KAEの観てきた!クチコミ一覧

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ハッピー・マン

ハッピー・マン

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2010/01/24 (日) ~ 2010/01/31 (日)公演終了

満足度★★★

ミニチュア新感線試運転風芝居でした
気恥ずかしく、気忙しく、何と無く、開幕当初は、どういうスタンスで観ればいいかと戸惑いましたが、その内、気持ちも馴染んで、楽しく厭きずに観られました。
でも、いつもは生真面目な舞台がお得意の青年座。
この芝居に馴染んで演じていると感じた方は、全員客演さんでした。
私にとって、ピカイチだったのは、薩摩藩士五代を演じた石井テルユキさん。
この手の芝居はこういう風に演じてこそと思える名演で、舞台から石井さんが消える度に、次の登場を心待ちしてしまいました。
麗華役の松山さん、松陰と秀成の二役を演じた秦さんも、共に好演でした。
青年座陣では、竜馬の高松さんと、パンダの野々村さんが、楽しげに役を演じていて好感が持てました。
高杉役の宇宙さんは、青年座には稀有なタイプの役者さんなので、この芝居で、主役に抜擢されるのは彼以外いないと納得できましたし、殺陣も綺麗で、いい役者さんに成長されたなあと感嘆しましたが、やや台詞が聞き取りにくく、主役としてのオーラや色気がまだ若干不足している気がしました。
むしろ、音楽座を辞めてフリーになった吉田朋弘さんは、学生時代から兼ね備えていたオーラに益々磨きが掛かり、異彩を放っていました。
バリー・ハグレー役だけは、何故客演さんである必要があったか、やや疑問でした。この役、山路さんだったらなと妄想しつつ、観ていました。

そう、そろそろ、山路さんや高畑さんを、青年座の舞台で観たいです。

ネタバレBOX

舞台構造も、芝居内容も、青年座らしからぬ舞台。
青年座の役者さん達、懸命に演じられる程に、この芝居の空気感とは違和感が生まれる気がして、まだこの劇団には、まさに‘冒険劇’ではと思いました。
舞台、4方向から、役者が出入りしての、新感線張りの殺陣や活劇は、興奮するより、何だか気忙しい印象でした。
パンダ役の野々村さんが、非常に愛嬌があって、お気に入りでした。
五代の台詞から、寺田屋事件の時、竜馬は、上海にいたような話でしたが、いくらフィクションとは言え、それはちょっとどうかしら?と気になりました。
八百屋のお告げ

八百屋のお告げ

グループる・ばる

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2006/11/17 (金) ~ 2006/11/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

もう一度観たい
もうね、これは、本当に、最高でした!
聡さんと裕美さん、両鈴木さんの、最高傑作のひとつだと思います。
松金さんのあの演技、もう一度生で観たいです。
再演してくれないかなあ?

忘れ人 -公演終了しましたありがとうございました-

忘れ人 -公演終了しましたありがとうございました-

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「劇」小劇場(東京都)

2010/01/21 (木) ~ 2010/01/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

虚構の中のリアルが生きていた
こういう舞台を観ると、半世紀も演劇ファンでいて良かった!と幸せな気分になります。
セットも、キャストも、筋立ても、全てが自然で、秀逸。
ラストに向かっての、細かな伏線が、わざとらしくなく、うまく織り交ぜられ、ヒロセさんの才気に感嘆しました。
それに、登場人物全員に、何か共感を覚える部分があり、二時間を登場人物と共に、生きたような充足感で、胸がいっぱいになりました。
笑って、泣いて、終演後、お気に入り劇団がまたひとつ、増えていました。
キャストの皆さん、全員に多大な好感を持ちましたが、中でも、ヒロセさんの双子のご姉妹という広瀬喜実子さんの、自然体の秀逸な演技には、終始目が離せませんでした。

ネタバレBOX

まず、セットを見た瞬間、気持ちがワクワク!
腰痛を押して観に来た甲斐ありと思いました。
木の上に造られたログハウスの設定が、アイデアとしても、筋立ての流れにも効力が利いて、人物の出はけにも、作者のご都合主義を感じない。
前半部分で、何気なく語られたり、登場する小道具が、意外な結末のために、用意周到に準備された伏線だと知った時は、気持ちよく騙された爽快感さえ感じました。
どんな良い芝居でも、幕切れが鮮やかだと思わされた経験は少ないけれど、このラストシーンは、とても気に入りました。
見えない校庭を、うまく生かした作劇センスに、魅了されました。
音楽劇「雨を乞わぬ人」

音楽劇「雨を乞わぬ人」

黒色綺譚カナリア派

ザ・ポケット(東京都)

2010/01/20 (水) ~ 2010/01/24 (日)公演終了

満足度

作劇の意図が不明
こんな奇習があったりするよということを提示したかっただけ?と思ってしまう舞台でした。
一番印象的だったのは、セットと、皆さんの歌がなかなかお上手だなという二点。
とにかく、人物描写が通り一遍で、人物同士の関係性も表面的。
赤澤ムックさんは、作劇より演出に才のある方なのかなと感じました。
同じような題材の芝居では、以前、地球ゴージャスが、亡き本田美奈子さんを主役に据えて、桑田圭祐の楽曲を使用して上演したミュージカルの方が、ずっとエンタメ性も高く、感動作になっていました。
キャストも、演技者としての基礎力が不足している方が多いのか、よく台詞が聞き取れない部分が多いのも残念でした。

不思議な魅力のある、牛水さん、元子役の中里さん、屈折した女性を好演された佐藤みゆきさんの演技が印象に残ったものの、男優陣にはっきりとした個性がなかったのは、そこまで人物を掘り下げていない脚本のせいかもしれません。

ブロードウェイミュージカル「キャバレー」

ブロードウェイミュージカル「キャバレー」

ホリプロ

日生劇場(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/29 (金)公演終了

満足度★★★

終わり方に疑問が
紀香さんは、ハスッパで、チャーミングなサリーを、持てる力を最大限に生かし、好演されていたと思います。阿部さんは、雰囲気はいいけれど、もう一つ役を生き切れてない感じで、サリーとクリフの気持ちの通い合いがイマイチ表出されないので、むしろ、杜けあきさんと木場さんのカップルの方が物語の主軸に見えてしまいました。
諸星さんのエムシーは、全体的に見せ場たっぷり。予想以上に好演されていて、嬉しい誤算でしたが、期待していた小池さんの演出には、どうにも腑に落ちない点が…。
やはり、私にとっての最高の「キャバレー」は、17~8年前のシアターアプルでの、草刈さんと美波里さんのバージョンでしょうか?

ネタバレBOX

アメリカに一人戻るクリフが、サリーとの思い出を小説に書く車内で、終幕かと思いきや、クリフがその後、戦争に従軍して、戦死するところで、幕になり、大変意外でした。もっと観客にわかりやすいなら、それもありだとは思うけれど、どうやら、ナチスの秘密を握っているために、暗殺されたように解釈した観客が結構いたように思います。
むしろ、少年隊の錦織さんがエムシーを演じられた時の、彼が実はユダヤ人で、強制収容所送りになったという結末の方が良かった気がしました。
それに、キットカットクラブの女性楽団に見立てて、実際の楽団の方達に、躍らせた演出は、白けました。せめて、演奏だけにしてほしかったと強く思います。
冬のライオン

冬のライオン

幹の会+リリック

東京グローブ座(東京都)

2010/01/15 (金) ~ 2010/01/24 (日)公演終了

満足度★★★★

名コンビ誕生、堪能しました
『山の巨人達」の時も、このお二人、相性抜群と感じましたが、平さんと麻実さん、ピッタリのコンビネーションでした。
半年前にこの芝居を観ていたら、たぶんチンプンカンプンでしたが、「ヘンリー6世」上演の折、かなり英国王室の歴史を勉強させて頂いたお陰で、人物関係も歴史的背景も概ね理解でき、楽しんで観劇することができました。
とは言え、レトリックや皮肉がかなり散りばめられた台詞の深い意味合いを瞬時に理解するのにはやや労力が要り、時々睡魔に襲われてしまいましたが…。結構、あちこちで、ご同類がいたのか、寝息が聞こえて来て、熱演の役者さんには申し訳ない気分でした。
でも、王家の歴史はさて置いても、夫婦の愛憎劇として観れば、かなり興味深い内容でした。長年連れ添った夫婦なら、どこの国でも、いつの時代でも、共感できる部分があるのでは?
でも、これ、名優お二人の主演だからこその成果かも?もっと実力のない役者さんが、この作品をやったとしたら、ずっと眠ってしまったかもしれません。
とにかく、平さんと麻実さんの応酬が圧巻で、「いよォ、名コンビ!」と心の中で、掛け声掛けてしまいました。
座った席からは、時折舞台裏が見えてしまって、興をそがれたのが残念です。

黒いインクの輝き

黒いインクの輝き

ブルドッキングヘッドロック

サンモールスタジオ(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/18 (月)公演終了

満足度★★★★★

早くもベスト10入りの予感
喜安さんは、何度も舞台で拝見していましたが、作演を拝見したのは初めて。
いやあ、もう本当に驚き、感心しました。
14人全ての登場人物に、必然性があり、キャラが立って描かれ、全員にリアリティがある!!
こんな血の通った脚本を書ける人って、そうはいない筈です。
だいたい、男性なのに、こんなに女性を緻密に描けるなんて!
一度で、喜安ファンになってしまいました。
その上、筋にも一切の破綻がなく、エピソードの出しどころもテクニシャンで、2時間10分、全く厭きることもだれることもありませんでした。
そしてそして、ここが最重要ですが、11人の女優さんが、全員、甲乙つけ難いくらい超好演されていて、まだ1月にも関わらず、この舞台は、自分の今年度ベスト10に間違いなく入る予感がしました。

林さんと大西さんが、実際はそれ程年齢差ないでしょうに、しっかり本当の母娘に見えたのも驚きでした。

ちょっとわざとらしい前説さえなければ、満点の、大変クオリティの高い舞台でした。
本当に、素敵な舞台を拝見できて、幸せに思います。

ANJIN〜イングリッシュサムライ

ANJIN〜イングリッシュサムライ

ホリプロ

天王洲 銀河劇場(東京都)

2009/12/10 (木) ~ 2010/01/18 (月)公演終了

満足度★★★

時代物の難しさを感じました
日本人ならまだしも、外国の作家がよくぞ、ここまで、ストーリーをまとめ上げたとまず感心しましたが、本来なら、大河ドラマで1年掛けて描くような、長年に亘る物語なので、どうしても、歴史の流れを語る必要があり、その分、内容が薄まった感は否めません。
家康と、按針と、ドメニコと、主要人物が3人いるので、誰か一人を主軸に置いた、ストーリー展開の方がよかったように思いました。
それに、関が原の戦い~大阪夏の陣までの経緯や、プロテスタントとカトリックの宗派の違いによる壮絶な争い等について、観客は予備知識があるという前提に立った筋運びなので、歴史に精通していない人が、どれだけ理解できるだろうかと、やや心配にもなりました。歴史時代物の、上演の難しさを感じます。

3人の中では、按針を演じたオーウェンさんの演技が飛びぬけて秀逸でした。
右も左もわからず、家康に謁見した時から、だんだん日本人武士として、生きていくに至る、心身の変化の体現が見事でした。
そして、またまた名子役さんに大当たり!秀頼と国松の二役をやった子役さんに泣かされました。 

全体的に、セットの転換が、素人仕事的だったり、衣装がしょぼい感があったり、重厚さに欠けたのが、残念でした。

小学生の時、「徳川家康」が愛読書だったので、小林勝也さんの本多正純が、まさに私のイメージ通りで、嬉しくなりました。

ネタバレBOX

3人の主要人物を均等に描くだけでも、話が散漫になりがちなのに、家康と秀忠の親子関係にも、光が当てられ、ちょっとストーリーが間延びした気がします。
でも、実は、その場面が一番興味深かったのですが。
家康が、孫娘千姫の子供である国松に、信長の命により、かつて、長男を自ら殺さなければならなかったことなどを語り、国松の持つ豊臣の名前が災いをもたらす危険があるために、死んでもらわなければならないと語り諭す場面は、市村さんと子役さんの名演により、この舞台で最も、印象深い名場面となりました。
DANCE SYMPHONY2010-LOVE -

DANCE SYMPHONY2010-LOVE -

ニッポン放送

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2010/01/12 (火) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

光と音とダンスの美しいシンフォニー
素晴らしかった!
歌も台詞も一切廃して、とにかくダンス、ダンス、ダンス…。
若い男性ダンサー14人のダンスは、本当に華麗で、素敵でした。
4人のメイン・ダンサーのそれぞれの特質に合わせた、ダンスプログラムと言い、並べ方と言い、演出、振り付けが秀逸でした。
照明も音楽も、セットも、全てが同じ色で、統一感のある世界が、見事に14人のダンスと融合して、荻田ワールド全開の、幻想的で魅惑的な世界を創り出していました。
とても幸せな1時間45分でした。
久しぶりに、ダンスだけの東山さんの舞台に、今までの欲求不満が解消されました。やっぱり、東山さんの踊り方は綺麗です。

世界の秘密と田中

世界の秘密と田中

ラッパ屋

紀伊國屋ホール(東京都)

2010/01/09 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

今までで最高作でした
ラッパ屋、拝見するのは三度目ですが、今回が一番良かった!
前2回は、一つの場面に雑多な登場人物が出たり入ったり。そんな人通りのある場所で話さないような会話や痴話喧嘩等を無理矢理露呈させたりと、どうしても段取り芝居になりがちでしたが、今回は、作者の工夫が功を奏し、そういった作劇上の違和感が皆無な上、登場人物のキャラクター設定も大袈裟でなく、すんなり素直に、舞台上の人物に気持ちを寄り添わせることができました。 
鈴木さんが、長年温めていた、ノートに書き溜めたフレーズの数々を、満を持して発表されたらしく、さすがの職人技の傑出舞台でした。
キャストも、今回は、無理して役を振り分けた感が一切なく、皆さん、適材適所の配役で、まさに、熟練劇団の為せる技! 

二―ル・サイモンやレイ・クーニー等、喜劇王はたくさんいて、大好きではあるけれど、やはり、国や人種や宗教観の違い等で、日本人には100%笑いきれない部分をいつも感じますが、今回のラッパ屋は、欧米のコメデイの大家に匹敵する上等な人情喜劇に、日本人ならではの程よい味付けを施した日本のコメデイの最高峰的作品でした。
強いて言えば、もう少し、終盤をテンポ良く終わらせた方が、冗長感を感じなかったかなと思うくらいでしょうか?

年明けから、良い舞台の連続で、今年は幸先良いなと嬉しくなります。

ネタバレBOX

同じ家具付きの同じタイプの部屋ばかりのアパートという設定で、一つのセットを、各登場人物の部屋として、使い回す手法が小粋で、場面転換のテンポアップにも好影響。
今度は、誰の部屋で、誰の話?と、観劇中、おまけの興味まで湧いて、ずっと厭きることがありませんでした。
玉村と礼子のベットシーンが、いつの間にか、田部と美雪のシーンに摩り替わった時は、心で喝采を叫びました。
死んだ村田が、椅子にのめり込んで消えて行くなんて、「四谷怪談」の提燈抜けさながら。
今回のラッパ屋は、演出も洒落ていました。
劇中、売れないストリートミュージシャンが歌う挿入歌が、何だか無性に気に入って、一緒に歌いたくなるくらいでした。
外国のコメデイだと、いきなり会ったばかりの男女がベットへ直行ってパターン、よく目にしますが、何か、腑に落ちない感があったけれど、こういう流れなら、妙に納得できてしまう説得力のある脚本でした。
本当に、今回は、全てに調和が取れて、ラッパ屋の面目躍如公演だと思います。
光る河

光る河

てがみ座

「劇」小劇場(東京都)

2010/01/06 (水) ~ 2010/01/11 (月)公演終了

満足度★★★★

描きたいものが多すぎたのでは?
今回も、長田さんの作劇の構成力には感心しました。
前回の2作品ともまた異なるタイプの芝居で、サスペンスタッチなストーリーなのに、筋に何の破綻もなく、ご都合主義な展開もないし、それでいて、説明台詞は極力廃しつつ、ストーリーと人物を同時に描ける筆力もある。
やはり、相当才気のある方だと再認識しました。

ただ、残念なのは、サスペンスタッチにしたために、事件の核心に迫る物語進行に筆が割かれ、その分、各登場人物の掘り下げが充分でなかった点です。
本当に、実力あるキャスト揃いでした。気になる人物もたくさんいました。
それなのに、各人の抱えている思いの表出には至らない部分が多く、もったいない感がありました。
これだけの実力あるキャストなら、もう少し各人を掘り下げて書かれた脚本で、手塚夫妻を脇役にした、別バージョンの「光る河」が観てみたい思いに駆られました。それも、舞台ではなく映像で。  

ネタバレBOX

登場人物が11人。その内、主要人物が5人。でも、その上、死んだ人間二人と、手塚夫妻の姉も、キーマンとして描かれている。
それなのに、事件の経過と顛末をストーリーとして、描かなければならない。
描きたい題材を随所に散りばめ過ぎて、ストーリーも人物も、中途半端な描き方になってしまった気がします。
手塚夫妻の、姉を裏切って逃げたという心理的ダメージも、想像はつくけれど、細部を理解するには、説明が不足していました。
それを、客に提示するために、妻がひき逃げ犯になるかもしれないパニックシーンで、二人があんな回想をしたり、夫が、鞄の中に閉まっていた離婚届用紙を破り捨てるのは、情況として、考えにくい気がしました。
父が取り上げた子供に対する、父と同じ職業を選んだ巡査の思い。人生に希望をなくして、起こった出来事に抗うのをやめた、浮浪者の女の思い。公務員でありながら、犯罪に手をそめてしまう倉橋の心の軌跡、仕事と信念の矛盾に悩む、若きテレビマン…。そういう、見届けたい素材が、最後まできちんと料理されていなくて、おいしい食事を味わいきれない不満が残りました。
あえかさんの歌のバックに映る映像が、その足りない部分をずいぶんと補っていたので、この題材はむしろ映像向きだったように感じました。
「天国と地獄」のような、高層マンション住人と、河川敷のホームレスの対比も 、映像の方が説得力を持ったでしょうし。
登場人物11人で、サスペンス2時間ドラマ的題材は、不向きなのではと感じました。 

松田正隆さんの作品や、キャラメルボックス版「容疑者Xの献身」や、黒澤監督の「天国と地獄」や、内野さん主演の「ブラック・バード」や、様々な演劇や映画が頭をよぎり、これは、長田さんの引き出しの多さが、裏目に出てしまったような気がして、観ていました。

前回の公演で、人の良い工場従業員役だった武谷さんが、今回は、全く異なる役を好演されていて、ふり幅の大きい役者さんだと感心しました。
田村さん、尾崎さん、大石さんと共に、今後も注目したい役者さんが、また一挙に増えて、今年は、また観劇舞台が大幅に増えてしまいそうです。
シャドーランズ

シャドーランズ

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2010/01/06 (水) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

静謐な愛の物語
思った通り、春風ひとみさんの出演が、この作品を成功作に導いていました。
春風さんが、舞台に登場した途端、舞台が波打ち、みるみる気持ちが引き込まれて行くのがわかり、二人が心を通い合わせて行く気持ちに寄り添いながら、最後まで、見守ることができました。
日本人では、なかなか口にしないようなストレートな愛情表現も、加藤さんと春風さんの口から発せられると、なんの違和感もなく、素直に感情移入できて、清々しい気持ちになりました。

取り立てて、センセイショナルな物語進行ではないので、春風さんでなく、演出が鵜山さんでなければ、これ程、感動的な舞台に形成するのは、難しい題材だったかもしれません。
それに、ストーリーに重要な役どころの子役さんが、本当にいい演技をされて、お二人の名演に水を注さなかったのが、救いでした。
主人公の、神に対する思いが、彼女との関係を通して、微妙に変化して行く様子も、静かな流れの中で丁寧に描かれ、主人公の思いを、観客が追体験できるような上質な舞台でした。 

若かりし頃、ズートルビの一員として、バラエティタレントだった新井さんが、中年になって、得がたい役者さんになられたことも、感慨深く拝見しました。
「ナルニア国物語」、読んでみたくなりました。

ネタバレBOX

昨日、大切な友人の訃報を聞いたばかりなので、涙が禁じえませんでした。
洋服ダンスのセットと照明の工夫が素晴らしく、童話の世界に自分も誘われた気持ちになりました。
身近な家族や友人に、ありったけの愛情を注いで、毎日を潔く生きたい思いに駆られる、素敵な物語でした。
不躾なQ友

不躾なQ友

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2009/12/26 (土) ~ 2010/01/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

新年早々、大当たり
初見でした。フライヤーに引かれて、あまり予備知識もなく行ったので、最初の警官の早ゼリあたりまでは、年甲斐もなく来るべきじゃなかったかと思ったものの、10分程で、すっかり気持ちが前のめりしていました。
好きです、ここ!
作演青木さんのセンスの良さに、一度で魅了されてしまいました。
役者さん達も、皆さんすごく良くて、デフオルメされた台詞回しとかも、小粋で嫌味がないし、新年早々、嬉しい出会いがあって、自分の勘の良さにも感謝したくなりました。
こういう作品は、小劇場でしかあり得ないし、今年は益々、小劇場に傾斜しそうな予感を、年頭に当たって、感じさせてもらえて、ラッキーでした。

公演終了後に、小道具も売ってしまうなんて、太っ腹!
私も、後20歳若かったら、あの不躾グッズ、絶対買って来たと思います。

暗くなるまで待って

暗くなるまで待って

梅田芸術劇場

東京グローブ座(東京都)

2009/12/20 (日) ~ 2009/12/29 (火)公演終了

ミスキャストによる大誤算劇
残念無念! 彩輝なおさんと浦井健治さんの出演された時は、あんなに手に汗握る迫真の超一級サスペンス劇だったのに。
完全に、ミスキャストでした。馬木也さんと加藤さんの役が逆だったら、どんなによかったか!
グローリア役の子役さんの台詞も聞き取り辛く、大事な台詞が聞こえなくて、理解に支障を来たした気がします。
葛山さんと窪塚さんは好演されていましたが…。
何と言っても、馬木也さんが、あの役ではもったいなさ過ぎました。
加藤さん、草刈さんの物真似されてるみたいな台詞回しでした。

NINE the musical

NINE the musical

Quaras

ル テアトル銀座 by PARCO(東京都)

2009/12/11 (金) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

スタイリッシュなG2演出、素敵でした
行ってよかった!ルブォー演出とは全く趣きが違って、初見作のような印象でした。
私としては、今回のG2演出の方が好みでした。

スタイリッシュなショー仕立ての構成で、統一感のある舞台がとてもお洒落でした。

演技はまだ熟練の域にはないけれど、松岡さんの歌唱は、歌詞に存在感を持たせる歌い方で、歌詞が台詞としてすんなり心に溶け込みました。
誰一人、突出も逸脱もしない、非常に調和の取れた舞台で、元宝ジェンヌ4人や、歌手の松岡さんや、キャストの出自がバラバラなのに、これは驚異的なカンパニーでした。照明も音楽も、全ての調和が、とても心地良い作品でした。
そして、岡幸二郎さんが書いていたように、新妻聖子さんが、また女優としての進化が目覚しく、今後も彼女の出演舞台には注目したくなりました。

松岡さんと、子役さんの、デュエットは、お二人の歌もシーンも、強く心に残りました。
年末に、素敵な舞台に巡り会えて幸せでした。

ネタバレBOX

開演前の、出演女優さんによる、注意事項のアナウンスが、誰がしゃべっているか、想像しながら、楽しく聞けて、趣向として、成功していました。
開幕後はしばらく、女優達の鞘当てシーンが続き、これはG2さんのオリジナルだと思うのですが、やや長過ぎる気がしました。登場人物の人間関係も仄見え、面白い演出だとは思いましたが…。

女優陣が、登場場面でない時は、背景になったり、とにかく演出が小粋でしたが、衣装が同じ色なので、遠目で観ると、紫吹さんと樹里さんの見分けがつきにくい感じはしました。でも、背景の時は個性を消すので、演出の方法としては、これでよかったのかも。
十二月大歌舞伎

十二月大歌舞伎

松竹

歌舞伎座(東京都)

2009/12/02 (水) ~ 2009/12/26 (土)公演終了

満足度★★★★

いいじゃないですか!クドカン歌舞伎
あまりの酷評に怖いもの観たさで行った昼の部。
絶対楽しい筈の勘太郎君の三番ソウは遅刻して全く見逃し、残念無念。
野崎村は、いつも舟を漕ぐことが多い演目だけれど、今回は最初は楽しく、後半はジンとして、良い人情芝居でした。私の観た野崎村では、一番の好配役。福助さんのお光が、可愛く、切なく、絶品でした。
身替座禅も、今考えられる、最高の組み合わせ。日本のシチュエーション・コメディのお手本のような好舞台で、終始笑って堪能しました。

そして、問題の、クドカンさんの新作歌舞伎。
私的には、なかなか好感触の舞台でした。
もっと、下らないのかと思っていたら、さにあらず。
なかなか哲学的だし、落語ネタもうまく取り入れ、それでいて、クドカンさんのオリジナリテイもあって、勘三郎さんの初舞台の頃から歌舞伎通いしている私でも、全然不満は感じなかったけれど…。
最後は歌舞伎ならではのカタルシスも感じたんだけど。
子供も大笑いしていたし、次世代に歌舞伎を馴染ませる功績はあった気がします。
ただ、もう少し短くまとめた方がよかったし、3階席では皆満足げだったものの、16000円払ったお客さんが満足できる演目かと聞かれたら、答えはNOかも。
それに、本を依頼した勘三郎さんの役が立っていないので、中村屋のご贔屓には、きっと不満多いでしょうね。

だけど、私としては、改めて、クドカンさんの引き出しの多さに感服したし、三谷さん、野田さん、蜷川さん、夢枕莫さん等の書かれたものより、好みの作品でした。一番、歌舞伎の有り様を心得た脚本に思えましたから。
とにかく、染五郎・七之助のコンビがとてもよかった!これから、度々観たい組み合わせです。かつての、孝玉コンビのように、観ていてワクワクしました。

ネタバレBOX

獅童さん演じる、死神の場面は、ちょっと俳優祭の余興芝居の趣で、蛇足だった気がします。
新聞評では、派遣問題にケリをつけないとか、かなり酷評でしたが、最後の場面は、私には、希望に満ちた終幕と受け止められました。
人間と死者の違いは、愛や魂の有無だという、作者のメッセージのようなものを感じましたし、悪行を為した者も、生まれ変われるという希望を感じて、素敵なラストだと思うのです。
神さま、もういちどだけ

神さま、もういちどだけ

オーガニックシアター

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2009/12/22 (火) ~ 2009/12/23 (水)公演終了

満足度★★

啓蒙芝居に傾きがちで、歯がゆさがあった
映画でも小説でも、かなりありがちな内容の上、どうも話の展開が、啓蒙に傾きがちで、観ていて、終始、こそばゆい感じが付きまとい、2時間が長く感じました。
苦悩する医師のエピソードはなくてよかったのでは?
その分、あきらさんの心情をもっと具体的に照射した脚本であってほしかった。
あきらさんの奥さん役の外海さんんが、夫を想う気持ちを身体表現でもうまく演じていらして、その場面ではちょっと心を動かされました。

ネタバレBOX

あきらさんを人間違えしておきながら、そのあきらさんの歴史を把握している天使は、辻褄が合わないのでは?
使い古された筋の中で、あきらさんの功績が語られる部分は、オリジナリティがあって、よかったと思いました。
天空の舞台がちょっとチャチで、空気感が皆無なのが残念。
暗転が多すぎるのも気になりました。
それに、鈴木さんのメイクがちょっとコントじみていました。素顔は、とても美人でいらっしゃるご様子なのに、もったいない気がしました。
ちきゅうばこ

ちきゅうばこ

to R mansion

座・高円寺1(東京都)

2009/12/23 (水) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

好感持てる、子供向き芝居でした
子供対象の芝居って、ともすると、子供騙しな作品が多く、私は子供時代から、子供向きの芝居は敬遠して来たのですが、今回は、久々上質な子供向け芝居で、大人も充分楽しめる内容で、まずは、観られて感謝したい気持ちになりました。

子供向けだからといって、説明過多だったり、変にお説教じみないところに、作者のセンスを感じました。
いつもは、あんな芝居を書いていることを全く感じさせない、主役のゴジゲン松居さんと目次さんの好演に、ゴジゲンの引き出しの多さも知って、何だか得した気分でした。
舞台の構成も小道具の使い方も洒落ていて、ちょっと小ぶりな冒険活劇風でもあり、大人も子供も厭きずに、楽しめる内容でした。

ただ惜しむらくは、出演者の一部に照れが見えてしまったこと。それが、もう一つ、子供の心を鷲づかみにできない原因ではないかと思いました。
大きな声で答えない子供達に、「大きな声だね」と、迎合してしまっては、客席の気持ちを捉えることはできないのでは?
もっと自信を持って、観客の心を吸引してほしいと思いました。

モンキー・チョップ・ブルックナー!!

モンキー・チョップ・ブルックナー!!

アマヤドリ

シアタートラム(東京都)

2009/12/15 (火) ~ 2009/12/23 (水)公演終了

満足度★★★★★

全てがハイセンス
ひょっとこ乱舞を拝見するのは、3度目ですが、その進化に度肝を抜かれました。
意表をつく、オリジナリティ溢れる脚本と演出、センス溢れる台詞の数々、オーラに満ち溢れた役者陣、洗練されたステージワーク…、何もかもが秀逸で、言葉に尽くせない魅力に溢れた舞台でした。
おまけに、怪我をされた役者さんについて、事情説明される広田さんのコメントがまた素敵で、今まで作品を通じてしか知らなかった主宰のお人柄にも触れ、益々この劇団のファンになりました。

今年観た200を越す舞台の中で、たぶんベスト1、50年以上の観劇歴の中でも、ずっと記憶に残る作品になりそうです。

全員、素晴らしい演技をされていましたが、中でも、チョー・ソンハさんの演技は傑出していて、こういう名演に出会えた自分のシアワセを噛締めました。
2時間があっという間の、凝縮した舞台、本当に、最高!!

おぼろ

おぼろ

ゲキバカ

吉祥寺シアター(東京都)

2009/12/16 (水) ~ 2009/12/23 (水)公演終了

満足度★★

素人はだしの脚本に心底がっかり
稚拙極まりない脚本に、期待度が高かった反動で、本当に大落胆でした。
良かったのは、前振りと口上と、幕開きの群舞まで。後は、あまりの幼稚な筋運びに、どんどん期待感が萎まり、一時間を経過したあたりから、時計ばかりが気になりました。
昨日の紀伊国屋ホールの公演ではあんなに笑えたのに、今日は、本編では一度も笑えない。天国と地獄程の、自分のリアクションの違いが、情けなくなりました。

役者さん達、あんなに身体能力高そうだし、個性的な魅力ある方ばかりなのに…。何だか、宝の持ち腐れにならなければいいけどと、余計な心配までしてしまいました。

でも、終演後、客出しで挨拶される役者陣の表情は輝いていたし、多くのお客さんも、面白かったと満足気でしたから、単に、私の感性に合わなかっただけかな?
客演の女優さんも美人揃いで、目の保養にもなり、とにかくキャストには何の不満もありませんでした。

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