光る河 公演情報 てがみ座「光る河」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    描きたいものが多すぎたのでは?
    今回も、長田さんの作劇の構成力には感心しました。
    前回の2作品ともまた異なるタイプの芝居で、サスペンスタッチなストーリーなのに、筋に何の破綻もなく、ご都合主義な展開もないし、それでいて、説明台詞は極力廃しつつ、ストーリーと人物を同時に描ける筆力もある。
    やはり、相当才気のある方だと再認識しました。

    ただ、残念なのは、サスペンスタッチにしたために、事件の核心に迫る物語進行に筆が割かれ、その分、各登場人物の掘り下げが充分でなかった点です。
    本当に、実力あるキャスト揃いでした。気になる人物もたくさんいました。
    それなのに、各人の抱えている思いの表出には至らない部分が多く、もったいない感がありました。
    これだけの実力あるキャストなら、もう少し各人を掘り下げて書かれた脚本で、手塚夫妻を脇役にした、別バージョンの「光る河」が観てみたい思いに駆られました。それも、舞台ではなく映像で。  

    ネタバレBOX

    登場人物が11人。その内、主要人物が5人。でも、その上、死んだ人間二人と、手塚夫妻の姉も、キーマンとして描かれている。
    それなのに、事件の経過と顛末をストーリーとして、描かなければならない。
    描きたい題材を随所に散りばめ過ぎて、ストーリーも人物も、中途半端な描き方になってしまった気がします。
    手塚夫妻の、姉を裏切って逃げたという心理的ダメージも、想像はつくけれど、細部を理解するには、説明が不足していました。
    それを、客に提示するために、妻がひき逃げ犯になるかもしれないパニックシーンで、二人があんな回想をしたり、夫が、鞄の中に閉まっていた離婚届用紙を破り捨てるのは、情況として、考えにくい気がしました。
    父が取り上げた子供に対する、父と同じ職業を選んだ巡査の思い。人生に希望をなくして、起こった出来事に抗うのをやめた、浮浪者の女の思い。公務員でありながら、犯罪に手をそめてしまう倉橋の心の軌跡、仕事と信念の矛盾に悩む、若きテレビマン…。そういう、見届けたい素材が、最後まできちんと料理されていなくて、おいしい食事を味わいきれない不満が残りました。
    あえかさんの歌のバックに映る映像が、その足りない部分をずいぶんと補っていたので、この題材はむしろ映像向きだったように感じました。
    「天国と地獄」のような、高層マンション住人と、河川敷のホームレスの対比も 、映像の方が説得力を持ったでしょうし。
    登場人物11人で、サスペンス2時間ドラマ的題材は、不向きなのではと感じました。 

    松田正隆さんの作品や、キャラメルボックス版「容疑者Xの献身」や、黒澤監督の「天国と地獄」や、内野さん主演の「ブラック・バード」や、様々な演劇や映画が頭をよぎり、これは、長田さんの引き出しの多さが、裏目に出てしまったような気がして、観ていました。

    前回の公演で、人の良い工場従業員役だった武谷さんが、今回は、全く異なる役を好演されていて、ふり幅の大きい役者さんだと感心しました。
    田村さん、尾崎さん、大石さんと共に、今後も注目したい役者さんが、また一挙に増えて、今年は、また観劇舞台が大幅に増えてしまいそうです。

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    2010/01/10 22:12

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