満足度★★★★
独特の宇宙観
不思議で面白かったです。
ネタバレBOX
旅館を営んでいた父親の葬儀の後、ある女性が弔問に訪れたことがきっかけになって5人の子供たちの隠された秘密がそれぞれ明らかになり、娘や息子の妻たち、孫などの女たちがその女性を逆恨みして殺害するも、その女性は何事も無かったかのように再び弔問に訪れる、というような状況を居合わせた作家が記録し、息子の一人の劇団員が舞台化しようかというところで、この輪廻のような繰り返しが突然白紙撤回される物語。
女性は池に遺棄されたため、二回り目は髪が濡れていました。作家も衣装が変わりました。繰り返しでないかもしれないが繰り返しかもしれない、以前の流しそうめん器の宇宙観にも繋がる不思議な話でした。
その時の女優さんの箸の持ち方が余りにも下手くそで気に入らなかったように、今回のお焼香の仕方も私の立場からすると全く気に入りませんでした。
満足度★★★★
完全版は嬉しい
エッヘンから城明け渡しまで
ネタバレBOX
口上人形
大 序 鶴ヶ岡社頭兜改めの場
二段目 桃井館力弥使者の場
同 松切りの場
三段目 足利館門前の場
同 松の間刃傷の場
同 裏門の場
四段目 扇ヶ谷塩冶館花献上の場
同 判官切腹の場
同 表門城明渡しの場
お軽と勘平の道行だけ観ると唐突感がありますが、その原因となる逢引の場と後悔して去る場があると事情が良く分かります。花献上は41年振りの上演ということですが、花は桜の花のこと、刃傷事件が春だったことが分かります。今回は完全版で本当に嬉しい限りです。
高師直役の左團次さんが上意の書面を持ってくる使者の優しい方の石堂右馬之丞を演じているところが皮肉で面白かったです。しかし、いい役者が死んでしまって全体としては華がありませんでした。ただそのような中でも、力弥の許嫁である小浪を演じた中村米吉さんが若くて可愛いくて一番際立っていました。
以前勘三郎さんが、切腹の場で畳の上に乗るときに、乗ったら最後もう引き返せないという気持ちが表現できるかどうかが大切だと話されていたことがありましたが、舞台の前面全てに10cmぐらいの板が塀のように立ちはだかっていて足元を見ることができず残念でした。
表門城明渡しの場の最後、表門がどんどん遠ざかっていく様は風情がありました。
満足度★★★★
楽しい
作り話
ネタバレBOX
ハロウィン騒動が長期化し、本当に怪我人や死人が出る物騒な時代に、看護師フェチの男が斧を振るう話。
渋谷辺りでハロウィンの仮装集団に紛れて人を刺しても発見が遅れるのではないかと私も常々考えていました。
羊男が出てきたりして、二日続けての村上風作品かと思いました。
最近は筋書きがあって良いと思います。羊男が窓から何回も突き落とされてもその都度戻ってくる体力系は残っていました。
満足度★★★★★
真剣で壮大
不思議な世界に出掛けることができました。
ネタバレBOX
人間が不妊になっていずれ滅亡するかと思われた頃、オーストラリアのエアーズロック近くに大きな穴が開き、そこに死体を入れると若返って蘇るという事態が発生。そのような中、蘇生組織に関わることになった絵描きの男を中心とした壮大な創作話。
真剣な演技による壮大な作り話は大好きです。素晴らしかったです。
村上春樹作品は、昨年舞台で『海辺のカフカ』を観たぐらいで、小説もほとんど読んだことはありませんが、主人公が死を感じさせる異質な世界へ出掛けたり、新興宗教的な組織が出てきたりするのが村上作品の特徴だとすると、本作品を観ているうちに村上作品を観ているような感覚に陥りました。
絵描きの妻の風貌、しゃべり方が鈴木杏ちゃんに似ていたこともそんな気にさせた一因かもしれません。
満足度★★★★
【Aver.】観劇
若さに溢れていました。
ネタバレBOX
野球部のキャプテンに恋した女子高生と、好きな故にそれぞれ彼女を応援することになった二人の男子高校生の話。
見守る大人がいて、真剣な応援団風景があって、ありきたりな青春物の一つという印象でした。
恋した女子高生はキャピキャピ感があって元気良く、主役として文句の付けようはありませんが、ただ友達の女子高生の方が可愛く、どうして男子高校生たちは彼女に目を向けないのか、お前ら節穴かと思いました。
満足度★★★★
【恐らく宮下紘樹が少年の回】観劇
3cmが気になりました。
ネタバレBOX
橋爪功さんと石倉三郎さんによるゴドーを観てから5年半も経っていたとは、時の流れの速いことに驚きました。
始まってすぐ原田大二郎さんのディディが帽子を脱いだときに、分け目の生え際から3cmほどまでが白く、そこから先が黒茶っぽくなっていることに気付き、違和感を覚えました。
貧乏そうなディディやゴゥゴの衣装からすると、彼らが自宅にいた頃は髪を染める習慣はなかったのではないかと思い、どうしてこの地に来て髪を染め、どこで、しかもなおかつ3か月程度経ったことを示す必要性があるのかと考え込んでしまいました。この地に来て、何かのショックでその時点から白髪になったとしても、やはり3か月という数字を示すのは不自然です。
第二幕は第一幕の翌日とは限らない設定ですが、3cmを見てしまうとどうしても第一幕から大して日数が経過していない方向に引きずられてしまいます。要するに、具体的な時を感じさせないようにしてほしい、染めるならきちんと染めてほしいと言うことです。
ポッツォが失明して、ラッキーとの立場に変化が生じるなど、人間に伴う生老病死の条理を改めて再確認しました。
第二幕の葉っぱは複数枚でしたが、葉音がするには複数枚が必要なのかなと思いました。
満足度★★★★★
楽しめて、考えさせられて、
学園物としての面白さがベースにあり、そこに戦争体験者の説得力が加わって素晴らしかったです。
ネタバレBOX
イラクから来た転校生によって具体的な戦争の恐ろしさを知った中学生たちと、その中の一人の女子中学生が彼女の兄がイスラム国へ行こうとするのを、転校生の体験談を踏まえ思い止まるよう説得する話。
自爆テロの恐怖、戦闘から逃げ惑う人々の姿など特段目新しい発見はありませんでした。それでも、そもそも機関銃を持つ兵士が自分の生活環境に存在する現実を見せつけられるだけで、戦争の恐怖が伝わって来ました。素晴らしかったです。また、甘い言葉と、家族を実質的に人質に取ることで、少年に自爆テロの実行を迫る実態を体験者から直接聞くことの衝撃は大きなものでした。
そういう話でありながら、学園物の甘酸っぱさもふんだんにあって面白かったです。
人の不遇にかこつけて勧誘するイスラム国はまさに新興宗教の勧誘そのもので、祈って実現したら全員が宝くじに当たるってことですから、祈りの無意味さと現世利益は無いことをしっかり認識する重要性を再認識しました。
いつものスローなダンスはもう飽き飽きしていましたが、今回は机を移動させるための統一したパフォーマンスで、充分に受け入れることができました。
満足度★★★★
譚
久し振りのIq5000でしたが、やはり譚でした。
ネタバレBOX
目の悪い仲間のために北方の湖に果実を求めて出掛けたものの寒さで死ぬ者が続出し、マンホールに残った者も、臓器売買業者の人刈りのための水攻めに遭い半数が死ぬなどの苦難を味わうも、仲間を思い精一杯生きるマンホールチルドレンの話。
友情に溢れ元気いっぱいの冒険譚。ですが、社会派的意義があるとは言えベテランの域に達した役者がいつまでも冒険譚をやってていいのかなとも思います。
髪いじりは余り心地いいものではありません。
満足度★★★★★
上手く行かない
本も役者も悪くないのに観客が8人というのは如何にも世の中上手く行かないという典型例であり、本作品の趣旨に沿うものでもありました。
ネタバレBOX
2075年に関東大震災があり、2099年に第三次世界大戦が始まった後の札幌の保育所が舞台。両親を亡くし叔父に育てられた女性が、その事実を知り、受け入れ難く札幌へ逃げたものの、ほのぼのとしたように見えた保育所でどろどろとした不倫がらみの事件に巻き込まれ、何度やり直しても悲惨な結果になる不気味な話。
保育所の室内では何ともなさそうですが外では防毒マスクが必要、時々空襲もあり、学芸会では国威発揚のために敵国に例えた鬼畜をコテンパンにやっつけるといった桃太郎を演目にするなど背景は不気味です。加えて、死神みたいな者によって時を巻き戻してやり直すダブルSFの構成はとても面白かったです。
更に、親子関係にも触れるなど、ほのぼのとした印象からどんどん離れていくところが素敵でした。ただ、時代背景として大地震で両親を亡くした幼子は多かったはずで、この事実を受け入れ難いというのは設定としては少し無茶かなと思いました。
満足度★★★★
おんなじです
女性の一生物二本立て。
ネタバレBOX
『棘』 普通の女性の、高校時代から50代で癌で死ぬまでを描いた話。(約75分)
内容は単調、そこらへんの子供に向かって自己啓発なんて言葉を使うかいなって思いました。女性の属性として大して美人ではないと理解していたので、高校の先輩が彼女と付き合った理由が虚栄心というのも意味が分かりませんでした。女性の泣き方とか、泣くときのしゃくりあげ方とか、とても上手いのですが、私上手いでしょう的なちょっとやり過ぎ感がありました。女性本人が浮気していたなんていう設定は、突拍子もないことを突然挿入したら面白いのではないかと思って挿入したとしか思えませんでした。
『スキューバ』 海が好きだった女性とその家族、子供を描いた話(20分)
子供への読み聞かせ本が、「イルカになりたかった少女」から「イルカになった少女」に、一世代進むところが素晴らしく、20分の短編で戦う演劇祭で賞を取ったというだけのことはありました。
ただ、二本続けて見ると、どちらも同じ傾向の作品で、創造力の限界を感じてしまいました。アフタートークの永井愛さんもそこのところへの厳しいツッコミはありませんでした。皆さん同じ悩みで苦しんでいるのでしょう。
満足度★★★★
難解
大阪からご苦労様でした。
ネタバレBOX
匿名劇壇『戸惑えよ』 宇宙人が持ち込んだ物質によって感情を失くした人の話。
感情を失くしても感情表現を演じることはできるようですが、感情を失くした人に感じろと迫っても詮無き事のように思いました。こちらも感情を失くしていたので、良く分からないまま終演となりました。
Plant M 『君ヲ泣ク』 戦場境界線でピクニックする女性たちがいたり、戦争が続くとそれを前提として生きる人、現状を見ない人、戦争に反対する人などがいるというような話。
戦場でピクニックする不条理劇はありましたね。難解でした。
満足度★★★★★
ハニートラップ
というわけではないけれど、なめて掛かったら深いところまで引きずり込まれてしまいました。
ネタバレBOX
観客参加型というので一番後ろの座席にでも座ろうかと思って行ったら、地底人のお姉さんに優しく指図され、危険防止のための眼鏡作りというかお面作りというか作業をさせられ、開演時間になったら眼鏡を付けてエレベータで地底に行って、地底人から神話を聞かされたりゲームをしたりしているうちに、地上では優しかったアオザイさんが実は身分の高い家の出で、地上人を見下していることを知り、更には私たちは労働力として拉致されたことが判明。ありゃ、こりゃ注文の多い料理店じゃないか、してやられたなと思う間もなく、地底人は人間ではなくネズミだったようで、ということは私たちもネズミだったんだと認識させられることになり、そう言えば眼鏡の端に丸い円状の物が付いていたな、それがネズミの印だったんだと思っていると、さあいつまで眼鏡を付けているのかと地底人に詰め寄られ、サクラと思しき観客が眼鏡を外すと多くの観客も徐々に外し始めたのですが、私は人間としてのプライドがそれほどあるわけでもなく、自分は人間でもネズミでもどちらでもいいやと思いネズミのお面のままでおりました。
少子高齢化で労働力だけほしい日本のようでもあり、地底人なんているわけないけど、ネズミなら土に穴を掘って暮らしている種類もあるし、人間が人間同士で差別するように、ネズミならネズミ同士で差別するんだろうなと、差別の本質についての理解も深めることができました。
奥が深く素晴らしかったです。
満足度★★★★
面白く
可愛く、シュールな面もありました。
ネタバレBOX
ちょっと可愛い勘違い娘武内富久美が女優を目指して東京に出てエキストラ専門女優鳳素子に誘われ芸能事務所に入ったものの、結局は才能がなくエキストラ止まりで終わって普通の主婦に収まるまでを描いた話。
舞台上の富久美はかなり可愛いく、本当はちょっと可愛いけれど田舎臭いという設定なのでしょうが、そう考えると設定とは大分違っていました。
先輩の鳳素子は面白く、他のエキストラたちも上手く行きそうになっては挫折するところが何とも物悲しくて良かったのですが、高校時代から主婦になるまでの富久美をきちんと順序立てて描く構成のためにもっとぶっ飛んでもいいはずの面白さが窮屈になっていました。生活臭溢れる富久美はあまり見たくありませんでした。
学生演劇で主役を素子に奪われた腹いせに、素子に勘違い人生を歩ませようと企み芸能プロダクションの社長になった女社長の執念には驚かされました。
満足度★★★★★
マジさ
素晴らしい。
ネタバレBOX
まだやくざが芸人を仕切っていた頃の昭和の浅草を舞台に、みなし子から芸人、ダンサー、暴力団の若頭になった三人を中心として浅草界隈の人々の生き様を切なく生々しく描いた話。
いつものように山野海さんのマジが素晴らしく、全員が引っ張られる形で舞台が作られていました。素晴らしかったです。
させこ、床上手事情については面白く学ばせていただきました。社長の座を姪に譲り芸人に復帰するのかと思わせておいて実は若い男との駆け落ちだったというオチと、大人しいダンサー見習いからいきなり口の汚い社長として仕切り出すなどの大阪の新旧女興行主の変貌振りにも笑いました。
こうしたマジな生き様を昭和でなく現在に置き換えて見せてほしいと思います。
満足度★★★★
[真]観劇
少し長い。
ネタバレBOX
記載された歴史上の人物が呼び出せる本を入手したへなちょこ青年が、坂本龍馬や土方歳三らとともに信長の野望を打ち砕き成長する話。
信長は現代人を欲望のまま生きていると批判していましたが、いつの時代だってそうで、無気力な主人公を見ているとむしろ欲望のまま生きてほしいと思うくらいでした。
友人が佐々木小次郎に延々と追い掛けられる小ネタは面白かったのですが、もう少し集約することも必要かなと思いました。殺陣はもう一つのようでした。
満足度★★★★★
【登澤の回】観劇
観劇で、途中、今年一番ワクワクしたかも。
ネタバレBOX
ネットカフェの壁の先のインディジョーンズ。子供の頃に親に捨てられ、施設でも大事なぬいぐるみを隠され人間不信になった青年が、ネットカフェで各自の居場所について書かれたいくつかのブログを見ているうちに聖杯を発掘する作業の世界に入り込み、最後自分にとっての聖杯を見つけ出し立ち直っていく話。
会社の金を横領する男が登場したときに発想力の豊かさを認識し、暗転後インディジョーンズの世界が広がったときにはアッと驚き、落ちそうになりながら壁をよじ登り移動するときは本当にワクワクしました。素晴らしかったです。
結局は妄想の世界、夢オチ的なところは少し残念、みんなが青年にメッセージを述べるのは少し抹香臭く感じました。そこまで丁寧に種明かししなくても、そこまで丁寧な大団円にしなくても良かったのではと思いました。
次回作はダイハードだとか。本当だとすると次回の驚きが半減します。これも別に言わなくてもいいのではと思いました。
満足度★★★★★
60分間
やり遂げたという清々しい表情が素敵でした。
ネタバレBOX
ストリート風のコンテンポラリーダンス。
当日パンフレットに、練習段階でダンサーが自らアイデアを出し合い楽しそうに演じていたとありましたが、それだけにキレキレのストリート系に比べるとキレが甘いように感じました。
満足度★★★★
【はち組】観劇
元気いっぱいでした。
ネタバレBOX
陸上部の有望選手を応援するために作られた高校チアリーダー部の話。
応援団の延長、立体的ではありませんでした。
100mの準決勝後に肉離れを起こした選手が決勝戦に出場するのを美談にしたところは全く理解できませんでした。陸上選手の将来を考えれば、監督は制止し続けるべきでした。高校野球でも、投手のローテーションを重視する高校がある時代なのに残念でした。若い女優陣が中心の活気溢れる作品であるだけに時代遅れ感はなおさら残念です。
満足度★★★★★
衝撃的
リアルで迫力ありました。
ネタバレBOX
日本人は抵抗しないと思い込んで大暴れしたフーリガンに立ち向かい、フーリガンをぼこぼこにしたことで、意に反して外国人排斥運動のカリスマに持ち上げられた男を中心に、一般から青と呼ばれた彼らの顛末を描いた話。という訳で、青とはサムライブルーの青でした。
ネウヨが現実世界で狂暴化して殺人する様や、男の本性を試そうとバットを振り下ろすシーンなど暴力表現にリアルさがありました。
ラストシーンもリアルで衝撃的でしたが、日頃の行動からするとかんぬきは掛けていたはずで、少し都合よすぎるかなとは思いました。
女性を監禁してDVを繰り返していたのが元々の男の本性だとすれば、狂暴性の根源が説明できて理解できますが、DVシーンは大嫌いであるとともに、悪いのは自分だと自虐的に振る舞う女性の存在も見るに堪えませんでした。
満足度★★★★
如何にも
翻訳劇風
ネタバレBOX
夫ジェイコムの死を知らされ、5年振りに帰ってきたイーディが、連絡をくれたサムと対話することによって様々な関係性を観客に知らしめてくれる二人芝居。
サムと浮気して、イーディの気持ちはサムに傾いたものの、ジェイコムのイーディに対する気持ちは強く、またサムは兄貴分的存在であるジェイコムに気兼ねする面もあって、いたたまれなくなったイーディは出奔。ジェイコムを殺した16歳の少年ケビン・ミラーは、サムが保護観察処分と判断して刑務所送りにしなかったことで近所に住み続け今回の犯行に及んだものです。サムは保護観察の判断は正直賭けのようなものだと吐露していますが、著名な音楽家であるジェイコムに危害を加えることを期待していたのかもしれません。著作権等の遺産はイーディが相続。愛故か打算か、サムとイーディは再び関係を持ちそうです。
しゃべり方とか、翻訳劇だとどうしてもこうなってしまうのか、あるいはことさら翻訳劇風に演じているのか分かりませんが、如何にも翻訳劇風でした。