描いた等身大のお芝居でした。
ネタバレBOX
劇団の名前からしてそうですが、本当に競馬にこだわっている劇団のようでした。
少子高齢化の問題は、介護のこともそうですが、競馬人口の減少という問題も抱えていることが分かりました。
認知症気味のおばあさん役の役者さん、他のお芝居でもお見掛けしたことがあるような気がしましたが、もう少し磨きがかかれば今後重宝されること間違いないという感じでした。
満足度★★★★★
方方方方
おおらかな北海道らしさを感じました。
ネタバレBOX
出稼ぎ先での夫の浮気疑惑の誤解も解け本当に良かったです。三人三様の生き様は本当に三人姉妹のようでもあり、こじつけのようでもありますが、どんな生き方も肯定しましょうって気になります。
北海道とブラジル日系人の共通点についてはあまり考えていませんでしたが同じ移民の子でした。それぞれの祖先が出身地から持ち込んだ種、そして偶然交配で生まれたパンダ花豆、TPPをぶっ飛ばすまではいかないでしょうがこんなのが名産になるといいですね。
人形劇も楽しかったです。しつこくならないようにこれ以上やらないという自制も良かったです。
満足度★★★
ラストで
少し腑に落ちました。
ネタバレBOX
そのまま死ぬ人もいれば、草を食べて瀕死の状態から生き返る人もいて、統一性の無い、殺戮に明け暮れる世界が延々と描かれていて、意味もよく分からずただただ眺めていました。
ラスト近く、秘刀を柄に取り付けると死神が持っている鎌のようになり、全てが納得できました。そして、ラストでファンタジーの世界の人たちがサラリーマンの格好になり、死神がファンタジーの世界や現実世界でフツーに仕事をしているということで、少し腑に落ちました。
満足度★★★
こちょこちょっと
笑わせてもらいました。
ネタバレBOX
エウロパや宇宙船は出てきましたが、時間が遡ったということが全く感じられず、SFという感じが全くしませんでした。天国と地球との間でも交信できるという不思議なファンタジーでした。
グダグダ噛んだり、台詞を忘れたっぽくしたところが軽妙で、確かに受けました。しかし、ヘタウマとも違う、タコが自分の足を食べているような将来展望の開けない危険な行為のように思えて仕方ありませんでした。
途中途中でスプレーで壁に1、2、3のように書いていましたが、/、ユ、アのように見え、これは何かあると思っていました。終演後にスプレーで継ぎ足し、シーユーアゲインになりましたが、本編とは全く関係無く、そんなところに注力しなくてもいいと思いました。
満足度★★★★★
アイテム
素晴らしかったです。
サカスザカスってまあ笑ってしまうくらいお二人両極端なんですね。
ネタバレBOX
途中から、てがみ座の『ありふれた惑星』を思い出しました。
夏休み、妻が入院している男のところに高校生の姪が転がりこんで来て、さらにそこへ最近懇意にしているキャバクラのお姉ちゃんまで来てしまって、心の奥ではみんな悩みがあるのに取りあえずどんちゃん騒ぎしたりして気を紛らわせていて、男は骨髄移植をしたばかりの妻を捨てて気の合うキャバ嬢と一緒になるのか、姪は母親の再婚を受け入れられるのか、キャバ嬢は妊娠した子をどうするのか、色々あってそれぞれが結論を出すといった話。
と思ったら、結婚式で馴れ初めなどを披露するビデオを撮るために、新郎新婦にインタビューするシーンに転換。
あれっ、先程とは全く異なる役者陣の中に東京03の角田さんが友人役として入っているけど、さっきの男とは違う役だよな、あれっ同じかななどと考えてしまいましたが、違うという結論に至りました。
ということは第二部というよりは第二話。彼女のことを一途に思い続けていた男がその彼女と結婚することになったという話で、再婚となる彼女は病的に尻が軽く、インタビューを受けるにつれ、過去の男性遍歴を思い出し、流産したばかりのこともあって次第にブルーになっていき、あまりにも真面目な男が苦痛に感じられ婚約をいったん破棄しますが、一途な男は全てを受け入れ、下手な歌を歌って思いを伝えて、改めてプロポーズし直したというストーリー。
男と女がとにかく話し合う時間を持つことの重要さを示唆したところが素晴らしかったです。
プロローグとエピローグで男子高校生と女子高生が駄話をするシーンがあり、女子高生は第一話の姪、男子高校生は第二話のビデオ撮影のアルバイトという接点があり、くすぐられます。
そして、ブルーの人形が共通アイテムでした。第一話ではキャバ嬢の携帯ストラップ、第二話ではサムシングブルー、エピローグでは幸運グッズみたいなものとして使われていましたが、アフリカの呪いの人形でも幸せの人形でも言ったもん勝ちでどうでもいいのですが、どちらにせよそういうオカルト的なことに拘泥していることが気に入りませんでした。
『ありふれた惑星』では、二つの話を繋いだのは天体望遠鏡という客観的な物体でした。この話でも、例えば第二話の派手なマイクを共通アイテムにして、第一話ではどんちゃん騒ぎのときに使ったり、エピローグでは男子高校生がカラオケ好きな片思いの子へのプレゼントにするとかしてほしかったです。
そもそもエピローグで、女子高生があの人形を見て何も反応しないこと自体が不思議でした。キャバ嬢のお姉ちゃんにこれは何と聞いたのは正に女子高生だったからです。
そして、あの人形は全く同じものなのでしょうか。一つの物が流れ流れて行ったとすれば、第一話の男と第二話の友人は同一人物ということにもなりますが、うーんその方が劇的、『ありふれた惑星』もそうだったし、それでもいいじゃないかと思いました。
本作品は本作品として素晴らしく、『ありふれた惑星』と比較し過ぎて恐縮ですが、本音で話し合うことの重要性をテーマにしたところも正に同じでした。
満足度★★★★★
いい時代
そんな時代もあったねと、いい時代は短いものだとしみじみ思いました。
ネタバレBOX
段ボールだらけのセット、手に持ったランタン程度の灯りがメインの省エネ仕様で薄暗く、段ボールをかぶったマチが自宅の中を段ボールで飾りたくっています。
段ボールをかぶっていて小柄で玉を転がすような声は正に少女のようで、迷路になった内部での究極の引きこもりは胎内回帰のようです。
自殺したお姉ちゃんのことでお母さんが精神を病み段ボールで飾り始めたことがきっかけだと分かり、マチが思い出す家族風景を私も思い浮かべるとき、自分たちを頼り切ってくれる小学生低学年くらいの姉妹がいる父母、あるいは絶対的に守ってくれる父母がいる子ども、そういう時代が一番幸せなんだとしみじみしました。
満足度★★★★
【虎バージョン】観劇
クスッと、軽妙、そしていい話で締めくくって。
ネタバレBOX
虎に関することわざ等に基づいたちょっとおバカで軽いタッチのコメディ短編集。
虎の穴の探し方・1。2。3。 子どもの才能を見出し育むためにスクールに入れたり先生を付けたりする短編三作品。
ECCが江戸川キャディカレッジだったり、HISが東小岩いろいろサーチだったり、ISSAが一之江スマイルスクール・愛想笑いコースだったりと江戸川区愛に溢れたオバカなお話。
脱ぎたがりタイガーマスク。 好きな女性のために密かに小さな親切をし、それでも知ってほしくて仄めかすと、そのストーカー的行為から大きなお世話として女性から引かれてしまう男の話。なんで女性の好みが分かるんでしょうね。ゴミ箱見ちゃあいけません。
虎の威を借る私。 天才と凡才はいいコンビかもって感じですが、ちょっとばかり意味不明でした。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。ならば・・結構です。主婦24歳。 自然の虎を保護するために働く人が本当に虎穴に入ることもあれば、彼女の家に行ってご両親に頭を下げたことが人生唯一の虎穴だったとしみじみ考える男もいます。そしてその男は、虎穴はもう懲り懲りだけど虎子ならぬ本当の我が子は抱き上げたいなと妻に甘えるのでした。いい話やん。
ところで、虎や狼を表すためでしょうか、尻尾のような布を付けていましたが、フワフワしていて虎には見えませんでした。
満足度★★★★
【TTチーム】観劇
大学生探偵が本を読みながら可能性を挙げ、一つずつ潰していく様子はミスマープルのようでおしゃれでした。
ネタバレBOX
実の妹と近親相姦の関係にあった兄の、妹に対する執着心が招いた悲劇。
妹が嫁いだ先で産んだ子は兄との間の子でした。その子は白血病で、兄はドナーとして適合しているみたいですが、妹との関係を繋ぎ止めたいために骨髄提供は切り札として残しています。もう一人子どもを作ることも、もし生まれた子がドナーとして適合したら自分との関係が途切れる恐れがあるので今では兄は心理的な意味合いで執着しています。
兄は骨髄提供の条件として恨みを持つ妹の夫を毒殺するよう命じる一方で妹の夫が飲むであろうワインボトルに毒を仕込み、妹は兄を半死の状態にして骨髄提供させようと、その程度の毒をジュースのコップに仕込んだものの子が飲んでしまい、乾杯の後で妹の夫と子が死んでしまいました。その後夫と子を亡くした悔しさから、妹は兄のコーヒーに毒を盛りましたが処置が早く一命は取りとめました、というのがこの日起こったことのような気がします。
しかし、誰がどこに毒を入れたかの説明がきちんとされていなかったような気がしてしょうがありません。少なくとも一回観ただけでは分かりづらかったです。
お母さん探偵は、兄に色々聞いて真相を明らかにしていましたが、一つの流れを理解し掛かったところで新たな真相を聞かされても頭が混乱するばかりです。作家さんの頭が良過ぎるのかもしれませんが、やり過ぎは正にパラレルワールドで、自分で勝手に自分なりの真相を思い付いても許されるのではないかと誤解してしまいます。
満足度★★★★★
小ネタのセンスも抜群!
明るくて、可愛くて、メッセージ性もあり素晴らしかったです。
ネタバレBOX
小ネタのセンスが良くて明るい感じで笑いっぱなしでした。
いきなり靴と靴下を脱いで足湯に浸かるとぼけた女性隊員、組織の制服で集合するはずがセーラー服で来てしまった女性隊員、やはり学ランで来てしまった学者風隊員と、初っ端からツカミはOKでした。
真面目ではあるが振れ幅の大きな女性隊長さん、お調子者、ゴジラを感じてピクピク痙攣してしまう女性隊員など色々いましたが、その中でも特に宝探し役の山下征志さんは役者としての対応力、ノリの良さも抜群で、彼の存在がこの作品の成功の大きな要因の一つだと思いました。
大震災の被害状況を目の当たりにして自然の猛威にショックを受けたと小さなゴジラは言っていましたが、恐らくゴジラは同じ放射能を扱う立場の当事者として放射能が人類へ及ぼす害の大きさに改めて気付かされ、人類にもこれ以上原子力を扱うことの無いようにとの強いメーッセージを発信するためにウラン鉱脈の上で寝込んだのでしょう。
シアターグリーン学生芸術祭Vol.7のトリを飾る作品とのことでしたが、トリに相応しいとても素晴らしい作品でした。
満足度★★★★
宝塚風女一座
場内係の人が座長と同じくらいキリッとしていました。
ネタバレBOX
皇女と狐の神との間に生まれた子が後に五右衛門となるが、狐の神に憑依され、不死の狐の怨念がこれ以上世に影響を及ぼさないようにと、策を練って義賊仲間とともに相果てる話。
宝塚風でもあり、宝塚では絶対扱わないようなボーイズ・ラブもありました。
怪我で降板した役者さんの代わりに、4回の練習で完璧に代役をこなした役者さんがいてなんて聞かされるとグッと来てしまいました。
満足度★★★★★
豪華な
客席陣。
ネタバレBOX
地震に伴う原発事故で放射能汚染された地域に隠れ住む徴兵忌避の青年たちを中心にした話。
地震のシーンは迫力あり、見ものです。
人々は身勝手に生きたり、単に流されたりしながら生きていて、理由を付ければ全ては自分なりの正義に基づいているのはいつの世も同じですが、放射能汚染と中国との長期戦という憂鬱な事態が重なった現実で生きるのはとても重苦しいものです。
ところで、須貝英さんがこの公演を以って退団するということもあってか、客席が豪華でした。顔も名前も良く知っている役者さん、恐らく誰々さんだと思うけど名前は少しあやふやな役者さん、お見掛けしたことのある役者さん、たくさんいらっしゃいました。
満足度★★★★★
現在についても言えること
科学者の職業倫理が問われる物語でした。
ネタバレBOX
明治43年(1910年)、ハレー彗星の通過に伴う人類滅亡説を巡る悲喜劇。
フランスの天文学者でありSF作家でもあった人物の文献と小説に尾ひれがついて噂が日本に広まったようです。煽る新聞記者がいて、噂に惑わされる庶民がいました。
地主から虐げられていた自転車屋がチューブを呼吸用に加工して倍返しした程度の話は笑って済ませますが、ごく身近で自殺者が出るに至っては笑って済ますわけにはいきません。噂の真相を知っていたであろう第一線の天文学者が沈黙していたことによる悲劇でした。学者の倫理を問う物語でもありました。
分かっている知識で事象を説明し、分かっている範囲の科学を利用する社会は昔も今も同じです。昔のハレー彗星、今の原子力発電、専門の科学者は沈黙しないで発言してほしいものだと思います。
男娼の話題に拘り過ぎてちょっと引いた面もありましたが、新聞記者が罪滅ぼしと称して孫に託した1986年のハレー彗星観測会のシーンは感動的で清々しい気分になりました。ただし、幽霊による解説は不必要で、先祖との共通点や違いに気付かせるのはそれぞれの子孫の役割で、それに気付いたり命の繋がりに感動したりするのは観客の役割だと思いました。
果物屋のおばちゃんの分かっていても念の為に何でもするという節操の無さは如何にも庶民という感じで素敵でした。絵の上手な祖母と絵の下手なひょうきんな孫の面白さ、それを演じた作者でもある村松みさきさんの多才さにも感心しました。
満足度★★★★★
ハクナマタータ
初ライオンキングゥー!一度は観ておきたいと思っていた作品、とうとう観てしまいました。
ネタバレBOX
キリンは凄いとして、一番驚いたのはゾウでした。一人ひとりが足になり、四人がかりのゾウはでかくて迫力ありました。
父王ムファサと叔父さんスカーの大人の男ライオンの首がヌーっと前にせり出すのにも感心。ま、これは体を屈めたりすればそうなるのかなと思っていましたが、首がクルクル動いたときは装置の凄さに目を見張りました。
スカーもさあ、いくら冥土の土産に聞かせてやりたいと思ったのかもしれませんが、何もムファサを殺したのは自分だと言わなきゃ良かったのにと、王室における次男の立場の微妙さを考えるとスカーの気持ちも理解できるだけに色々考えました。でも殺したのはいけません。
シンバとナラの間に子どもが生まれ、また新しい世代へと引き継がれていく生命の偉大さを感じたラストでした。
満足度★★★★
盛り
ストーリー的には木嶋佳苗事件が面白かったです。
ネタバレBOX
裁判記録に基づくということで何となく法廷劇のようなものを想像していて、秋葉原無差別殺人事件は正にそんな風でしたが、次の連続不審死事件では裁判中の質問や証言に基いた再現ドラマのような様相になり、日本社会党委員長刺殺事件や226事件、異端審問裁判になると、どこまで裁判記録に基いているのかもう良く分かりませんって感じです。
(1)秋葉原無差別殺人事件(被告人:加藤智大) 加藤は、ブログを荒らされたこと、自分の性格、ネットに依存し過ぎたことを動機に挙げていましたが、弁護人は彼の性格形成に家庭環境が大きく影響したと考え、ことさら母親の育て方の異常さを強調する質問を繰り返し、聞いている方は正にそうかなと思ってしまいました。
当日パンフレットに配役として弁護人と書いてありましたが、ひたすら攻め立てるように質問し続ける様からは検事か弁護士か分かりませんでした。
(2)連続不審死事件(被告人:木嶋佳苗) こんな女に参ってしまった父親のことが信じられないという感じで木嶋の家に乗り込んで迫った被害者の娘でしたが、最後娘は睡眠薬で眠らされてしまい、恐らくこの後殺されてしまうのでしょうね。
娘と木嶋の会話から浮かび上がる木嶋の生活振りなどは裁判記録の陳述に基いていて正確なのでしょうが、作者は何も事実に忠実になぞるとは言っていないわけで、このようなサイドストーリーを作って盛っていくとは想像もしていなくて、被害者は男だけという先入観を打ち砕かれ、素直に新鮮に驚かされました。面白かったです。
(3)日本社会党委員長刺殺事件(被告人:山口二矢) 少女が少年鑑別所を訪れたときの話。
山口と少女の関係がお芝居だけでは良く分かりません。とにかく美少女でした。
(4)226事件(被告人:磯部浅一) 軍内部での事情聴取の様子。
腐敗まみれの政商や政治家から天皇を救い出そうと決起したものの、天皇まで声が届かず賊軍として囚われた磯部。そんな気持ちだったのかと思うだけ。
(5)異端審問裁判(被告人:ジャンヌ・ダルク) いったん、教会の意に沿うと署名して死刑を免れたものの、独房にやってきた神の使いから、これまでの行動は神の意志に基づいたものではなかったということかと問い正され、署名を破棄する話。
そもそもの百年戦争ですが、イギリスの神様とフランスの神様がいるように思えて仕方ありません。そして、『るつぼ』を思い出しました。るつぼでは、転向しても良い、生きていくことが大事と言われた男はいったん署名しますが、恥の概念に悩まされ署名を破棄します。
ジャンヌ・ダルクの話になるともう想像の域という感じです。何かあっさり心変わりした感じで拍子抜けでした。
というわけで、全体の終わり方も尻切れトンボのようでした。
最近のものは純粋に事件そのものという感じですが、中世、近代のものは裁判というよりも思想が前面に立って重たくなります。
ところで、全員が裸足で白い衣装、裁判記録から色を付けずに抽出しましたというようなイメージでしたが、実際はさもあらず。色付きまくりでした。
黒い衣装で案内係をしていた人が白い衣装で木嶋として登場したときはインパクトがありました。白いセーラー服も不思議でいいですね。